チュン
チュン
チュン
「う〜ん。」
・・・・・・
いま何時かな?
・・・・・・・・
六時・・・・か
「起きよっかな・・・」
そういって僕は重い体をおこした。
「顔洗うかな・・・」
洗面所に向かう。
ジャーーー
バシャ
バシャ
バシャ
・・・・
冷たい水が眠気を吹き飛ばしてくれる。
頭もしっかりしたとこで僕は制服に着替える事にした。
まだ着慣れない制服を着ると、自分が高校生になったのを自覚する。
どこかぎこちなさの残った制服姿で朝食と弁当の準備をしに台所に向かう。
きり・・・まただ・・・マナ、朝御飯どうするのかな?
いちおう作っとくか・・・・
昨日は夜に弁当の用意が出来なかったので今日は冷凍食品を使う事にした。
電子レンジであっためるやつだ。
電子レンジの音がする。
・・・・・・・・・・・
・・・・・朝は嫌いだな・・・・・
・・・・・・・・・・・・
一人暮らし(ほとんど違うが)をしていて一番さみしいと感じるのは朝だ。
聞いた事なんかないから他の人はどうかは知らないけど・・・・
朝自分が独りでいるのが改めて確認されてすごくさみしくなる。
逆に誰かがいると、朝はすごく楽しいんだけどな・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・もうすぐくるけど・・・・
ふと時計を見る。
まだ7時にはなっていない。
「もうすぐかな?」
弁当におかずを詰めながらそんな事をつぶやく。
早く来てほしいんだけど・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
おそい・・・
こりゃまだ寝てるな・・・・
起こしにいこっかな?
けど前に起こしにいったら着替えてて、ちょっと人には言えないような事になったしなぁ・・・・
遅れるよりはいいか・・・
・・・・・・・・・・
行きますか・・・・
僕はアスカの部屋のインターホンを押してみた。
ピンポーン
・・・・・・・
ピンポーン
・・・・・・・
反応なし。
突入開始。
ガチャ
「アスカ寝てるの〜?」
声は返ってこない。
僕は仕方なく(嘘じゃないよ)アスカの部屋に入って起こすことにした。
アスカは最近とくに寝起きが悪くなってきた。
昔はすごくよかったのにな・・・・
どうしてだろ・・・
「アスカ?」
僕はアスカの寝室というか部屋に入りアスカに声をかけた。
・・・・・・・・・・・
案の定バクスイモードに入っている。
「ホントにしょうがないな〜
アスカ!おきてよ!!」
・・・・・・・・・・・
駄目か・・・・
僕はアスカの寝ているベットに近づき、
彼女の寝顔を覗き込むとゆっくりと顔を近づけて・・・・
「とりゃ〜!!」
耳元で叫びながらおでこにチョップした。
「この馬鹿シンジ!!
なに考えてんのよ!!
アンタが起こしにくるの待ってたっていうのに、おはようのキスの一つも出来ないの!?」
やっぱり・・・・
「起きてたんだねアスカ・・・・」
「うっ!
・・・・・
そ、それは・・・・」
「別にいいけどさ、早く起きて用意した方がいいよ。
もうこんな時間だし・・・・」
そういって僕は時計を見せる。
時刻は7時20分。
アスカの用意にかかる時間も考えると遅刻ぎりぎりだ。
「・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・」
「起きないの?」
「・・・・アンタがいるから着替えられないんじゃない。
それとも見ていく?」
「そ、それはちょっと遠慮しときます・・・」
そういって僕はそそくさと部屋を出た。
・・・・・・・・
・・・・・・・・・
それにしてもアスカ最近ミサトさんに似てきたんじゃないかな?
・・・・・・・・・
酒とかのみ出したら気をつけなきゃな・・・・・
とか考えてるうちに、いつのまにか自分の部屋の前にいた。
僕が部屋に入ろうとすると不意に後ろから声がした。
「おはよ、シンジ君。」
「お、おはよう、霧島さん。」
昨日の事もあって少し気まずい。
「・・・・・・・・・・・・」
「どうかした?」
「マナって呼んでくんなきゃ返事しないもん。」
そういって俯いてしまった。
「ごめん、マナ。」
「・・・・・・・」
返事はない。
「許してくれないの?」
「ううん・・・・ちがうよ・・・・ただ・・・・」
まだ俯いたままだ。
「ただ?」
「・・・・嬉しかっただけ・・・・・」
そういって顔を上げたマナの顔は満面の笑顔だった。
「!!!!」
「なに?」
「い、いや、その・・・・」
「私には言えないの?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・」
言えるわけないじゃないか、
可愛かったなんて・・・・
「あ、そういえばどうしたの、こんな朝早くから。」
僕は話をそらすために不思議に思ってたことを聞いてみた。
時計を見てもまだ学校に行くには早すぎる時間帯だ。
「・・・・朝一人はさみしいから・・・・
シンジ君と一緒に食べようかなっと思って、サンドイッチ作って持ってきたの。」
「あ、そうなんだ。」
「いいかな?」
「別にいいよ、朝一人はさみしいもんね。」
「ありがと。」
「とりあえず部屋に入ろうか。」
「うん。」
こんなとこで話をしてても仕方がないので僕らは部屋に入った。
僕らはテーブルの椅子に腰掛けると、
僕の作った朝御飯とマナの作ったサンドイッチを食べ出した。
「どうシンジ君、おいしいかな?」
「うん、おいしいよ。」
「ホント!!
うれ〜し〜いっな、シンジ君においしいって言ってもらった〜」
「そんなおおげさな。」
「だって嬉しかったんだもん。」
「まあ、他の人に自分の料理ほめてもらうのって嬉しいよね、僕もそれわかるよ。」
「でしょ!」
僕らはこんな話をしながら朝御飯を食べていった。
「そういえば、もうすぐアスカがくると思うから。」
「・・・・・・・・・・・
なんかちょっと顔合わせずらいね、
あんなに酷いこと言っちゃたし。」
「大丈夫だよ。」
「そうかな?」
「アスカは優しいからね。」
「優しい?」
「そう、すごく本当は優しいんだよ。
普段は照れてあんまりそういう風には見えないけどね。」
「ふ〜ん、アスカさんの事なんでも知ってるんだね。」
「そんな事ないよ。
すべてを知ることなんか出来ないんだ。」
「けど少しでも知りたいって思うから、一緒にいたいと思うんでしょ。」
「そう?
僕はそんな事、思ったことないな。」
「私はシンジ君のこと全部知りたいな。」
「それって・・・・」
「私シンジ君のこと・・・・」
この展開は・・・・
「は〜い、そこまで!!」
「「アスカ(さん)」」
いつの間にかアスカが僕らの後ろで仁王立ちしていた。
「アンタらね〜朝っぱらから何やってんのよ!?」
「なにって・・・喋ってたのよ。
ねっシンジ君。」
ああ(泣)
僕に話をふらないでよ〜
「う、うん。」
「そうですか、
どう見てもマナがシンジに、
告白しようとしてるとこにしか私には見えなかったけど、
気のせいかしら?」
「「き、気のせいよ(だよ)」」
「それにさっきからきれいにユニゾンしてくれちゃって。」
「「そ、そんなことないよ(わよ)!!」」
「なんか嫌な予感がするから急いできてみたらこれだもんね〜
もうちょっと遅かったらキスでもしてたんじゃない?
シンジもあたしがいるってのに、他の女とキスなんかしてたら八つ裂きだからね!!」
「う・・・・・」
「したの?」
「し、してないよ・・・」
今日は・・・
「今日はね。」
間髪入れずにマナが言う。
ああああああ
何てこというんだ〜
「今日はですって〜
じゃあ何?昨日したってこと!?」
「さ〜どうかしら?」
あうあうあうあうあうあう
「シンジ!!
どういうことなの!?」
なにか・・・
なにかにげる手は無いのか!?
「あ、そ、そうだ、時間いま何時かな〜」
そういって時計を見る。
8時5分・・・・・
「あ、8時過ぎてる・・・・・」
僕らの学校はここから急いで35分、
ホームルームが始まるのが8時30分、
あまりは・・・・マイナス5分。
つまり、遅刻しかけ。(ていうか遅刻)
「「「・・・・・・・・」」」
「「「しゅ、しゅっぱ〜つ」」」
かくして僕らは学校へと向かった。
「あんたね〜もっと早く気付きなさいよね!!」
エレベーターが来るのを待っている間アスカが文句を言ってきた。
「そんなこと言ってもアスカがもっと早く用意してたら、
こんな事にならなかったんだろ!!」
「そうよ!!
自分のこと棚に上げてシンジ君を責めるなんて!!
シンジ君、こんな人のどこが優しいの!?」
「シンジ、私のこと優しいなんていってくれたの?」
「シンジ君、だまされてるのよ。
こんな人が優しいなんていって、洗脳でもされてるんじゃないの!?」
「誰が洗脳なんかしてるっていうのよ!!」
「あら、あなた以外に誰かいるの?」
どうしよ〜?
「惣流さんじゃないですか!?」
「「「はっ?」」」
僕らが振り向くと一人の女の子が立っていた。
眼鏡をかけた結構可愛い子で長くて黒い髪が印象的だ。
「やっぱり惣流さんじゃないですか。
おはようございます。」
「・・・・・・あ、お、おはよう。」
アスカはなんだかわけが分からないって顔で彼女を見ていたが、やがて思い出した
ようにあいさつした。
チーン
凍り付いた空気を破るようにエレベーターのドアが開いた。
「ところでアンタ誰なの。」
エレベーターのドアが閉まり1階のボタンを押すと、
アスカは眼鏡の女の子に話しかけた。
「・・・・・・・」
女の子は黙って俯いてしまった。
「ちょっとなんとか言いなさいよ!!」
「ア、アスカそんな言い方しなくても・・・」
「そ、惣流さんは私のこと覚えてないんですか?」
どこかおどおどした感じでアスカに問う。
「知らない。」
そんなきっぱりと・・・・
「やっぱり私なんかのこと覚えてるわけないですよね・・・・・」
エレベーターが下がっていくように彼女の声も沈んでいく。
「誰だっけ?マナ知ってる?」
「知らない。」
「シンジは?」
「僕も知らないよ。」
知ってたら最初にいってるよ・・・・
「私は・・・・・」
チーン
エレベーターのドアが開く。
「シンジ君こんなことしてる場合じゃないよ、
早くいかなきゃ遅刻しちゃうよ!!」
「私の名前は・・・・」
「遅刻する〜」
そういってアスカとマナは走っていってしまった。
「私・・・・」
まだなんかしゃべってんだけど・・・
「あ、あの、君も遅刻するよ。」
僕は、まだなにかぶつぶついっている女の子に勇気を出して声をかけた。
「そ、惣流さんは?」
はっとして彼女はこっちを見てそういった。
どうやらどこかにトリップして周りの様子に気がついていなかったようだ。
「先に行っちゃったよ・・・」
「惣流さん・・・・」
彼女は俯いて泣きそうになってしまった。
「シンジ〜なにしてんのよ〜」
彼女をおいていくのはしのびないが、遅刻するわけにはいかない。
「ボ、ボク、もう行くから。」
「・・・・・・・・」
だ、大丈夫かな?
「シンジ君!!」
そういえば、こんなことしてる場合じゃなかったんだ。
「ちょっと待ってよ〜」
ふと後ろを振り向く・・・・
まだ俯いてる。
早く行かなくていいのかな?
とりあえず僕は少しむこうで待っている二人に追いつくために走った。
「おそ〜い、何してたのよ〜」
アスカが追いついてきた僕に、走りながら話しかける。
「なにかあの娘としゃべってたの?」
マナがそれに続く。
「いやそういうわけじゃなくて・・・・」
別に悪いことをしていたわけじゃないが、なんとなく声が小さくなる。
「「そういうわけじゃなくて?」」
二人の背中から、
何かオーラのようなものが見えるのは、僕の気のせいだろうか?
「い、いや、あの娘、間に合うのかな・・・と思って。」
「しらない娘のことなんかどうでもいいじゃない。」
「そんないいかたしなくても・・・」
「さすがシンジ君、やっさし〜
どっかの誰かさんとは大違いね。」
そういってマナはアスカを睨みつける。
「私の優しさは全部シンジに向けられてるの、
アンタみたいに誰にでもいい顔してるやつとは違うのよ!!」
「なんですって〜」
誰にでもいい顔してるやつか・・・・
おっと、信号赤だ。
「二人とも信号赤だよ。」
二人は気づかずに渡ろうとしていたらしく慌てて止まった。
「ここの信号長いからちょっと間に合わないかもね。」
「え!!もうそんな時間なの!?」
「アスカさんのせいでシンジ君が遅刻したらどうするのよ。」
「なにいってんのよ、
アタシとシンジはちゃんと走れば遅刻なんかせずに余裕で行けるとこを、
本気で走っちゃアンタがついてこれないからゆっくり走ってあげてるのよ、
遅刻するとしたらアンタのせいね。」
「ホント、シンジ君?」
「それは・・・・・・」
「シンジ、気なんか使わなくたっていいのよ。」
「・・・・・・・・・」
「シンジ君、私が足手まといなら先行っていいよ。
私、シンジ君には迷惑かけたくないから・・・・」
「そんな・・・迷惑なんかじゃないよ。
アスカ、さっきから少し言い過ぎだよ。」
「なによ!!その娘の味方するわけ!?」
「味方とかそんなんじゃ・・・」
キュキュキュキュキュー
後ろで自転車のブレーキの音がした。
「惣流さん!!」
すごく嬉しそうな大きな声がする。
この声は・・・・・
「あら、さっきの同じマンションから出てきた娘じゃない。」
「おぼえていただいて嬉しいです!!」
「アンタ自転車通学なんだ。」
「歩いて学校いくんですか?」
「そうよ。」
「この時間だと遅刻しますよ。よかったら後ろ乗りますか?」
「ホント?
じゃあ乗せてもらおうかな?
シンジはマナと一緒に行くんだもんいいよね。」
「え!?」
「それじゃ後ろに乗って下さい。」
「ありがと・・・えーと名前は・・・・」
「山岸マユミです。」
「マユミっていうんだ・・・いい名前ね。」
「ホントですか!?
嬉しいです惣流さんに誉めてもらえるなんて!!」
「ほら、信号変わったわよ、早く行きましょ。」
「はいぃ!!」
「「・・・・・・・・」」
行ってしまった・・・・
「なんかあのマユミって娘へんじゃない?」
「いや、はっきり断言するのもどうかと思うんだけど・・・・」
「いいえ、絶対へんよ。」
「と、とにかく、早く学校いかなきゃ。」
時計を見るともう遅刻寸前だ。
「ほらシンジ君、走ろ!!」
そういってマナは走り出した。
僕もその後について走る。
学校の階段
「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・」
何とかまにあった僕らは教室へむかう階段を上っていた。
「よかった、ちゃんとまにあったね。」
「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・」
学校まで結構距離があったんだけど、マナは結構早いペースでずっと走ってきた。
そのためか、だいぶん疲れているようだ。
「そんなにしんどかった?」
「シ、シンジ君、し、しんどくないの?」
「走るのは慣れてるからね。」
「走るの好きなの?」
「別に・・・好きってわけじゃ・・・」
「ふーん・・・・それにしても階段のぼるのがしんどいよぉ・・・」
「大丈夫?」
「なんでこんなに上に、一年の教室があるの?」
「ははは、それ昨日ケンスケもいってたよ。」
「ふぅ・・・あと少しね・・・」
階段を上るとすぐに僕達の教室が見える。
「そういえば、アスカさんあれからどうなったんだろ?」
そういえば・・・・
山岸さんとかいう人と一緒に行っちゃったんだった・・・
ちゃんと来てるかな?
「ねえシンジ君、ホームルーム終わったら見に行こうよ。」
「そ、そうだね・・・」
なんか怒ってたしなぁ・・・・・また怒られるのかなぁ。
「シンジ君、教室入ろうよ。」
「うん。」
ガラララ
「おはよ〜」
マナが元気に挨拶すると、教室中の視線が一気にこっちを向く。
「なんで霧島さんとシンジが一緒に来るんだよ!?」
男達を代表して、ケンスケが僕に殺気のこもった視線を向けて叫ぶ。
うう・・・ケンスケの目が恐い・・・
「一緒に来ちゃまずかった?」
「いや、いけないわけじゃないけど・・・・」
「ならいいじゃない。」
そういってマナは席に座ってしまった。
そうなれば矛先は・・・・
「シンジ!!」
ほら・・・
「な、なに?」
「どういうことだ?」
「どういうことって・・・・
マナの家が、僕の家の隣だったんだ。」
「マナか・・・・・」
し、しまった!!
「そうか・・・・
またシンジか・・・・」
「え、怒らないの?」
「まあ、もう慣れたってとこかな。
それより・・・・女を紹介するって話はどうなったんだ?」
「あっ!!」
「どうなんだ?」
昨日はいろいろあったからすっかり忘れてた・・・
「ご、ごめんケンスケ・・・」
「そうか・・・忘れてたのか・・・ふふふ・・・・忘れてたのか・・・・ふふふ・・・・」
「ひっ!!」
「うふふふふふ・・・まあ詳しい話はあとだ、まずは席につけ・・・ふふふ・・・」
うう、なんか目がいってるよ・・・・
「う、うん・・・」
席に座るとすぐに藤田先生が入ってきた。
「きりーつ、れーい、ちゃくせーき。」
門谷さんのごうれいがかかる。
「おはようみんな、誰か来てない人いるか?」
まわりを見渡すが席は全部埋まっている。
「休みは無しか・・・今日から午後まで授業があるからみんな頑張れよ。
他の連絡事項は・・・無いな・・・それじゃあ、みんな一時間目の授業の用意しとけよ。」
そういって藤田先生は一時間目に授業があるらしくさっさと行ってしまった。
僕は一時間目の用意をするために鞄を開けた。
一時間目の授業の準備するといっても、授業で使うのは端末だけだけど・・・
そんなことを考えているとマナが僕に話し掛けてきた。
「シンジ君、アスカさんのクラス見に行こうよ。」
そういえばそんな約束してたなと思い出す。
「そうだね、行ってみようか。」
僕たちが教室を出ようとするとケンスケが鬼のような形相でやって来るのが見えた。
「シンジどこ行くんだ!?
話があるって言ってただろ!!」
うう・・・
なんか最近ケンスケ怒鳴ってばかりだな・・・・
「アスカさんに会いに行くの。」
少しびびって声の出なかった僕にかわってマナが説明する。
「惣流のクラス・・・?
ああ七組か・・・それじゃあ俺も行くよなんか最近トウジに会わないしな。」
そういえばトウジは七組だったんだ。
けどほんとに最近会ってないな・・・・
入学式のとき少し喋っただけだ。
こうやって少しずつ疎遠になっていくのかな・・・・?
「それじゃあ早く行こうよ。
一時間目始まるまであと10分ぐらいしかないよ。」
八時三十分からSHR(ショートホームルーム)が始まりそれが終われば、
八時四十五分の授業開始までの間は休み時間になるのだ。
ちなみに授業の時間は五十分で、授業の合間に十分の休み時間がある。
四時間目の終わる十二時三十五分から一時十五分までが昼休みになっている。
「はら、シンジ君、早く行こうよ。」
「あ、う、うん。」
アスカのクラスは、同じ階にあるのでそんなに遠くない。
アスカの教室にはすぐ着き、僕たちは開いている教室のドアから中を覗いてみた。
「「「・・・・・」」」
アスカの場所はどこかすぐにわかった。
「話できるかな・・・?」
「それより僕は嫌な予感がする・・・」
教室のなかには何人いるか数えるのが面倒くさくなるような男の人垣ができていた。
同じ学年の男子だけでなく、二年や三年の姿も見える。
いったいどこからこんなに情報が流れたのか・・・
「うーん、がんばって学校のコンピュータに侵入して、
全校生徒に一年美男美女カタログをメールで送ったかいがあったな。」
う・・・ケ、ケンスケ、君ってやつは・・・・
「やっぱり惣流の人気は一番だな、中学の写真の持ってきたらさぞかし売れるだろうな・・・
惣流の写真だけで軽く百枚はあるから・・・・ふふふふふ・・・・大もうけ・・・・ふふふふ・・・」
高校でもやるつもりか・・・・
それやるからもてないんだよ・・・
「ね、ねえ、相田君って危ない人なの・・・?」
て、的確な表現・・・
「い、いや、危ないっていうか、その、個性的っていうか・・・・」
僕が返答に困っているとふいに大きな声が僕を呼んだ。
「シ〜ンジ、なにしてるの〜?」
この声は間違えようもないアスカの声だ。
「そんなとこ居ないでこっちおいでよ。」
声は聞こえるけど姿は見えない。
「ちょっと来れないかなぁ・・・・」
うう・・・だんだん嫌な予感が強くなってきた・・・
「ちょっと!!アンタ達、邪魔よ!!
シンジがこっちに来れないじゃない!!
さっさと、どこか行きなさいよ!!」
アスカが周りの男子に怒鳴る。
周りの男子は、いったいなにが起きたのかという表情だ。
「もう、とろくさいわねぇ・・・どきなさいよ。」
アスカは呆然としている男子をかきわけて、ぶつぶつ言いながら僕らのいる廊下に出てきた。
そして僕たちの前まで来ると・・・・
「シンジ、ちゃんと間に合った?」
さっきまでの声が嘘のように、優しそうな声で僕に話し掛けてきた。
「う、うん、間に合ったよ。」
「そう、間に合ったの・・・結構マナ走るの速いのね。」
「だって私、中学で陸上やってたもん。
けど私が必死で走ったのに、シンジ君ぜんぜん疲れてないんだもん、びっくりしちゃった。」
「そうなの、シンジったらなぜか運動だけは得意なのよ、昔はそうでもなかったのに最近はすごいんだから。」
二人は、昨日の事など無かった様にふるまっているが、少し無理しているように見えるのは気のせいではないと思う。
そういう僕も、まだまだ気にしている。
昨日の今日で忘れろという方がおかしい。
僕がこんな事を考えていると後ろからよく知っている声が聞こえた。
「おう、シンジ、ケンスケ、おはよーさん。」
「あ、おはよう、トウジ。」
「おはよう、トウジ。」
「なんや、めちゃくちゃ人多いな、俺がトイレ行っとる間になにがあったんや?」
「全部、惣流目当てさ、あと、山岸さん目当てかな、
一年美少女ランキングトップとトップテンのうちの一人がいたんじゃしょうがないよ。」
そんな他人事みたいに、ケンスケが原因じゃないか・・・
「なんや、その美少女ランキングちゅうんは?」
「全校生徒に一年美男美女カタログっていうのがメールで送られたんだ。」
「それに載ってたっちゅうわけか・・・・そのカタログはケンスケが作ったっちゅうわけやな。」
するどい。
「あ、やっぱりわかった?」
「俺になんも言わずにそんな事してからに、おのれ儲け一人占めするつもりやったやろ。」
「いいや、トウジにも手伝ってもらうさ。取りたてのときにトウジは絶対に必要だからな。」
「そやな。」
二人はそのままなにかあやしそうな事を話している。
二人が言っている取りたてのときとは、ケンスケとトウジが中学のときにやっていた後払い制の事だと思う。
この制度は、カタログを見ていてほしいのがあるのに、
その時お金が無くて買えない人のために(人気のあるのは次の日にはなくなっている)後払いでもいいという制度だ。
これには利息がついて三日に一割の割合で増えていく(休日や祝日は除く)。
こういう制度があるともらうだけもらって、あとは金をずっと払わないやつが何人か出てくる。
ケンスケは、そういうやつはしばらくほっておく。
するとどんどん利息がたまり、相手が忘れた頃に信じられないような値段(とは言っても千円未満・・・・だと思う)を請求する。
たいてい取り立てに行くと相手が力ずくでかかってくるので(あたりまえだ)
トウジがねじ伏せ、金を払わせるというシステムだ。
僕にはどう見ても悪徳商法にしか見えないんだけど・・・・
「シンジ。」
僕が二人の悪行について考えているとアスカが話し掛けてきた。
「なに?」
ん?
何か視線を感じるな・・・
「さっきの山岸って娘、私と一緒のクラスだったのよ。」
「え、そうだったの?
あんなにはっきり知らないなんて言ってそれは酷いなぁ。」
「アスカさん、酷すぎ・・・」
「私だって反省してるわよ。ちゃんとさっき謝ったし・・・
けどあの娘、影が薄いのよね。」
おい!!
いいすぎだろそれは。
「いまだって私の後ろにいるのに、シンジもマナも気付かなかったじゃないの。」
「「えっ!!」」
アスカの後ろを覗きこむと確かにいる。アスカの後ろにピッタリとくっついて、僕をジロリと睨んでいる。
さっきから感じていた視線はこの娘だったんだ・・・・
「ね、いたでしょ。」
いや、いたのは分かったんだけど・・・なんでこっちを睨んでるのかな?
「あなたが、シンジさんですね。」
山岸さんがアスカの後ろから出てくる。
「そ、そうだけど・・・」
言葉の中に何か敵意のようなものを感じる。
「惣流さんと付き合ってるんですよね。」
僕たちの周りにいるさっきアスカに追い払われていた男達が一斉にこっちを向く。
なんだか最近こういう事が多いような気がするんだけど・・・・
「・・・そうだけど・・・」
別にごまかす必要も無いので正直に答える。
彼女は少し俯いて何か考えている。
そして考えがまとまったのか顔を上るとアスカを見た。
「けど、もうすぐ別れてもらいます。」
は?
何を言ってるんだ?
「そして、私が惣流さんと付き合うんです!!」
to be continued
中田さんの『RHAPSODY』第三話前編、公開です。
朝から始まるアスカとマナのシンジ争奪戦(^^)
二人とも積極的ですね。
「私の優しさは全部シンジに向けられてるの」
「私、シンジ君には迷惑かけたくないから・・・・」
爆裂ゴロゴロ〜
シンジは幸せなのか、
牽制しあう二人に挟まれて苦しいのか(^^;
人の羨む状況にかわりはないですよね。
今回登場のマユミちゃん・・・
またまた大変な状況に拍車がかかったな(^^)
さあ、訪問者の皆さん。
中田さんに感想メールを送りましょっ!