「あの、君誰なの?」
シンジは疑問に思っていることを素直に口に出しただけなのだが、少女は烈火
の如く怒りだした。
「あんた、バカぁ!自分でやったことも分からないなんて、最低ね」
「そ、そんなこと、突然言われても。もしかして・・君が悪魔?」
推定IQ400の天才児であるシンジは、一瞬ですべてを把握したかったのだ
が、残念ながら出来なかったようである。
(悪魔ってメフィストフェレスとか、オセとか、もうちょっと迫力あるもんじゃ
ないのかな。まぁ、この子も別の意味で迫力あるんだろうけど)
シンジの前に立っているのは、超美少女だった。金色に輝く髪に、空のように
青く澄んだ瞳に白い肌。
(きれいだ・・)
「なに、ジロジロ見てんのよ。あんた、まだ疑ってるでしょ?」
「そ、そんなことないよ。ただ(どこかで会ったことがあるような・・)」
「なによ?(なんでだろ?なんか懐かしい気がするわ)」
「君みたいにきれいな子見たことないから、つい」
「そ、そうなの。でも、あんたに言われても嬉しくないけど」
と、言いながらも少女は、まんざらでもなさそうだ。その証拠に頬がほんのり
赤く染まっている。
「あんた、名前は?」
「僕は碇・・碇シンジ」
「シンジかぁ。フ〜ン。あたしは、惣流・アスカ・ラングレー」
「え?アスカ、そんな名前、”魔法大全”にも出てなかったし、”魔界紳士録”
にもなかったけど」
「あったりまえじゃない!アスカは、人間界での名前だもん。なんか知らないけ
ど、みんなはオリエンスとか呼んでるみたい」
「風の界王オリエンス!?」
「あら、シンジ知ってんの?」
「・・っていうことなんだよ。分かった?」
「それで?あんた教え方悪いんじゃない。さっぱり、分かんないわよ。ん?この
ペンダントは」
「母さんの形見なんだ。あれ、惣流さんも?」
「あたしのも、ママの形見・・」
シンジは、オリエンスのことをアスカに丁寧に教えたのだが、彼女を納得させ
るまでなんと1時間もかかってしまった。
「シンジ、あんたなんで・・なんで、あたしを喚んだの?あんたもやっぱり・・
やらせろとか言うの?」
「は?」
それまで、ニコニコして機嫌が良さそうだったアスカが、急に暗く沈んだ表情
に変わる。
「そ、惣流さん。どうしたの?」
「アスカでいいわよ、シンジ」
「ア、アスカ。僕は・・」
「やりたいんでしょ?」
「そう、やりたい・・って違うよ!そうじゃないって」
「じゃ、なに?」
アスカは、またニコニコ顔に戻っている。その顔を見て、シンジもほっとする。
「僕は・・世界を一つにしたいんだ。みんなが幸せに暮らせる世界を・・こんな、
こんな腐りきった世界なんて・・・」
「へぇ、シンジ凄いじゃない。女みたいな顔してるくせに」
「だから・・」
「あたしを喚んだのね。シンジみたいなヤツ、はじめてよ。じゃあねぇ・・」
アスカはなにかよからぬことを考えついたらしく、シンジに聞こえないように
小声で「チャ〜ンス」と呟いた。
「金はあるの?金は」
「少しぐらいはあるよ。10億までなら、用意できるよ」
「へっ?10億〜」
一瞬、凍りつくアスカ。しかし、それくらいでめげないアスカは、明晰な頭脳
をフル稼働させます。
(なんで、そんなに持ってんのよぉ。
「1万はいるわね」←この辺がへっぽこ
「そんな持ってないよ」
「じゃ、あたしの下僕になりなさい」
「はい、アスカ様。喜んで」
って、なるはずだったのに〜。き〜。そうだ、もっと要求すればいいんじゃない。
やっぱ、あたしって天才だわ。グフフフ)
シンジは、突然シンちゃん笑いを始めたアスカを心配そうに見つめています。
「あの〜、アスカ。大丈夫?」
「ひゃ?なんでもないわ。そうね。9999兆9999億9999万9999円
は、最低でも必要ね」
「そんなの無理だよ。約束したのに・・」
ガックリと肩を落とし、落ち込むシンジ。ブツブツと独り言を始め、今にも、
壊れそうである。アスカはというと、してやったりという顔をしている。
「で・も、シンジが、あたしの下僕になるって言うんなら、考えてあげないこと
もないかなぁ」
「え、本当?僕の命と引き替えだっていいんだ。僕には・・・僕は生きてちゃ、
いけないんだ」
シンジは、何故頬を叩かれたのか分からず、アスカの顔を見る。彼女の青い瞳
から、涙が溢れ出ていた。
「なんでそんなこと言うのよ!」
「ご、ごめん。僕のことなんて、誰も気にかけてくれやしないから。僕のために
泣いてくれるの?」
「バ、バカ!なんで、あんたのために泣かなきゃいけないのよ。あたしより、幸
せなくせに」
「アスカ・・ごめん。もう、あんなこと言わない。下僕になるし、なんでもする
から泣かないで」
「ホント?あたしの言うことなんでも聞いてくれる?」
「うん。分かったよ。なんでも聞いてあげるから」
「(ニヤリ)分かったわ、シンジぃ。ありがとう!」
ニッコリとシンジに微笑みかけるアスカ。シンジは、謀られたと気付いたが、
時すでに遅し。
「シンジ!あんたは今日からあたしの下僕よ。いい?だから、あんたの願いなん
て聞いてやんない(あたしにそんな力あると思ってんのかしら?それは、それで
嬉しいんだけど)」
「そんな、ひどいよ」
「で・も」
「な、なに?」
「手伝ってあげるわ」
「え、本当?」
「そのかわりにね。シンジと一緒にその・・・いたいんだけどぉ」
「一緒に!?ダメだよ!僕、まだ中学生だし」
「あたしね、行くとこないんだ。まさか、下僕のくせに逆らう気ぃ?」
「アスカ・・、分かったよ」
「そうそう、それでいいのよ。はぁ、疲れたわ」
「そうだね。もう遅いしね。アスカ、おなか空いてない?」
「太るから、イヤ。って、言いたいところだけど、おなかペコペコなのよ」
「じゃあ、ここ出よう。アスカに会えたから、もうこの部屋にいる必要ないよ。
ピラフでも食べようか?」
「うん。行こう、シンジ!」
天使の姿をしたモノが地面から現れ、2人の行く手を遮った。それは神々しい
姿のわりに、間の抜けた声で話し始めた。
「田舎芝居は終わったけ?オラ、退屈だっただよ。オリエンスさぁ、オラのため
に死んでけろ。オラだって、出世したいんだ」
「ぎゃ〜、なんなのよ。もしかして、悪魔?シンジぃ、助けて!」
「あの、アスカ・・。君も悪魔じゃないの?」
続く
ver.-1.00 1997-07/23 公開
ご意見・ご感想、苦情はasuka@ikari.vip.co.jpまで!!
あとがき
アスカ様が、へっぽこになってしまいました。シンジくんもへっぽこ。
悪魔もへっぽこ。みんなへっぽこだぁ。
次回、悪魔とアスカ様のへっぽこ対決(ウソです)。
ご意見、ご感想なんでもいいから、なにか教えてください。
それでは!!
独り言
アスカ様が未だ見ぬパパを探しに出るというガイガーの外伝を制作中。発表は
未定。でも、パパは決定済み。
藤太郎さんの『シンジくん』第2話、公開です。
シンジが呼び出したのは、かわいい悪魔。(なんか恥ずかしい修飾だなあぁ(^^;)
悪魔と呼ぶには余りも愛らしいアスカちゃん(^^)
でも、中身は正に[小悪魔]・・・可愛いなぁ(爆)
アスカちゃんはこれだけの容姿だから・・・・
「やらせろ」って何回も言われてたんでしょうね・・・
でも、今回呼び出したのはシンジ。
そんな命令をするはずが・・・無い?(^^;
ある意味電波な願いをされたアスカちゃんの対応、
ラストで現れた謎の生き物。
どんな波乱が起きるのでしょうか(^^)
さあ、訪問者の皆さん。
小悪魔アスカちゃんを描く藤太郎さんに感想のメールを!