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シンジが連れて来られた広大な空間。
暗闇に照明が付くと巨大な顔が浮かびあがった。

「顔・・・・巨大ロボット?」

それはここに来る途中で見た使徒とかいう怪物と比べても見劣りしない大きさだった。

「人の造り出した究極の汎用決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機。建造は極秘裏に行われた。我々人類の最後の切り札よ」

シンジの左隣に立つリツコが説明をする。

「・・・・これも父の仕事ですか?」

「そうだ!」

シンジの問いに答えるように声が響いた。
声のする方向をシンジが見ると・・・・

「久しぶりだな」

「父さん」

父であるゲンドウの姿があった。

「出撃」

シンジの右隣に立つミサトが驚く。

「出撃?零号機は凍結中でしょ?まさか初号機を使うつもりなの?」

「他に道はないわ」

冷静に答えるリツコ。

「ちょっと、レイはまだ動かせないでしょ!パイロットがいないわよ」

「さっき届いたわ」

リツコの言葉にミサトははっとしてシンジを見た。

「まじなの?」

リツコがシンジに向き直る。

「碇シンジ君」

事情が読めないシンジは返事をするしかない。

「はい・・・・」

「あなたが乗るのよ」

「えっ?」

シンジは驚くしかなかった・・・どういう事なのか?
ミサトが反論する。

「無理だわ!」

ミサトにリツコが言い返した。

「今は使徒撃退が最優先事項です。そのためには誰であれ、エヴァとわずかでもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか方法はないわ。わかっているはずよ、葛城一尉」

ミサトは言葉を失った。
リツコの言う通り、それしかないのだ・・・たとえどんなに無茶な話であっても。

「そうね・・・」

ミサトが同意の意志を示したのを見てシンジはうつむいてしまう。

「無理だよそんなの・・・・見た事も聞いた事もないのに、できるわけないよ!」

シンジの言葉もまた、言う通りだった・・・
しかし父の言葉はあくまで冷徹だった。

「説明をうけろ」

「そんな・・・・できっこないよ!こんなの乗れるわけないよ!」

ごねるシンジにゲンドウは最後通告を告げた。

「乗るなら早くしろ。でなければ・・・・帰れ!!」

ゴオオンッ・・・・

爆発音がケイジ内に響き、天井がふるえる。
上を見ながらゲンドウは呟いた。

「奴めここに気付いたか」

うつむいたままのシンジにリツコが言い放つ。

「シンジ君、時間がないわ」

シンジはミサトを見た。
しかし彼女の言葉も彼を救ってはくれなかった。

「乗りなさい」

無言のシンジに顔を近付けささやくミサト。

「だめよ、逃げちゃ。お父さんから・・・・なによりも自分から・・・」

「わかってるよ!だけど・・・・・だけど!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

その時、シンジの心がはじけた・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「やります!僕がのります!!」
 

突然、き然とした態度で父に向かってシンジは叫んだ!
そのあまりの変わり様にミサトもリツコも仰天する。

「シンジ君・・・・」

声をかけるミサトを無視してシンジはゲンドウに話し続ける。

「そのかわり条件があるんだ・・・・・・」

「条件って?」

質問したのはミサトだった。
ゲンドウは表情を崩さず立ったままだ。
シンジは一息つくと言葉を続けた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「父さん・・・・・・・・今度こそ親子一緒に暮らそうよ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ゲンドウのこめかみが痙攣した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

父の日記念作品
 
 

     ゲンドウという名の父親
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だめだ」
 

ゲンドウはかなり間があいた後、答えた。
すかさずシンジは言い返す。

「なんでだよ!僕はもう・・・一人はいやなんだ!だから・・・・エヴァンゲリオンでもなんでも乗るから、一緒に暮らそうよ!」

「だめだ」

「そんな・・・どうして・・・父さん!

膝を折り、うずくまるシンジ。
ミサトが叫んだ。

「総指令、シンジ君が乗ると言ってるんです!条件を受け入れればいいじゃないですか!!」

リツコが同調する。

「そうですわ、人類存亡の危機なんです。親子が一緒に住むのは当たり前なのに、それを拒否して人類が敗北したらどうするんです!」

「・・・・だめだ」

ゲンドウの額に一すじの汗が流れる。
 

「うあああああああ、父さん〜
 

シンジが泣き叫びだした。
 

「僕が乗るって言ってるのに〜どうしてだよ〜」

ゲンドウは無意識に一歩後ずさっていた。
ミサトがシンジを気遣う。

「大丈夫よ、必ず総指令と一緒に住めるようにしてあげるわ。だからとにかく今はまず、エヴァに乗って・・」
 

「父さんがうんと言わなきゃいやだ〜〜」
 
 

「シンジ君・・・・・・総指令!他に方法はないです、条件を呑んでください!」

ミサトの訴えに答えず、ゲンドウは新たな命令を下した。

「レイを起こしてくれ」

「総指令、何考えてるんですか〜!!」

ミサトはすでにキレかかっていた。
 

通路から移動ベッドが医者と看護婦によって運ばれてきた。
その上には包帯で体の半分位が隠された少女が横たわっていた。
その姿を見たシンジはこの水色の髪の少女がレイであると知った。

「ひどい・・・・そんな・・・・無茶だ・・・・僕が乗るって言ってるのに〜!」

ゲンドウの命令が聞こえる。

「レイを初号機に乗せろ!」

「だめです」

リツコが即座に答えた。

「なに!」

「シンジ君が乗るべきです。今のレイに人類の未来は託せません」

「父さ〜ん一緒に住もうよ〜!!ぐすっ」

「総指令!御決断を!」

「わ、私の命令を聞けんのか、レイを初号機に乗せろ!!」

ゲンドウの声がうわずっている。

「この〜!いいかげんにしろ〜、このヒゲオヤジが〜!!」

ミサトがタンカを切った!!

「あんたがうんと言ったらすむ話じゃないの!使徒撃退が最優先でしょが〜、それをあんたの都合でねじまげられてたまるか〜!!こうなったらなにがなんでもシンジ君と同居させてやる!」
 

どんっ
 

突如、室内全体が大きく揺れると天井からライトが落下した。
その真下にはシンジがいる!

「あぶない!」

と、その時水面から初号機の巨大な手が現れた。
落ちて来るライトがその手にはばまれ、シンジは難を逃れた。
リツコは驚きの目でその手を見つめる。

「まさか?ありえないわ!エントリープラグも挿入してないのよ!動くはずないわ!!」

ミサトはその有り様を見て確信した。

「いける!後は・・・・あのヒゲオヤジだけね!!

ミサトはゲンドウのいるブースへ矢のごとく突っ走った。

「これでもレイを乗せるって言うんですか!?」

リツコの問いに無言のゲンドウ。
汗の量が増えている。
少しずり落ちた眼鏡を直す。

「こら〜そこを動くな〜!!」

ミサトがゲンドウに飛びかかる!

「何をする!私は総指令だぞ!!」

「そしてシンジ君の父親だろがあ〜〜」

「うわ」

ミサトがゲンドウに組み付く。
赤い眼鏡が吹っ飛んだ。
あっという間に羽交い締めにされたゲンドウにミサトが詰め寄る。

「シンジ君にエヴァに乗ってもらうためにはどーしてもあんたにシンジ君と親子仲良く暮らしてもらわないといけないのよ!だいたいなんで同居を拒否するのよ!答えなさい!!」

(絶対言えない・・・・これだけは!)

「何だまってるの!人類滅びちゃうわよ、このままじゃ!!シンジ君と一緒に住むと言いなさい!!」

「碇、何をしておる」

いつの間にか二人の背後に冬月副指令が立っていた。

「副指令!」

「ふ、冬月」

「まったく、いつまでたってもエヴァが出撃せんと思ったら・・・・」

ため息をつく冬月。

「使徒がすぐそこまで迫っておる。もはや余裕がない。早くシンジ君を出撃させてくれ」

「その事ですが副指令・・・」

「話してる時間もない。だから・・・・・・・碇にシンジ君との同居を了解してもらわねばな」

「冬月ぃ〜!」

顔面蒼白となったゲンドウの前に数人の黒服の男達が現れた。

「連れて行け!」

「はっ」

ゲンドウを拘束して連れ出す黒服達。

「やめろ、総指令の命令が聞けんのか!」

リーダー格らしい男が答える。

「我らとて死にたくはない。使徒に滅ぼされないためには我々がどうすれば良いかくらいはわかる」

「おい、待て・・・・・・・待ってくれ〜!

ゲンドウは自分の周りに味方が一人もいない事に今頃気付いた。
いや、もしかしたら一人はいたかもしれない、しかし・・・・・
レイはベッドから落っこちて額から流血していたのだが、誰もその事に気付いてはいなかった・・・・
 

どてっ

シンジの目の前にゲンドウが突き出される。

「父さん!大丈夫!?」

駆け寄るシンジに父は何も答えない・・・いや答えられない。

「碇、言ってもらうぞ。シンジ君と暮らすとな」

「早く言え!ヒゲオヤジ!!」

「マギは全会一致でシンジ君と総指令の同居を決議しました」

背後から三人のプレッシャーを受けるゲンドウ・・・・しかし逃げようにも正面にはシンジがいる。
シンジはゲンドウの顔色を伺いながら答を待っている・・・・・
すでにゲンドウの脈拍は一分当たり180を超えていた。
汗が滝のように流れ、脱水症状になりかけていた。
それでも、こればかりは言えない!

「・・・・だめだ」

がすっぼこっどすっ

情け容赦のないミサトの拳とリツコのカカトと冬月の膝が同時にゲンドウの後頭部に決まる!
三人の表情に罪の意識はかけらも感じられない。
床に額を打ちつけて倒れるゲンドウ。

「やめてよ!父さんに何するんだ!」

ゲンドウを引き起こすシンジ。
父は鼻血を出していた。

「父さん、大丈夫?・・・・父さん、どうして一緒に住んじゃいけないの?親子じゃないか〜!!

再び泣き出すシンジ。
その姿を見てもゲンドウは真実を語れなかった。

(言えん・・・・絶対言えん!・・・・シンジが恐いなんて・・・・はずかしい・・・第一理由にならん!!

他の理由を言うしかない。

「・・・・・私には父親たる資格がない・・・・」

「あるよ」

一言の元に否定されてしまった。

「シンジ君があると言う以上あるわね」
 
「うむ、ある」

「あるのよ!ヒゲ」

八方塞がり、四面楚歌、陸に上がった鯉、手も足もでないダルマさん状態、万策尽きたゲンドウに追い討ちをかけんと冬月が耳もとで声をひそめて囁いた。

「碇、シンジ君に代わりはいないがお前の代わりならいくらでもいるぞ。なんならお前のシナリオを私が引き継いでもかまわん。そうなればお前は永遠にユイ君には会えん。それでいいか?」
 

ぎくっ
 

「冬月!!何を?!」

「ユイ君に再び会いたいなら少々の事は我慢しろ。シンジ君とお前が一緒に住めばきっとユイ君も喜ぶ」

「副指令、何をお話ですか?」

「いや、こっちのことだ」

リツコの問いをかわすと冬月は初号機を見上げた。

「初号機もおそらくシンジ君と碇が親子仲良く暮らす事を望んでいるはずだよ」
 

ぎしっ
 

突然、さっきシンジをかばった初号機の手が装甲をきしませながら動き出した。
皆の注目がその手に集まった・・・・・・・・
 
 
 

・・・・・・・・・・人さし指と親指が輪をつくった。
 

「おお、初号機も賛成しているぞ!」
 

(ユイ・・・お前まで〜・・・・)
 

 初号機のOKサインにとどめを刺されたゲンドウは灰となって燃え尽きた・・・・・
 
 
 

「父さん、しっかりしてよ・・・・父さん」

「・・・・・・・・・」

「父さん、僕エヴァに乗るよ・・・・だから父さん・・・」

シンジがゲンドウの手をとった。
もはやゲンドウはされるがままになっている。

「いっしょに住もうよ」
 
 
 

「・・・・・・・・・わかった」
 

「え?」
 
 

「・・・・・わかった」
 

「父さん?」
 

「わかったから・・・・早く乗れ・・・・」
 

「父さん!!ありがとう〜!」
 

「よかったわね、シンジ君!!ついて来て!出撃よ!」

「はい!父さん、また後でね!!」

あっという間に各自がそれぞれの持ち場に戻り、床に這いつくばったゲンドウだけが取り残された・・・

・・・・いや、もう一人、ベッドから落っこちたまますっかり忘れ去られた少女・・・・
 

「・・・・・・・・・こんなときどんな顔していいかわからない・・・・・」

と言ってるわりに血にまみれた彼女の眉間には縦じわが寄っていた。
 


エヴァンゲリオン初号機は使徒を撃退した。
 



 

シンジはベッドの上で目を覚ました。

「はっ・・・・・知らない天井だ・・・・そーだ、父さん!

ベッドから跳ね起き、急いで着替えると、病室から飛び出すシンジ。
通路に出ると移動ベッドがこちらに向かって進んで来る。
ベッドの上に横たわるレイが目でシンジを追っている。
シンジは・・・レイが見えてなかった。

「父さ〜〜ん!!」

ベッドを素通りして走り去るシンジ。
 
見送りながらレイはぼそっと呟いた。

「・・・・こんなときどんな顔していいか・・・・わかってきたわ・・・・」

レイは眉間に縦じわ、こめかみに血管が浮き上がり、口元は・・・・笑ってた。
 
 
 

「父さ〜ん、あ、ミサトさん」

「あらシンジ君、元気になったのね。実はあなたを迎えに来たのよ。さあこっちへ来て」

ミサトはシンジを連れてエレベーターの前まで来た。
エレベーターの扉が開いた。
そこには必然的にゲンドウが立っていた。

「父さん!」

「シ、シンジ」

ゲンドウは無意識に受け身の体勢をとっている。

「シンジ、折り入って話がある、さっきのことだが・・・」

ずずいっ

背後の黒服達に押し出されるゲンドウ。

「ご苦労様、それじゃ総指令の部屋まで案内するわ」

「はい!」
 
 前を歩くシンジとミサト、その後ろから屈強な男達に両肩をつかまれ無理矢理歩かされるゲンドウ。
程なく彼らはネルフ本部内にあるゲンドウの部屋の前に着いた。

「お待ちしておりましたわ、総指令」

そこにはリツコ、冬月副指令、マヤ、マコト、シゲルといった連中が顔を並べていた。

「よく決心してくれたな、碇。おかげで使徒もシンジ君が倒してくれた。後は親子水入らずでゆっくりすごすといい」

「冬月!!だから話を・・・・」

ドアが開く。

ゲンドウが部屋に押し込められた。
室内に転げ込んだゲンドウ。
起き上がり、外を見ると今まさにシンジが部屋に入ろうとしている。

ミサトが声をかける。

「さっ、入って」

「・・・あ、あの・・・お邪魔します」

「シンジ君、ここはあなたのウチなのよ」

どくんっ

ミサトの言葉にゲンドウの鼓動が暴れ太鼓と化す。
シンジはミサトに背を押されてゆっくりと敷居をまたいだ。
 

 どくんどくんどくんどくんどくん・・・・・
 
 

(く、来る・・・・シンジが・・・・!)
 

 
どくんどくんどくんどくんどくん・・・・・
 
 

「た、ただいま・・・・父さん」
 
 
 
 どっくんっ
 
 

(逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃ・・・・・やっぱり逃げたい!
 

言うまでもなく、逃げ場はどこにもない・・・・・・
 
 
 
 
 

・・・・・・・涙声になりながらやっとの思いでゲンドウは声を絞り出した・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「・・・・・・・・・・・おかえり・・・・・・・・・・シンジ・・・・・・」
 

「父さ〜〜〜ん!!」
 
 

父の胸に飛び込むシンジ。
 

じょりじょりっ
 

ゲンドウのヒゲに頬をすりよせシンジは涙を流した。

パチパチパチパチパチ・・・・

拍手が鳴り響く。
 

「おめでとう〜」 「おめでとう〜」 「おめでとう〜」

皆は口々にお祝いの言葉を投げ掛ける。
 
 

ゲンドウはすでに白目をむいていた・・・・・・

その白目から一すじの涙が流れ落ちた・・・・・・
 
 

・・・この涙が誰がなんと言おうとうれし涙であることは言うまでもない。
 
 
 

               おしまい



 

締め切りを設定して書くなんて初めてや。
三日で書いてしもたがな。
手抜きもええとこで・・・・
父の日か・・・・これをネタに話を書く人がどれだけいることか・・・?
ゲンドウの他はアスカの父くらいしかおらんもんな〜
トウジの親父は・・・・う〜ん。
どうもワシはこんな話しか書けんのかいな?
マジものも書きたいけど・・・・どうなるやら。
 

ver.-1.00 1998+06/22公開

ご意見ご感想は、 m-irie@mbox.kyoto-inet.or.jp までです
 





 えいりさんの『ゲンドウという名の父親』、公開です。




 なぜだ?!
 なぜなんだ〜?

 どうしてゲンドウはこんなにもシンジとの同郷を拒むんだ!?!



 リツコと同居しているから?

  違うみたい。


 ま、まさか−−冬月と??

  違うようで・・ホッ(^^;


 ひょっとして、レイちゃんなのか???

  これもはずれっぽい・・




 何でなんだろうぅ

   ・
   ・

 部屋中にユイさん&レイちゃんグッズがあるからとか

   ・
   ・

 シンジのいびきが凄いとか




 さあ、訪問者の皆さん。
 めぞんでの初の短編、えいりさんに感想メールを送りましょう!



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