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 遙か天空に浮かぶ幻の城。
 雲海を見下ろすバルコニーに銀色の髪を風になびかせた少年と鎧に身を包んだ
屈強な男の姿がある。
 
サタン、動かんでいいのか?」
「まだだよ。まだはやいんだ。もう少し待とう」
「分かった。だが」
「どうしたんだい、ゼルエル?」
サキエルのヤツが先走ってな」
「・・・シャムシエルを呼んでくれませんか」
シャムシエル!?そうか、なるほどな。分かった」



 欧州の古城のように見える。
 周囲を圧する近寄りがたい雰囲気と高貴さを併せ持つ美しい城だ。
 しかし、欧州にこのような城は存在しない。
 城の周りの風景を見ればそれが理解できる。
 血に染められたように赤い空、溶岩の流れる川。
 そう、ここは魔界の実力者ベリアルの居城。

 その一室・・・
 美しい顔の青年とフクロウの頭をした異形のモノが密談していた。
 青年はこの城の主ベリアル
 異形のモノは魔界の殺し屋アンドラス

「魔界を守るためには致し方ないことだよ」
「俺はプロだ。仕事は必ずやり遂げる。しかし、先ほどの話本当だろうな?」
「もちろんだとも。この私が嘘をつくはずなかろう」
「・・・まあいい。自ずと分かることだからな。そろそろ、失礼するぞ」
「頼んだぞ」
「ああ」

 アンドラスが去った後・・・
 ベリアルは美しい顔を醜くゆがめ、その本性をあらわしていた。

「愚かなヤツよ。私が本当のことを言うはずがなかろう。これで邪魔者が片付く
わい。ゲンドウも仕事がやりやすくなるだろう。ヒャハハハ」

シンジくん
話「触れあう

暗殺悪魔アンドラス登場

 無限に続くかに見える碇邸の廊下。

「シンジ、あたしと同じってどういうこと?」
「僕は・・僕は人間じゃないんだ。僕には分かるんだ。アスカと同じなんだ」
「ウソ・・・」
「嘘じゃないよ。父さんは人間だよ。人間とは思えないような酷いヤツなんだけ
どね・・・。でも、母さんは・・人間じゃないんだ」
「そう・・だったの」
「母さんはペンダントだけ残して僕の前から消えた」
「だから、同じようなペンダント持っているのかしら?」

 紫色の石がはめ込まれたシンジのペンダント。
 赤色の石がはめ込まれたアスカのペンダント。
 石の色が違うだけで瓜二つ。

「お揃いみたいにそっくりだよね。そういえば、アスカはさっきこのペンダント
でその妙な服を着たんだよね?」
「妙ですってぇ!どこが妙なのよ。これは風の衣っていうのよ」
「でも、なんか水着みたいだよ」
「ふう、これだから素人は困るのよ。これの凄さを知らないんだから」
「そうなの。まあいいや。僕はそんな恥ずかしいの着たくないから」
「ぬぁんですってぇ(#-"-)」

バキッ!(戦闘力10倍アッパー)

 そういうシンジも年中ガクラン着ているのだから、人のことを言えないと思う
のですが、本人はそのことにまったく気付いていないようです。

「アスカ、酷いよ。本気で殴らなくたっていいじゃないか」
「フン、あんたが悪いんじゃない」
「アスカ、僕のことバカにしてない?」
「あったり前じゃない、バカシンジ
「後悔するよ」
「な、なによ。どういう意味?」
「まあ、いいや。じきに分かることだしね」

 ニヤリと意味ありげに笑うシンジ。
 不気味すぎます。

「・・(^^;。あんた、やっぱり変なヤツね」
「そうだ!アスカ、おなか空いてるんだろ」
「突然、なに言い出すのかと思えば・・。ピラフ作ってくれるんでしょ?」
「じゃあ、行こう」

その頃、地下室

「おい、ギデオン。少しは手伝えよ」

 アスカとフルフルのせいで荒らされた部屋を一生懸命片づけているサムソン。
 一方、相方のギデオンは、優雅に紅茶を飲んでいます。

「こういう力仕事は君の仕事ではないか」
「それより、お前そのティーセットどこから出したんだ?」
「フッ、それは聞かぬが花というものだよ」


場所は変わって碇邸の食堂

 ゆうに50人は座れそうなテーブル、豪華なシャンデリアともろに貴族趣味の
広い部屋。この部屋に今いるのはアスカ一人。かなりイライラしているようです。

 というのも・・・

「アスカ、ちょっと待っててね。すぐできるから」シンジがそう言って、食堂を
出てから既に30分が経っていました。空腹で余計に短気になっているアスカは
爆発寸前。

そのとき、大扉が開き誰かが入ってきました。

「シンジ、遅いじゃないの!って、あんた誰?」

 そこにいたのはシンジくんではなく、亜麻色の髪の少女。

「あら、シンジ様ったら、なにも話してないんですね。私はエステル
「なに、あんのバカぁ!変な2人組だけなら、まだしもこんな変な女
まで・・。信じらんない
変な女(#-"-)。シンジ様も変わった趣味をお持ち
で困りますわ。あなたみたいな小娘のどこがいいのかしら。私がいつでもお相手
して差し上げるのに」

 そう言いながら、抜群のプロポーション(特に胸)を見せつけるエステル

「な、なによ。羨ましくなんて・・ないわよ。この牛女!
「(う、牛女(#-"-)!?)これだから子供はイヤねぇ。胸が大きい方が、殿方は
好きなのよ。色々できるでしょ」

 

「色々って!?
あ、あんたたちそういう関係なのぉ?
いやぁああああ」

「あなた、本当にシンジ様のことが好きなのね」
「な、なんであたしがあんなぶぁかに。それにさっき会ったばかりなのに・・」
「そう、なにも覚えてないみたいね・・。でも、あの方の邪魔はしないで!あの
方が世界の命運を握っているのだから」
「なによ、それ?あいつってもしかしてすごいのぉ?」
「と・に・か・く、シンジ様にちょっかい出さないでください」
「あんたにそんなこと指図されるいわれはないわっ!」
「あら、私とやろうって言うの?一度、痛い目見ないと分からないのかしら」
「あんたなんかに
負けるもんですか!!」


 2人が取っ組み合いの喧嘩を始めようとしたそのとき、喧嘩の原因になってい
る少年が不意に現れました。

「あれ?アスカ、まだ食べてなかったんだ。先に食べていいのに」
「シンジぃ」
「シンジ様ぁ」

 2人ともさっきまで野獣みたいな目をしていたくせに、そんな素振りはまった
く見せません。

「ごめん、エステル。手伝わせちゃって」
「いいえ、シンジ様のためですもの。それでは、ごゆっくりどうぞ」

 何事もなかったように食堂を出ていくエステル

「アスカ、どうしたの?目が怖いよ」
「シ〜ン〜ジぃ、あの女とはどういう関係なのか、はっきり説明してもらいまし
ょうか」
「えっ?でも、ピラフ食べてからにしようよ。せっかく作ったのに冷めちゃうじ
ゃないか」
「それもそうね」
「はい、どうぞ」
「あら、美味しそうじゃない。カニピラフなんだ」
「腕によりをかけて作ったからね。蟹も最高級のものを使ったよ」
「「いっただきま〜す!」」

そして、ピラフを食べ終わり・・・

「ああ、美味しかった」
「よかった。アスカが喜んでくれて」

 ふあ〜と生欠伸をするアスカ。
 どうやら、もうお眠の時間のようです。

「そろそろあたし眠いわ」
「アスカ、説明しろとかなんとか言ってなかった?」
「えっ?あたしそんなこと言ったっけ」←この辺がへっぽこ
エステルのことだよね?」
「う、うん。そう・・なのかな」
「僕とエステルは、一言で言えば主人と従者の関係・・かな」
「主人・・従者・・。やっぱり、そういう関係だったのね」
「そういう関係って?」
「だから、ステディな関係よ」
「はっ?なに言ってるのか分からないよ。だって、彼女も人間じゃないんだよ」
「へっ?」
「地下室の2人組覚えてるよね」
「うん」
サムソンギデオンって言うんだ。あの2人とエステル・・・、人造人
間なんだ」
「ウソ!?」
「ある遺跡で眠っているのを発見して甦らせたんだ。一緒に戦うために眠って、
待っていたんだって。でも・・、僕はみんなを家族だと思ってる」
「・・・・・」
「怒ってるの、アスカ?」
「ううん、なんでもないの。あたし、眠いだけだから」
「そう。じゃあ案内するよ。ゲストルームだけどいいかな?」
「寝れれば、何処でもいいわ。ふわぁ」

 扉の向こうで件の3人が聞き耳を立てていたことは言うまでもありません。

「マスター、あんたやっぱりいい人だぜ」
「まだまだヒヨッコだな。だが見込みはある」
「シンジ様、嬉しいです。人間として扱ってくれるのはあなた
だけ・・・」



それから、10分後

 シンジとアスカは、”ティフェレト”と書かれたプレートが付けられたドアの
前に立っています。

「この部屋なんだけど」
「きれいにしてあるんでしょうね?」
「エステルがきれい好きだから」
「あの女が掃除したの。まあ、しようがないわね」
「じゃ、僕はこれで」
「もう行っちゃうの?」

 寂しげな表情になるアスカ。

「明日、月曜だから。学校があるんだ。別に行きたくはないんだけどね」
「学校ってなに?」
「アスカ、学校行ったことないの?」
「あるわけないじゃん!あたし、風の城に独りで住んでたんだから」
「独りで!?大変だったんだね」
「そうでもないわ。食事も、必要なものも、欲しいものもいつの間にかあるんだ
もん」
「・・・。そうだ!アスカも学校行こうよ」
「なんで?行って欲しいの」
「べ、別にそういうわけじゃ・・・」
「しようがないわね。行ってあげてもいいわよ」
「本当?よし、じゃあ久々にあれをやらないと」
「なによ?あれって」
「たいしたことじゃないよ。おやすみ、アスカ」

ドドドドッ

「おやすみ、シン・・あれ?もういない」

 アスカがとびっきりの笑顔をシンジに向けたときには、彼はものすごい勢いで
走り去って行ったあとでした。

「なによ、
あたしを無視するなんていい度胸してるわね。
下僕のくせに生意気だわ!
ちょっと懲らしめてやらなきゃ」


 妄想モード・・もとい明敏な頭脳を働かせるアスカ。

(あの慌てようは怪しいわ。もしかして・・・

「待ったかい、エステル
「いいえ、シンジ様(=^^=)」
「愛してるよ」
「あぁ、いけません。シンジ様ぁ」

 おのれぇ〜!そんなことさせるもんですか。あいつはあたしのものなんだから。
 シンジを追いかけなきゃ。でも、あいつの部屋どこかなぁ?)

「嬢ちゃん、なんか考え事かい?」
「へっ?」

 すっかり自分の世界に入っていたアスカは目の前にサムソンがいることにま
ったく気付いていませんでした。

「え〜と、サムソンだっけ」
「おうとも。”さん”くらいつけてくれ。なに悩んでるんだい?」
「べ、別にたいしたことじゃないわ」
「そうかな。マスターのことだろ?」
「シ、シンジのことなんか、別に何とも・・」
「マスターの部屋に行きたいんだろ。着いてきな」
「えっ、教えてくれるの?」
「行くのか?行かねぇのか?」
「行くわ。で、ひとつお願いあるんだけど」
「なんだ。俺にできることか?」
「カメラある?貸して欲しいんだけど」
「カメラ!?なにに使う気だ」
「うふふっ。ヒ・ミ・ツ」

 そう言いながら、小悪魔のような笑みを浮かべ妄想モードに突入するアスカ。

(証拠写真を撮れば、決定的ね。でも、あの女がいなかったら話になんないわね。
まあ、それはそれでいいんだけどぉ・・。そうだ!いいこと思いついたわ。
あたしって、やっぱ天才よね

それから、5分後

 ”ケテル”と書かれたプレートが付けられた部屋の前。

「ここがシンジの部屋なの?」
「そうだぜ。ま、頑張んな」
「う、うん」

 一人残されたアスカは気合いを入れてノブを引きます。

「アスカ、行くわよ」

 シンジくんは熟睡中でした。
 時折、訳の分からない寝言を呟くだけです。

「誰だ。僕を呼んでいるのは?僕は・・違う。
イヤだ!僕は・・僕は碇シンジだ。
やめてくれぇ、もうたくさんだ。すやすや」
←起きてんじゃないのか?

 不気味な寝言に一瞬たじろぐアスカ。
 しかし、その程度で引き下がる御仁ではありません。

「ちょっとやそっとのことで、起きそうにもないわね。
チャーンス!

 鼻歌を歌いながら、服をを脱ぎ始めるアスカ。
 生まれたままの姿でシンジの隣に潜り込むアスカ。
 そして、携えたカメラのシャッターを切ります。
 
「シンジ・・、
あんたはあたしから逃げられないのよ」

でもいいのぉ?本当にそれで。


続く

ご意見・ご感想、苦情はasuka@ikari.vip.co.jpまで!!


あとがき

ふぁう「かしら、かしら、ご存知かしらぁ?」
アスカ「あんた誰?」
ふぁう「僕は作者の代理人Dr.ふぁうすとだよ。ふぁうちゃんって気軽に呼ん
   でよ」
アスカ「そんでなんの用なの」
ふぁう「やっちゃったの?」

 バキッ!

アスカ「バカなこと言ってんじゃないわ」
ふぁう「そ、そうなの。でも、裸で抱きつくとは大胆というか」
アスカ「あ、あれは証拠写真を撮るためよ」
ふぁう「まあ、いいや。次回、分かることだもんね」
アスカ「そうよ。次回から、あたしの活躍が始まるのよっ!」
ふぁう「そうそう、学園ものになるそうだから」
アスカ「学園もの?」
ふぁう「アスカ様の制服はせぇらぁ服だよ。よかったね」
アスカ「なんで?あの学校の制服ってジャンパースカートでしょ!」
ふぁう「シンジくんの趣味だよ」
アスカ「シンジの・・。じゃ、しようがないわね(=^^=)」

 なんだか嬉しそうなアスカ。

ふぁう「そうそう、作者が感想待ってるんだって」
アスカ「だったら、もうちょっとまともなものを書きなさいよ!」
ふぁう「つ、伝えておきますぅ(T^T)」

独り言

 用語を簡単に解説致します。

・風の衣=まどろっこしいこと言っていますが、単なるプラグスーツのことです。
    作中では一種の強化スーツになっています。
・主人と従者=砂漠の中にそびえ立つ古代の遺跡と3人の従者と言えば、アレで
      すね。古いですから、分かる人は少ないかもしれませんね。
・ティフェレト=ヘブライ語で”美”を意味する。ユダヤの神秘的な秘法カバラ
       において、重要な概念図生命の樹を構成する要素のひとつ。
・ケテル=ヘブライ語で”王冠”を意味する。ユダヤの神秘的な秘法カバラにお
    いて、重要な概念図生命の樹を構成する要素のひとつ。


 藤太郎さんの『シンジくん』第4話公開です。
 

 ♪砂ーの嵐ーにー囲まーれたーー♪♪

 シンジの3人の従者、その馴れ初め。
 これは、[○ビル3世]ですね(^^)

 懐っかしい〜〜です(^^)
 

 アスカの暴走にちょっとドキドキ。
 

 さあ、訪問者の皆さん。
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