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聖・エヴァンゲリオン学園

第壱話 Sympathy for the Devil


Please allow me to introduce myself,
I'm a man of wealth and taste.
I've been around for a long long year,
stolen many men's soul and taste.

「あなた、誰」
 最初にそうつぶやいたのは彼女だった。
 彼女はすでに気付いていた。巨大な鋏のようなものによる拘束が、いままさにはじまりつつあることを。 だが彼女には自分の感覚をたとえば言語として普遍化させる能力が欠如していたため、それはこの段階ではまだ、 ただの予兆のようなものにとどまっていた。
「綾波、どうしたの?」
「…ううん、何でもない」
 彼女はただそういうと、再び黙り込んだ。そして、夢を見た。いつものように。
「…碇君は思わないの?」
「何を?」
「……」
 彼女は時々思う事がある。この現実が、本当に現実なのだろうかと。 つまり、今自分がいる世界がどこまで確かなものなのか、 さらには自分という存在がかりそめのものでないとは、どうして言えるのだろうかと。

*

 私は、イエス・キリストが疑い、苦しんでいた時に彼のそばにいました。 ピラトがその手を洗い、彼の禍根を隠したことを、私は呪いました。

*

 彼女は捜し求めている。彼女を救ってくれる「もの」、すなわち彼女を救ってくれる「言葉」を。
「…いつも、夢を見るの」
「何の?」
「…わからない。ただ…」
「ただ?」
「……わからないわ」
 彼女にはその「言葉」を口に出す事が出来なかった。 そうすることで、これまで築きあげてきた何かとても大切なものが、壊れてしまうような気がした。 どうしてそう思うのかはわからなかった。ただ、失いたくなかった。
「…そう」
「そうよ。行きましょ」
「うん」
 時々、痛みを感じる。

*

 貴方に会う事が出来て嬉しいです、私の名前はご存知ですね。 けれど貴方を戸惑わせる事も私の本性の一つなのです。

*

 悲しい事は何もないのに、涙が出る時がある。まるで、何かを思い出したように。 自分の存在に、疑問を感じる事がある。
「けれど、これも私が望んだ事」
 …そうなのだろうか。
「碇君、あなたは何を望むの?」
「僕は、ただ、このままでいたいんだ」
「このままって?」
「…このままさ」
「それがあなたの望む事なの?」
「うん」

*

 変化の時、私は聖ペテルブルクにいました。私は皇帝とその臣下たちを殺しました。 アナスタシアはただ泣き叫ぶだけでした。

*

「碇君、誰かを殺したいと思ったことはある?」
「どうして、そんな事を聞くの?」
「……」
「多分、誰かを殺したいと思ったことはない」
「お父さんも?」
「うん、父さんも」
「そう」

*

 私は叫びました、「ケネディ家を殺したのは誰だ?」と。でも結局、それは貴方と私なのです。

*

「あなた、誰?」

*

 貴方に会う事が出来て嬉しいです、私の名前はご存知ですね。 けれど貴方を戸惑わせる事も私の本性の一つなのです。

*

 彼女はすでに知っている。知ってはいるが、それを口に出すことは出来ない。そして……

*

 もしも私に会ったときには、多少の礼儀をわきまえ、そして憐れみを持ってください。 貴方に会う事が出来て嬉しいです、私の名前はご存知ですね。

*

 そして、彼女、綾波レイは悪魔への憐れみと限りのない共感を覚える。 …神の裁きと決別するために。


To be continued...

ver.-1.00 1997-11/06 公開
ご意見・感想・誤字情報などは gentaw@a2.mbn.or.jpまでお送り下さい!

 渡邉さんの『聖・エヴァンゲリオン学園』第壱話、公開です。
 

 EVA本編でにおわされていた、
 単語としてよく使われていた宗教単語を感じさせますね。
 

 話の間に挟まれているのは
 聖書あたりの物語なのでしょうか。
 

 聖書・・
 一冊持っていたかな。
 高校の時、何とかいう組織から配られたっけ?

 ちょっと読んでみる気になったりもして・・

 

 
 

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