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雨が降る。シトシトと朝からずっと降り続いていた。
ミサトは今日もネルフでの仕事があり、帰りが遅い。
二人きりの時間。ミサトのマンション。テレビのある部屋。
しかし、今は不自然な沈黙しかない。
1つのクッションに背中合わせで座る二人。
アスカは窓から見える街を見ていた。
時々、窓ガラスにできた水玉が滑り落ちていくのを目で追っている。
シンジは自分の膝を抱え込んで、自分の足元を見つめている。
二人とも押し黙ったまま、何も言わなかった。
そのきっかけは、シンジの真剣な顔をして言った質問だった。
「アスカ、加持さんのこと、どう思ってるの?」
それは。
シンジがアスカへの気持ちに気がつき始めた頃の。
アスカがシンジへの気持ちに素直になり始めた頃の。
ある雨の降る日の午後のことだった。
優しさの違い
「何でそんなことを聞くの?」
アスカは最初、シンジのその質問を聞いた時にとっさに言おうとした。
しかしシンジの真剣な顔を見て、その言葉を引っ込める。
どれくらい時間が経ったのか。分からなかった。
そろそろ夕飯の支度に取り掛かる時間だろうか?
ずっと窓から外を眺める。
そして少しずつ、自分の考えをまとめる。
(加持さん)
初めて会ったのは、シンジと出会う少し前。
すぐに加持の魅力に気がついた。
(あの頃は‥‥友達なんていなかったし)
エヴァのパイロットとしての訓練と実験の連続。
普通の少女の生活など望めなかった。当然、普通に遊べる友達もいなかった。
(何より‥‥普通の少女として接してくれた‥‥優しくしてくれた)
チルドレンとしてのアスカしか見てくれなかった周りの大人達。
いつの間にか、アスカも自分自身を隠していた。
しかし加持は優しかった。とても優しかった。
面白い話もしてくれたし、悩みも聞いてくれた。
(加持さんに会えない時は‥‥とても寂しかったな)
毎日会いたかった。ずっと一緒にいたかった。
しかし、実際には無理な話だった。
アスカには訓練と実験。加持には、アスカの知らない仕事。
出会う機会は結構少なかった。
だから二人でいる時は、ずっと甘えっぱなしだったのだ。
(そういえば‥‥どれくらい加持さんと会ってないんだろう?)
長いこと会っていない。昔では考えられないことだ。
昔は少しの間でも会えないと、寂しくてどうしようもなかった。
(でも‥‥今は?‥‥何で?)
寂しくなかった。それより、前より安心している自分を見つける。
何故か?
答えはすぐに見つかる。すぐ身近に見つける。
(シンジ)
(そうか。アタシ‥‥ずっとシンジと一緒だもんね)
一緒の家に住んで、一緒の学校に行って。
シンジはアスカに優しかった。
不器用な所もあったが、彼なりに優しくしてくれるのが分かる。
加持と同じ優しさを見せてくれる。
加持とどこか似ているような優しさを見せてくれる。
しかし、加持とは全く違った優しさを見せてくれる。
(どこが‥‥そんなに違うのかな?)
グッッ
「え?‥‥シンジ?」
自分の考えに夢中になっていたアスカは、シンジの行動に気がつかなかった。
背中合わせに座っていたシンジが、そっと立ち上がって。
静かに振り向いて。
アスカを少しの間、見守っていたことを。
アスカは、後ろから優しく抱きしめられて、初めて気がついたのだ。
「シンジ?」
「‥‥もう‥‥我慢できないよ」
「‥‥」
「アスカ?アスカが加持さんのこと‥‥どう思っていても‥‥」
「‥‥」
「僕は‥‥アスカのことが好きだ。そして諦めないよ」
「シンジ」
「絶対に、離さない」
嬉しかった。
シンジが初めて自分の気持ちをはっきりと口にしたことが。
自分のことを好きだと言ったことが。
そして、ふと考える。
(そう‥‥なんだ)
(加持さんと‥‥シンジの優しさの違い‥‥)
(ここにあったのかな)
(加持さんは、アタシのこと‥‥どんな風に見てたのかな?)
考えれば、すぐに分かる気がした。
妹みたいな存在。少なくとも、自分を女性として見ていなかった。
(じゃあ、シンジは?)
自分のことを好きだと言ってくれる。
一人の男性として。一人の女性のことを。
(シンジの優しさの中には‥‥アタシヘの想いがあったんだ)
そのことに気がついて。
うれしかった。
アスカは、自分を抱きしめるシンジの腕をそっと外し。
ゆっくりと振り向いて、最高の微笑みをシンジに向けて、はっきりと言った。
「ありがとう」
そして。
この日、初めて二人は恋人のキスをしたのだった。
外は雨。でもその雨もすぐにやむだろう。
明日になれば晴れるかも知れない。
そしてまぶしい光が降り注ぐかもしれない。
新しい関係を歩き始めた二人に。
第三次引っ越しラッシュが【めぞんEVA】を席巻しています!
新規募集再開後、7人目・・・8人目だっけ?
と、とにかく(^^;
【めぞんEVA】通算82人目の御入居者、
おち・まおさん、ようこそ(^^)/
抑えきれない気持ちが言わせた一言。
一気に思いが駆けめぐって・・・
「絶対に、離さない」
「ありがとう」
可愛く、不器用で、
ちょっと大人になった二人が素敵でしたね(^^)
さあ、訪問者の皆さん。
引っ越しラッシュ、切りのいい10人目のおち・まおさんに感想メールを送りましょう!
↑さっき数えた(^^;
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