光。
遙か天空に浮かぶ幻の城。
「サタンよ・・・。審判の時は来た。好きにするがいい」
闇。
雷光に照らし出される巨大な城のシルエット。
この城の主は、美貌の青年。
彼は、闇の中の腰掛けている。
その顔に読み取れるのは苦悩。
「ベリアルめ、なにを企んでいる。主よ・・・」
玉座の前の空間が歪み、貧相な老人が姿を現す。
「デカラビアか。首尾は?」
「心配いらんぞ。なんせ、あの者と一緒じゃからのぉ」
「まさか!?」
「そのまさかじゃよ」
「あたしは人間よ!悪魔なんかじゃない!!悪魔なんかじゃ・・・」
「アスカ・・・」
目の前に悪魔がいて、命の危険にさらされているにも拘わらず、2人の世界に
はいるシンジとアスカ。フルフルの中でなにかが切れた。その本性を現し、
2人に襲いかかる。
「おみゃあら、オラを無視するだか?死ねや」
しかし・・・
「キャハハハ、かわいいっ。もしかして、ぬいぐるみ?よくできてるわね」
「フルフル!?なんだ、ザコか・・・。つまらないな」
フルフル自身は凄みをきかせているつもりなのだが・・・
ニコニコと機嫌の良さそうなアスカ。
なんだか残念そうにしているシンジ。
「オラをバカにしてるだすな。殺す!」
アスカの目から、愛らしさが消え、狂気を帯びてきた。
「あたしを殺す?フフフッ」
アスカはそう言うと、真紅の宝石があしらわれたペンダントを頭上に掲げる。
次の瞬間、彼女は血の色に染められたウェット・スーツのようなものをまとって
いた。
「殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!」
突如として、地下室の扉が勢いよく開かれ、薄暗い地下室に光が射し込む。今
まさに、フルフルに飛びかからんとしていたアスカの動きが止まる。
「マスター、なに遊んでるんだ?女といちゃついている暇があったら、とっとと
寝な!明日、学校だろ」
「フッ、愚か者め。懺悔せよ!」
「「「へっ?」」」
声の主は、踊り場に立つ2人の青年だった。
一人は、女性と見間違えるような端整な顔立ちをしたブロンドの青年。神父の
ような服を着て、分厚い聖書を小脇に抱えている。
もう1人は、腰まである栗色の髪を三つ編みにした青年。こちらは、牧師のよ
うな服を着ており、装飾の施された長槍を手にしている。
突然、現れた異様な2人組のおかげ(?)で、とりあえずアスカ暴走の危機は
免れた。いち早く、正気に戻ったシンジが、2人に話しかける。
「サムソン!ギデオン!見つけたんだね。よかった」
「マスター、話は後にしようぜ!まずは、このザコを片づけてからだ」
「フッ」
シンジと青年のやりとりで、ようやく正気に戻ったアスカとフルフルが、素っ
頓狂な声を上げる。
「な、なんだす?おみゃあらは」
「なんなのよぉ、どうなってんのよ?」
「フッ、今から死にゆく君にとって私の名前など無用のはずだ」
ブロンドの青年が、感情を感じさせない冷たい声で言い放つ。
「「ひっ」」
青年の口撃はなおも続く。
「懺悔せよ。ここで死ぬ前に君の今までの悪行を悔い改めよ!さすれば、肉体は
滅びても魂は救われるであろう」
「あ、あたしは悪くない。いやぁあああ、死にたくない」
アスカは泣きながら、目の前のフルフルと踊り場に陣取る青年たちをはね飛ば
して、地下室を出ていった。
「ギデオン、冗談はやめろよ。僕はアスカを追いかけるから」
シンジは、慌てて彼女を追いかけるのだった。
「ギデオン、お前外道だな。女を泣かせるなよ」
「フッ、私は真実を語る者。人様に誹られるような真似はしていない。それより、
あのザコを片づけなくてはいかん」
「分かってるさ!俺が、負けるわけないだろ」
「愚か者め!」
「なんだよ」
「死の伝道者ギデオンとサムソンの前では、たとえ誰であろうと死あるのみ。低
級悪魔のフルフルに我らが勝利することなど、目を閉じていても分かる」
「じゃあ、なんだ?」
「何秒で倒せるかと聞いているのだ」
「はっ?ああ、一分もありゃやれるぜ」
「遅い!10秒で片づけろ。私が詩編55章24節を朗読し終える前にな」
「やれやれだぜ。そういうわけだ。覚悟しな」
「・・・おみゃあらもオラをバカにしてるだすね。ゆるさんだす!必殺サンダー
ボルトだす」
フルフルの角から稲妻が放たれ、踊り場を直撃する。
「思い知っただすか。オラをバカにするからだすよ」
「遅いな。お前の動き、止まって見えたぜ」
「フッ、地獄で懺悔せよ。やれ、サムソン」
「そ、そんにゃあ」
アワワと焦るフルフルに、サムソンが容赦なく猛ラッシュをかける。ギデオン
は、朗々と詩編の朗読を始める。
「神よ、
あなた御自身で滅びの穴に追い落としてください。
欺く者、流血の罪を犯す者を。
彼らが人生の半ばにも達しませんように。
私はあなたに依り頼みます」
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ」
「ぐへぇー」
「アリーヴェデルチ!!」
暴風悪魔フルフル消滅。
アスカは、地下室を飛び出したものの、家の中で迷子になっていた。
「どうなってんのよ。さっきから、同じところグルグル回ってるような気がする
けど」
シンジが追いついた。彼の仕掛けたトラップ・無限回廊にアスカが見事なまで
に引っかかってくれたおかげである。
「アスカ!待ってよ」
「シンジ・・・。なんで、追いかけてきたの?」
「なんでって・・・。心配だから」
「いいのよ、無理しなくたって。あんただって、ホントはイヤなんでしょ?」
「そんな悲しいこと言うなよ。僕もアスカと同じだから・・・。分かるんだ」
「えっ?」
続く
ver.-1.00 1997-07/27 公開
ご意見・ご感想、苦情はasuka@ikari.vip.co.jpまで!!
あとがき
なんかだんだん切れてきました。まともなのは最初の数行だけ。でも、
これで学園ラブコメに入る下地が完成。次回から、学園ラブコメに突入
する(予定)です。
次回、明かされるシンジ出生の秘密(ホントです)
ご意見、ご感想なんでもいいから、一言でいいからメールください!
独り言
用語を簡単に解説致します。
・装飾の施された槍=エヴァでおなじみのあの槍です。手にした者は、世界の頂
点に立てると伝えられます。
・詩編=旧約聖書に収録されています。かなり長いので、読むと疲れます。
・サンダーボルト=アメリカの軍用機ではない。雷を発生させ、雷撃を行う魔法
です。かなり強力です。
・「アリーヴェデルチ」=イタリア語で”さようなら”の意。詳しいことは、ジ
ョジョの奇妙な冒険(集英社発行/原作荒木飛呂彦)を
見てください。
(Cf)「無駄無駄ぁ」、「オラオラオラ」、「燃え尽きるほどヒート!」
・無限回廊=いくら歩いても同じ場所に戻ってしまう根性の悪いトラップの一種。
普通は屋外(森など)に仕掛けます。
藤太郎さんの『シンジくん』第3話、公開です。
フルフルって何だったんでしょ?(^^;
特徴的なセリフ回しを持っていたのですが、
アスカやシンジに笑われ、無視され・・
そして、
いきなり登場のオリキャラに楽勝で消されて・・・
【暴風悪魔】の名が泣くぞ(笑)
さあ、訪問者の皆さん。
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