本作品は、「終焉の果てに」第拾壱話からの分岐です。
先に、そちらを読むことを、おすすめします。
なお、全てが夢落ちだったという、安易な設定です(^^;;;
でわ、どうぞ。
遅ればせながら(^^;;
めぞんEVA 40万HIT記念連載
「始まりの果てに」序章 そして全てが始まった
今朝も碇家では、いつもの声が響きわたる。
「バッカシンジー!起きろーー!!」
アスカの元気な声で、碇家の一日は始まる。
シンジは、相も変わらず幸せそうに眠りこけていた。アスカの声にも起きる気配は全くない。夢の中にどっぷりとつかり込んでいた。
その幸せそうな寝顔を見て、アスカはちょっとだけ幸せな気分になる。
アスカの毎朝の楽しみ。
「もう、かっわいいんだから。」
アスカは、シンジのほっぺたを指でつつきながら、その寝顔を堪能していた。
少年のあどけなさと、女性っぽい線の細さを持ったシンジの寝顔は、確かに可愛かった。
ショタのケがある女性なら、いちころであろう。
シンジの寝顔を見つめていたアスカは、やがてキョロキョロと辺りを見回し始めた。
何をしたいかは、一目瞭然だ………
『……誰も見てないわよねえ……』
アスカは、シンジの部屋に仕掛けられた4台の高性能デジタルビデオカメラの存在には、気が付いていなかった。モニターの向こうに光る4つの瞳にも。
『……このぐらいいいわよね………だって…あたし達………』
昨日の一連の出来事が、アスカの煩悩を刺激する。
顔を真っ赤に染めあげて、桜色の可憐な唇を近づけていくアスカ。
「………んっ………」
優しい、触れあうだけのキス。
シンジは、唇に覚える暖かな感触で、夢の世界から引きずり戻された。
ぼんやりとした視界に写る、画面一杯のアスカの顔。頬を桜色に染め、切なそうに瞳を閉じているアスカ。
夢と現実の区別のつかない世界で、夢の様な風景が、現実を認識させなかった。
『………夢……かな?………』
シンジは、いつも見ている夢の中のように大胆になった。
両手をアスカの体に回し、抱きしめる。大切な、大切な人を抱きしめる。触れれば消えるような、現実を逃がさないように……
「きゃっ……………」
思いも寄らなかった突然の抱擁に、アスカは小さな悲鳴を上げる。
「…………あれ?」
シンジは、その腕の中にある確かな手応えに、夢の中ではないことを思い知らされる。
シンジの血の気の引く速さは、20世紀後半の娯楽映画にでてくる、青と赤の全身タイツ男より早かった。
正に神速。
ベットの上で飛び跳ね、そのまま1m程飛び退くシンジ。
「ア…ア…ア…スカ………」
今まで想像していた出来事を、現実に叩きつけられたシンジの脳味噌からは、昨日の出来事など、綺麗さっぱり抜け落ちてしまっていた。
一瞬、何が起こったのか分からなかったアスカは、キョトンとして不思議そうにシンジを見つめていたが、やがて…甘いひとときから、シンジの失礼な行動で現実に押し戻されたと分かった。
先程のシンジの速度を上回る速さで、アスカの怒りは頂点に達した。
「バカ!!!」
ダイレクトに脳にダメージを与える程の大音量がシンジを襲い、それに続くように過去最大級のビンタがシンジを木の葉のように宙に舞い上げる。
「フンッ…バカシンジのくせに!!」
アスカは、やはりアスカであった…………
「はああああ……情けない………」
ゲンドウと二人で、モニターを恋愛小説を見る、夢見る少女のような瞳で見つめていたユイの口から、盛大な溜息が漏れた。
「シンジ、見損なったぞ……」
不気味な赤い眼鏡を光らせながら、不肖の息子の不甲斐なさに嘆くゲンドウ。
昨日は、息子の恥ずかしいほどの告白シーンとキスシーンを堪能できて大満足の二人だったが、今朝は、あまりの間抜けさに満足と同じくらいの失意が訪れてしまった。
「………あなた……そろそろ、戻りましょう………」
「………うむ……………」
力無く、寝室のモニターの前から立ち去る二人。
後に残されたモニターには、白目をむいて、あっちの世界に行ってしまっているシンジが撮されていた……
朝、様々なものが活動し始めた住宅街の中、少年と少女の声が響きわたる。
もっぱら、その声は、少女が少年を責めているように聞こえていた。
「バカシンジが、さっさと起きないから、遅刻しちゃうじゃないの!どうすんのよ!!」
「だって、しょうがないだろ…気絶してたんだから……」
「しょうがないですってー!あたしは、絶対イヤだからね!」
「僕だって、イヤだよ………」
そんなやり取りを続けながら、全力疾走を続ける二人。
既に残された時間は、3分を切っていた。
最後の坂を駆け上がる。
「心臓破りの坂」と名付けられたこの坂は、数々の生徒を葬っている。しかし、長年の訓練を続けてきた二人には、かなうはずもなかった。
チャイムと同時に、校門をくぐる二人。
勝負はここからだった。
二人のクラス、2年A組の担任、葛城ミサトの車はまだ無い。
『間に合う!』
二人の脳裏に勝利の瞬間が雄叫びを上げる。
その時、爆音と供に、法定速度を遙かに上回った、蒼い彗星がグランドに飛び込んでくる。
そのままスピンターンで決め、ドアを蹴破るかの勢いで、飛び出した影。
少し先を行くいつもの二人を、追い抜くためトップギアを入れる。
「シンちゃん!アスカ!観念なさい!!」
「げ、ミサト!」
「ミ、ミサト先生!」
アスカとシンジは、朝の天敵のミサトを振り切るべく、全速で教室へと向かった。
一方、ミサトも久しぶりのチャンスに、胸躍らせながら二人を追う。
最近、この勝負は、ほとんど行われていなかった。
久しぶりにきたチャンスが、爆発するエンジンにニトロを注ぐ。
チェッカーフラッグを目前とした二人の耳に、ミサトの雄叫びがドップラー効果を残しながら過ぎ去っていった。
「う
おおおおおおおおおりゃああああああああああああ」あまりにも女らしくない雄叫びに、呆然とした二人は、自分たちの敗北を知った。
力無い足取りで、教室に入る二人。
そこに待ちかまえていたのは、満面の笑みを浮かべる鬼であった。
「シンちゃ〜ん、アスカ〜、二人とも遅刻ねん♪」
「「はい…………」」
「さて、約束の罰と行きましょうか!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「きゃああああああああああああああああああああああ!!」
ミサトが言う約束の罰に、盛り上がる2年A組の野次馬達。
その約束の恐ろしげな罰とは………
「デートの希望者は、手を上げてーーー」
ミサトの一声に、男共は、ほぼ全員。
女の子達は、約半数が名乗りを上げた。
2年A組の恐怖の罰とは、クラスの希望者一人とデートをすることだった。
むろん、この罰を制定したのは、野次馬根性丸出しの葛城ミサト教諭(29)であることは、いうまでもない。
ある日、クラスの提示版にでかでかと張られたミサト直筆の連絡。
《 遅刻多数の者に対して次の罰を制定する。
2年A組の中の希望者の一人と、一日デートをすること。
なお、該当する者は、以下の二名
碇 シンジ
惣流 アスカ ラングレー
上記の二名は、次回遅刻時にこの罰が執行される。
2年A組担任 葛城ミサト。 》
あまりに遅刻の多いアスカとシンジに、ミサトが考え出した苦肉の策だった。
これは、アスカに対して抜群の効果を生み、以後、二人は遅刻しないようになった。
しかし、それではあまり面白くないミサト。
なんとか自分が決めた罰を実行してやろうと、虎視眈々と二人を常に狙っていた。
そしてついに、今日、ミサトの悲願とも言える目的が達成された。
即ち、アスカとシンジの遅刻。
当初、二人が遅刻しないようにと考えた目的など、ミサトの頭からはすっかり抜け落ちていた。
念願の勝利に、会心の笑みを浮かべ、これから起こるであろう出来事に胸踊らせる女29才。
「シンちゃん、アスカ、観念しなさいよ。」
顔一杯の笑みを洩らすミサト。
今、この二人にはミサトの笑みは、悪魔の微笑にしか見えなかった。
その頃、デート希望者達は、血を血で争う泥沼の攻防戦を繰り広げていた。
「惣流とデートするのはこの僕だ!」
「お前なんかにつとまるか!俺がするんだ!!」
「いや、僕だ!!」
「俺だ!!」
「俺がするんだーー!!」
「碇君、私が慰めてあげるわ。」
「あなたなんかには、荷が重すぎるわよ!」
「私が、碇君とデートするの!」
がやがやがやがやがや………………………………
この近辺で、その美貌にならぶ者無し!とまで言われているアスカと、その優しい笑顔が意外と人気のシンジ。
しかも二人は、公式的には、いまだに恋人を決めていない。この事実が、火にガソリンを注ぎ続けていた。
二人の思いをよそに、争奪戦はエスカレートし始める。
「ねえ、シンジ。どうするのよ、これ………」
「どうするって、僕に言われても……」
二人は、クラスメート達の骨肉の争いを見て、呆然としていた。
『アスカは、美人だし分かるとしても、どうして僕なんだろう?……』
朴念仁のシンジ。
『シンジを狙ってる女は、こんなにいたのね。早めに手を打って置いて良かったわ。』
沈着冷静のアスカ。
そんな中、二人の親友が声を掛けてきた。
「シンジ、どうするんだ?」
「シンジ、どないするんや?。」
「アスカ、どうするの?」
無論、相田ケンスケ、鈴原トウジ、洞木ヒカリの三名である。
トウジは、二人にとって幼稚園の頃からの腐れ縁である。今時、男らしさにこだわり、硬派を気取っているが、結構情けない部分も多い、憎めない奴だった。体育会系クラブに、入ってもいないのに、なぜかいつも黒ジャージを着ている謎の少年。本人曰く「ジャージより、男らしい服は無いわ!」とのこと……誰もこの意見に賛同する者はいないが……
ケンスケは、中学校に入ってからのシンジの親友である。人見知りの激しいシンジとではなく、最初はトウジと良くつるんでいた。その内にシンジともうちとけ、今は親友と呼べる存在になっていた。彼の眼鏡の奥に潜む情熱は、写真という形で顕わされ、女子の写真を撮っては、売りさばいて荒稼ぎをしている。ミリタリーおたくで、映像オタクである。
ヒカリは、小学校からのアスカの親友である。幼い頃よりアスカには、友達と呼べる存在が少なかった。目を奪う美貌、抜群の運動神経、優秀な頭脳、天から二物も三物も与えれたアスカは、常にやっかみの多少となり、その激しい感情も伴って、友達はほとんど出来なかった。そんな中、小学校時よりクラス委員長を務めていたヒカリは、女子の中で孤立しているアスカに近づき、その純粋さと、一途さに惹かれていった、アスカもヒカリの毅然とした態度と、時にはお節介にもなる程の優しさに惹かれた。いつしか、二人は親友となっていた。
三人とも、同じ質問をアスカとシンジにぶつける。
「「どうするって、言われても………」」
途方に暮れる、アスカとシンジ。
そんな二人をよそに、所詮他人事のトウジとケンスケは、呑気に好き放題のたまわっていた。
「そや、ケンスケは、参加せんのかいな?」
「俺は、まだ死にたくないからね。」
「?」
「惣流とデートしたら、シンジになにされるか………」
「そりゃそうや、せんせに殺されてまうわ。」
「だろ。」
「「なんだ(なに)よ!!それ!!」」
トウジとケンスケの冗談?を聞いていたアスカとシンジは、昨日のこともあって、思わず大きな声になってしまった。
渦中の人の鶴の一声で、静まり返る2年A組。
全ての視線は、アスカとシンジの二人に注がれる。
時が止まり、先程とはうって変わって静寂が走る空間の中、一人の少年の声が響きわたる。
「ところで、惣流さん。
昨日はどうしたんだい?
君の顔を見れなかった昨日は、憂鬱だったよ。」
渚カヲルであった。
その行動、言動、供に普通の野郎がやろうものなら、鉄拳制裁を加えた後に、道頓堀に沈めたくなるようなものだが、なぜか彼の場合、その神秘的な容姿に妙にマッチして、嫌みがあまり無かった。
「うるさいわね!アンタなんか憂鬱にでもなってればいいのよ!」
「つれない言葉だね。
僕は、こんなにも君を慕っているというのに。」
「アンタに慕われても、嬉しくないのよ!
むしろ迷惑よ!」
「フ……この僕のどこが気に入らないと言うんだい。」
「そーゆうーとこよ!!」
二人の喧騒の中、クラスには再び一大合戦がまき起こりはじめた。
「みんな、静かにしなさい!」
そんな時、あの葛城ミサトが遅ればせながら場を静めにかかった。
生きている内は……いや、サードインパクトが起ころうとも聞けないミサトの台詞を聞いて、2−Aの教室に天変地異の前触れのような静寂さが走る。
「よろしい。」
自分が初めて騒ぎを静めたことに、ミサトは満足げに頷きながら、アスカとシンジに処刑宣告を出す。
「デートの相手は、私が決めます。
まず、アスカのお相手は、渚君。
次に、シンちゃんのお相手は、レイ。
渚君とレイにも、チャンスをあげないとね。
これにて、騒ぎは終了。」
ミサトは、騒ぎの原因を作ったことは自分だということは、世界の彼方に飛ばし去り、まともな教師らしい事をした自分への感慨に酔いながら教室を後にした。
「惣流さん、週末はよろしく。僕が選りすぐりのデートコースを選んでおくよ。」
「シンちゃん、デート楽しもうね。」
満面に笑顔をたたえた二人をよそに、木枯らしの吹き荒れるアスカとシンジだった………
ども、佐門です。
お久しぶりです。
予告のとおり、「終焉の果てに」の分岐物、やっとお届けできます。
書いていて、俺にはつくづく文才がないと、思い知りました。コメディは難しいよー(^^;;;
こっちは、更新にかなり時間を要すと思いますので、お見捨て無きようお願いします。
本編の方は、もう少しお待ちください。プロットがなかなかまとまらないんです(;;)
でわ!
佐門さんの新連載『始まりの果てに』序章、公開です。
ゆ、夢でないですよね?!
ここから目が覚めたりしませんよね?!
辛い現実になったりしませんよね?!
だ、だいじょうぶ・・・
わーい(^^)/
明るい世界だ〜〜
LAS人であり、アスカ人である私。
癒やされる〜
『終焉の果てに』で世界にひたり、
『始まりの果てに』でハートケア。
ひとつのお部屋で完璧(^^)
恋人同士のアスカとシンジが
とってもらぶりぃ〜 (© まっこう@807)
ゲンドウの差し金、カヲルとレイの活躍もとっても楽しみですね(^^)
さあ、訪問者の皆さん。
新パターン佐門さんに感想メールを送りましょう!