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「終焉の果てに」第九話 本当の気持ち

 

 

 

あたしとママが暮らし初めて、一ヶ月。

一ヶ月間、あたしはママから一時も離れなかった。まあ、トイレの時は仕方ないけどね。それ以外は、ずっとママ一緒にいたわ。

あたしにとって、この一ヶ月間は夢の様だった。ママがご飯を作ってくれる。ママと一緒にお風呂に入れる。ママと一緒に寝れる。

ほんと、夢みたい。あたしが長年見続けた夢、ママがあたしを見てくれる、あたしだけを見てくれる。

でも、あたしとママの生活に、時々邪魔者が入るの。ミサトのバカが、ご飯食べに来たりしてるのよ。シンジの奴がいないから、ミサトにご飯作ってくれる人がいないから、ママのご飯食べに来てるんだろうけど。まあ、それぐらいは許してやるわ。感謝しなさい、ミサト!

しっかし、シンジの奴は、なにしてんだろう。とっとと帰ってきてミサトの面倒見てやりなさいよね。

…………シンジの奴、どうして帰ってこないんだろう……なんだか寂しいな…………

 

 


 

「ふん♪ふん♪ふふん♪ふん♪………」

今日は、あたしが夕食を作ったんだ。

ママに教えてもらったポトフを作ったの。

ママにとってもお いしかったって言ってもらったし、ミサトもガツガツ食べてたわ。

何よりあたし自身、こんなにおいしくできるとは、思ってもみなかったわ。

だ・か・ら、あたしは今、とっても上機嫌♪ついつい鼻歌を歌ってしまう。

こんなに、おいしいんだったら、バカシンジにも食べさせてあげたいわね。シンジ、あたしのこと家事能力0女とか言ってバカにしてたのよね 、これだったら、あたしのことちっとは、いいえかなり見直すに決まってるわ。

シンジの料理もおいしかったけど、和食中心だったからねー、まあ和食もカロリーが低いし、シンジの料理もおいしかったから別にいいんだけどね。

あたしの料理はママの直伝だから、和食はあまり得意じゃないの。

だから、シンジが和食を作って、あたしが洋食を作れば、バランスがとれてちょうどいいのよね。

今度一緒に暮らすことになったら、あたしがご飯作ってあげるのにな。

あっ……………あたしったら、またシンジのこと考えてた………

最近、どうしてもシンジのこと考えてしまう……

シンジのこと嫌いだったはずなのに……

でも、シンジはいつも優しかったの……

あたしのこと、いつも気にかけてくれてた。

あたしのこと、ちゃんと見てくれた。

でもあたしは、シンジに当たってばっかりだった。

シンジを、バカにして、

シンジを、からかって、

シンジを、ぶって、

シンジを、傷つけて、

そんなシンジを見て、あたしは喜んでいた。

あたしのプライドを傷つけたシンジが傷つくとこを見て、喜んでた。

あたしのプライドを傷つけたシンジが憎かった。

あたしのプライドを傷つけたシンジが死んじゃえばいいなんて思ってた。

でも、シンジは優しかった。

こんなあたしに優しかった。

あの時、あたしを殺そうとしたのは、たぶんシンジの優しさ。

その後もシンジはずっとあたしの側にいてくれた。

シンジがいなかったら、今のあたしはいないかもしれない。

そんなシンジを、あたしはひたすら傷つけてたの。

ママと会って、シンジのことしばらく忘れてた。

シンジ、今何してるの?

今どこにいるの?

シンジに謝りたいな………

今だったら、素直に謝れると思う。

最初の頃に戻りたいな。

あの頃シンジとあたしは対等だった。

でも、それを壊したのはあたし。

あたしがすべて壊しちゃったの。

あたしどうしたらいいの?

シンジぃ…………

「アスカ、後かたづけ終わったの?」

あっ!いっけなーい。すっかり考え込んでた。

「ママ、ごめんね。もうちょっとで終わるから。」

「はいはい、がんばりなさい。」

「はーい。」

そうだ!寝るときにでもママに聞いてもらおうっと。たぶん、ママだったらあたしの気持ち分かるはずだよね。

さってっと、かたづけも終わったし、お風呂入れてこよっと。

「ママー、あたしお風呂入れてくるねー。」

今日は、あたしのために毎日がんばってるママに、親孝行するの。

さあ、お風呂洗ってと。

んー、お湯の温度もばっちり。

後は、ママの背中を流すだけ。

「ママー、お風呂入ったよー、一緒に入ろう。」

「じゃあ、入りましょうか。」

んー、我ながらいいお湯ね。

そういや、シンジもあたしのために毎日お風呂いれてくれたな……

あたしは、いつも文句ばっかし言ってた……

本当は、気持ちよかったの。でも、なんだかムカムカしていつも文句いってた。

あたしバカだったな………

……そうだ!ママの背中を洗ってあげるんだった。

「ママ、あたしが背中洗ってあげる。」

「あら、今日のアスカはどうしたの?」

「へへー、今日はママに親孝行するのよ。」

「じゃあ、お願いするわね。」

「任せてよ。」

ゴシゴシっと、う〜ん、さすがあたしのママよね。

この肌の綺麗さ、プロポーションの良さ、ミサトなんか逆立ちしたってかなわないわね。

あたしもママみたいに綺麗になるの。

でもそれは誰のためだろう?

………………シンジ………………

……違うはずだよね……

ああ、また考え込んでた。

さて、お湯をかけて、終わり!

「ママ、洗えたよ。」

「じゃあ今度は、ママが洗ってあげるわ。」

「今日はいいの!今日はママに親孝行する日なんだから!」

「あらそう?」

「だから、ママはお湯につかってて。」

「お言葉に甘えるわね。」

さて、自慢のの玉の肌を磨いて、これも自慢の髪を洗って、さてあたしもママと一緒に入ろうっと。

「ママ、一緒に入っていい?」

「いいわよ。いらっしゃい。」

ママ、大好き♪

あたしはお風呂から出て、ママにマッサージをしてあげたの。とっても気持ちよさそう。良かった。

あたしはいつものように、ママのベットで寝るの。実はママと暮らし初めて、あたしは自分のベットで寝たことがないの。

あたしって、こんなに甘えん坊だったんだ。

さて、ママにシンジのこと聞いてもらわなくっちゃ。

「ねえ、ママ。」

「なあに。」

「ちょっと、あたしの話聞いてくれる?」

「いいわよ。」

ママはいつでも優しい、こんなこと言って、ママに嫌われないかな?

ううん、ママはきっと嫌ったりしない。あたしのママだもの。

「ママ、あたしね。

 最近、ママとずっと一緒にいるのに、なんだか寂しいの。

 誤解しないでね。ママのこと嫌いになったわけじゃないの。

 シンジって言ってね。日本に来てからずっと一緒にに暮らしてた、男の子がいるの。とっても優しいの。

 優しすぎて、自分を傷つけてばっかりいる子なの。

 人に優しくしても、自己満足なんだとか言って、自分を傷つけるの。

 でね、シンジと退院してからずっと会ってないの。

 なんだか、シンジのことばかり考えてるの。

 あたしね、シンジにいっぱい酷いことしたの。

 シンジをいっぱい傷つけたの。

 あたしはそんなシンジを見て喜んでたの。

 つまんないプライドを守るために、いっぱい酷いことしてきた。

 でも、シンジは優しかったの。

 あたしを見てくれたの。

 あたしを助けてくれたの。

 命を助けてくれたときもあった。

 そんなシンジに酷いことばっかししてた。

 今はシンジに謝りたい。

 シンジにお礼を言いたい。

 でも、シンジいないの。

 たぶんこんなあたしに愛想を尽かしたんだと思う。

 シンジはきっと違う人を見てる………

 そんなの嫌なの。

 あたしはシンジにいっぱい酷いことしたから、嫌われてるかもしれない………

 あたしに優しかったのは、同情だったかもしれない………

 でも、シンジに会いたいの!

 ママ、あたしどうすればいいの………」

ママはちょっと悲しそうに微笑んでた。

「アスカちゃん。あなたシンジ君と一緒にいたい?」

あたしはシンジと一緒にいたい。そうだ、シンジと一緒にいたかった。

「うん。」

「シンジ君にずっと側にいて欲しい?」

「…うん。」

「シンジ君をずっと見ていたい?」

「……うん。」

「シンジ君にあなただけを見てもらいたい。」

「………うん。」

「そっか。」

えっどうしたのママ。

「アスカちゃんはね、シンジ君のこと好きなのよ。」

あたしがシンジのこと…………好き…………

えっ、えっ、どうして?

…………そう言われてみれば、シンジのこと好きなんだ……あたし…………

あたしは顔が赤くなるのを感じた。恥ずかしい。

「……あたしはシンジが好き……」

「きっとよ。」

そうだ、あたしはシンジが好きなんだ。

ずっと好きだったのかもしれない。

だからシンジとファーストが一緒にいたら、腹が立った。

あたしだけを見てくれなかったから。

あたしは、つまんないプライドを守るために、シンジを憎んだ。

自分の気持ちに嘘をついてた。

今だったら分かる。

ママがあたしを素直にしてくれたから。

あたしはシンジが好き。

バカシンジが大好きなの。

ありがとうママ。

「ママ、ありがとう。

 あたしようやく自分の気持ちに、気がついた。

 あたしはシンジが好き。

 そう、シンジが大好きなの。」

………でも、シンジはたぶんあたしのこと嫌ってる。

あんなに酷いことしたあたしを嫌ってる。

どうしよう…………

どうしよう…………

もう手遅れなのかな……

シンジ許してくれないのかな……

今頃自分の気持ちに気がつくなんて、あたしバカだ…………

「……ママ、あたしシンジにいっぱい酷いことしたの。

 たぶん嫌われてるの。

 ……どうしよう……」

「アスカちゃん、とりあえずシンジ君にあって謝りなさい。

 そして素直になるの。

 あなたが意地を張らないように、素直になりなさい。

 まずは、それからよ。」

「大丈夫かな……」

「大丈夫よ。こんなに可愛い、アスカちゃんだもの。」

「きっと、大丈夫よね。

 ありがとう、ママ。

 明日、ミサトの所に行って来る。

 シンジに謝ってくる。」

ママの顔が真剣になった。どうしたんだろう?

「アスカ、がんばりなさい。」

「うん!!」

「ママ、今日はありがとう。お休みなさい♪」

「はい、お休み。」

あたしは、久しぶりにすっきりした気持ちで眠った。

…明日、シンジに会えるんだ…

 

 

 

 

次の日。

あたしは朝御飯を食べてすぐにミサトの所に行った。

ミサトはあたしの話を聞くと、すごく真剣な顔をした。昨日のママといい、どうしたんだろう。

「アスカ、あなたシンジ君を本当に好きなのね。」

「……うん……そう気がついたの……」

顔が熱い。

「もし中途半端に好きなんって言ってるのなら、シンジ君に会うのはやめなさい。

 あなたが傷つくわよ。」

えっ、シンジに何かあったの。

「ううん、あたしはシンジが好き。世界中で一番好き。

 この気持ちは絶対だわ。」

「そう、分かったわ。ついてらっしゃい。」

ミサトは、あたしを病院に連れていった。あたしが入院してた所だ。

どうしよう、シンジ怪我をしたのかな。

大丈夫かな。

神様!どうかシンジが無事でいますように、お願いします!

ミサトは、あたしを脳神経外科の病棟のあたしが入院してた病室に連れていった。303号室。

まさか!シンジは、あたしと同じようになったんじゃあ………

足がふるえる。怖い。

ミサトがドアを開ける。

あたしは、その光景を見て愕然とした。

 

 

「………………な…………ん………………で………………」

 

 


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ver.-1.00 1997-10/24公開
ご意見・感想・誤字情報などは samon@nmt.ne.jp まで。

 

やっと、足の靱帯が直って仕事に復帰しました。

これからちょっと更新遅くなるかもしれません。(^^;

出来るだけがんばりますのでよろしく。

でわ、次回「第拾話 残酷な真実」で、お会いしましょう。

 


 佐門さんの『終焉の果てに』第九話、公開です。
 

 アスカちゃんが1人で考えに沈むと、
 必ずシンジの事が・・・
 

 お母さんと一緒にいることが、
 信頼できる話し相手がいることが、

 どれほど彼女の救いになっているか。

 守ってくれる、
 救ってくれる。
 

 母の愛に支えられる彼女ですから、
 シンジの姿を見た後も、きっと・・・・

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
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