「なるほどね・・・・・・。力ずくで、僕を止めるか・・・・・。」 僕の目の前の、銀髪の少年が、静かに言った。 遠くに、夜景が輝く。 他に、人影は無い。 ここに居るのは、僕と、彼のみ。 「随分と、思い切った事を言ってくれるものだね・・・・・。碇シンジ君?」 「・・・・・・。」 「しかし・・・・・。」 彼は・・・・・渚カヲルは、微妙にその目を細めた。 「碇、シンジ・・・・・か・・・・・・。 そんな名前の魔術師など、今迄一度として聞いた事は無かったな・・・。 殊に君の様な、化け物としか言い様の無い人を、知らなかったとはね。」 「・・・・まあ、そうでしょうね。 実際、僕自身自分が魔法使いである事を知ったのはつい最近の話 ですからね・・・。」 「ん・・・?待てよ・・・・?」 「なんですか・・・・・・・・?」 「碇、シンジ・・・・?碇・・・・・・?」 僕は苦笑した。 やっぱり、分かるよな。 「多分・・・あなたの、上司だと、思いますよ。 直属の、かどうかは分かりませんがね。」 「やはり、そうか。碇ゲンドウ氏には、息子がいたね・・・・。 十年程前に、捨てた。確かその名前が・・・・碇、シンジ。」 胸に込み上げるものを感じたが、無理にそれを押え込む。 「・・・人の心の傷を抉る様な事を、平気で言ってくれますね。」 「悪かったね。しかし、その彼は、魔法使いではなかった筈だ。」 「そうです。その筈です。 しかし現に、僕はこうして魔法使いとして、ここにいます。」 「・・・・・・・・・・・。」 沈黙が、落ちた。 渚カヲルの、その無表情からは、彼が何を考えているのかは、全く 読み取る事が出来なかった。 やがて。 「まあ・・・・・いいだろう。 君については、後でゆっくりと調べさせてもらうよ。 取り合えず今は、キッドを捕まえて、惣流君を保護しなければならない。」 「行かせない、と言った筈ですよ。」 「何故、僕に逆らう?」 「クラスメートを殺す、と言っている人に、はいどうぞと言えますかね?」 「・・・なら、順番を変えるだけだね。 先に君について、ゆっくりと”調べて”から、あちらへ向かうとしようか。」 渚カヲルは、ゆっくりと、その手を一閃させた。 「・・・・・・・・・。」 僕は、僅かに首を傾けた。 スパッ。 僕の頬が、皮一枚切られた。 肌に生じた線からは、やがて赤い液体がつつ、と流れ出した。 ねばついた、気色の良いとは言えない感触が頬に生じる。 本来ならば一瞬にして再生してしまう筈の傷は、いつまでたっても 塞がらず、僕の右頬は真紅に染まった。
僕のために、泣いてくれますか(第拾伍話)
洞木ヒカリ・その4
アスカの眼前に、凄まじい光景が広がっていた。 瓦礫の山。 闇夜の中でも、アスカの目は周囲の状況を克明に捉えていた。 見渡す限りの、廃虚。 静かだった。 音というものが存在しない、全くの死の世界。 圧倒されつつも、アスカは心を静めた。 「ここが・・・・・・旧東京、ね・・・・・・。 無断で、こんな所へ侵入した事がばれたら、とんでも無い事になりそうね。 魔術師資格も、剥奪されるかもね・・・。」 そう。 ここは、旧東京であった。 彼女の親友、洞木ヒカリの身体を乗っ取った悪魔、”キッド”は、 第三新東京市から一気にこちらへ転移したのだ。 それを知ったアスカに、放って置ける筈も無い。 ”監査員”渚カヲルを振り切って、彼女もまたここへ来ていた。 カヲルは、アスカとは比べ物にならないほどの実力の持ち主である。 すぐにでも彼もこちらへやって来るだろう。 時間はあまり無い。 ! 周囲を眺めていたアスカが、不意に、動いた。 その身体がのけぞったかと思うと、両足は地を離れる。 代わりに両手が地面につけられ、そのまま後方宙返り。 ゴオン! 一瞬前まで彼女が立っていた地面から、地を裂いて巨大な”手”が現れた。 ・・・そう、まさしく、巨大、としか言い様の無い、”手”。 その色は赤銅色であり、鋭い鉤爪が輝く。 その大きさは悠に二メートルを超えていたろうか。 とん。 宙返りを終え、アスカは華麗に着地を決める。 開かれた状態で出現した”手”は、次の瞬間、ぎゅっと握り締められた。 一瞬遅ければ、アスカの細い身体はその手に完全に捕まっていた事だろう。 そして、握り潰されていたに違いない。 何も無い空間のみを握り締めた”手”は、残念そうに再び地の中へ 潜って行った。 その後の地面は、何事も無かった様に、奇麗なままだった。 「・・・・・悪魔の、一種ね。 旧東京に、悪魔が大量に生存している、という噂は聞いていたけれど、 まさか本当だったとは・・・・・。」 一見落ち着いた様子ではあったが、その実彼女の顔には、凄まじい量の 汗が流れていた。 如何に彼女が勝ち気な性格であろうと、天才的な魔術師であろうと、 彼女は普通の少女なのだ。 この状況に、命を失いかねなかった状況に、恐怖を抱かない訳が無い。 ぱちぱちぱち。 額の汗を拭う彼女の耳に、唐突に拍手の音が届いた。 気が付けば、彼女の前方十メートルほどの所に、人影があった。 人影が、口を開いた。 「いやあ、凄いなあ。 最近の魔術師は、ちっとも喧嘩のやり方を知らないからつまらないと 思っていたんだけど、君は相当なもんだね。」 それは、洞木ヒカリであった。 そして、同時に悪魔”キッド”でもあった。 「あたしは天才だからね。 天才は当然自分の身ぐらい守れなきゃ駄目なのよ。」 「いや、ご立派ご立派。 で、こんな所まで僕を追いかけて、どうしようって言うの?」 「決まってんでしょ。ヒカリからあんたを引き剥がすのよ。」 アスカは、拳を握り締めた。 長い髪が、風も無いのに揺らめいた。 キッドは、にやにやしながらそれを見つめる。 「出来るかな・・・・・・?君に?」 「!」 気が付けば、僕の眼前に渚カヲルの身体があった。 疾い! 瞬きする間に、彼は転移の術も使わずに十メートルの距離を詰めていた。 渚カヲルの右手が、ある形を作った。 その意味する所を一瞬で理解し、僕は必死に頭を振った。 キュン! 数瞬前まで僕の頭が、そして両目があった空間を、右手が走り抜けた。 人差し指と中指のみが伸ばされた、チョキの形をした右手が。 ぞくり。 遅れて、僕の背筋が凍った。 本気だ。 躱さなければ、間違いなく両目を抉られていた。 魔術による攻撃を仕掛けられると踏んでいた僕は、完全に虚を 突かれていた。 反射神経を一時的に高めていなければ、危なかったろう。 そして、相手の攻撃はまだ終わってはいなかった。 がしっ! 走り抜けた右手が反転し、僕の髪を掴んだ。 そのままぐい、っと凄まじい力で僕の頭部が下へ引き下げられる。 そこには、彼の膝が待ち受けていた。 ガッ・・・・・・! 嫌な音。 僕の鼻を潰す筈だった膝は、途中で僕の手に防がれていた。 「・・・・・・・・・・・・!」 「・・・・・・・・・・・・。」 とんっ。 二人共、後方に跳躍し、再び間合いを取った。 ・・・・・はあ、・・・・・・・・はあ・・・・・・・・。 今の一瞬の攻防で、僕はかなりの疲労を感じていた。 「なかなか、やるもんだねえ、シンジ君。 魔力だけじゃなく、実戦経験もあるようだ。 いよいよ君の正体が知りたくなって来たよ。」 「・・・・お褒め頂いて・・・・・光栄です・・・・・・・。」 僕の返答に、にい、っと笑う渚。 「・・・・じゃあ、次、行ってみようか・・・・・・・。」 ブワッ! 僕は、頭上に”網”を感じた。 森の中などで、ゲリラのトラップに使われるような、捕獲用の網。 それが頭上から僕を襲う。 動きを、封じようというのか。 「ちっ・・・・・・・・!」 僕は、”刃”をイメージした。 三日月型の、全長五十センチ程度の鋭利な”刃”。 スパッ!スパッ!スパッ! 降りかかる”網”は、無数の”刃”に切り刻まれ、不能の物体と化した。 「ほほお。これも、防ぐかい。」 感嘆する彼。 僕は呼吸を整えつつ、その場に自然体で立ち続ける。 ちなみに、さっき言った”網”とか”刃”とかいうものは、あくまでイメージの 話である。 実際に、空中に網や刃が現れた訳ではない。 僕と彼との高度な魔術の応酬を、分かりやすく表現しただけだ。 「・・・・・・・・。」 僕が視線をちら、と動かすと、僕の前の空間に”輪”が現れた。 眩く光り輝く、ドーナツ状の大きさの、五つの”輪”。 今度のこれは、イメージの話ではなく、実際に存在している。 蛍光燈を思わせるそれが、ゆらゆらと宙に浮かぶ。 「・・・・・・・。」 そして再び視線を動かすと、五つの輪は、急速に渚カヲルをめがけて飛んだ。 ブン・・・・・・・・・・。 なにやら妙な音とともに、輪はそれぞれ彼の四肢と、そして首を捕らえた。 束縛の魔術。 彼の身体の自由を、完全に奪った筈であった。 しかし。 「・・・・・・・・・。」 渚カヲルが、ふ、っと笑うと、束縛の輪は全て消え失せた。 やっぱり、駄目か。 僕は溜め息を吐く。 どうすれば、いいだろうか。 「ねえ、惣流さんって、ドイツに住んでたんだって?」 「向こうで、彼氏とかいたの?」 「趣味とか、何かあるかなあ?」 「音楽は何聴くの?」 「すごく奇麗なのね。羨ましいなあ。」 アスカの周りには、クラス中の生徒が集まっていた。 転校初日。 朝のHRが終わると同時に、アスカに口々に質問が浴びせ掛けられた。 皆が、このまさしくクラスの、いや学校のアイドルと成り得る少女を 少しでも近くで見ようと、少しでも仲良くなろうと、必死になっていた。 男子のみならず、女子も、である。 大人しそうで、凡庸そうな少年をはじめとして、その輪の中に加わろうとしない 生徒も数人いたものの、とりあえずアスカには彼らは目に入らなかった。 この状況は、おおむねアスカのプライドを満足させるものだった。 彼女は同年代の少年、少女を圧倒した才能と、実力を持っており、 彼女自身それを全く疑っていない。 アスカにとって、自分は常に一番でなければならず、そしてそれは ”人気”にとってもそうであった。 だから彼女は、多少うざったいとは感じていたものの、あくまで愛想良く、 次々と質問に対して答えて行った。 そこへ。 「でも、ほんとに可愛いね。髪、ちょっと触っていい?」 にやけた顔をした男子の一人が、アスカの返答を待たず、いきなり 彼女の髪に触れた。 「!ちょっとあんた!」 アスカは猛然と立ち上がった。 振り向き、その男子の手をバシッと引っ叩く。 「え・・・・・・・・?」 男子は、呆然とした顔をする。 周囲で、彼女を羨望と、また、ある種の感情を込めた目で見ていた他の 皆も、同様に驚きの色を浮かべる。 教室が、静まりかえった。 「あんた!勝手にあたしの髪に触んないでよ! 誰が触っていいって言った!?」 「い、いえ・・・・言ってません・・・・・・・・。」 「でしょう。あんまり、馴れ馴れしくしないでよね。分かった!?」 「は、はい・・・・・・・。」 しまった。 アスカは僅かに後悔する。 やってしまった。 『日本人は、協調性を大事にする民族だから、あまり好き嫌いをはっきり したり、きつい言動はなるべく抑えた方がいいわよ。』 日本に来る前、母から言われた忠告。 いきなり、破ってしまうなんて。 アスカは先程の自分の言った事は正しいとは思うものの、やはり 行動も、口調も、激し過ぎたかな、と思う。 事実、周囲の彼女を見る目が変わっていた。 不快。 怒り。 様々な視線が彼女に浴びせられる。 「なんやあ。どんなに見てくれが良くったって、性格ブスじゃ、終わりやのお。」 輪の中に入っていなかった少年の一人が、関西弁で言い放った。 静まり返った教室には、その声が異常に良く響いた。 そして、その一言がクラス中の生徒の心中を代弁していた。 ますます険悪な雰囲気になる。 そこへ。 「ちょっと鈴原!」 突然、女子の一人が怒鳴った。 関西弁の少年の机につかつかと歩き、ばん!と机を叩く。 「な、なんや。いいんちょ。」 少年は、戸惑った様に言った。 少し脅えの色も入っていたかもしれない。 「そんな言い方する事ないでしょ!彼女に謝りなさい!」 「せ、性格ブスを性格ブスっちゅうて、何が悪いんや。」 アスカは、なんだか風向きが妙な方向に向いている様な気がした。 「女の子にとって、髪は命なのよ!それを勝手に触られれば、怒るのは 当然でしょ!そうでしょ、惣流さん?」 「え?ええ、まあ・・・・・・・・・。」 アスカは、女の子の勢いに圧倒されて肯いてしまう。 「ほら!鈴原、謝りなさい!」 「ぐ・・・・・・わ、悪かった・・・・・・。」 「誠意がこもってない!」 「分かったわい!惣流!わしが、悪かった!・・・これで、ええんやろ。」 なんとなく、険悪なムードが去り、ほっとした空気が流れていた。 そうよ、その通りよ、という声が女子の間で巻き起こる。 批判の視線は、何時の間にか同情の視線に変わっていた。 「あの・・・・・ありがとう。」 その後落ち着いた頃、アスカはこっそり自分を擁護してくれた少女に 話し掛けた。 彼女は、にっこりと笑う。 「ううん。いいのよ。当たり前の事をしただけだから。 ・・・・でも、まあ、女の子なんだから、もう少しお淑やかにね、惣流さん?」 「う、うん・・・・・・。」 他の人に言われれば怒って怒鳴りつけてしまいそうな注意の言葉も、 彼女から言われると何故か素直に聞いてしまった。 「あの・・・・。惣流さん、っていうのは、止めてくれるかしら。 アスカ、って呼んで。」 「うん。分かったわ。アスカ。あたしは、クラス委員長の、洞木ヒカリ。 これから、よろしくね。」 「・・・・・・・・・・・。」 アスカは、初めてヒカリと出会った時の事を思い出していた。 キッドに支配され、にやついた笑みを浮かべるヒカリを、彼女は きっと睨んだ。 絶対・・・・・・助けるんだから・・・・・・・・・! 「ぐうっ・・・・・・!」 強烈な廻し蹴りが僕を襲った。 辛うじて腕でガードしたものの、びり、と痺れる。 一瞬身体が浮き上がる程の、衝撃。 崩れた体勢をなんとか立て直した所へ。 ビシイイイ! すかさず繰り出されるローキック。 「・・・・・・・!」 まともに右の太股に食らい、がくりと崩れる。 渚は、その隙を見逃さない。 ・・・・・・・!? 右足が、高々とさし上げられている。 ・・・・かかと落とし・・・・・・! 以前格闘技のテレビで見た技が思い浮かんだ。 「くっ・・・・・・!」 咄嗟に両腕を交差させ、頭上にかかげた。 がきいっ・・・・・・・! 僕の頭部を襲った右の踵は、僕の両腕になんとか食い止められていた。 肩まで痺れる、凄まじい衝撃。 骨が、きしんだ。 よし・・・・・止めた! 一瞬、安堵する。 ・・・・・・が。 ・・・・・・まだだ! 下方から迫る新たな殺気! 渚の左膝が迫る。 右足を僕の頭上に固定させたまま、上下に挟むような形で僕の頭部を 左膝が襲った! まるで獲物を屠らんとする獣の顎のごとく。 「くあっ・・・・・・・!」 頬すれすれを、膝が駆け抜けた。 躱した! そのまま転がる様にして僕は彼との間合いを取った。 ぜえっ、ぜえっ、ぜえっ、ぜえっ・・・・・・・・・・・! 荒い呼吸。 それとは対照的に、悠然と立つ渚カヲル。 冷笑すら浮かべている。 彼は僕の事を化け物、と呼んだが、彼の方こそ化け物だった。 魔力そのものは恐らく僕の方が上かもしれない。 しかし魔術において、そして肉体的な能力において、彼は僕を圧倒的に 上回っていた。 僕が、巨大で重い斧をぶんぶんと振り回しているとすれば、 彼の攻撃は変幻自在にしなる鞭の様。 一見、地味とも見える戦いではあるが、互いに異常なまでに 高度な魔術と、そして魔力の応酬を行っている。 二人共、付近一帯を全て焦土と化すぐらいの力は悠に持っているが、 ある一定のレベルを超えてしまった魔術師同士の戦いは、 かえって地味になってしまうものだ。 「・・・・・・・・・・・。」 互いに、ゆっくり、ゆっくりと、間合いを詰めた。 ほんの一瞬の油断が、ほんの数ミリの足位置のずれが、即、死を意味した。 「シッ!」 僕の右足が、彼の左の脇腹を襲った! ドオッ! 渚の肋骨が、きしむ感触。 彼は、ガードする間も無く、まともに食らっていた。 ・・・・・違う! 彼が、ニイッ、と、凄まじい笑みを浮かべた。 ガード出来なかったのでは無く、”しなかった”のだ! キュン! 信じ難い速さで彼の左腕が閃き、僕の右足は彼の脇に抱えこまれていた。 ・・・・・関節を、極められる! 柔道家だろうと、プロレスラーだろうと、掴まってしまう事は怖くなかったが、 彼だけは、別だった。 強引に、抜けるか!? 一瞬の判断が、明暗を分けた。 いや、それは、判断などと呼べるものではなかったかもしれない。 身体が、勝手に動いていた。 何度となく旧東京で悪魔達と戦いを続けていた賜物であったろうか。 右足を掴まれたまま、僕の左足が、跳ね上がった。 身体をひねり込み、後ろ廻し蹴りの要領で、左足が相手の頭部を襲う! ゴッ・・・・・! 右足の束縛が、緩んだ。 すかさず宙に浮いた不自然な体勢から足を抜き、着地した。 ぽたっ・・・・・・ぽたっ・・・・・・・。 渚カヲルの側頭部から、鮮血が漏れていた。 美しい顔立ちが朱に染まる。 ぞくり。 あまりに美しい顔立ちだけに、かえってその姿は恐ろしいものがあった。 「楽しい、なあ・・・・・・・・・・。」 「え?」 彼が言った言葉が聞き取れず、いや、理解できず、僕は聞き返した。 「楽しいよ・・・・。本当に、楽しい・・・・・・・・。 こんなに楽しいのは、何年ぶりだろうか・・・・・・・。」 彼は、口元に流れた真紅の筋を、ぺろりと舌で舐め取った。 その、漆黒の瞳が、真紅の輝きに変わった。 ・・・・・ここは、どこなのかしら? ヒカリは、周囲を見渡した。 そこは、暗闇の世界だった。 光が僅かも無い、漆黒の世界。 そして、静寂の世界。 ヒカリは、その中でたった一人、立っているとも浮遊しているともつかぬ 奇妙な状態で存在していた。 「どこなの・・・・ここは?」 彼女は呟いた。 すると、その呼びかけに答えるように。 「ここは、君の心の中さ。」 他者の声が、響いた。 聞き覚えのある声だった。 その声の主の名を、思い出しかけた所で、目の前に一人の少年の 姿が現れた。 「キッド君?」 ・・・・それは、キッドであった。 しかし、それは彼女の知るキッドではなかった。 彼の姿は、小人のそれではなく、普通の子供と変わらぬ大きさ。 相変わらず無邪気な笑みを浮かべてはいたが、その中に何か別のものを 感じ、ヒカリは僅かに身を震わせた。 「・・・どういう事?あたしの、心の中?あたしは、どうなったの?」 「覚えてないのかい?君は、親友に、裏切られたんだよ。 一番、信じていた人に、ね。」 「・・・・・・・・・・。」 ヒカリは、思い出した。 トウジと、抱き合っていたアスカを。 「そして君は、心を閉ざした。 自分を傷つける外界から目を背け、自分一人の世界の中に閉じこもった。 そして今、僕はそんな君の世界に、無理矢理お邪魔してるわけさ。」 「そう・・・・・・・。」 ヒカリは、溜め息を吐いた。 その時。 『ヒカリ・・・・・!聞こえる!?ヒカリ・・・・・・!?」 突然、果てしない暗闇の遥か彼方に、光が現れた。 その光は、まるで夜空の星の一つの様に、小さく、儚いものではあったが、 暗闇の中に閉ざされたヒカリには、とても温かく、優しいものに思えた。 そして、その光の向こうから、その、彼女を呼ぶ声は、聞こえて来た。 『ヒカリ・・・・・・!ヒカリ・・・・・・・!』 「アスカ・・・・・・?」 ヒカリは、呟いた。 親友の・・・・・いや、親友だと、思い込んでいた少女の声。 彼女の表情が、揺れた。 「何よ・・・・・あたしの事、馴れ馴れしく、呼ばないでよ・・・・・アスカ・・・・ ・。」 キッドは、黙って見つめている。 『ヒカリ!答えて!ヒカリ!』 「・・・・・あたしを、呼ばないでよ。」 『ヒカリ!』 「あたしを、裏切ったくせに・・・・・。」 『ヒカリ!』 「何で、呼ぶのよ・・・・・・。あたしを・・・・・・・。」 『ヒカリ!』 「何でよお・・・・アスカあ・・・・・・・・。」 ヒカリの頬を、滴が濡らした。 アスカの声を聞くだけで、凍り付いた心が溶けて行くような気がした。 「アスカあ・・・・・・・・・。」 「ヒカリ・・・・・・・・・・・。」 沈黙していたキッドが、声をかけた。 ヒカリは俯いている。 「キッド君・・・・・・。あたし、アスカと、話がしたい・・・・・。」 ぽつり、と呟いた。 「・・・・・何故?彼女は、君を裏切ったんだよ?」 「・・・ううん・・・・。よく考えてみれば、アスカが、あんな事する筈無い・・・・ 。」 「どうして?」 「だって・・・・・あたし達は・・・・・親友だったんだもん・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・。」 「きっと・・・・・何かの、間違いよ・・・・・・・・・。 そう、そうに決まってる・・・・・・・・。」 「ヒカリ・・・・・・・・。」 「あたし・・・・・・。アスカと、話してみるわ・・・・・・。 だってアスカ・・・・あんなに一所懸命、あたしの名前を呼んでる・・・・・。」 「・・・・・まあ、君がそうしたい、と言うならそうすればいいけどね。」 「うん・・・・・・・。」 「でも、覚悟は、出来てるの?」 「・・・・・・覚悟?」 ヒカリは眉をひそめた。 「覚悟って・・・・・何?」 「忘れたのかい?君自身、彼女の事を裏切った事を?」 「え・・・・・・・・・?」 「彼女の好きな人に・・・・それも、彼女の目の前で、キスをした事を?」 「・・・・・・・・!」 「もしも、君の親友が、本当に君を裏切っていないとしたら、君は単なる 誤解から、彼女の大事なものを、奪ってしまった事になるんだよ?」 「い、いや・・・・・・・・・・。」 ヒカリは、耳を塞いだ。 しかしキッドの声は、そんな彼女にお構いなしに、響いた。 「君は、彼女を裏切ったんだ。いや、彼女だけじゃない。 君が想っていた男の子の事も、同時に傷つけたんだ。 あの時、彼も一緒にいたよね。」 「いや・・・・・・・・・。」 「もう、戻れないんだよ・・・・・。今迄の様な、関係には・・・・・・・・。」 「いや・・・・・・・。」 「君が、壊したんだ。 君自身の手で、君は、君の一番大切な人達を傷付けたんだ。」 「いやあああああああああああああああああああああああああ!!」 ヒカリは、絶叫した。 もう、アスカの声は聞こえなかった。 温かな光は消え失せ、周囲は再び闇に戻った。 彼女は耳を塞いだまま、身体を胎児の様に丸めた。 彼女は、再び閉じこもった。 誰も傷つける必要の無い、そして誰も彼女を傷つけない、 自分独りの世界へ。 「ヒカリ!聞こえる!?ヒカリ!」 アスカは必死に呼びかけを続けた。 しかしヒカリの表情は、相変わらずにやついた、キッドのそれ。 全く反応を見せなかった。 「無駄だよ。彼女はもう、君に応える事は無い。 君は、彼女に拒絶されてるんだ。」 「そんな事無い!あたしと、ヒカリは、親友なんだから!」 「そうかい。なら、親友の手で、死ぬがいいさ。」 キッドが、いきなり右手を突き出してきた。 右手の先に、魔力が集中している事を見て取り、アスカは咄嗟に 魔術の準備を行う。 ゴオッ! キッドの右手から灼熱の炎が迸った。 巨大な紅い舌がアスカを飲み込まんと迫る。 ・・・・が、それは彼女に届く前に、掻き消えていた。 跡形も無く。 アスカは、ふんと笑った。 「炎の魔法とは、随分芸の無い事ね。」 余裕を見せる。 しかし。 芸が無いが故に、その攻撃は強力なものだった。 防御のために体内の魔力のかなりの部分を削り取られ、疲労が濃い。 それでもそんな様子は微塵も見せず、アスカはあくまで強気の姿勢を 崩さない。 「ヒカリ!聞こえる!?ヒカリ!?」 アスカは喉も嗄れよとばかりに、絶叫した。 「う・・・・・・・・・。」 僕はうめいた。 熱い汗が、冷たいものに変わっていた。 渚カヲルの真紅の瞳が、僕を射抜いた。 これまでとは桁違いの恐怖に、僕は襲われた。 彼の身体から放たれる魔力は、先刻から変わらない。 しかしその殺気は、比べ物にならなかった。 思わず、二、三歩後じさる。 「ひっ・・・・・・・・・・・。」 恐怖の声が、漏れた。 ”死ぬ事など、怖くない” 僕は、彼にそう言っていた。 しかし、それが偽りだった事を、僕は知った。 圧倒的な・・・・・・・・・・・恐怖! 足が、がくがくと震えた。 殺される・・・・・・・・・・!! 「行くよ・・・・・・シンジ君・・・・・・・・?」 ビクンッ! 僕は瞬間的に身を震わせた。 キュン! 彼が、一気に間合いを詰めた。 そして、唸りをあげる左フック! 「うわあっ・・・・・・・・!」 ドオッ・・・・・・! 脇腹を、なんとか、腕でガードする。 精神が恐怖に侵されていても、肉体の方は勝手に動いていた。 しかし。 「ぐううっ・・・・・・・!」 めき、と音がした。 ガードしたにも関わらず、肋を二、三本もっていかれていた。 続いて、渚の右手が、腰にためられ、きつく握られた。 来る! 必死の形相で、それを防ごうとする僕。 そこへ。 「”動くな!”」 「!?」 彼が、叫んだ。 しまった! 僕の身体は、彼の言う通りに、動きを止めていた。 暗示を、掛けられた! 暗示の効果は、ほんの一瞬のもの。 しかし、それで十分だった。 「がはああっ・・・・・・・・・・!」 鳩尾に、まともに食らっていた。 ぶちっ、という様な音が、そこから聞こえた様な気がした。 口が、鮮血を吐いた。 地獄の苦痛が、僕を襲った。 身体を折り曲げたかったが、それも許されなかった。 どっ・・・・・・・。 猛烈な足払いを食らって、僕はその場に倒されていた。 「くっ・・・・・・・!」 転がって、逃げようとする僕。 しかし。 「がはっ・・・・・・・・・!」 僕の胸が、踏み付けられた。 渚カヲルの獣の目が、真っ直ぐに僕を見つめていた。 ピンで留められた、標本の昆虫を眺める目で。 僕は恐怖を持ってそれを見上げた。 「・・・・シンジ君・・・・・・・。」 彼が、呟いた。 「君が、悪いんだよ・・・・・・・・。」 「・・・・・・え?」 唐突に、何を言い出すつもりなのかと、僕は脅える。 「君が、悪いんだ・・・・・。君が、あんまりにも強いから・・・・・。 おかげで、僕の中の血に飢えた獣が、目を覚ましてしまった・・・・・・。」 「・・・・・・・・・。」 「君は、強いよ。 はっきり言って、実力から言ったら、僕より君の方が上だろう。 しかし、いかんせん君は、修羅場はあまりくぐってはいない様だね。 戦いの経験はあるようだが、それも圧倒的な実力差のある相手とだけ。 違うかい?」 「・・・・・・・・・・。」 「ともかく・・・・・・もう、駄目だ。僕はもう、自分を抑えきれない。 ・・・・・君の命をもらわないことには、満足できない。」 「ひっ・・・・・・・・・!」 僕は両手で僕を踏みつけている彼の右足を掴んだ。 しかしそれは、まるで堅固な柱の様に、びくとも動かなかった。 「中学生一人殺すぐらい、簡単に揉み消せる。 ・・・・若いみそらで、可哀相にね・・・・・・・・。」 僕は、必死に精神集中を行った。 逃げよう! ともかく、この場から瞬間転移で逃げてしまおう! 本当に、殺される! 瞬間転移の魔術は、とっくに完成していた。 しかし、僕の身体は相変わらず彼の足の下にあった。 どうして!? どうして、転移出来ない!? 泣きそうになった僕は、彼を見上げた。 にいっ・・・・・・・・・・・・。 彼は、そんな僕を見て、笑う。 「させないよ・・・・・・・・・シンジ君・・・・・・・・・・?」 !! いやだ!死にたくない! しかし彼は、無慈悲に僕の眼前にその手を突き出した。 「あ、あ、あ、あ・・・・・・・・・・・・・。」 すでに、僕はまともに声を出せなかった。 そして、死神は静かに宣告した。 「さようなら。シンジ君。」 血飛沫が、舞った。 「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・・・!」 アスカは、荒い息を吐いていた。 身体のあちこちが傷つき、白い肌が痛々しく映えた。 限界が、近かった。 「ヒ・・・・・ヒカ・・・・・リ・・・・・・・・・。」 彼女は、なおも眼前のヒカリに呼びかける。 しかし、やはり彼女は笑いを浮かべるのみ。 「ほんっとにしぶといねえ。無駄だって、言ってるのにさ。」 ヒカリは、キッドは、笑う。 こうなったら・・・もう、手段は一つしかない・・・・・・・・。 アスカは、覚悟を決めていた。 はあ、はあ、はあ、はあ。 呼吸を整えつつ、彼女は、言った。 「・・・・・・分かったわ。降参よ。」 「・・・・・そうかい?」 「ええ。とてもじゃないけど、駄目。あの気障な男が言ってた通りね。 ヒカリからあんたを引き剥がすのは無理のようね。」 「やっと、分かったかい?君みたいに諦めの悪い人は、初めてだよ。」 「・・・・・でも、まだ完全に諦めた訳じゃ無いのよ?」 「・・・・・・なんだって?」 キッドは、眉をしかめた。 「この期に及んで、どうしようって言うのさ? そもそも君は降参したんだろう?」 「ええ、降参よ。でも、ヒカリだけは助けてみせる。」 「どうやって?」 「・・・・・あなた、あたしの身体を乗っ取ってみない?」 「!」 「悪い話じゃ、ないと思うけど。 魔力を持たない普通の人間を支配するよりも、魔術師の身体を乗っ取った 方が、存分に力を振るえる筈・・・・・・・・・。 違うかしら?」 キッドが、これまでにない程の歓喜の笑みを浮かべた。 周到に計略を巡らせて相手の肉体を奪った方が、本当は確実である。 今この場で彼女の肉体を手に入れようとする事は、キッド自身にとって ある程度の危険を伴う行為であった。 しかし彼女の極めて優秀な魔術師としての身体は、非常に魅力的だった。 それに加えて、彼は自分の力に絶対の自信を持っていた。 こんな小娘に、自分の術を破るだけの精神力がある筈がない。 「悪くない。たしかに、悪くないね。」 「でしょう?その代わり、ヒカリは助けてもらうわよ。それでいいかしら?」 「勿論。君の様な素晴らしい肉体を手に入れる事が出来れば、 こんな彼女など無用さ。いいだろう。君の提案、受け入れよう。」 「・・・・・・・・分かったわ。じゃあ、好きに、しなさい。」 「それじゃあ、これから僕は君の心の中に入り込ませてもらうよ。 魔力のガードを、解いてくれ。」 「もう、そうしてるわ。」 アスカは、ちら、と一人の少年の姿を思い浮かべた。 彼は、涙を流しながらじっとこちらを見ていた。 ・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・ごめんね。シンジ。 「じゃあ・・・・・行くよ。」 ! 次の瞬間、アスカの目の前の風景が、全て消え失せた。 暗闇の中に、彼女は独り立ち尽くしていた。 ・・・・・暗い。 アスカは、呟いた。 何て、暗いんだろう。 何て、静かなんだろう。 何時の間にか、彼女は自分が何故ここにいるのか、すっかり忘れていた。 「・・・・・・・・・・・・?」 ふ、っと、突然彼女の前に人が現れた。 それは、ヒカリであった。 真っ暗な空間の中、彼女はアスカを睨んでいた。 「ヒ、ヒカリ・・・・・・・・・・・・。」 アスカは、親友の姿に、喜びと共に手をのばす。 しかし。 「アスカなんか、だいっきらい。」 ヒカリが、吐き捨てる様に言った。 「・・・・・・・え?」 何を言われたのか分からず、戸惑うアスカ。 「何・・・・・言ってるの・・・・・・?ヒカリ・・・・・・・・・?」 「だいっきらいよ。あなたなんて。 ちょっと顔がいいからって、うぬぼれて。 自分中心に世界が回ってるみたいに思っちゃってさ。」 「ヒ、ヒカリ・・・・・・・!」 と、そのヒカリの隣に、新たに二つの人影が現れた。 「パ、パパ・・・・・、ママ・・・・・・・。」 その二人を見たアスカは、思わず甘える様な声をあげた。 その表情が、安堵のものに変わる。 彼女は、二人の元へ駆け寄った。 しかし。 どんっ。 アスカは、一瞬自分が何をされたのか分からなかった。 尻餅をついていた。 父親に、突き飛ばされたのだ、と理解するまでに、しばらくかかった。 「な、なんで・・・・・どうして・・・・・・・・?」 涙を浮かべながら、両親を見上げるアスカ。 しかし二人共、まるで汚らわしいものでも見るかのように、アスカを 見ているだけ。 助け起こしてくれる手は、差し伸べられなかった。 そして。 尻餅をついたままの彼女の周囲に、幾つもの人影が次々と現れた。 「おんどれなんぞ、死んでまえ。」 トウジが、言った。 「惣流?俺、あいつの事、嫌いだな。」 ケンスケが、言った。 「あんな自分勝手な娘とは、もう一緒にいたくないわね。」 ミサトが、言った。 「うぬぼれるんじゃないわよ。」 リツコが、言った。 「いやあああああああああああああああああ!!」 アスカは、耳を抑えて絶叫した。 聞きたくなかった。 自分が、誰からも愛されていないなどと、そんな現実を聞きたくなかった。 「・・・・・・・アスカ。」 一つの、声が響いた。 その声を聞いた時、アスカははっと顔を上げた。 そこには、彼が居た。 彼が、碇シンジが、そこに居た。 「シンジい・・・・・・・・。」 アスカは、顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、彼の足元にすがりついた。 しかし。 「・・・・・ごめんよ。アスカ。」 ふと気付くと、シンジの隣に、もう一人の人物が居た。 清楚な顔立ちをした女性。 「悪いけど、僕にはマヤさんがいるんだ。もう、アスカは、いらないよ。 アスカがいなくても寂しくないよ。」 そう言うと、シンジはマヤの身体を抱き、深く口づけた。 「ん・・・・・・うん・・・・・・・・・。」 マヤが、恍惚とした息を漏らす。 マヤは、シンジの肩越しにアスカを見ていた。 アスカは、その目を見た。 蔑んだ、瞳。 得意そうな、瞳。 その目が、こう言っていた。 ・・・・・・シンジ君は、わたしのものなのよ。 「いやあああああああああああああああああああああ!!」 アスカは再び絶叫した。 「いやあ!助けて!シンジ!シンジ! お願い!あたしを、捨てないで! シンジ!シンジ!」 シンジは、彼女の叫びに応えなかった。 アスカの叫びは、空しく虚空に消えて行くだけだった。 心がばらばらに引き裂かれて行く絶望感に囚われつつ、 彼女はただ叫び続けた。 「シンジい・・・・・・・・・・・シンジいい!!」
河井さんの『僕のために、泣いてくれますか』第拾伍話、公開です。
キッド〜〜!
この悪魔め!!
・・・って、悪魔なんですけどね(^^;
ヒカリちゃんの体から、
なんと、
アスカちゃんの体へ・・・
親友から、
両親から、
知り合いから、
そしてそしてシンジから。
浴びせられる仕打ちが辛すぎる (;;)
この悪魔め〜〜
アスカとヒカリの友情パワーで乗り越えろ! (^^;
さあ、訪問者の皆さん。
送りましょう、感想を、河井さんに!