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シンジはジオフロントに降りながら、アスカをまたしても傷つけてしまった事を気にして

いた。

いくら、急なことで不可抗力であったとはいえ、もし自分にアスカを護る事のできる力が

あれば、そう考えていた。

彼の心はジオフロントに降りるのに比例して深く沈んでいった。

 

 

「彼等は、基地施設のある地下空間へと向かっています。」

ブリッジからの報告で、ピカードはジオフロントへの転送降下を行うことにした。

「全員用意はいいか?。」

全員の用意は整っていた。

「OKです、艦長。」

ウォーフとディアナが、右袖口を軽く叩いてから答えた。

それを見て、ピカードは満足そうに頷き転送技師に指示を与えた。

「では、ネルフ本部司令室への転送降下作戦開始。」

かなり、深い地下施設のため目的の場所に行くためには若干の調整はしてあるが、幸い

建物内部までは、比較的簡単に転送できる。

問題は、さらにその下にある施設である。

堅牢な装甲と、思ったよりも深い縦穴。

そこまでは、いくらエンタープライズの転送装置でも容易には降下できないだろう。

「転送開始。」

ピカードの命令で彼等は、地上の施設内部へと降りていった。

 

 

「リツコ、約束どおりきたわよ。」

「珍しいわね、時間より少し早いわ。」

「余裕がないのよ、今は。」

「私もよ。」

リツコはそう言って、ニッコリと微笑んだ。

「で、あなたの知ってることって何?。」

ミサトは短刀直入に聞いた。

「今ここでは話せないわ。」

リツコは、そう答えた。

かなり危険な内容である事をミサトに充分過ぎるほど理解させた。

 

 



第4章 My Mind PART2

 

 

 

ゲンドウと冬月は、突如目の前の空間に現われた3人に対して一瞬どう対応してよいか

判らなかった。

「誰かね?。」

かろうじて冬月が口を開いた。

「失礼、突然訪問して驚かせてしまったようですね。

私はエンタープライズ号艦長のジャン・ルーク・ピカード、こちらはディアナ・トロイ

中佐、そして保安主任のウォーフ少佐です。

はじめまして。」

儀礼的な挨拶を交わすピカード。

「エンタープライズ?、上空の宇宙戦艦か。」

ゲンドウがピカードに対して話し掛けた。

ある程度、予想していたと言う口振りだ。

「いかにも、そのとおりです、碇ゲンドウ司令。」

「名前も調査済みか、そつがないな。」

ゲンドウは皮肉たっぷりに答えたつもりなのだが、ピカードも、ディアナもウォーフも

表情を変えない。

「別に、貴方方に敵意はありません。」

どうだかな、ゲンドウはピカードのその言葉に心のなかで反論をした。

ディアナがピカードになにか耳打ちをしている。

唐突に部屋のドアが開き、警備員が入ってきた。

3人を捕らえようとしたが、クリンゴン人ウォーフの前にあっさりと2人までが組み伏せ

られた。

しかし、残る1人が銃をピカードに向けた。

「形勢逆転ですかな、艦長。」

勝ち誇って、ゲンドウは立ち上がった。

「今は、そのようですな、碇司令。」

しかし、そう言いながらピカードはにやりと笑った。

 

 

「ねぇ、綾波まだ降りるの?。」

「ええ、まだずっと下の方よ。」

「ファースト、こんな下の方まで降りて大丈夫なの?。」

レイは、こくりと頷き

「私は、入れるの。」

そう、答えた。

 

 

ミサトとリツコは、ラボの中で現状について話していた。

リツコは知っている事のおおよそをミサトに話、ミサトもまた知っている事のおおよそを

話した。

どちらも、まだカードの全てを見せているわけではない。

「ミサト、なにを知っても取り乱さない自信はある?。」

リツコは慎重に聞いた。

ここで、ミサトを味方にすることができなければ、自分が不利になる。

「たぁいてぇいの事には慣れたわ。

それよりもリツコ、あんたこそこちらの事知っても取り乱さないでよ。」

軽い口調を使ってはいるがミサトの目は真剣そのものだった。

触るときれそうなほどに。

これで、どちらもカードを見せる準備が整ったようである。

 

 

ゲンドウは自分の有利を確認するかのように机の前に立つと

「パイロットを返してもらおうか、君たちには、必要のない物の筈だ。」

そう言い放った。

反論の余地は無い、と言う風に。

自動翻訳機はかなり正確にゲンドウの言葉をピカードに伝えていた。

その人を物扱いした言葉はピカードに不快感を持たせた。

「我々は彼等を別に拘禁しているわけでも、人質にしたわけでもないですよ。

それに彼等は人間です、物ではありませんよ、司令官。」

まるで、自分達の置かれた状況が判っていないかの様に。

そうピカードに返されて、ゲンドウも冬月も逆にたじろいだ。

そしてまた翻訳機は、ピカードの言葉も正確に翻訳していた。

だが、ゲンドウとてここで引き下がるわけにはいかない。

「彼等が望んだのか?、君たちの宇宙船に乗ることを。」

ゲンドウにしてみれば、彼等がそれを望むとはあまり考えていなかった。

いくら、2度も助けてくれたからといって信用するには材料が少なすぎる。

そう、思ってのことだった。

「彼等は、あなたがた二人より聡明よ。」

今度は、ディアナが答えた。

 

 

子供達3人は、特定の関係者しか入れない入り口まできていた。

「ここに入るの?。」

アスカがさすがに驚いてレイに聞く。

「優等生だとは思っていたけど、ここまでとはねぇ。」

「私は、優等生ではないわ。」

「判ってるわよ、冗談よ。」

少し、きまりが悪くなったのかバツがわるそうにアスカは言った。

そして、ドアをくぐりさらに地下に向かって降りていった。

 

その、遺伝子の二重螺旋を思わせるような装飾のエレベーターを下りながら三人は終始

無言だった。

何を、何を言えばいいのかわからない。

三人ともそう思っていた。

 

 

「子供達を使って、何を行うつもりですかな?、碇司令。」

ピカードは終始友好的な態度を崩しはしないが、その言葉と雰囲気はゲンドウと冬月を

苛立たせるには充分であった。

こちらは警備員が三名、銃を構えて囲んでいる。

こんな、余裕をもてるはずがない。

ゲンドウの自信と言うか、自尊心は少しづつ揺らいできていた。

今まで、この状況でひるまなかった者はいない。

「世界の救済だよ、艦長。」

そう答える冬月に、ピカードは

「子供達を生け贄にしてですか。」

「艦長、弱者を生け贄にしなければ生きていけない者はいずれ滅びます。」

クリンゴン人の保安部長 ―臨時ではあるが− は彼なりの世界観からそうピカードに

言った。

「そうかもしれないな、ウォーフ少佐。

だが、彼等にも事情はあるだろう。

話してもらえれば、問題は無くなるかもしれないがな。」

ピカードはウォーフをなだめるように言った。

「ふ、勝手な事を。」

ゲンドウはウォーフをサングラス越しに軽く睨み付けながらつぶやく。

なにか、人間離れした風貌を持つ男だ。

そう、思ったゲンドウは再びピカードに目を向けた。

幸い、ウォーフはクリンゴン人特有の額の突起を隠すために西部劇のような帽子を

かぶっている。

おびえさせない為の配慮だが、そんな事しない方がよかった。

内心、ウォーフはそう考えていた。

 

 

「リツコ、ここは。」

「そう、限られた人間しか入れないエリアよ。」

「あんたと、司令と、レイね。」

「基本てきにはね。」

そういってカードスロットにカードを通したリツコは怪訝な顔をした。

「どうしたの?。」

そう聞くミサト。

思わず、腰の銃に手が行く。

「すでに、誰か来ているわ。」

ミサトは、一瞬ピカード達を連れてゲンドウが来ているのかと思ったがどうやら

違うらしい。

「誰?。」

「レイよ!。」

 

 

 

「司令官、本当にその通りならば、これ以上子供達を苦しめないことですな。

我々は、子供達に力を貸すと約束しました。」

「なに!。」

これには、ゲンドウも驚いた。

「それは、我々に協力すると言う事ではないのか?。」

「冬月副司令でしたな、私は子供達に、と言いましたよ。」

「つまり、子供たちになにかあれば我々をも敵にまわすと言う事か。」

「彼等に危害を加えるならば、場合によってはそうなりますな。」

ピカードは、そう頷くとちらっとウォーフをみた。

 

 

 

「どこまで降りるのよ。」

アスカの問いにレイは、黙っていた。

「わかったわよ、まだ少しかかるって事ね。」

 

 

ミサトとリツコはエレベーターが先に行ってしまっているのでしばしこの部屋で待つしか

なかった。

「リツコ、いったいなんでレイが?。」

「わからないわ、その原因は貴方に心当りがあるのじゃないの?。」

 

 

 

「副長、彼等はかなり深い所へ向かって降りていきました。

これ以上は、転送ビームの到達が難しいところです。」

デイタの報告に、ライカーは眉根を寄せて質問した。

「どうした、捕まるか何かしたのか?。」

なにかあった時のために作らせた護身用のフェイザーがある為にあまり考えられない事だ。

しかし、万が一と言うこともありうる。

「いえ、自ら降りていっています。」

「自ら?、わかった、デイタ、もしもに備えてドクターにいつでも上陸できるように準備

してもらっておいてくれ。

それと、君もだ。」

 

 

 

司令室の床には三人の人間が倒れていた。

ゲンドウは無表情に立っていた。

「あまり、手荒なことはしない様に心がけてきましたが仕方ないですな。」

ピカードは憮然とした顔でゲンドウと冬月に言った。

強制的に連行し、パイロットとの交換材料にしようと思ったのだが不意をつかれた。

「殺すのか?、この三人の様に。」

そう聞くゲンドウにピカードは、ややオーバーアクション気味に心外だと言うポーズと

表情を作った。

「まさか、無駄な殺生はしませんよ、司令官。

ただ、麻痺しているだけです。

それに、あなたにはこの先、パイロット3名の安全を保証して頂かないとなりません

からね。」

ピカードは、今度はゲンドウに向かって、反論の余地はないと言う態度を取った。

「しかし、艦長、袖にフェイザーを隠すなんてよく思い付きましたね。」

ディアナが感心した風にピカードに向かって語り掛けた。

「カウンセラー、私の趣味の一つを忘れたかね?、20世紀の探偵小説には時折出てくる

手段だよ。」

ピカードは、満面に笑みを浮かべてしてやったりという顔をしている。

ある程度の情報を聞いておいたため、先手が打てた。

だが、この先はわからんぞ。

そう考えるとピカードは、表情とは裏腹に気持ちを引き締めた。

過去ゲンドウはこんな屈辱にあった事はなかった。

この状態の中、軽口を叩きしかも、小説の手法で危機を切り抜けるなんて。

そう思うと、ゲンドウはどう対処していいか良く分からなくなってきた。

「今回は、こちらの負けと言うことか。」

「今は、そのようですな、碇司令。」

ピカードはにこやかに付け加えた。

その後ろで、ウォーフがにやりと笑っていた。

 

 

 

やっと戻ってきたエレベーターに乗り込み、ミサトとリツコはレイ達の後を追う形で

地下に向かっていった。

「レイ、なにを考えてるのかしら。」

ミサトは思わず自分の疑問を言葉にしていた。

リツコは、無言だった。

 

 

 

「では、碇司令、我々の話を聞いていただきましょう。」

そうして、ピカードはこの世界に来たいきさつをゲンドウに説明し始めた。

もっとも三人に関すること等、詳しく語らなかったり、隠しておく内容も多々あったが

それでも、おおむねの事は話した。

ゲンドウは、主導権を握られている今の自体が面白くはなかった。

だが、エンタープライズの力は彼にしてみれば味方にしておきたい。

「なるほど、ここに来たのは偶然か。」

冬月は、感心していた。

自分達に照らし合わせると、妙に人のいい連中である。

理由はどうあれ、苦しんでいる見ず知らずの人間を助けるなんて信じられない事だった。

だが、只の人の良い連中ではなさそうだ。

 

 

 

リツコは、ミサトに全てを話た。

事、ここに至っては隠す方が不利だと判断したのだ。

「あの人は、私を捨てたわ。

所詮私も、母さんと同じ、利用されていただけなのよ。」

「…。」

ミサトは、なにも言えなかった。

「情けないわよね、母娘そろって同じ道を歩むなんて。」

「気づいた分、まだ取り返せるわよ。」

とはいえ、ミサトにはその言葉に根拠はなかった。

「最初は、復讐をしようかとも思ったわ。

でもね、誰か一人と引き換えに出されたのならやったかも知れない。」

顔を外の方に向ける、赤木リツコ。

ミサトはその、誰か一人におおよそ見当がついた。

「でも、三人との引き換え材料ですものね。

まだ、納得できるわ。」

そう、自嘲的な笑顔を浮かべた。

「そんなことしたら、あんた本当に馬鹿よ…。」

ミサトは、そう言いながらここの所感じていたゲンドウへの激しい憎悪を再び

燃やしていた。

 

 

 

「あなた方の目的が何かは、判りませんが当分は協力できるはずです。」

ピカードは、ゲンドウの目の前に立ちはだかりそう言った。

「協力?、何のためだ?。」

あれだけの武力をもっていながら協力だと?。

ゲンドウは、いぶかしんだ。

「貴方も判っているはずでしょう?、碇司令。」

ピカードはサングラス越しのゲンドウの目を射抜くかの様に、まっすぐ見つめる。

思わず、目をそらすゲンドウ。

「貴方の考えが、人類を破局から救うと言うのであれば、この組織ネルフとの共同体制で

事に当れるはずです。

私たちは帰るために、あなた方は人類を救うために。」

ディアナがさらに続けた。

「私の行動が、パイロット達に危害が加わってもかね。」

ゲンドウは、手を後ろに組みながら言った。

「貴方方だけでは、その程度の力しかないのなら私たちがパイロット達を助けます。」

ウォーフが言う。

しばしの沈黙。

「だが、もし貴方の行動が全てにおいて危険なものであるとしたらその時は、我々は貴方の

敵になる事に一切の躊躇はない。」

ピカードは今までの口調から一変して断固とした強い口調で言い放った。

 

 

「加持君は残念だったわね。」

少し、寂しげに言うリツコにミサトは

「あのバカは、生きてるわ。」

少し、迷ってから伝えた。

驚いて顔をこちらを向くリツコ。

「まさか?。」

「あんたが、殺したの?。」

「違うわ、でも…。」

「生きてるのよ。」

「ふふ、司令もとんだデマに躍らされたわね。」

リツコには、ゲンドウがミサトの隠している秘密に気づきもしなかった事に少し余裕を

感じていた。

あの人も所詮はただの人ね。

少し、自分が有利かもしれないわ。

秘密を共有している仲間がいるからね。

もっとも、ミサトが仲間だと思ってくれないと、なりたたない話だわ。

リツコはそう考えながら、ミサトに優しく微笑みかけた。

「な、なによ、急に。」

「別に、ミサト。」

大学の頃の関係に戻れるかしら。

リツコは、漠然とそう思った。

 

 

 

三人は、目的の部屋の入り口に立っていた。

「ここの中よ。」

レイの言葉に、シンジは両手を強く握り締めていた。

アスカは、その入り口をしっかりと見ていたが、その手は小刻みに震えている。

なにがおきても…。

あの夜のミサの言葉がシンジの頭の中を駆け抜けていった。

 

 

 

そして三人は今、その漆黒の部屋に歩みを進めた。


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ver.-1.00 1998+01/10公開
ご意見・ご感想はしばらくの間は sou-1701@qc4.so-net.ne.jpまで!!

ふ、なんでこんなに遅れをとったのだ冬月。

わからんよ、碇。

なにいってるんだか、人望がないだけじゃん。

いくらなんでも言い過ぎじゃないのか?、SOU。

でも事実でしょうが。

少しは信頼される上司になれっての。

我々は嫌われてるのか。

かー、気づかないとは恐れ入ったね。

やだよ、現実を見ない中年は…、そんなんだから息子に嫌われるのさ。

とんとん

なんでしょう?。

くぉの、馬鹿中年♪。

ア、 アスカさんなんでしょう?。(なんか怒られるのか?)

あんただって人のこと言えた義理じゃないでしょうに。

な、何てことを!。

でもSOUさん、後輩に嫌われてるじゃないですか。

自分だけとっとと仕事終えて遊んでるって。

シンジくんきみまでなんてことを。←そうとう慌ててる。

それは、簡単な作業を中々終わらせない人がわるいんじゃないか!。

だったら、手伝えば?。

綾波さんまで、シクシク。

そんなことだと、転職しても先行き暗いわね。ふぅ。

あ、でも転職決まったんですか。

あ、うん、なんとなく。

今のとこよか楽しそうな気がするし。

ちょ、ちょっとまちなさい無謀中年!。

なんですか。

更新どうなるのよ!。

あ、なんか今までと変わらず出来そう。

あ、そ。

まー、楽しみにしてくれてる人がいると良いけどね。

く、口喧嘩でこいつには勝てん。(だからと言って腕力でも勝てない!。)

さ、いきましょ、二人とも。

 

 

碇、忘れられたな。

ああ、問題ない。←ほんとか?、ゲンドウ。

だが、色も着けてもらえなかったぞ。

…。


 SOUさんの『FIRST CONTACT』第4章PartU、公開です。
 

 
 ゲンドウ、やられていますね。

 それも全然一方的に(^^;
 

 科学技術に絶対的な差もありますし、
 その上での情報量の差もまた絶対的ですよね・・
 

 これでは、さしものゲンドウもダメかな?
 

 いや、でも、
 人的にもゲンドウが、「あまりにも」でした(^^;
 

 ボクのゲンドウはどこいっちゃったんだ〜(爆)
 

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
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