まだ朝靄に包まれた通りを5,6才の子供が1人で歩いている。
ルビー色の瞳に亜麻色の髪をした少年。
「シャムシエルのヤツうるさいなぁ。僕だって1人で大丈夫なのにさ。風よ!」
次の瞬間、一陣の風とともに少年の姿は消えていた。
天空城。
天井を天地創造と創世記戦争をモチーフにしたフラスコ画が覆っている礼拝所。
妙齢の美しい女性が1人、その画を見つめていた。
ショートカットの髪は金色に輝いている。
「ガブリエル様、ここにおられたのですか」
声の主は銀色の髪の少年。
「タブリス。相変わらず杓子定規で話すのが好きなようね」
「職務上の癖ですよ。叔母様、僕も下に行くことにしましたよ」
「そう、大変なのね。私の代わりにあの子達を助けてあげて。私はここを離れる
ことができないから」
「なんとかしてみますよ」
「ありがとう、カヲル」
「じゃ、ユイ叔母様。僕は行きますよ」
名の知れぬ砂漠にその塔はあった。
凄まじい砂嵐と流砂で守られ、何人たりとも近づくことの出来ない禁断の地。
数千年間、人を受け入れなかったこの地に人影が見える。
「ここにお宝があるんだな」
「親分、誰かに見られてるような気がしやせんか?」
「気のせいだろ。行くぞ」
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シンジの朝は早い。
それもそのはず、この家でまともに家事をこなせるのはシンジ1人なのだから。
「ふわあ。
大夢 誰か先ず覚む。
平生 我自ら知る。
草堂に春睡足りて窓外に日は遅々たり。
よし、今日もバッチリだ!」
シンジの手がなにかに触れる。
「なんだろ、これ?柔らかくて気持ちいいけど」
シンジは恐る恐るシ−ツを持ち上げ、絶句した。
そこには一糸纏わぬ姿で幸せそうに寝息を立てているアスカがいた。
シンジの顔色が赤、そして青に変わっていく。
「ア、アスカ!」
その声でアスカが目を覚ます。
「う〜ん、なによぉ。朝っぱらから。あれ、あたしなんで裸で寝てるんだっけ」
そして、固まっているシンジと目が合った。
「きゃあぁぁ。シンジ、あんたもしかして・・・」
「違うよ。誤解だって」
「ゴカイもロッカイもないわよ!あたしが寝てる間にキズモノにしたのね」
「そんなことしてないよ。手が胸に当たっただけじゃないか」
「なんですってぇ!
エッチ!痴漢!変態!
信じらんない!出てってよ」
「ご、ごめん」
慌てて部屋を出るシンジ。
シンジが部屋を出ていくと、アスカは枕の下に隠していたカメラを取り出す。
「この写真さえあれば、あいつは逆らえないわね。やったわ、アスカ」
しかし・・・
「フィルム入ってないじゃない(T^T)」
やっぱりへっぽこのようである。
アスカはお気に入りの黄色いワンピースを着て、食堂に来ていた。
「誰もいない・・・」
「当たり前よ」
「牛女!なに、その格好は!?」
いつの間にか食堂の扉にエステルが立っていました。
今日はメイド服ではなく、僧衣に身を包んでいます。
「(#-"-)。そういうこと言うわけ。シンジ様がどこ行かれたか知りたくないの?」
「うっ。し、知りたいわよ」
「そうよね。知りたいわよね。教えてあげないこともないわよ」
「どういうこと?」
「私達ではあの方の心を救うことはできないわ。だから・・・」
「あたしにそんなこと出来るの?」
「あなたなら出来るわ。だから、お願いね」
「しようがないわね。それでシンジは?」
「シンジ様なら・・・」
屋敷から少し離れた広場のような場所にいた。
彼から10Mほど離れたところに巨大な岩。
意匠の施された短剣を手に気を高める。
「ハアッ!!」
気合いとともにシンジが技を放つ。
バリバリバリバリバリバリバリ
大地を斬り裂きながら閃光が走り、大岩は真っ二つになった。
「こっちでいいはずよね。おかしいなあ」
アスカが茂みを掻き分けながら進んでいる。
「もう、イヤ〜。シャワー浴びたいなぁ」
不意に視界が開け、人工的に造られたすり鉢状の窪地が見えた。
その中央で、シンジとサムソンが対峙している。シンジは短剣、サムソンは槍
をそれぞれ構えている。
「あ、いた。シンジ・・・」
しかし、朝のことがあるので声をかけづらいアスカは咄嗟に木陰に隠れてしま
う。頭脳は妄想モードに・・・
(う〜ん、どうしようかなぁ。怒ってるよね。
そうだ!朝御飯あたしが作ってあげればいいのよ。
「これ、アスカが作ったの?すごいご馳走だね」
「シンジのために作ったのよ。さあ食べて」
「美味しいよ、アスカ。さっきはごめん。僕は君がいないとダメなんだ」
「シンジぃ」
「アスカ!愛してるよ」
これでバッチリよぉ!すごいわ、アスカ。
ああ、自分の才能が恐い。
ひゃはははっ!
むふふふっ!
うひゃひゃひゃ!)
ヤバい世界に行きかけたアスカを現実に戻したのはいつになく真剣なサムソン
の声だった。
「マスター、いよいよ最終段階に入るぜ!いいんだな」
(はっ!?あたしなんかやばかったような・・・
ん?最終段階ですって)
実は隠れ格闘マニアのアスカは、最終段階というフレーズに興味を覚えたらし
く、食い入るようにジッと見つめる。
シンジは短剣を逆手に持ち替え、居合いに似た構えをとる。
サムソンは槍を天にかざすと思い切り、地面に突き立てる。
「なに、あの構え?あんなので平気なの」
アスカがシンジの構えを不思議に思っているとサムエルの身体が変化を始めて
いた。
十数秒後、そこには5Mはあろうかという爬虫類型の巨大生物がいた。
空色の鱗に覆われ2本の角と翼を持つその姿は伝説の幻獣そのものだった。
「あれは・・・。サンダードラゴン!?」
アスカは幼き日のことを思い出していた。
いつも父親が聞かせてくれた大空を駆ける青い竜の童話のことを・・・。
ドラゴンがコウモリのような翼を羽ばたかせ、空に舞い上がる。
ドラゴンの角が一瞬光ったかと思うと強烈な雷撃が地上にいるシンジを襲う。
シンジは全く動こうとしない。
それどころか、口元に軽く笑みを浮かべてさえいる。
(いやぁあああ。シンジが死んじゃう)
そんな心配は無用のものだった。
雷撃はシンジの目の前ですべて弾かれていた。
そう、オレンジ色の八角形のフィールドによって・・・。
しかし、旋回してきたドラゴンが休む間もなく次の攻撃を仕掛ける。
巨大な火球がシンジに迫る。
シンジはそれでも動こうとしない。
「いやぁああああぁ」
内臓破裂、左腕損傷、両足骨折おまけに頭蓋骨骨折。
常人ならとうに死んでいるような重傷を負ったシンジがアスカの膝を借りて、
木陰で休んでいる。
「シンジ、死なないで。あんたが死んだら・・・」
血塗れのシンジに今にも泣き出しそうなアスカ。
怪我をしている当人のシンジは冷静そのもの。
「平気だよ。このくらいの怪我、1時間もあれば治るんだ。でも、今日は学校行
けそうにないや。ごめん」
そう言っている間にも、身体の再生は始まっている。
「なんで、あんたが謝るのよ」
「ちょっと眠ってもいいかな?」
「う、うん。いいわよ」
「ありがとう」
アスカは自分の膝で寝息を立て始めたシンジの顔を幸せそうに見つめる。
2人の時間は永遠に続くかと思われた。
が、近くの茂みからガサゴソと騒々しい音を立ててサムソンが現れ、アスカの
幸せなときはあっけなく終わりを告げた。
「嬢ちゃん、急に飛び出しちゃ危ないぜ!」
「あ、あんたは!?こ、これは仕方なくやってるんだから。別にシンジなんて」
「なんのことだ?それにしてもこりゃひどいな。まあ、技は完成したからいいよ
うなもんだけどな」
「ふ〜ん、その技って?」
「抜刀術のスピードを応用した剣技さ。なんと炎を斬り裂いて敵を攻撃できるん
だぜ!実体のないものを攻撃できるこの技こそまさに最強!!」
サムソンは1人悦に入っている。
「それってなんの役に立つの?」
「確かに今は必要ないかもな。だが必要になる日が来るかもな」
「それってどういう意味?」
キュイーン
森に甲高い金属音のような音が木霊する。
その音は徐々に近づいてくる。
「なんの音かしら」
「ギデオンのヤツだな。俺はそろそろ行くぜ」
「どこ行くの?シンジが怪我してるのに・・・」
「マスターのために行かなきゃ行けないんだぜ!嬢ちゃん、留守を頼んだぜ」
それだけ言うと、サムソンはアスカの前から忽然と消えた。
「じゃあな、嬢ちゃん!」
上空を青い竜と赤い巨鳥が飛んでいく。
「メシアか。まだ少年ではないか。しかし、あの力は・・・」
長身で引き締まった体格の真っ黒なスーツの男が見ていた。
整った顔立ちだが、その眼光の鋭さは他を圧倒している。
「イヤな仕事を引き受けちまったな」
身体の復元が終わり、朝食も済んだシンジはアスカと自分の研究室にいた。
「シンジ、なにやろうって言うのぉ?まさか・・・」
再び、妄想に走るアスカ。
(こんな薄暗い部屋で2人きりということは
「アスカ、いいだろ?」
「え、でもぉ」
「アスカじゃなきゃダメなんだ」
「シンジならいいよ」
「アスカ!」
「シンジぃ!」
ドキドキ。まだ、心の準備が出来てないのに。
でも、シンジにならあげてもいいかもぉ。
むふふっ!
うひゃはははっ!)←なにをあげるんでしょう?(?_?)
「どうしたの、アスカ?顔が赤いけど。適当にその辺の椅子にでも座っといてよ」
「へっ?」
「一仕事しないといけないんだ。すぐ終わるから」
「なにやろうっていうのぉ?」
「アスカの入校手続き(ニヤリ)」
不気味な笑みを浮かべるシンジ。
またなにかよからぬことを企んでいるようである。
NS-DOS SYSTEM VER1.15 program start..... open gate ID:check...ok! password:check...ok! name:ASUKA LANGLEY SOURYU sex:female age:fourteeen family:clear...ok! wealth:no problem...ok! |
地道にハッキング作業を進めるシンジ。
「シンジぃ、まだ終わんないの?」
「終わったよ。これで明日から一緒に学校に行けるよ」
「まあ、あんたがどうしてもって言うから行って
あげるのよ。分かってるの、バカシンジ!」
「分かってるよ。ありがとう、アスカ」
「シンジぃ、どれがいいかな?」
アスカはベッドに並べた服を前に難しい顔をしている。
「あの、アスカ・・・」
「なによ?このワンピースの方がいいの?」
「そうじゃないよ。学校は私服じゃダメなんだ」
「そうなの?でも、あたし学校行ったことないから制服持ってないわよ」
「だから、これ」
シンジはそう言いながら、紙袋をアスカに手渡す。
紙袋の中にはシンジが手の者を使って、手に入れたセーラー服が入っていた。
「なかなかセンスいいじゃない」
「そ、そうかな」
「着替えるから」
「う、うん。分かったよ」
そして、数分後。
セーラー服に着替えたアスカが部屋から出てきた。
「シンジぃ、どう?」
「かわいいよ」
「制服が?」
シンジは顔を赤らめ、恥ずかしそうに小さい声でそれに答える。
「アスカが・・・」
アスカも赤い顔で俯いてしまう。
「ありがとう」
潤んだ瞳で見つめあいながら、唇を重ねようとしたそのとき・・・
「親分、なにもありませんぜ」
「文献によるとそうなんだが。ん?これは・・・」
100カラットはありそうな薄緑色の美しい宝石が壁に埋め込まれている。
「おい、これはすごいぞ!」
「やりやしたね、親分」
2人は早速宝石を取り外しにかかる。
バキッという音ともに宝石が壁から外された。
「やったぜ!!」
「親分、これで借金も返せますぜ」
宝石が外された瞬間、塔から空に向けて虹色の光が放たれる。
そして、壁に血の花が咲いた。
program start..... name:scorching wind 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す! すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ! すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ! すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ! すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ! すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ! すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ! すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ!すべてを破壊せよ! 世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に! 世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に! 世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に! 世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に! 世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に! 世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に! 世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に!世界を再び混沌に! 承認!!! genocide program:clear |
続くでござ〜る
ご意見・ご感想、苦情はasuka@ikari.vip.co.jpまで!!
あとがき
がうがう、藤太郎でござ〜る。
拙者は強いシンジくんが書きたかっただけでござ〜る。
アスカ様に幸せになってもらいたいだけでござ〜る。
がうがう、でもラブラブは書けないでござ〜る。
しかも相変わらず読みにくいへっぽこ文章でござ〜る。
拙者には拙者の道があるでござ〜る。
さらばでござ〜る。
独り言
用語を簡単に解説致します。
・「大夢 誰か先ず覚む。平生 我自ら知る。草堂に春睡足りて窓外に日は遅々
たり」=三国志演義の中で諸葛亮孔明が昼寝から覚めたときに吟じた詩です。
・抜刀術=居合いとも言います。刀を鞘に収めた構えから抜刀。一瞬で攻撃に移
る剣技です。攻撃のタイミングを外すと命取りになるので多用するのは
やめましょう(笑)。
藤太郎さんの『シンジくん』第5話、公開です。
なにやら強力な技を会得したシンジくん。
「必要になる日」
その日は迫ってきているようですね。
名も知らぬ砂漠で起きた事件・・・
何が動き出し、
何が起ころうというのでしょうか・・・
さあ、訪問者の皆さん。
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