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真創世記エヴァンゲリオン  

 

第参話  

 

「日常と現実」


 
 
 

葛城ミサトがネルフ本部に転属になって以来、生活しているコンフォート17マンションの
11−A−2号室に二人目の住人がやって来て、もう十日ほどになる。
彼らが、自分達の新しい日常になれ始めたその日も、ごく普通に朝を迎えていた・・・・・・
 
 

「じゃ、行ってきまーす。」

「いってらっさーい。あ、今日もテストあるから忘れないでねェ。」

「はーい。」

扉が開いて、閉じる音を確認したミサトは、電話を掛ける。

「今、家を出たわ。後はよろしく。・・・・・・くれぐれも注意してね。大人の勝手な理屈にこれ以上彼を
 巻き込む訳には行かないわ。絶対にね。」

『了解しました。』

保安部の男の簡潔な返答の後、すぐに切れる電話。ミサトは、祈るような気持ちになる。
 

・・・・・・そうよ。シンジ君みたいな優しい子が、不幸になるなんてことは
あってはならないわ。それこそ、絶対に・・・・・・
 

 

シンジは、転入してまだ一週間しか経っていない市立第壱中学校への道を、てくてくと歩いている。
まだ時間に余裕があるのか、足取りはかなりゆっくりだ。日中は、厳しくなる日差しも今はまだ
たいした事はなく、抜けるように蒼い空と涼やかな風が、心と体に心地よい。
しかし彼は、そんな風景には少々不釣り合いな独り言を、ブツブツとつぶやいている。

「・・・まったく、ミサトさん、もうちょっとどうにかならないかなァ・・・なんで、男の僕が家事を
 全部やらなきゃならないんだろ・・・・・・」
 

そうなのだ。葛城ミサト言う人間は、まぁ、間違いなく軍事面に置ける卓越した才能を持ってはいる。
でなければ、29歳の若さでネルフの作戦部長になる事などできるはずが無い。しかし、それらを得る為に
それ以外の総てを、どっかにうっちゃって来てしまった様な所が彼女には確かにあった。
・・・・・・『ズボラで、がさつ。おまけにおっちょこちょいの三重苦。』とは、ミサトとは大学以来の親友である、
現ネルフ技術部長、赤木リツコ博士の言である。・・・・・・

殊に、家事全般に関しては完全な無能力者と言って良く、初めて彼女の住む部屋を見たシンジは、これから
自分も此所に住む事に為ると言う現実に、しばし呆然としてしまったほどである。

「・・・・・・ホンっとに、困っちゃうよなぁ・・・・・・」

随分と長くぼやき続けた挙げ句に、何故か急にそれらがおかしくなってしまい、クスクスと笑い出す
シンジ。叔父の家にやっかいになっていた頃の、すべてに遠慮していた生活などと比べることなど
出来ないくらいに、彼にとって此所での新しい生活は楽しみに満ち溢れたものなのだったのだ。

そしてシンジは、今までにあった幾つかの出来事を思い起こしながら、学校への道を歩いて行く。
まるで小さな子供が、自分だけの大切な宝物を手に取って浮べる様な、そんな風に微笑みながら・・・・・・
 
 

「えーーっ!! シンジ君、一人暮らしなんですか!?」

「ええ、その様に申請が出されています。」

ミサトとネルフ総務部の男の会話を、諦めにも少し似た寂しげな表情で聞くシンジ。無意識に右手を
きつく握り締めている。

・・・・・・やっぱり、僕は父さんに捨てられたんだ・・・・・・



・・・・・・少しでも期待していた、僕が馬鹿だったんだ・・・・・・
 

シンジが第参新東京市にやって来た日。そして、彼が初めて使徒と戦った、その日の夕方。シンジとミサトの
二人は、ジオフロント内にあるネルフ中央総合病院のロビーに居た。病室でのレイの「爆弾発言」の直撃を
受けたシンジとその煽りを食らったミサトの二人は、5分ほどで何とか立ち直り、もう体に何の異常も無くなった
シンジの 退院手続きをする為にロビーまで降りてきたのである。(なお、ここに辿り着くまで、「爆弾発言」を
ネタに ミサトがシンジを玩具にして遊び倒したの言うまでも無い・・・・・・)
そこで今後のシンジの処遇について説明しにきた総務部の男と出くわした訳である。

 

「・・・・・・分かり、ました。」

「ちょっと、シンジ君っ!あなたそれでいいの!?」

「ええ、構いません。」

そう答えるシンジの顔を、じっと睨み付ける様に見詰めるミサト。そのまま二三秒考え込むと、急に何か いい事
を思い付いたかの様に何度か肯き、おもむろに総務部の男に話し掛けた。

「シンジ君は私の家で預かります。その様に変更して下さい。」

「それは、しかし・・・・・・」

「上の方には、私から話を通しておきます。それなら問題無いでしょう?」

「は、はぁ・・・わかりました。それでは碇特務三尉の荷物は、葛城一尉の御自宅に配送させますので。」

「了解しました。」

「それでは、失礼いたします。」

総務部の男が立ち去った後、それまで呆然として口を挟めないでいたシンジは堰を切った様にミサトに質問を
投げかける。

「ミサトさん!どお言う事なんですか?!いきなり一緒に住むだなんて?」

「だってシンジ君、なんかとっても寂しそうだったから。」

「・・・そんな事、有りませんよ。」

「無理しなくても、いいのよ。今、お父さんの事、考えてたんでしょ?」

「それは・・・・・・」

「そんな寂しそうな顔してたら、なに言ったって説得力ないわよ。」

「・・・・・・でも、いいんですか?」

「うん、いいのよ。それにね。私も少し、わかるから。」

「えっ?」

「私もね。父が苦手だったから。」

そう話すミサトの表情と過去形で語られた言葉に、シンジは自分が抱えているモノと同じ痛みを感じた。
そして、続けて語られた言葉が、シンジの心に染み渡っていく。

「それともう一つ。一人って、寂しいのよね・・・・・・一人の部屋って、嫌いなのよ。だから・・・・・・良かったら
 家に、来ない?」

「・・・・・・ありがとう、ございますっ。」
 

頭を下げたまま肩を震わせるシンジを、優しく護る様に抱き寄せるミサト。暫くして落ち着いたシンジは、
気恥ずかしげにそっと離れる。そして照れ隠しなのか、先ほどとは別の意味で口早に質問を投げかける。

「あの、『碇特務三尉』ってどう言う意味なんですか?」

「え、どう言うって・・・・・・言葉どうりの意味だけど。」

「だから・・・いつ僕が『特務三尉』なんてモノになったのかって意味なんですけど・・・・・・」

「あ〜〜っ、そう言う質問か。」

ここでミサトは少し表情を改めると、ゆっくりと話し出す。

「・・・・・・シンジ君、エヴァってね、機密情報の塊みたいなモノなのよ。まぁ、分かるわよね?」

「ええ、何と無くは・・・・・・あんな巨大ロボットが実在しているなんて、まだちょっと信じられないくらい
 ですから・・・・・・」

「つまり、そんな代物に部外者を乗せる訳には行かないのよ。だから、シンジ君が初号機に乗るって言った
 時に自動的に尉官待遇でネルフに所属って事になった訳。分かった?」

「なるほど。」

ここでミサトは急に悪戯っぽい笑みを浮べるとこんな事を言い出した。

「だからね、シンジ君。これからはお小遣いに困る事、無くなるわよ。なにしろネルフからお給料が
 出るんだからぁ。今日の戦闘の危険手当だってって・・・・・・あ〜〜〜っ!!それじゃあシンジ君の分の
 扶養者手当、私の給料に付かないじゃな〜い!私、当てにしてたのにぃ・・・・・・」

自分の科白に自爆して、いじけ出すミサト。そんな彼女にシンジは、思いっきり白い目を向けながら、
更に問い詰めて見る。

「もしかして、最初からそれが狙いだったんじゃあ無いでしょうね、ミサトさん?」

「ひどいわぁ・・・シンジ君、私の事そんな風に見てたのねぇ・・・・・・お姉さん、悲しいわぁ・・・・・・」
 

いきなりしくしくと泣きまねまでしだすミサトに、シンジは思わず笑い出す。それに釣られてミサトも
笑い出す。
そして二人は、今日から始まる、新しい生活の舞台になる家に向かって歩き出した・・・・・・
 

・・・・・・あの時は、嬉しかったなぁ。自分の中に在る痛みが、
すぅっと軽くなった気がした。
多分、ミサトさんも「痛み」を「知ってる」人なんだろうなぁ。
あの時初めて、僕は一人じゃ無いんだって
思う事が出来たんだ。

でも、

あの、部屋の汚さだけはどうにかして
ほしかったよなぁ・・・・・・
 
 

「あら、ホントに美味しい。なかなかやるわね、シンジ君。」

「そうでしょ、そうでしょ。リツコもそうおもうでしょ?!」

「私は別にミサトを誉めた訳じゃ無いのよ。そこの所を勘違いしないでね・・・・・・ねぇ、シンジ君?」

自分の作った料理を美味しそう食べてくれている二人の美女に、嬉しくてしかたが無いと言った表情の
シンジ。その所為か、リツコのいやみのダシにされたと言うのに、満面の笑みを返したりしている。
そんなシンジにすっかり毒気を抜かれたリツコは、微かに苦笑を見せつつミサトの方を振り向いた。
するとミサトまでシンジが移ったかの様に、にっこりと微笑んで二三度肯いて見せる。
ここしばらく感じていなかった暖かな空気にリツコは、自分でも気付かない内にゆったりとした微笑みを
浮べていた・・・・・・
 

シンジとミサトが同居を始めて三日目の夜。リツコはシンジの手料理を食べに、二人のマンションに
やって来ていた。事の起こりはその前日に遡る。
ミサトの桁外れたズボラさと凄まじく酷い料理の腕を知っているリツコは、一緒に暮らし出した
シンジの身を案じて、ミサトにどうなっているか聞いてみたのだ。するとミサトは笑いながら
こう言って見せたのだ。

「シンちゃんって凄いのよ〜〜!掃除、洗濯はもとより、お料理までパーぺキ。私、おどろいちゃった。」

「へぇ〜〜、シンジ君、意外な特技があったのねぇ・・・って、ミサト?・・・じゃあ家事全部シンジ君に
 任せてる訳?」

「ええ、そうよ。」

「『ええ、そうよ。』って、よくもまぁ、さらっと言えるわねぇ?!・・・・・・そんなんで女として恥ずかしく
 ないの?!」

「だってぇ・・・・・・どうせ食べるなら美味しい方がいいじゃない?・・・そうだっ、明日でも家に食べに
 来なさいよ。やみつきになる事、請け合いよ。」

そう言うとミサトは、これ以上ない全開の笑顔をみせた。リツコは、ミサトにこれほどの表情をさせた
シンジの手料理に堪えようの無い欲望を感じ始める。結局の所、今までのミサトと同じ様に一人暮らし
が長いリツコも、「あったかくて、美味しい御飯」と言うモノに飢えていたのである。(しかも、ミサト
との口喧嘩で優位に立つ為に必死になって隠してはいるが、リツコの料理の腕も『かなり』酷いモノで
なのである。だから尚更シンジの手料理は魅力的だったのだ・・・・・・)
かくして、シェフであるシンジの意向は完全に無視されたまま、急遽ディナーパーティーが執り行われる
事になったのである。
 

「しかし・・・ミサトの家がこんなに奇麗なの初めて見たわ。シンジ君、尊敬しちゃうわ。一体どこでこれだけ
 のモノを憶えたの?」

「叔父の家では日課でしたから・・・・・・」

そう言うシンジの顔は少し冴えない。これまでの生活があまりいい物で無かった事をミサトから聞いて居た
リツコは自分の迂闊さを内心呪いながらも、あくまでも明るく次の質問を口に乗せた。

「でも、毎日全部一人でやるのって大変なんじゃない?これからは学校だってあるんだし・・・」

するとシンジは見ているこっちまでもが嬉しくなるような笑顔になると、こう言葉を続けた。

「だいじょぶです。慣れてますし・・・・・・それに『美味しい』って言ってもらえると嬉しいですから。一人じゃ
 無いって思うと料理も楽しくなるし・・・・・・」

「そう・・・」

リツコはそんな一言しか言えなかった。ミサトに至っては感極まって目尻に涙まで浮べている。シンジの言葉に
二人は、今の決して良いとは言えない状況の中でも「希望」とか「幸せ」と呼べるモノは幾らでも見つけることが
できるんだな、と感じる事が出来て心の底から嬉しくなったのだった・・・・・・しかしっ!

「それに・・・あっ!」

更に何か言おうとしたシンジだったが、どうも「口を滑らせた」と言ったたぐいの物だったらしく、気まずげに
あらぬ方向を見ながら、かなり白々しい笑みを見せたりしている。
ミサトとの付き合いの長いリツコは、会話の流れからシンジが何を言い渋っているか何となく想像がついた。
そこで、ここは一つカマをかけて見ようと、先程とは打って変わったどこか邪悪な微笑みと共に、こんな事を
つぶやいて見せたのだ。

「まぁ、ミサトの手料理を食べ続けるなんて、そんな危険なマネしてたら大変な事になっちゃうもんねぇ・・・」

「ええ、ホントに・・・・・・って、あっ!リツコさんっ!!」

「・・・やっぱりねぇ。シンジ君、ミサトの手料理、食べたのね?」

「・・・はい。でも、どうして分かったんですか?」

「私も、今までに三回ほど食べた事がある有るからよ。「アレ」は人間の食べるモノじゃ無いからねぇ・・・」

「ちょっと、ちょっとぉ!!本人目の前にして陰口叩かなくてもいいんじゃない!!温厚な私もしまいにゃ
 怒るわよっ!!」

「一体誰が温厚なのよ・・・短気とムラっ気の代名詞みたいな性格してる癖に・・・・・・それはともかく、忘れたの?
 あんたの料理食べて病院に担ぎ込まれた人がいた事を!」

「あれは・・・その・・・チョッチ間違えて腐ってた野菜使っちゃっただけじゃない・・・・・・」

「それのどこが「チョッチ」なのよ?!・・・いい、シンジ君?これから先、たとえどんな事があってもミサトに
 料理を作らせちゃダメよ!自分の身が可愛いのなら絶対にね。」

シンジは、リツコによって明かされた余りにもムチャクチャな事実に目を白黒させていたが、ミサトを詰問
しているはすのリツコの目が笑っているのに気付き、なんだか無性に可笑しくなってしまう。
次の瞬間シンジは、お腹をかかえて大笑いし始めた。そんなシンジを見てミサトとリツコの二人も顔を
見合わせて、一瞬苦笑を覗かせるとこちらも思いっきり笑い出す。
それはシンジにとって、とても気持ちの良い笑いだった。何時までもこんな時間が続けば良いと思える
くらいに。

その夜、ミサトの部屋から笑い声が絶える事は無かったようだ・・・・・・(ようだ、とはその後にミサトが、
アルコール分の含まれた飲料水を大量に振る舞い出したせいで三人揃って記憶をすっ飛ばしてしまった
からだ。特にシンジは、生まれて初めての二日酔いで頭痛と吐き気が止まらないまま、転校初日の学校に
ヨロヨロと登校する事になったのは、また別の話・・・・・・)

 
 

・・・・・・週末を挟んだとは言え、転校してきてから一週間にもなると流石のシンジも教室の空気に馴染んでいた。
何人かの級友と他愛も無い世間話に興じたり、同じクラスになったレイの姿を何とは無しに眺めたり(その後
決まって回りの人間からその事をからかわれているが、止める気はまったく無いようだ・・・)、とごく普通の
中学生の生活を満喫していた。

ただ、そんなシンジの振る舞いは、ここ、つまり第参新東京市に来る前までの彼の日常的なモノとは随分と
様変わりしていた。元々、シンジの性格は内向的と言う名前で分類されるべきモノだったのである。新しい
環境の中に簡単に溶け込める様な精神構造では無かったのだ。だが、幾つかの心理的なファクターが、少なく
とも表面上には大きな変化をシンジに与えていた。
まず一つ目は、ミサトに自分の為し得た事を認められた事が、彼の心の中に一つの「力」を生み出した事。
そして後もう一つは、『エヴァのパイロットで在る事』が彼の内面で、自信に成長した事だろう。初めて
使徒を倒した次の日から、シンジは連日エヴァとのシンクロテストと戦闘訓練に明け暮れていた。それらを
こなして行く事がある種の達成感に繋がり、それが彼の心の中の「力」をしっかりと補強していったのだ。
(もっとも、エヴァでのテストには当然ながら同じパイロットであるレイも参加しており、その事が彼を
必要以上に奮い立たせた事は言うまでも無く、間違いなくこれも原因の一つであろう・・・)

そんなこんなで、転校してから七日目のその日も、ごく普通に授業を消化していき、ごく普通に昼休みの
時間になった。
数人のクラスメートと昼食の弁当を食べ終わったシンジは、今まで一度も見かけた事の無い少年が教室に
入って来るのを見つけた。すると、一つ前の席に座っている少年、相田ケンスケが、その黒いジャージの
上下を着た少年に話し掛けた。

「よう、トウジ。どうしたんだ?一週間も休んで・・・・・・結構心配してたんだぜ?お前ん家に電話かけても
 誰もでないしさ。」

「おお、すまんかったな、ケンスケ。ちょっとたてこんどってなぁ・・・・・・ワシも昨日まで病院に泊りこんどった
 から・・・・・・色々あって連絡すんの忘れとったわ。すまんな。」

「病院って、どういう事なんだ?なんか、あったのか?」

「妹のハルカが、怪我しよってな。ワシがずっと付きそっとったんや。親父の仕事が急に忙しゅうなってな。
 ワシしか居らんかったんや。」

「怪我って・・・なんで・・・・・・」

「ほら、この間の避難騒ぎの時にな。シェルターの天井が崩れてきよってな。ハルカのやつ、下敷きになって
 しもうたんや。」

目の前で交わされる二人の会話をそれと無く聞いていたシンジは、トウジと言う少年が語った科白にそれこそ
目の前が真っ暗になった様な気がした。
 

・・・・・・僕の、所為だ・・・・・・



・・・・・・僕がもっと上手くやっていれば・・・・・・



・・・・・・気が付きもしなかった・・・・・・



・・・・・・そんな怪我をしている人がいるなんて・・・・・・



・・・・・・ちょっと誉められただけで有頂天になって・・・・・・



・・・・・・もう何度も壊れたビルとか見てたのに・・・・・・



・・・・・・気付きもしなかった・・・・・・



・・・・・・僕は、馬鹿だ・・・・・・
 


話し込んでいた二人の少年は、すぐ後ろで急に大きな音がしたのでびっくりして振り返る。するとそこには、
青ざめた顔をしたシンジが、あまり焦点の定まって無い視線をこちらに向けて立っていた。

「どうしたんだ、碇?急に立ち上がったりして?」

「見た事無い顔ちゅうことは、おお、そうか、来る事になっとった転校生ちゅうんはお前かぁ・・・・・・ワシは
 鈴原トウジや。よろしゅうな。」

「・・・・・・ごめん・・・・・・」

「いきなり何やぁ?変なやっちゃのう。」

「・・・・・・許して貰えるとは思わないけど・・・・・・」

「けど、何やっ!ワシは、そういうはっきりせんのが大嫌いなんや!何やいいたい事があるんならとっとと
 言ってしまわんかいっ!!」
 


「・・・・・・君の妹に、怪我をさせたのは、僕なんだ・・・・・・」
 

 

第参話「日常と現実」

 
 
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ver.-1.00 1997-12/05 公開
ご意見・ご感想・誤字情報などは minato@cb.mbn.or.jpまで。

(後書き)
  ど〜も、またもや長らくお待たせしました。(感想のメールを頂けたんでチョッチ強気な)Minatoです。
  やっと、なんとか真創世記の第参話を完成させる事ができました。あ〜〜、つかれた。
  何が疲れたって全然話が進まないですよ。困った事に。どうして進まないんだか分からなくて四苦八苦
  したあげくに、いやになって最初っから書き直そうかと考え出した矢先、その理由に気が付いたんですよ。
  しかし、それがまぁ、情けない理由でした。レイが出てこないから欲求不満が溜まってた所為だったん
  です・・・・・・(苦笑)。話の構成上、仕方が無い事なのでどうしようも無いんですが、これには困りました。
  これから先、こう言う事はかなりの回数起きる事が決まっているのに・・・・・・今から頭が痛いです。
  まぁ、第弐話の後書きで「この話はLRSです。」なんて言って置きながらヒロインであるレイがまるで
  出てこないと言うのはマズいかな〜とは思ったんですが、この話は外せないんですよ。ミサトさんや
  リツコさん外す訳にはいきませんからね。
  とにかく、次の第四話にはレイはちゃんと出ます。私が出るなと言っても出てくるでしょう。彼女自身、
  愛しのシンジ君とのからみが無くて欲求不満が溜まっているでしょうから。
  と言う訳で、私は直ぐに第四話に取り掛かります。何しろ、また、話が続いてしまったので出来るだけ
  早く書き上げたいと思っております。それでは、第四話でまたお会いしましょう。
 


 Minatoさんの『真創世記エヴァンゲリオン』第参話、公開です。
 

 TVでは
  入り組んで、
  裏があり、
  闇があり、
 よく見えない、本人さえも、本人だからこそ分からない
 心の内だったのですが、

 ここでは実に真っ直ぐそのまま動いていますよね。
 

 トウジの妹絡みのエピソードに入りました。

 シンジとトウジの関わりの段階は元と違いますが、
 終わりの部分はどの様な物になるのでしょうか。
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 感想メールに喜ぶMinatoさんをさらに喜ばせましょう!


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