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「急がないとなぁ.........。」
そう、僕はいそがなくてはならなかった。時計はすでに8:10をすぎてしまっている。
とりあえずのびてしまった母さんは放っておこう。もうそろそろいかないと。
急いで靴を履き、玄関を飛び出る。さようなら、母さん、我が愛しの朝食。
階段を下りる。ここ、僕の住むマンションは14階建て、築1年にも満たない大きめのマンション。
外見はそこそこ綺麗だし、「3LDKの割に家賃が安い」、と母さんはうれしがってた。
.......だが、重大な欠点がある。
エレベ−タ−が無いのだ。
このために、マンションの住居希望者は少ない(と僕は思う)。未だに母さんとオ−ナ−以外の人をこのマンションで見かけたことがない。ほかに誰も住んでいないのだろうか。
そして、僕の登校時間が長くなる。
.............まぁ、文句を言ったところでしょうがない。わかってはいるけど。
ところでこのマンション.........どういう名前だったっけ?
たしか.......『コン...........』..........思い出せない。.............まぁ、たいして気にすることもないだろう。きっと。
階段を下りきる。ここまで約1:30弱。なかなか速かった。
後はずっとまっすぐ走り抜くだけ。
ここでいったん時計を見る。.................大丈夫、まだ18分近くある。
道路はすでにゆきだらけだ。こけないように注意しよう。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ......
―――新世紀エヴァンゲリオン―――
新約聖書偽典
第壱話 歌う、こころ
B−part
「おはようさん。センセ。」
後ろからいきなり声が聞こえる。このしゃべり方はきっとトウジだ。
「おはよう。トウジ。」
後ろから声をかけてきた親友は、すでに僕の真横に来ている。
「きょうは寒いなぁ、ほんまに。」
「うん、そうだね。」
.........鈴原 トウジ、14歳。僕と同じ市立第3新東京中学校に通う同級生。なぜか言葉使いが関西弁。
喧嘩っ早いけど『女には手を出さない主義』(本人談)。でも、切れたら......たぶんそんなこと関係ないような気がする。トウジの場合。
学校の制服があるにもかかわらず、年中ジャージで過ごしている。なんでだろう?いつか聴いてみよう。
「.............らしいでって聞いとるか?シンジ。」
いつの間にか僕らは歩いている。
「あ、あぁ、もちろん聞いてるよ。」
もちろん、聞いていなかった。ごめん、トウジ。
「ん−、ならええで。」
いいやつだ。それに比べて僕なんか........。
「でな、センセはどう思うんや?」
「.......へ?」
いきなり話を振られて対応できず、思わず間抜けな声を出してしまった。
「だから、転校生や、転校生。わしの話、聞いとったんか?」
「あ、あぁ、うん。」
転校生。...............確かに昨日の帰りのホ−ムル−ムでそういう話題があったような気もする。
「かわいい子だといいね。」
「そやなー。」
「...............」
「.........................」
お互い無言になる。すっごく気まずい。どうしよう。
とりあえず........。
「トウジ........。」
「ん?なんや。」
「急ごう、いいんちょーになにか言われるよ。このままじゃ、きっと。」
「なんでや?」
「.......もう時間少ししかないよ。」
言い終わると同時に時計を見る。すでに時計の針は8:21分を指していた。
「なんやて!?」
「ほら、見てよ。」
そう言って、腕時計をトウジの目の前に突き出す。
「シンジ........。」
「なに?」
「何でもっと早くゆうてくれなかったんや。」
「...........ごめん。」
「まぁ、ええわ。それよりいそぐで。」
そういうとトウジは走り出してしまった。僕も急ごう。
もうそろそろ学校だ................と思って走るスピードを上げ、トウジを抜き去る。
――――――大丈夫、十分間に合う――――――
余裕がでてきたので後ろを向いてトウジを見る。
「トウジ、早くしてよ。おいてくよ?」
後ろを向いたまま話しかける。余裕があるな、僕って。
「言われんでも急ぐわ、少し待って......ってシンジ、前、あぶ.......。」
言われて前を向いたときには遅かった。
「ゴン!!!」
「―――――――っいてててて.....。」
あ、頭が痛い。どうやらよこから飛び出た人にぶつかってしまったらしい。
――――とりあえず謝ろう....――――
と、思ってぶつかってしまった人に謝る。
「ごめんなさ.........。」
そこまで言って口の動きが止まる。
―――――――か、かわいい―――――――
亜麻色の髪、整った顔つき、その顔にある二つの青い瞳、痛がる表情。うーん、全てがかわいい。
きっと日本人じゃないな...........でもどこかで会ったような気も...........
...................いや、相手を見つめている場合ではない。謝らなくては。
「あ、あの、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
立ち上がって、まだ地面に倒れている彼女に向かって手をさしのべる。
が、
「アンタ、なにすんのよ!」
聞こえてきたのは罵声だった。
「なにすんのよ.......って言われても.....。」
困るよ。と、言おうとしたが、彼女のさらに激しい罵声(いや、言いがかりだろう)によってその言葉はかき消された。
「うわ、もしかして私に体当たりかまして、気絶せさたあげく密室に連れ込んでいろいろエッチなことしようとしたんでしょ。
きゃあー、エッチバカ変態!!近寄らないで。」
「ばちぃっっっっ!!!!」
言い終えるとそくさまに、平手打ちをくらわされた。
「僕は何もしてないのに........。」
と、そこへ...
「シンジ、だいじょぶか。」
あわてた声とともに駆け寄るトウジ。もうちょっと早く......。
「あーん、いけない。こんなことしている暇はなかったんだわ。」
言いたいことと僕をひっぱたいて満足したのか、彼女はそそくさと走り去っていった。
「なんや?あの女。シンジの知り合いか?」
いや、と首を横に振る。
「そこからいきなりでてきて僕にぶつかったあげく罵声を浴びせ、さらには平手打ちをされたんだ.......」
ありのままを話す僕。
「ひっどい女やなー。次、見かけたらわしにゆうたれ。センセの替わりにどついたる。」
..............きっとトウジは本気だ。今のうちにうやむやにしておこう。じゃないとあの子がかわいそうだ。
「い、いや、その、ぼ、僕が後ろ向きながら走っていたのが悪いんだ。
だ、だからいいんだよ....そ、それより......そ、そうだ、ケンスケはどうしたの?さっきから気になっていたけど......。」
「ケンスケか?あれ?さっきいわんかったか?今日は週番で先行くゆうて、さっさと行ってしもうたって。」
どうやら話をそらせたみたいだ。よかった。でもそんなこといってたっけ........?
「そ、そうだっけ?まぁ、ともかく急ごうよ。」
「そやな。」
..........相田 ケンスケ 15歳、トウジや僕と同級生。僕の親友でもある。いつどこでいかなる時も、ベレー帽を愛用、またカメラフェチでもある。
性格は冷静沈着、だが、カメラフェチが高じて「真実のためには盗撮も必要なんだぁぁぁ!!!」といって危険な女子更衣室盗撮を彼は猿のように繰り返す。
ちなみに彼は未だに盗撮で捕まったことは一度もない。
謎だ。
今、この場にはいないもう一人の親友のことを思い浮かべつつ、校門をくぐる。
春には咲き乱れるはずの桜の並木も、今日は白い雪の花をまとっていつもと違う雰囲気だ。
そんな白桜並木を通り過ぎ、校舎にはいる。
―――――外見はふつうの校舎なのに........―――――
「トウジ、教室あっちだっけ?」
「いや、こっちやろ。」
「何でこんなに入り組んでるんだろう?」
入学当初からの僕の疑問。
「わからん。」
「いろいろ大変なのに.......。」
「まぁ、まぁ、センセ。たまにはいいこともあるでっしゃろ。」
「そうだね。」
............実は、トウジ達と親友になったきっかけはこの入り組んだ校舎にあった。
僕は入学式の日、自分の教室を探して右往左往していた。
僕はあのマンションに第2新東京市から引っ越してきた。そのため友達がいなかった。
だれもたよれる人がなく、ほとんど泣き顔になって探していたときトイレから出てきたあの2人組が僕に話しかけてきた。
それは、顔見知りが激しく、人に教えてもらうという方法を使えない僕にとって救いの神だった。
知らない人に声をかけるのはとても怖い。そのときもそうだったし今でも少し躊躇してしまう。
我ながら情けない.......。
そのとき以来、僕は彼らと仲良くなり親友と呼べるまでの仲になった。
元来、無口で人付き合いの下手だった僕は彼らのおかげで少しだけ性格が外向的になれた。それは今でも感謝している。
「........ありがとう....。」
「ん?なんかゆうたか?」
「ううん、なんでもないよ。」
そうこうする内に無事、僕らの教室2−Aにたどり着く。
教室のドアを開ける前に時計を見る。
―――――――8:28―――――――
意を決して横にいるトウジに声をかける。
「入りますか。」
「入られますか。」
「がらがらがら......」
音を立ててドアを開ける。
教室はがやがやしていて、僕らが来たこともあんまり気づかれていない。
とりあえず遅刻しなくてよかった。
ぼくの席はトウジの後ろ、ケンスケの前にある。今日は違うけど、たいていの日は3人そろって登校する。
安心して席に座る。すると後ろから声がかかった。
「やあ、シンジ、トウジ。おはよう。」
「あ、ケンスケ。おはよう」
「おはようさん。」
ベレー帽をかぶったケンスケがうれしそうに話しかけてくる。
「まったく.....。週番一人だったから、大変だったよ。」
「......週番やからってゆうて、先に行けぃゆうたのはどこのどいつや?」
「いや、手伝わせるわけにも行かないだろ?」
「ケンスケ一人だけやっちゅーのがわかっていたら手伝うがな。」
「それはどうも。やはり持つべきものは友達だねーって今日おまえら遅かったな、どうしたんだ?シンジ。」
「.........へ?」
二人の話を聞いていた僕は話をいきなり振られてまた間抜けな声を出す。
僕はこの2人の会話を聞いているだけで楽しいのであまり会話には参加しないけど、ケンスケは僕がなるべく会話に参加しやすいようにと、僕に話題を振ってくれる。ありがとう。
「わいにはきかんのか?」
「トウジの場合『寝坊』しか原因が考えられないからね。」
「....いや、たしかにそうなんやけど........。」
「........でどうなんだい?センセはどうしたんでしょうか?」
「僕も寝坊だよ。」
僕は正直に言ったのに2人は口々に驚いた表情で、
「......あのセンセがねぇ........。」
「品行方正で通っているセンセが...........。」
そんなにまじめに見えるのかな?僕って。
「それよりな........。」
いきなりトウジが真剣な顔つきになる。どうしたんだろう?
「さっきから気になってたんやけど........。」
「なに?」
「実はいいんちょーをまだ見てないんや。」
................いいんちょー、確か本名は 洞木 ヒカリ.....さんって言うんだと思ったな....。2−Aの学級委員長なので僕らは親しみを込めて『いいんちょー』と、呼んでいる。
なぜかトウジに対するマークが厳しい。そのためトウジは学級の仕事をさぼったことがない。
でも、トウジ゛に仕事を持ってくるときのいいんちょーの表情はうれしそうに見える。それは、たぶん学級委員長としての一日の責任を無事全うできてうれしいんだろう。責任感の強い人なんだな、きっと。
「さぁ.........どこだろ。」
見当もつかない。
「職員室じゃないか?先生がなんか頼んだのかもしれない。」
「んー、まぁ、ええわ。」
「いいんちょーの心配するなんて.......もしかして、いいんちょーとトウジはイヤーンな関係なの?」
ケンスケがからかう。でもなぜかいいんちょーの話題でからかうと......
「そ、そないなこというなー!!」
ってかおを真っ赤にして怒る。かわいそうに....そうやって怒るからさらにからかわれることに本人は気づいていないのだろうか?
会話はまだ続いている。だがここで僕は大変なことに気がついてしまった。
それを確認するため、腕時計に目を走らせる。
――――――8:42――――――
どうしたんだろう?うちのクラスの担任は数学の先生で時間にはきちんとした先生だ.......。だから、いつもなら30分ぴったりに来て、40分にはホ−ムル−ムが終わっているのに......
先生すらこない。いいんちょーもまだ見ていない。
「ねぇ、トウジ、ケンスケ。」
思い切って聞こう。
「んー、なんや?」
「なんだい?」
「先生遅くない?」
「そやなー。」
「そうだね。まぁ、でもまだこないってことは何かあるんじゃないのかなぁ?」
「なにかって.........なに?」
「さぁ......でもそろそろ来る.......っていいんちょーが来たよ。」
ケンスケが言ったとおりいいんちょーが「がらがら..」と、音を立てて入り、そのまま教壇の上に立つ。
「静かにしてください」
いいんちょーがそう言うと今までうるさかった教室内が静かになる。
「今から言うことをよく聞いてください。
担任の斉藤先生が今日、階段から落ちて両腕の複雑骨折、全治四ヶ月のためしばらく休みを取ることになりました。」
そこまで言い終わると同時に教室の中がにわかに騒ぎ出す。
―――――が
「どんっっ!!!」
いいんちょーが机を思いっきりひっぱたく!............どんなはたき方したらそんな音するんだ.......。
また静かになる教室。
「―――――――――というわけで新しい先生がいらっしゃいました、.......先生!入ってきてください。」
「あ、ありがとう。洞木さん。もう席に戻ってもいいわよ。」
聞こえてきたのは女性の声だ。女の人って苦手なんだよな........。
すたすたすた.....と入ってくる。ジーンズみたいなミニスカートと、赤いタートルネックのセーターを着ている。20代後半だろうか。
僕はファッションのことなどはよくわからないが、よく似合っていて、とても美しいと思った。
その新しい先生は教室の時計を見るとあわてて、
「あぁっっ!!もう時間が無いぃぃっっ!!―――――というわけで自己紹介とかなんかは次の時間にしましょう。
次の時間私が担当だから。じゃ、そーゆーわけでちょっちまっててね。」
と、言い残して教室から去っていった。
「..............あんまり先生らしくない。ほんとにあのひとせんせいなのかなあ..。」
つい、呟く。だが、それを聞いたトウジとケンスケは、
「何をゆうとるんや、こないな美人の先生が担任なんて.......あぁ、なんてわしは幸せなんや!!」
「そうだよ、あんな先生なら毎日、学校来るのが楽しみじゃないか。」
その後、あの新しい先生が来るまで彼らの文句は続いた。
あとがき
あうぅ、疲れてしまった......。
なんか今回説明ばっかし。ごめんなさい、僕は文才がないんですぅぅ。
書くの時間かけた割にこの程度だし......。
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ......(自己嫌悪もーど発動)。
やっぱりびーじーえむがまずかったのかなぁ(笑)。
ちなみにおいらが聞いていたのは『ばっはのしょうふーが、げーもーる』(J.S.Bach Fuge g−moll )をずっと、リバースモードでかけていました。
一日5時間弱(笑)。
2日間、なので10時間はたっぷり聞いたでしょうか。
でもほんとに聞きたかったのは『ばっはるべる かのん』だったんですけどねぇ。
『かのん』はすごくおいらにとって思いでのある曲なんです。
でもここにはかきません(笑)
おいら意地悪だから(困)
.......あ、ちなみに(困)っていうのは「だから、なに?」と、こまるところです。
なんか下らないことを書いてしまいました謹んでお詫び申し上げます。
実は先月の電話代が4万円を超えていた泉水ヨリ
泉水さんの『新約聖書偽典』第壱話B−part、公開です。
シンジと登校するパートナーは・・・トウジ。
ちょっと珍しいシチュエーションですね。
そのシンジがぶつかる相手が・・・アスカ(^^)
これはたまにある場面ですが、
珍しいのが・・・・・
・・・・パンチラがないこと(爆)
アスカの妄想の中ではそれ以上の出来事が起こっていたようですが(^^;
さあ、訪問者の皆さん。
貴方の感想を泉水さんに送りましょう!
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