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RHAPSODY

―行方―
後編





ゼーレはあの戦いの後なぜか活動を停止、
それにより世界は混乱した。
あちこちで小さな紛争が起こり鎮圧は困難と思われた。
そこで国連のトップが下した判断はエヴァ初号機を使う事だった。
しかし実際に初号機が使われた事はない。
初号機の存在がプレッシャーになりほとんどの紛争は鎮圧されたからだ。
国連はEVAの存続を決定し、その管理をネルフに任せた。
しかし戦いの後、ネルフ本部司令は行方不明、ネルフ本部施設の全壊、
弐号機の全壊、大勢の職員の死亡、
ファーストチルドレン綾波レイの失踪、無事なのは初号機だけ、
つまりネルフはほぼ壊滅状態だった。
そこで国連はネルフに莫大な資金を投入し施設の復旧、EVAの修理、
職員の補充などをおこなった。
それによりネルフは、前のような特権はなくなったものの復活した。
冬月副司令が繰り上がり司令に、副司令の席はミサトさん・・・・
だったが結婚後退職、リツコさんが引き継いだ。


       ***


今のネルフ本部は、
あのときの戦いで投下されたN2爆弾で上部が完全に壊されたため、
ジオフロントがむき出しになっている。

「シンちゃん、今日のテストはなにするのか聞いてるの?」

ジオフロントに降りるカートレインの音が響き、
ポッカリ開いた穴から赤く染まった空が見える。

「いえ、けど大した事じゃないってリツコさんが言ってましたよ」

たしか何日か前にリツコさんから電話があった時にはそう言っていた。

「そう・・・」

それを聞くとミサトさん何か考えこんだような仕草をする。
今日何かあるのだろうか?

「なにか企んでるんでしょ?」

アスカがあきれたような声で聞く。

「ありゃ、ばれた?」

ミサトさんは頭を掻いて後部座席にいる僕らに振り返る。
・・・目が笑っている。

「何企んでるのか言いなさいよ」

不機嫌そうな声だ。

「今言ったらあとの楽しみが無くなっちゃうじゃない。
それに悪い話じゃないわ」

ミサトさんはどうやっても教えないつもりらしい。

「ちょっと言いなさいよ!!」

「ほ、ほらアスカ、落ち着いて。
悪い事じゃないって言ってるんだからいいじゃないか、
ミサトさんは後で僕らをびっくりさせたいんだよ」

アスカがそれでもまだ追求しようとするので僕は慌てて止めに入る。

「分かったわよ・・・・」

明らかに不満そうだ、
これで大した事じゃなかったら・・・・・

「分かればいいのよ。
・・・・そういえば学校の方どうだった?」

話題を変えるための話としてはあまりよくない選択だ。
だけど何も知らないミサトさんにそれを言うのは酷だろう。

「最悪」

アスカにとってはこの一言に尽きるのかもしれない。
まあ僕にとってもそんなに良かったとは言えないが・・・

「どうして?」

ミサトさんは一体どうしたのかというような顔をしている。

「あ・・・詳しい話はまた後でって事で・・・・」

アスカにこれ以上この話題をするのは危険だと思った僕は話を切り上げようとする。

「あ、なんかまずかったの?」

カートレインが終点に近づく。

車の中は少し・・・いや大分居心地の悪い空気に包まれている。

『到着しました』

機械的な女性の声がジオフロントへの到着を告げた。


        ***


ここはネルフでもかなり怪しいいとされるリツコさんの研究室だ。
副司令のはずなのにそれらしき仕事をしている気配が無い。
一体何の研究をしてるのやら・・・

「二人とも久しぶりね」

リツコさんは向かっていたパソコンから目を離し、
座っていた椅子をこっちに向かって回転させた。

「そうですね、前に会ったのが・・・」

「そんな事はどうでもいいのよ!
一体今日は何をするの?」

ミサトさんは加地さんに会いに行った。
加地さんは帰ってきた後、
ミサトさんと入れ替わるようにネルフにもう一度入り、
今は諜報部にいる。
加地さん曰く『諜報部?今となってはやる事がない暇な所だよ。』らしい。
実際の話、現在諜報部にやる事はあまりないのかもしれない。
まあ今は確実に一つ仕事があるんだけど・・・

「そんなに焦らないで、ちゃんとカルシウム足りてないんじゃないの?」

「うるさいわね、
シンジが食事作ってるのにそんな事あるわけないでしょ!」

「アスカは作らないの?」

リツコさんは面白そうに聞く。
まるでミサトさんのようだ。
あの戦いの後リツコさんは変った。
なにかあったのだろう。

「うるさいわね、さっさと今日何するか言いなさいよ」

「そんなに焦らなくても・・・
そうね・・・今日は二人の健康診断だけね」

本当に大したことじゃないな・・・

「シンクロテストは無いのね」

アスカは確認をする。

「今日はする必要はないわ」

リツコさんは事務的な口調で答える。

「そう・・・・よかった・・・・」

あの戦いの後弐号機は修理された。
だけどアスカはそれを喜ばず、
むしろ乗るのを嫌がるようになった。

「まあ、近いうちにやってもらうけどね」

「またやるんですか?」

ネルフが正式にまた活動を開始してからというもの僕ら・・・
特に僕は国連への資料提出かなんかで、
かなりの回数のシンクロテストをしてきた。
理由は分からないでもないのだが・・・・
僕にとっての戦いは終わったはずだったから、
今更乗るのはあまり気分のいいものではない。

「しょうがないわ、
本来なら罪人として処分されてもおかしくなかったのよ、
生きてるだけましだわ」

リツコさんは俯き少し辛そうな目をする。

「そんな事どうだっていいじゃない、
早く済ましちゃいましょ」

アスカはこれ以上暗くなるのを恐れたのか、
不自然なくらい元気な声で言う。

「・・・・そうね、早く済ましちゃいましょ。
あとが詰まっちゃうわ」

さっきミサトさんが言っていた事に、
リツコさんも一枚かんでいる様だ。
後の楽しみがどうとか言ってたから大丈夫だと思うけど・・・・

「それじゃあ、行きましょうか」

そう言うとリツコさんは座っていた椅子から立ち上がり、
僕たちに研究室から出るように合図した。



コツコツ

リツコさんのハイヒールの音が廊下に響く。
僕とアスカは並んで歩き、その少し前をリツコさんが歩いている。

「どこで診察するんですか?」

僕は黙々と先を進むリツコさんに聞いた。

「診察室よ。
診察するときは診察室でするものでしょ?」

「は、はあ・・・」

それはそうだけど・・・・


コツコツ

誰も喋らなくなりまたリツコさんの靴の音が響く。

「・・・・・・・・」

コツコツ

「・・・・・・・・・・」

「シンジ君、学校ではクラブに入るの?」

沈黙を破ったのはリツコさんだった。
それにしてもなぜそんな事を聞くのだろう?

「そうよシンジ、私もそれが気になってたのよ」

アスカも加わる。

「入ろうとは思ってますよ」

入ろうとは思ってるけど、
どこにするかは全然決めてないんだよな・・・

「どこ入るのよ?」

アスカが興味津々といった様子で聞き返す。

「いやまだ決めてなけど・・・なんで?」

僕はまるで分からないといった感じで聞き返す。

「なんでって・・・・その・・・・」

アスカは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
その仕草に思わず笑みがこぼれてしまう。

「入るなら体育会系にしなさい」

僕らのそんな光景などお構いなしにリツコさんが言う。

「え・・・なんでですか?」

あまりにもはっきり言いきったので思わず聞き返してしまう。

「運動不足にならないでしょ?
体も鍛えられるしね」

それはそうだけど・・・
体育会系は苦手なんだよなぁ・・・

「そーよ、そうしなさい。
体育会系・・・そうね・・・バスケとかサッカーとか、
アンタなんでも出来るんだからいいじゃない」

さっきまで俯いてたと思ったらしっかり聞いてたらしい。
それにしてもなんでアスカまで体育会系がいいって言うんだろう?

「マネージャーになったら、
シンジ君と一緒のクラブになれるからね?」

リツコさんが僕の心の問いに答える。

「な、なにを・・・」

「着いたわ」

アスカが何か反論しようとしたときタイミング良く診察室に着いた。
リツコさんはもう中に入っている。

診察室の中に入ると、
名前は覚えていないが何回か見た事のある男の医者がいた。
リツコさんはその医者の横に立って何か伝えているようだ。

「それじゃあシンジ君からどうぞ」

そう言われ僕は医者の前にある椅子に座る。
リツコさんは僕が入ると仕切りのカーテンを閉めて出ていった。


        ***


「ちょっと加持さんに会いに行ってくるから。
待合所で待ってて」

僕は自分の診察が終わると、
アスカにそう言い残し加地さんの居るはずの部屋に向かった。


        ***


「え?加地さんいないんですか?」

「さっき、奥さんが来て一緒にどこか行ったよ。
多分・・・そうだな、自動販売機の辺りにいるんじゃないかな?」

何度か顔を合わせたことのある諜報部の人が、
加地さんは今いないことを教えてくれた。

「ありがとうございます」

僕はそう言うとすぐさま言われた所へ足を向けた。


        ***


「加地さん、お久しぶりです」

後ろから声をかける。

「おう、シンジ君じゃないか久しぶりだね」

加地さんは自動販売機の前に立ち、
缶コーヒーを飲んでいる。
さっきの人が言ってたことは当たってたみたいだ。

「ミサトさんはどうしたんですか?」

確かミサトさんと一緒だったはずなんだけど・・・

「ミサト?
ミサトならなんか用事があるとか言って、
さっきどっかに行ったよ」

「そうですか」

お楽しみとかいうやつのことかな?

「そんなことを聞きに来たんじゃないだろ?」

そうだった。

「ええ、あの事なんですけど・・・見つかりましたか?」

「・・・・・・・・」

加地さんの顔が変る。

「シンジ君、こんな事を聞くのもなんだが、
探し出してどうするつもりだ?」

加地さんは飲んでいたコーヒーの空缶を、
ごみ箱に入れつつそう言った。

「どうするとかそういうじゃなくて・・・」

「なら・・・・」

「ただ・・・もう一度会いたいんです」

「そうか・・・・」

「はい」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・実はもう見つかってるんだ」

「えっ!!」

加地さんの口から出た言葉は信じられない言葉だった。

「かなり前から見つかってたんだ」

「ならどうして言ってくれなかったんですか!?」

思わず声が大きくなってしまう。

「その方がいいと思ったからさ」

「どうして!?」

加地さんの言っていることがまるで分からない。

「幸せに暮らしてるんだよ・・・とてもね・・・」

「・・・・・・・・・」

「偶然会うならまだしも、
故意に会わせることはないと思ったんだ」

「・・・・・・・・」

「もう一度会ってどうするつもりだい?」

「・・・・・・・・」

もう一度会って・・・・
僕はどうしたいんだろう?

「・・・・・・」

「・・・・・」



ふと後ろに気配を感じ僕は振り返った。

「どうしたの二人とも?
そんな顔しちゃって、なんかあったの?」

「ミサトか・・・」

「ミサトさん・・・」

全然気がつかなかった・・・
聞かれてないだろうか?

「あ、シンちゃん、
アスカが早く来いって言ってたわよ」

そうだった・・・
待たせてたんだ・・・
忘れてた

「それと帰りも送ってくから、
ん〜と・・・そうね発令所に来てちょうだい、
もう用意できてるから早めにね」

「それじゃあアスカのとこ行ってきますね」

そう言って僕はその場を離れた。
もしかしたら・・・
ただ、加地さんの問いから逃げたのかもしれない。


        **???**


「そうか・・・やはり行くのか・・・」

食卓に座り、
新聞を見ていた男はそう呟いた。
何度目か自分でも分からないほど呟いたそれを・・・

「・・・うん。
・・・あの街に行けば見つかるような気がするの・・・
心に開いた穴が塞がるような・・・なにかが・・・
それに知り合いも居るし大丈夫だよ」

キッチンで夕食の用意をしている少女は、
男がその言葉を言うたびに、
何度も繰り返した言葉を再び言った。

「何故だ?
何故、高校にも入学できたこの時期に・・・」

・・・何故、今になってそんな事だけ思い出した・・・

それは口には出来ない想い。

「もう決めたんだ・・・」

「・・・分かってはいるのだがな・・・」


「ほら、御飯できたよ、
今日はお父さんの大好物」

偽りはいつか崩れ去り・・・
そして真実が・・・
それが・・・今なのだ・・・

男は何度も自分にそう言い聞かせた。


        ***


僕たちは、
今ミサトさんの車に乗っている。

行きとは違い加地さんが運転しているので、
安心したのかアスカは僕に寄りかかって寝てしまっている。

「で・・・ミサトさん、
これから何があるんですか?」

僕はアスカが倒れないように支えながら、
助手席に座っているミサトさんに話しかけた。

「え?何のことかしら?」

どうやら、あくまでシラをきるつもりだ。

「どう考えても、おかしいですよ」

「何が?」

「・・・車です、車、
なんでネルフを出た所から、
ずっと同じ車が後ろを走ってるんですか?」

「ありゃ?ばれてた?
さすがシンちゃんね」

「はぁ・・・誰でも普通気づきますよ」

「ミサト、もう教えてあげてもいいんじゃないか?」

運転席の加地さんが呆れたような声で言う。

「だ〜め、今教えたらこれまで隠してきた意味がないわ」

う〜ん・・・
どうやったら教えてくれるだろう?

「もうすぐ分かるんだから、
それまで我慢してねシンちゃん」

すでに車は第二新東京市に入っている。
・・・が、
どうも僕たちの家とは違う方角に走っているような気が・・・



「ねえ、ミサトさん・・・
なんか違う所に向かっているような気が・・・」

「気のせい気のせい」

気のせいじゃないと思うんだけどなぁ・・・
後ろの三台の車は相変わらずついてきてるし・・・




車が止まった。
居酒屋の前に・・・

「到着〜」

「あの・・・ミサトさん・・・
ここで何するんですか?」

「君たちの高校入学祝いだよ、
ミサトがやろうって聞かないもんでね」

まさか入学祝いだなんて思わなかった・・・
ミサトさん疑って・・・悪いことしたな・・・

「ほら、シンちゃん、アスカ起こして」

「え、あ、はい」

僕はそう言われて、
慌ててアスカを軽く揺すった。

「うみぃ・・・・」

???
なんだ今の『うみぃ・・・』って・・・

が、そんなことを気にしても、
しょうがないので今度は少し強めに揺する。

「ほら、アスカ起きて」

「ふみゃ・・・?
・・・シンジ・・・
もう朝な・・・の?」

完全に寝ぼけてる・・・

「まだ暗い・・・のに・・・」

どうやら家に居るのと勘違いしてるみたいだ。

「いつも・・・ぐらいの・・・時間にして・・・よ」

「アスカ、ここは家じゃないよ」

「じゃ・・・どこ?」

大分頭が覚醒して来たようで、
薄っすら目を開けて僕を見ている。

「ミサトさんの車の中だよ」

「車・・・・・・」

アスカはキョロキョロと車の中を見渡す。

「ほら、ネルフの帰りに乗ったでしょ」

「・・・うん・・・」

「起きた?」

「・・・うん・・・」

「ホント?」

「・・・うん・・・
だから・・・いつもみたいに・・・キス・・・して」

アスカはそう言うと、
うつろな目で僕に近づいてくる。

「あ、アスカ!!なに言ってるんだよ!!
ほら、寝ぼけてないで、ちゃんと起きてっ!!」

それは心の叫びだったかもしれない。
だって・・・ミサトさんと加地さんが・・・
じっくり観賞してるし・・・

あっ・・・
なんか今『行けっ』とか聞えた・・・
しかも加地さんだし・・・

「シンジぃ・・・・」

アスカの手が僕の首に回された。

「げっ!」

窓の外にリツコさんとマヤさん、
それに日向さんに青葉さんまでいるじゃないか・・・

マヤさんが、
なんかイヤンイヤンとかしてるし・・・

なんかもう・・・・・・

「だぁぁぁああああっ!!
アスカ!!
い〜加減にしてよっ!!」

強引にアスカを引き離す。

「んむぅ?
・・・シンジ・・・何してるの?」

やっと起きてくれたみたいだ・・・
よかった・・・

「ちっ・・・」

なんか加地さんのイメージが・・・

「惜しかったわね・・・」

予想通りのミサトさん。

外を見る。

リツコさん・・・
煙草に火をつけてる。

マヤさん・・・
まだやってる・・・

日向さん・・・
青葉さんと抱き合ってる・・・

青葉さん・・・
上に同じ。


はぁ・・・・・


「僕・・・心底ネルフにいるのが嫌になりました」



ホントにそう思った。




        ***




「だからぁ〜、
ごめんってひゃっきから何度も言ってるでひょ?」

ミサトさんは、
さっきから何度繰り返したか分からない言葉をもう一度言った。
酔いが回ってうまく言えてないが・・・

「うるさ〜ひっ!!
無駄、無駄、いくら謝っても許さないのらっ!!」

そう言ってアスカは手に持ったビールを飲みほす。
もう何杯目だろうか・・・
アスカも大分酔ってきたみたいで、
ちゃんと発音できてない・・・

「アスカ、押さえて押さえて」

加地さんがアスカをなだめるが・・・

「加地さんも同罪っ!!」

アスカに押し切られた。
仕方なく加地さんは、
アスカの空になったコップにビールを注ぐ。

そんなに飲ませちゃ駄目ですよぅ・・・
あとで困るの僕なんだから・・・

やりきれなくなって、
僕も日本酒を飲み干す。

僕はお酒はあんまり好きじゃないけど、
日本酒ならなぜか飲めるんだ。

「シンジくぅ〜ん・・・
私にもアスカちゃんと毎朝してるみたいに、
キスしてぇ〜」

隣にマヤさんが座ってきた。

うっ・・・
目がイッてるよ・・・

「僕はアスカと毎朝キスなんかしてませんってばぁ」

酔っ払いにこんなこと言っても無駄なんだけど、
言わずにいられない。

「じゃあ私にはしてくれるぅ?」

さらにマヤさんが迫ってくる。

「駄目です」

「・・・・・・いやぁ〜先輩ぃ〜〜〜
シンジ君が優しくしてくれないですぅぅ〜」

今度からマヤさんを見る目がかわりそうだ・・・

「あらあら、かわいそうに・・・
私が後でう〜〜〜んと、
かわいがってあげるから、
今は私の膝で我慢しなさいね」

その言葉を聞くと、
マヤさんはリツコさんの膝に擦りついて
『みゃ〜ん』
とか言っている。

完全に壊れたな・・・

それにしてもリツコさん・・・後でって・・・何?

予想するのが恐い・・・

「「シンジく〜〜ん〜〜あっそびっましょっ!!」」

限りなく気持ちの悪いユニゾンを決めて、
日向さんと青葉さんが近づいてきた。

「「いやぁ〜シンジ君がもう高校一年生かぁ〜早いもんだねぇ〜」」

寸分の狂いもない完璧なユニゾン。
僕とアスカのユニゾンなんか全く足元にも及ばない・・・
及びたくないけど・・・

「「お祝いに僕が歌を歌うよ!!」」

駄目だっ!!

聞いちゃ駄目だっ!!

これは夢だっ!!

変な夢なんだっ!!

「「こ〜うこう〜〜〜〜おめでとぉう〜〜〜〜
ふふん ふふん ふふふ〜〜〜いぇ〜〜」」

夢だと思っても聞えるものは変らない。
にしても・・・・

なんなんだその歌詞は!!

耳がおかしくなってきた・・・

「私も歌うわぁ〜〜〜」

あう・・・ミサトさんも入ってきた・・・

もう駄目だ・・・

僕も切れよう・・・

「だぁあっ!!もう飲みまくってやる!!」

「おおっ!!シンジ君!!いいぞぉ〜〜」

「うぉっしゃぁ〜〜〜〜」

「アスカのっみま〜す〜〜〜」

「おおおっ!!」

「「「くら〜ぶ〜〜〜〜かつど〜〜〜う〜〜〜」」」

「飲め飲め〜〜〜」

「「「た〜〜の〜〜〜しい〜〜〜が〜〜〜〜っこう〜〜〜」」」

「あひゅか、もう一杯いきますぅっ!」

「「「にゅうが〜く〜〜〜おめで〜〜と〜〜〜〜お〜〜〜〜〜」」」

「初号機パイロット碇シンジ!!
まだまだいけますっ!!」

「「「ふふん〜〜〜ふ〜〜〜ふふふん〜〜〜」」」

「おっしゃ〜〜〜」


宴は続く。







        ***








ううう・・・・



頭痛い・・・・・・・・



にしても・・・・ここ、何所だろう・・・・



なんか僕の部屋じゃないみたいな感じだ・・・



なんか・・・いい匂いがする・・・



今日はいい天気だなぁ・・・朝日が眩しい・・・



           ん?

なんか・・・腕がしびれて感覚が・・・



「ふみぃ・・・」



『ふみぃ・・・』?
どこから聞えたんだろ・・・



「す〜す〜」



まさか・・・・

首をゆっくり動かす。


「なんで・・・・」


なんで・・・?

・・・なんで?


「隣にアスカが寝てるんだよっ!!」

一瞬にして目が覚めた。
回りを見渡すとどうやらアスカの部屋のようだ。

横を見ると僕の左腕に、
アスカの頭がのっている。
僕は左腕を頭の下から引き抜き上半身を起こした。

「うぅ・・・」

腕がしびれてまるで鉛の固まりのようだ。
力を入れても左腕は持ち上がらない。
というか力が入らない。

「と、取りあえずベットから・・・」

降りようとした・・・

「って、アスカ!?」

が、アスカが僕のトランクスを掴んで離さない。

「ん?
なんでトランクスなんだ・・・?」

何故、服じゃないのか?

「???」

自分の体をよく見てみる。

「着てない・・・・なんで?」

どう見ても服を着てない。

服は?

部屋の中を見渡す。


・・・げ・・・


部屋の床に散乱していた。

僕のも・・・アスカのも・・・

「まさか・・・・・・」

一瞬、最悪の事態が頭をよぎる。

「・・・」

僕はアスカの方を見た。

「ぶっ!」

やっぱり今のはアスカの服だったのか!?
アスカも服着てないじゃないかっ!!

「どうする・・・・」


どうする

どうする

どうする

どうする

どうするんだ!?



・・・決まった・・・・



「・・・・・取りあえず・・・・・逃げよう・・・・・」



取りあえず僕は部屋から出ることにした。

アスカの手を僕のトランクスから離させると、
ベットの下に散乱している僕の服を急いで着ると、
アスカの家のリビングに脱出した。


「・・・思い出せない・・・」

昨日の夜、
何があったのかほとんど思い出せない。
思い出そうとしても、
頭がガンガンして集中できない。

まさか・・・ホントに?


「あれ?」


僕が絶望しかけた時ふとテーブル(といっても大きいものではないが・・・)
の上に一枚の紙切れがのっているのに気がついた。

「・・・なんだろ・・・?」

僕はなんとなく手にとって見てみた。


おはよう
昨日は完全に酔いつぶれてたから、
俺とミサトが家まで運んどいたよ
ただ、
シンジ君が家のカードを渡してくれなくてね
仕方なく、
アスカの家にってことになったのさ
びっくりしただろ?
シンジ君は床で寝かしといたけど、
風邪ひいてないかい?
服は着たままだったから
多分大丈夫だと思うけどね
それじゃあ


「なんだ・・・そうだったのか・・・・
・・・・・・???」

ナニカオカシイ・・・

<シンジ君は床で寝かしといたけど、
風邪ひいてないかい?>

「・・・・・・ベットで寝てた・・・・・・」

<服は着たままだったから
多分大丈夫だと思うけどね>

「服着てなかった・・・・」

なんか・・・・オカシイ・・・・


ガタッ


後ろで音がした。


「・・・シンジ?」


アスカがベットに居た時のまま出て来ていた・・・・



        ***



「シンジ君・・・居ないのかなぁ・・・」


・・・ネルフから・・・帰って来てないの・・・?


霧島マナは碇シンジの家のインターホンを押していた。




        ***



「シンジ・・・・?」


「あ、アスカ・・・・」


ピンポーン ピンポーン ピンポーン


「「あ・・・」」



        ***


「アスカさん・・・・」


・・・アスカさん、まだ寝てるんでしょうか・・・?


山岸マユミは惣流アスカの家のインターホンを押していた。



        ***



「今・・・」


「何時だろう・・・・」



        ***


「えっと・・・霧島さんでしたよね・・・」

「山岸さんよね・・・」


「「あの・・・」」

同時にきり出し、
声が重なってしまう。

「あ、先どうぞ」

マナがマユミに譲る。

「そちらこそ先にどうぞ」

マユミも譲る。

「「・・・・・」」

奇妙な沈黙が辺りを支配する。




「遅刻・・・」

マユミが沈黙を破りそう言う。

「する・・・ね」

続けて言うマナ。


・・・シンジ君(アスカさん)何してるんだろう(でしょう)?


「「もう八時十五分なのに・・・・」」



        ***



「・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・」



「「遅刻・・・?」」


時計の針は八時十五分を指していた。




to be continued


NEXT
ver.-1.00 1998+02/10公開
ご意見・感想・苦情・誤字情報などは masa01@big.or.jp まで。


後書きコーナー


場所:中田の部屋


中田「皆様、ごぶさたしておりました。
      中田でございます。」

青葉「みんな忘れてるんじゃないか?」

日向「え〜と、前の投稿が・・・12月20日?」

伊吹「それで、今が二月の中ごろですから・・・」

中田「二ヶ月ぐらい、ごぶさたにしてたんですね」

日向「その間何をしてたかと言うと・・・」

中田「ああっ、バラさないでっ!!」

青葉「自分のHPの小説ばっかり書いてたらしいな」

中田「あうあう・・・・」

伊吹「しかも、『こっちの方が書いてて面白い』とか言ってたとか・・・」

中田「うううう・・・」

青葉「ふ〜む・・・」

日向「・・・ふ〜ん・・・・」

伊吹「外道ですね・・・」

中田「マヤさんに言われると、
      なぜかグサッときますね・・・」

伊吹「マヤさんとか言わないで下さい。
      不潔です」

中田「そ、そんな・・・今回大活躍なのに・・・」

伊吹「どこがですっ!!ただの酔っ払いじゃないですか!!」

青葉「俺なんか・・・」

日向「僕なんて・・・」

ユニゾン『こいつとセットでしか扱われてないっ!!』

中田「けど、おいしい役だと思いましたが・・・」

青葉「どこがっ!!」

日向「ミサトさん・・・・(シクシク)」

中田「おわっ!!日向さんどうしたんですか?」

日向「加地さんとミサトさん・・・
      しっかり夫婦やってるんだもん・・・」

伊吹「まだ諦めてなかったんですか?」

青葉「しつこいねぇ・・・」

と言いつつ日向を慰める二人。


中田「少し離れましょうか・・・
      ・・・この辺でいいでしょう。
      えっと、今回で第三話は終わりです。
      どうだったでしょうか?
      感想・苦情待ってます」


日向「ちくしょ〜〜〜」


中田「う〜ん・・・吠えてますね・・・
      あ、それと僕のHPもよろしくお願いしますね。
      そこでも連載やってますか・・ぐはぁっ!!」

日向「中田っ!!
      俺とミサトさんのラブラブを書きやがれっ!!」

中田「なんて物投げるんですか!?
      普通死にますよ、
      29インチのテレビとか頭に当たったら・・・」

日向「知るかっ!!」

青葉「俺のも何か書いてくれよ・・・」



伊吹「では、次回をお楽しみに。
      あ、感想メールでお尻に火をつけないと、
      続きが出ないかもしれませんので、
      お手数ですが中田に感想など、
      出してやってくださると嬉しいです。
      返事は必ず書かせますので、
      よろしくお願いします」



 中田さんの『RHAPSODY』第三話後編、公開です。



 遂に一線を越えてしまったのか?!


 高校生だし、
 そうなる時期としては適当かな・・・


 いやいや、仮にそうだったとしたら

 「覚えていない」のは不幸すぎるよね(^^;


 初めての時の緊張感・・
 微妙な初めての感触・・

 そういう物の記憶が残っていないとは・・
 可哀想すぎる〜(爆)

     アスカちゃんの初めて・・ウケケ



 さあ、訪問者の皆さん。
 次への引きもバッチリ、中田さんの元へ感想を送りましょう!

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