シンジ・・・・よくも、よくもアタシの首絞めて殺そうとしてくれたわね!!
この怨み、百億倍にしてアンタに返してやるからね!!
たっぷりと苦しめてあげるわ・・・・・ふふ・・・ふふふふ・・・・ふ〜ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっ・・・・・
じゃじゃ〜ん!!
羅刹のエヴァ
LASETSU NO EVA
「バカシンジ、おきろ〜〜〜!!」
アスカが天井から降ってきた。
空中で前方二回転してシンジのベッドめがけてまっ逆さまに落下していく!
ずんっ
「うぐぇっ」
全体重+落下速度+回転力のついたアスカの膝がシンジの喉元をえぐった!
悶絶するシンジの喉をなおも膝でぐりぐりしながら、アスカはシンジを見下ろした。
「お〜は〜よ〜シ〜ン〜ジィ〜」
顔をねめつける様にしてシンジに近付け、アスカはにやりと笑った。
「ぐげげげげ」
「何がぐげげよ!人がおはようと言ってるのよ、アンタも挨拶なさいよ!」
「お、おばよ〜、アズガ・・・」
「今日もたっぷりと可愛がってあげるわよお、シ・ン・ジ!うふふふふふっふ・・・・」
サードインパクト後しばらく続いた混乱もやっと収拾に向い、人々は平和な暮しを取り戻しつつあった。
シンジとアスカは以前通りミサトのマンションで暮らすことになった。
しかしミサトはもはやこの世の人ではない。
サードインパクト時に死亡していた者、そして自ら再び人の形を取り戻す意志の足りなかった者は現世に帰還できなかったからだ。
現在シンジとアスカは人類を救った報酬として、ネルフに生活費をまかなってもらっていた。
周りの者は苦しい戦いを乗り越え、やっと平穏な生活を勝ち取った二人を祝福した。
だが見かけと実際がじぇんじぇん違うって事は、ガチャピンの例を挙げるまでもなく世の中腐る程ある。
表向きはLASLASなアスカとシンジ・・・・しかしアスカは映画のラストでシンジに首絞められた事を未だに根にもっていた。
復讐の鬼と化したアスカは毎日のようにシンジを苛み続けまくった。
アスカが独自にあみだした他では絶対できない、というかやりそうにない方法で・・・・
アスカはシンジより早起きになった。
シンジを起こす為に。
ある時はフライングヘッドバットで、またある時は回転式ギロチンドロップで、その他胴締めスリーパー、マウントパンチ、アキレス腱固め、ヒップアタック、STF、電気あんま、脇毛引っこ抜き、かさぶたはがし、爪の付け根の逆剥けめくり、などなど毎日違う技でシンジを叩き起こした。
そしてその後は・・・・
「さあ、お食事にしましょ、アタシがシンジのために一生懸命作ったのよ。残さず食べてねぇぇぇ〜〜」
食卓に座ったシンジの前にずらりと並んだ料理。
真っ黒に炭化してもはや魚であるかどうかさえわからない焼き魚!
皮がむけてない上に芽までついてるじゃがいも、生で丸のままの人参、手でちぎったキュウリ、握り潰したトマト、それらにタバスコとシロップとコロッケ用どろソースをたっぷり振りかけたアスカ特製サラダ!
さらにソフトクリームの様におわん盛られたミソのかたまりに、ネギ数本が突き立てられた味噌汁!
最後に9割5分がお焦げでコクゾウ虫が大量発生している御飯に青汁に浸した沢庵をのせたもの!
「うう・・・」
躊躇するシンジの口にアスカが炭の焼き魚を持ってくる。
「はい、あ〜ん」
ぶりっこ(死語)しながら炭の塊を近付けるアスカに押され、ほんの僅かシンジの口が開いた。
アスカはそれを見逃さなかった!
がぼっ
炭の魚をシンジの口に突っ込むと、顎と頭を掴んでむりやりカミカミさせる!
「んぐんぐんぐんぐ・・・・・げ」
「シンジ!おいしいでしょ、おいしいでしょ、ふふふふっふっふふふふふっふ」
無気味に笑いながら青い瞳を危なく光らせ、サラダ、味噌汁、御飯と次々に突っ込んでいくアスカ!
シンジが吐き出さないよう、両手で口をふさぐ。
「早く飲み込んじゃってえ、シンジ!」
「むぐぐぐぐ〜っ!」
シンジの鼻の穴から異様な色と臭いの物質があふれ出る・・・・・・・
アスカは自分の料理が凶器だということをすでに自覚してしまってた。
その上あのミサトのつくった料理(もはやエヴァ小説では不味いという事が大前提となってる)を超えるため、シンジを実験台に日々努力を繰り返し、遂に究極の殺人料理を極めたのだった。
自分が腕によりをかけてつくった殺人的料理でシンジを苦しめる事がアスカの無上の喜びになっていた。
じゃじゃ〜ん!!
[シンジにミサト以上に不味い料理を無理矢理食わせる鬼アスカ!!]
「いつまで寝っ転がってんのよ、食べてすぐ寝るとウシガエルになるわよ!!」
ガエルは余計じゃ。
アスカはシンジの喉笛をつかんで引き起こすと壁に叩き付けた。
だん!
「ぐへっ」
「ふっふっふふっふっふうふふ・・・・今日はどういう風にいたぶってやろうかしら?ふふふふ」
狂気に満ちたアスカの笑顔・・・濁った青い瞳がシンジを捕らえて離さない。
シンジの顔が恐怖にゆがむ・・・・・・・・
「・・・・・・・げっぷ」
「ぷぷぷぷぷぷっこんな時にげっぷをするな〜!」
げっぷの臭いは食べたもので決まる。
なもんで、アスカはひっくり返ってのたうちまわった!
「ア、アスカ大丈夫?はあ〜」
「こら、息かけるなー!」
げしっ
シンジの口をアスカの土踏まずがふさぐ!
立ち上がったアスカはシンジの首に十本の指を食い込ませた。
「や、やめでよアズガ〜」
「アンタだってアタシの首を絞めたじゃないの!!」
「ごめんよ、謝るがら許じでよぅ」
「なに言ってんのよ!アンタはね、アンタは自分がどれだけの罪を犯したかわかってんのぉ?」
アスカはトカゲの様に舌舐めずりすると一気にまくしたてた。
「アンタはアタシの首絞めたし、アタシが量産型エヴァと戦ってるとき助けにこなかったし、サードインパクト引き起こしたし、サードインパクトが終わっても大勢の人がLCLに溶けたまま死んじゃったし、アタシをおかずにして振りかけたし、鈴原の足ちぎったし、使徒とホモ達になってあげくに黒ヒゲ危機一髪みたいにびょ〜んと首飛ばして殺したし、アタシの首しめたし」
「アスカ、首しめたを2回言ったよ」
「え?う、うるさいわね!」
「それになんでカヲル君の殺し方知ってるの?」
「え〜い、細かい事言わずに罪の意識に押しつぶされんかい!!」
「う、うわああああああああ」
ムンクの叫びのポーズで悶え苦しむシンジ。
(ど、どうしてアスカは毎日毎日同じ事を言って僕を苦しめるんだ!たまには別のお話聞かせてよ〜)
じゃじゃ〜ん!!
[シンジの罪を並べ立て、罪の意識に苦しむシンジを見て楽しむ鬼アスカ!!]
シンジとアスカは仲良く手を繋いで教室に入ってきた。
学校はすでに再開されシンジのかつての友人達はみんな戻ってきていた。
「おはよう!」
アスカが元気に声をだした。
ヒカリが振り返り笑顔で答えた。
「おはようアスカ、碇君」
「おうおう、手ぇなんかつないで相変わらずラブラブやのう〜」
サードインパクト後もやはりジャージの(ほっといたれ!)トウジが突っ込む。
「いやだぁ〜」
赤面してうつむくアスカ。
握る手に力が入る。
(う、いた痛たた・・・)
シンジの顔が痛みでゆがんだ。
手の中に画鋲が入ってるのだ。
「どないしたんや、シンジ?」
「な、なんでもない、ははは(あ痛たたた!)」
「あ〜あ、こんないや〜んな感じのツーショット撮る気になれないや」
構えたカメラを下ろしてしまうケンスケ。
そう、2バカもヒカリもこのお話がLAS小説だと信じ込んでた。
確かにLASはLASなんだけど、まさかLASETSUの略だとは気付けってほうが無理っちゅうもんだ。
とにもかくにもシンジとアスカは見た目だけは仲良く並んで机に座った。
さっそくアスカはシンジの耳元に唇を近付けると、嫌らしい笑いを浮かべて囁きかける。
「シンジ、鈴原の足を見なさい・・・・・アイツ義足よ、アンタがちぎったのよアンタがちぎったのよアンタがちぎったのよふふふふふふふふふっふっふ・・・・」
シンジはつらそうに呻いた。
「痛っいたたたた・・・」
「画鋲はもういいんじゃ〜!!」
「だってまだ握ったままだし・・・・」
「しようがないわね、もう」
アスカはシンジの手を離して鞄から取り出したサビオを渡した。
「ありがと、アスカ」
律儀に礼を言うシンジに声をひそめてアスカが凄む。
「血を流してるとこ見られたらコロスわよ!」
シンジは画鋲を取ると、手にできた数個の血の点々に一つずつサビオをはり始めた。
アスカは自分の手についたシンジの血をティッシュで拭くと、一呼吸ついた。
「ふうっそれじゃ続きを・・・アンタがちぎったのよアンタがちぎったのよアンタがちぎった・・・」
びりっ
「アンタがちぎった・・って、サビオを貼った後のシール紙ちぎってどうするんじゃ〜!!」
「ごめん、ついクセで・・・」
あれ、ちぎれるかどうか確かめてみたくなるんだわ(最初の内だけだけど・・・わしだけか)。
「おい、なんやまた夫婦喧嘩しとるで」
「平和だね・・・・」
昼休み。
シンジはアスカの作ったお弁当を食べさせられていた。
「はい、あ〜ん(食らえ!)」
元が何だったか判らなくなってしまった、得体の知れない物体をシンジは口に突っ込まれた。
「うんぐっ」
朝食の時と違うのは、いかにも美味しそうに食べないといけないという所だった。
トウジもケンスケもヒカリも見ているんだから。
シンジは口の中で暴れ回る阿修羅の味をこらえて、必死の形相で笑顔を作ろうとしていた。
「うっぐお、お、美・・味・しい〜」
「ホント?うれしい!じゃあこれも食べて」
アスカは2発3発とシンジの口に弁当を詰め込む!
「ふんぐっげっご、うっぷうぇ、お、お、うぇっむぉご、ご、ごっくん・・・ご、御ぢぞう様」
「シンジ、もう食べちゃったの?そんなに美味しかった?アスカ幸せ!」
「ようやるわ」
トウジ達は呆れていた。
はっきり言ってアスカの弁当が恐ろしく不味い事くらいみんな知ってた。
アスカが急に料理が上手になる訳ないし、第一弁当の色、形を見れば一目瞭然だ。
無彩色で無気味なまだら模様があり材料が判別不能の物体・・・・うまい訳ないやろが。
ただ、彼らはアスカが誠心誠意、愛情込めてシンジに愛妻弁当作ってると信じてた。
誠意や悪意ではアスカの料理の腕は左右されないとでもいうのかい?
「センセ、あんなもん食うて寿命縮める気かい?」
「碇君、そこまでアスカを愛しているのね!素敵・・・・」
「平和だね・・・・」
シンジは夕食用の食材をスーパーで買いあさっていた。
生鮮食品売り場で大根を手に取り品定めを始める。
(こうやって買ったものも半分はアスカの料理に化けてしまうんだな・・・・・)
ため息をつくシンジ。
(なんとかならないんだろうか・・・このままじゃ胃が腐ってしまう)
「シンジ君!」
突然、背後からシンジを呼ぶ声がした。
シンジは大根片手にふりむいた。
「・・・マヤさん!」
「シンジ君、久しぶりね。アスカちゃんとは仲良くやってるぅ?」
な〜んの悩みも無さそうな童顔でにっこりとマヤは微笑んだ。
大根の葉噛み締めながらシンジは訴えかける。
「かじかじ・・・マヤさ〜ん!それが、それが・・・・うあああああん」
「あらあらどうしたの?アスカと喧嘩でもしちゃったのかしら」
「そんな生易しいもんじゃないんですー!!」
「あら、じゃあなあに?もしかして・・・・・不潔!!」
「マヤさん何勝手に想像してるんですか?」
「まあ、違ったの?とにかくこんなとこじゃなんだから、場所をかえましょ、シンジ君」
「はあ・・・・」
シンジはマヤに連れられスーパーを出た。
「え〜い、遅いわシンジ!いったい何やってんのよ!!アタシはシンジをいたぶらないと手がふるえ出すのよ!ぶるぶるぶる」
マンションでシンジの帰りを待つアスカ・・・ほとんどシンジいじめの中毒状態になってる。
「まさか逃げようって魂胆じゃないでしょうね!」
アスカはポケットからカーナビにダウジングの曲がった棒みたいなのが付いた機械を取り出した。
これこそは碇シンジ追跡専用ナビゲーター、シンナビなのだ!
「ほっほっほ、アタシの作った料理には小型発信機が混ぜてあるのよ。発信機から衛星経由で、シンジが何処に逃げようが手にとるように分かるんだから。ふふふふふっふ・・・」
いつの間にか故・赤木リツコが入ってるアスカ。
しかし料理にそんな異物を混ぜて気付かれないとは!
料理自体が異物だからか・・・
「10分以内に見つけてやるわ。待ってなさい、シンジ!!うふふふふふふふふっふふっふ」
充血した青い眼をぎらつかせ、アスカはシンナビのスイッチを入れた。
「うっうっうぇっ」
マヤは泣いていた。
「うっう、なんて辛い目に・・・・」
「あの〜」
「ぐすっ、なあに、シンジ君」
「そろそろ僕の話を聞いてもらえませんか?」
「あ、そーだったわね、ぐすん」
とある喫茶店の片隅のテーブルで二人は向かい合って座っていた。
それは良いけれども、この店はマヤ行きつけの漫画喫茶だったのだ。
今マヤは『ガラスの仮面』69巻を読んで涙で頬を濡らしてた。
「えーっと97ページと・・・で、どんな話かしら?」
読み終えたページに手製のネコさん枝折をはさむと、マヤは改めてシンジに問い掛けた。
「はい・・・・実は、アスカが・・・・僕を、僕をいじめるんです!!」
「え?どうして、貴方達あんなにお似合いのカップルなのに・・・」
「それは表向きで本当はアスカにいたぶられる毎日なんです!」
「ええっ!?うそ・・・・」
シンジの訴えに信じられないといった表情のマヤは再び問い掛ける。
「それで・・・・アスカちゃんはシンジ君にどんなことをするの?」
「はい・・・まず、朝アスカに起こされるんです。殴られたり蹴られたり絞められたり、酷い時は天井から降ってきます」
「そこまでされないと起きられないの?」
「ち、違います!!学園エヴァでもそこまでしませんよ!!」
「そう・・・他にもあるの?」
「アスカの作った朝食を食べさせられるんです。無理矢理!」
「まぁ、あのアスカちゃんが毎朝料理を!」
「ミサトさんの料理より不味いというか、もうあれは毒に近いです!」
「残したりしてない?」
「だから全部食べさせられるんです!」
「えらいわねぇ〜」
「だから無理矢理です、無理矢理!!しかも朝昼晩ですよ!それにアスカは毎日僕の過去の過ちを、罪を、罵りながら責めるんです・・・何度も何度も延々と」
「過去の過ち、罪!シンジ君まさかレイちゃんとかマナちゃんとかと一夜の過ちを・・・不潔!」
「なんでそうなるんですか!」
「なんだ、そうじゃないの(つまんない・・・)」
「毎晩殴るの蹴るのの暴力をふるうんです!」
「どんな?」
「前転式踵落としやジャンピングヒップアタック、モンゴリアンチョップ、スペースローリングエルボー、ムーンサルトプレス、ジャイアントスイング、餅つき式パワーボム・・・・」
「あら、みんな見せ技じゃない」
「そ、そうなんですか?・・・・」
「あとは?」
「あ・・・その、これで終わりです・・・・だから!本当に酷い目にあってるんです!アスカは僕を苦しめることに生きがいを感じてるんです!!このままじゃ死んでしまいます・・・マヤさん!なんとかならないでしょうか!!」
すがる様な顔つきでマヤを見つめるシンジ。
それを受けてマヤも真剣な面持ちでシンジを見返した。
しばらくの沈黙の後・・・・・
「ぷっ」
マヤが吹き出した。
「な、なにがおかしいんですか!?」
「アスカちゃん可愛い!!」
「えっ?」
予想もしない言葉にシンジは驚いた。
マヤは無邪気に笑いながら話を続ける。
「くすくすくす・・・・シンジ君より早起きしてシンジ君起こして、シンジ君のために料理作ってシンジ君に妬いたりして・・・・ホント可愛い!」
「あの、僕アスカにいじめられてるんですよ」
「あら、本当のいじめってそんなもんじゃないわよ。本当のいじめとは嫁の料理にケチをつけて何回も作り直させる鬼姑とか、生け花の経験を全然ない嫁の知らない間に華道の会をセッティングして、近所の人達の前で嫁に生け花やらせて恥をかかす鬼姑とか、姑の年金を横取りしてパチンコにつぎこむ鬼嫁とか、寝たきりの姑の死を願って毎晩藁人形を五寸釘で打つ鬼嫁とか、姑に莫大な保険金かけてヒ素入りカレーを食わす鬼嫁とか・・・・・」
「なんですか、それ?」
「いびりのベーシックじゃないの、こんなの常識よ」
マヤはなんでこんな昔のワイドショーみたいな事知ってるのか?
実を言うと・・・・・
1991年生まれのマヤは物心がつく前から母親の影響でおもいッきりテレビを見ていた。
笑っていいともやごきげんようは全然見せてもらえなかった。
タモリを知らなくてもみのもんたは良く知ってるイレギュラーな幼児、それがマヤだった。
そして小学校に入学する頃には、渡る世間は鬼ばかりや羅刹の家を家族だんらんで視聴していたのだ。
セカンドインパクトが起きるまでマヤはそんな環境で育った。
だからシンジの話を聞いても14歳の少女が拙い知恵で鬼嫁ごっこしてる様にしか思えなかったのだ。
もっともこんなマヤがなんで潔癖症になったのか解んないけど。
「シンジ君、気にすることないわ、LASなギャグ物の小説でも今あなたのあってる目と同じ位のがいくらでもあるし。このままで大丈夫よ、うふっ」
「何言ってるんですか、僕はもう限界なんです!助けてください〜!!」
マヤの太股にすがりつきながら必死に訴えるシンジ!
そんなシンジに天然ボケアイドル系のお気楽な笑顔を見せるマヤ。
「シンジ君、お話とっても楽しかったわ。お迎えが来てるわよ」
「え?・・・」
ぞくっ!
シンジは背後にどす黒い殺気を感じた!
いきなり首筋に両手が伸びてつかまれたかと思うと、強引に180度回転させられた!!
ぐりゅっごきっ
「シ〜ン〜ジ〜・・・」
「うげげっア、アスカ!!・・・」
「こんなとこで何油売ってるのよ〜!!」
「うあああああ!」
アスカはシンジの首根っ子つかむと高々と差し上げた。
シンジの口から泡が吹き出る。
「ぶくぶくっ」
「あらアスカちゃん、妬いてるの?可愛い!」
自分にきゃぴきゃぴした声をかけるマヤをアスカは睨み返した。
「アンタ、聞いたわね〜!」
「ええ、みんなシンジ君から・・・シンジ君ったらアスカちゃんの事のろけまくるのよ、聞いててこっちが恥ずかしくなる程・・・・本当にごちそう様って感じ〜!」
赤く染めた頬に両手を当て、リリカルに微笑むマヤ。
「・・・・何言ってんのこいつ?まあいいわ、この!」
どし!
抱え上げたシンジをチョークスラムで床に叩き付けた!
シンジの髪を持って引きずって行くアスカ。
「ほら!シンジ帰るわよ!!」
ずるずるずる・・・・・
もはや何も言うこともできずにシンジは引きずられていく。
マヤはそんなシンジに笑って手をふる。
「シンジくーん、またお話聞かせてね〜」
じゃじゃ〜ん!!
[シンジの苦しみを全然解ってないのんきな童顔女!!]
「あ、続き、続き・・・97ページ」
マヤは本にはさんだネコさん枝折を取ると、何事もなかったようにガラスの仮面69巻を読み始めた。
「シンジ〜!よぉくも逃げようとしたわねぇ〜」
「うあああああ、ごめんよアスカ〜〜!!」
家に帰るとアスカはシンジをまたもやいたぶり出した。
アスカ手製の有刺鉄線を巻き付けたハリセンがうなる!
ばしっばしっばしっばしっばしっばしっばしっばしっばしっ・・・・
「うぎゃああああ!!」
たちまちシンジの服が破れ、皮膚が裂けて血が流れ出す!
「ふふふふふっふ、こんなもんじゃないわよお〜!こうやって引っかくと・・・・」
アスカは有刺鉄線ハリセンで、叩くだけ叩いたシンジの背中を大根をおろす様に引っかいた。
きこきこきこきこきこきこきこきこきこ・・・・
「ひぃえええええええ〜〜!!」
シンジの悲鳴にうっとりと聞き入りつつ、引っかく手を休めないアスカ。
「うふふふふふ、いい声ね、もっと聞かせてふっふっふふふふうふふふふ・・・・」
「ぎえ〜〜〜!!」
悶絶するシンジの悲痛な叫びは誰にも届かないのだろうか・・・・・・
きらりんっ!
「弐号機のコアの状態はどうかね?」
ケイジ前に到着した冬月総司令は横に立つ青葉シゲル二尉に尋ねた。
「全く反応ありません。これまで通りです」
「そうか・・・・」
サードインパクト後に回収された弐号機のコアはケイジに保管され、現在に至っている。
しかしアスカの母が溶け込んでいるこの真っ赤な球体は、もはや単なる巨大な玉っころでしかない。
生命反応というべきものが全然ないのだ。
「まあ仕方ない。生きていてもどうにもならんしな」
冬月はけだるそうに上を見た。
天井は見事に穴があいて空が覗いてた。
サードインパクトのせいだが、ネルフに予算がなくて放ったらかしになってた。
(やっと総司令になったのに、いーことなんにもない・・・・)
少しすねて空を眺めるコウゾウ。
すると・・・・・
きらりんっ!
空に一瞬きらめきが!
「なんだ?一番星か!?」
今はU局がアニメの再放送をやってるくらいの朝。
「ではなんなのだ?」
「とにかく発令所へいきましょう!」
青葉シゲルに促されて発令所へ向かう冬月に一瞬悪寒が走った。
(やな感じ・・・なんでわしが総司令の時にぃ〜)
「正体不明の物体は大気圏外から飛来したものと思われます。このままの進路だと第3新東京市に落下します!」
日向マコトの報告に仰天する冬月。
正面メインスクリーンには、空気摩擦で真っ赤な火の玉となって落下してくる巨大物体が写し出されていた。
「一つ聞くが・・・・もしかして使徒?」
「いえ、パターン青でないです」
「じゃあなんだ?キングギドラじゃないだろな」
「恐らくこれは・・・って後3秒で地表に激突しまーす!!」
「うわ〜〜〜」
ずずず〜〜ん!!・・・・・
今朝もシンジに無理矢理自分の料理を食わそうとしてたアスカは、突然襲った地震?にシンジ共々すっころんでしまった。
「う〜ん・・・アスカ大丈夫?(大丈夫じゃなかったらいいなーなんて)」
「いたたた・・・・な、なによ、今の地鳴りは!」
「何か・・・・落っこちてきたのかな?」
「何がよ!?」
・・・ホッホッホッホッホッホッホッホ・・・・・・
「な、なんなのあの気色悪い笑い声!?」
アスカはバルコニーへと駆け出た。
外の様子を見ると眼前に直径1kmくらいのクレーターがぼっこんと!
「何が起きたの・・・・?」
辺り一帯焦土と化し煙をもうもうと立てている。
凄絶な光景にアスカが見入っていると・・・・ ・下から突然!
ぬう〜〜〜
「ひえええっ」
巨大な顔面がせりあがってきた!!
「ホッホッホッホッホッホッホッホッホ」
「し、初号機!?」
驚き立ちすくむアスカに、地の底から沸き上がる様なおどろおどろしい声が響き渡った。
「アスカさん〜うちの息子をよくも可愛がってくれたわねぇ〜」
初号機の手がのびるとアスカの体をむんずとつかんだ!
「ひい!!」
じたばたじたばたっ
必死こいて抵抗するアスカをあざ笑うかのように、初号機は彼女を掴んだ手を口元まで運んだ。
「ホホホ、無駄よ!アスカさん、シンジを苦しめた者は私に食われると相場が決まってるのよ!」
「いやああああ!!」
今、まさにアスカの上半身を初号機の口が食いちぎらんとした時!
「かあさん!やめてよ!!」
駆けつけたシンジがバルコニー越しに初号機に呼び掛けた!!
「あらぁ〜シンジ、ただいま〜♪」
コロっと態度が変わる初号機ユイ。
「母さん、アスカを殺さないで!そりゃアスカは僕に酷い事をしたけど・・・何も食べなくてもいいじゃないか!!御願いだよ、母さん!!」
「そうよそうよ、シンジの言う通りよ!!」
「あなたは黙ってなさい!」
ぎゅうっ
「ふげ」
「う〜ん・・・・・そうね、シンジがそこまで言うのなら許してあげてもいいわ、ホホホホ」
「ところで母さんいつから喋れるようになったの?」
「宇宙で一人だと暇で暇で・・・・腹話術の練習してたのよ。アタシアスカ!ショウワルノキチクオンナヨ!!」
「アタシを人形に見立てるな〜」
「まあ、何を偉そうに!!あなたは育ちがかなり悪いみたいね。みっちりしつける必要があるようね。いいわ、私が徹底的に教育してあげる・・・・・ホッホッホッホッホッホッホッホ・・・・・」
初号機ユイは口元の装甲を引き裂いてニヤリと笑うと無気味に目を輝かせた。
「ほら、早く支度しなさい」
「はい、お義母さま・・・」
アスカはエプロンをつけると包丁を持ってまな板の上の秋刀魚に挑んだ。
「じゃあまずそれを三枚におろしてちょうだい」
「えっ?三枚に・・・おろす?」
「まっ!そんな事も知らないの?」
つん!
初号機の指がアスカの後頭部をつつく!
「ごへっ」
アスカはまな板の秋刀魚に顔面を打ちつけた。
(なんで、なんでこんな目に合わなきゃいけないの・・・・)
エヴァ初号機ことユイが飛来してから状況は一変してしまった。
アスカはユイの監視の元、シンジに献身的につくす女性となるべく特訓をさせられているのだった。
「うう、もういや・・・しくしく」
「泣いても無駄よ、逃げられはしないんだから」
バルコニーからユイの視線がアスカに圧力をかける。
マンションはユイがどこからでもアスカを監視できるように、そしてどこからでも手を突っ込めるように、穴だらけにされてしまっていた。
もちろん、シンジ達以外の住人はすでにマンションから逃げ出していた。
誰の邪魔の入らないマンションにへばりついて、ユイはアスカいびりに情念を燃やすのだった。
外から見れば、シュールな光景というかなんというか・・・・
とにかくアスカは学校にも行かせてもらえず、ユイのいじめに耐え続けなければならなかった・・・
じゃじゃ〜ん!!
[マンションの外から指でアスカの頭をつついていたぶる鬼エヴァ!!]
「ただいま・・・」
学校から帰って来たシンジをエプロン姿のアスカが出迎えた。
玄関で靴をぬぐシンジの前で正座をすると、三つ指ついて額を床にこすりつけた。
「おかえりなさいましシンジ様」
「あ・・・・ただいま・・・」
シンジが廊下の奥を見ると、開けっ放しのドアの向こうから初号機の人さし指が鎌首もたげてるのが覗く。
シンジは少し顔をひきつらせ、慎ましやかな仕草のアスカを見下ろした。
(母さん・・・・アスカにこんな事まで教え込んで・・・・)
「お食事になさいますかそれとも先にお風呂になさいますか」
「アスカ、今3時半だよ」
ずずずずずずずずずずっ!ぴん!!
突如、初号機の手が蛇が這う様にせまってくると、アスカのお尻を指ではじいた!!
「きゃーっ!」
でんぐり返って吹っ飛ぶアスカ!
「応用をきかしなさ〜い!!それにそのセリフの棒読みは何?!愛情をこめなさい!!」
「す、すみません、お義母さま・・・」
「か、母さんもうそれくらいにしてあげてよ」
「シンジ、そんなお人好しだからこの性悪女がつけあがるのよ!厳しくしつけなきゃね」
「いいんですシンジ様アタシがいけないんでございますですわ」
「また棒読み、しかも言葉遣いおかしい!!」
きゅっ
アスカは胴体をユイの人さし指と親指ではさまれた。
「いたーい、つままないで〜」
「ホッホッホッホッホ・・・・・まだまだ序の口よ」
アスカがおもいっきりの造り笑顔でぎこちなくシンジに言った。
「シンジ様夕食の用意ができました」
「え?ああ、そう・・・」
シンジが食卓へ向かうと・・・
ユイの人さし指が先に卓についていた(どうやって?)。
「この子本当に何もできないから取りあえずカレーを作らせたわ」
「そう・・・」
すでに盛り付けられているカレーライスを見てシンジは思う。
(食べ物に、料理に見えてる!)
「シンジ様お口に合うか分かりませんけどどうぞ・・・」
「うん・・・」
一応カレーに見えている事に希望をたくし、シンジはスプーンでルーをすくい取ると、思い切って口に入れた!
(・・・・・・・・まずい・・・・料理として)
これまでは料理ですらなかった。
まして発信機が混ざってても分からんくらいだったんだから。
それだけでもシンジにとっては十分だった。
「お、おいしいよ、アスカ」
「ありがとうございます!シンジ様」
はちきれんばかりの笑顔をアスカはシンジに見せた。
本気でうれしかった!なぜなら・・・
(まずいと言われたらまたあの鬼エヴァにつままれるとこだったわ!)
ちらりとアスカはちょこんと椅子に乗っかった人さし指を見た。
指がカレーをなすった。
指が外へ引っ込んでゆく。
外でペロっという音がした。
指が再びずずずっと侵入してきた。
「こんな不味い物シンジに食べさせる気?この毛唐が〜!!」
「きゃー、今頃味見をしないで〜」
むぎゅうっ
アスカは鬼エヴァにまたもやつままれた。
「ほらほら早く洗濯物を干しなさい!」
「はいお義母さま」
「あら何これ色うつりしてるじゃない!えーい、あなたも干されてしまいなさい!!」
「ひえ〜」
「いい格好ね、フゥーッ」
「きゃ〜!アタシを乾かさないで〜!」
「ホッホッホッホッホ」
「お義母さま、掃除を終わりました」
「そう、ど〜れ・・・」
じぃ〜・・・・・
ユイの目が光る。
人さし指が部屋を徘徊する。
指が食卓の土瓶敷きを押しのけた。
土瓶敷きのあった所を人さし指の腹がちょいっとなで上げた。
指が外へ引っ込む。
「む・・・・・拭き残してるじゃないの!この役立たず!!」
でこぴんっ!
「ぐわぁっ何でそんな細かいとこ、そのでかい指で分かるの〜?!」
「明日、冬月先生をお茶の会にお呼びすることになったの。アスカさんがお茶を立てるのよ。分かったわね!」
「アタシ、茶道知りません〜」
「ホホホホ、あなたが恥をかいたら私が思いきり叱ってあげるわ」
「ひえー、マヤが言ってたパターンだぁ〜」
(うう、もういや!こんな生活・・・・)
月さえ見えぬ夜更けに一人ベッドでうずくまり、アスカは涙で枕を濡らす。
(このままじゃ、あのエヴァ姑にいじめ殺されてしまうわ!)
シンジへの憎しみなどころっと忘れ、今やユイから逃れる事だけをアスカは考えていた。
しかしSS機関搭載の姑は今も寝ずの監視を続けてるのだ!
現在のアスカは完全にカゴの鳥状態・・・・・
ユイによって穴のあけられた壁から見える夜空。
アスカはベッドにひざまずき、手を組んで星空に祈り始めた。
(御願い・・・・アタシを助けて・・・・・・・・・ママ・・・・・ママ〜!!)
びかぁっ!!
冬月はネルフの制服から背広姿に着替えていた。
「今日のコアの状態はどうだね?」
ロンゲが答える。
「はい、いつも通り反応なしです」
この会話はもはやただの朝の挨拶になってた。
よーするに使徒のいないネルフはかなり暇ちゅう事だ。
弐号機ケイジ前で冬月は腕時計をちらっと見た。
「うーむ、そろそろ行かねばならん。青葉君、留守をたのむ」
「あの、どちらにお出かけで?」
「ユイ君からお茶会の誘いがあってな。断わる理由もないし、断われる訳もないし・・・・」
「ああ、あの例の・・・・使徒がいない今あの人がこの世で最強ですからね」
だからネルフもゼーレも誰も初号機ユイに手も口も出せない。
第3新東京市に巨大クレーター作ろうと、マンション穴だらけにしようと、ましてや14歳の女の子一人いびる事ぐらい見て見ぬふりするしかない。
「さて、何事もなければ良いのだが・・・・」
呟きながら冬月が弐号機コアに背を向け歩き出そうとした瞬間!!
びかぁっ!!
「うわっな、何ぃ!!」
冬月が振り向くと、何とそれまでうんともすんとも言わなかった弐号機コアが、強烈な蛍光色の輝きを放ちだしている!!
「ど、どうしたんだ?」
「わ、分かりません!しかしこのコア、生きてたみたいですね!」
「そんな事よりこれから何が起きるんだ?」
・・・・ごろ・・
コアがゆっくりと転がり始めた。
「え?」
唖然とする冬月らに向かって・・
ごろごろごろごろっ
「う・・・うわあ〜〜ぶちっ」
逃げまどう冬月を踏みつぶすと、コアはさらに勢いを増して転がっていく。
どがっ
壁をぶち破ってコアは一直線に突き進む!
そう、目指す所は・・・・
(よくもよくもあたしの可愛いアスカを!殺してやるう〜!!)
「いってらっしゃいましシンジ様」
「ああ、行って来ます」
「アスカさん、早くこっちへ来なさい!ズボンの裾直しをするのよ!」
「はーいお義母さまー」
アスカは指でこいこいするユイの元へ足取りも重く戻って行く。
(ああ、今日も一日いびられるのよね、助けてくれる人なんて誰もいやしない・・・・アタシってなんて不幸な美少女なの・・・・・)
自己陶酔しつつ、ユイの指元まで来たアスカ。
ところが!普段は人さし指だけ伸びてるのに、今のユイの手は中指を立てて残り4本が猫足立っている。
それこそ警戒体勢のネコのように!
不審に思うアスカの耳に、妙な音が微かに聞こえる。
・・・・・・ごろごろごろごろ
「?」
ごろごろごろごろっ
「何?なんの音・・・・?」
マンションを出たシンジはいきなり土煙を巻き上げて接近してくる球体を目撃した。
「わっ!こ、こっちに転がってくる〜!!」
初号機ユイはマンションから手を抜くと回れ右して臨戦体勢をとった!
球体の正体を知ると同時にその標的が自分と気付いたからだ。
「まあ!あれは弐号機のコアね」
「アスカ〜!!」
母の叫びにバルコニーからアスカが飛び出て来た!
「ママ?・・・ママ〜!!」
「アスカ!おのれ碇ユイ、よくもアスカを!!」
ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ
初号機ユイの周りを転がり始めるキョウココア。
ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ
「ママ〜!!」
ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ
「・・・・・・・」
ごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ
「・・・・キョウコさん、もしかして転がる事しかできないの?」
転がりまわるだけのコアを見下ろしてふふんといった表情で笑う初号機。
「まあ、何を言うの!くらえ〜!!」
ごろごろごろっぼよんっ
キョウコは助走をつけてゴムマリの様に跳ね上がり、初号機の顔面を襲う!
ばしっ!!
「・・・・・ホッホッホッホッホッホッホ!」
初号機は片手でコアを受け止めていた。
「この程度でよくも私に刃向かう気になったわねえ、せめて大爆発くらい憶えとかなきゃ・・・・ホッホッホッホ」
「ええい、離せえ〜このお〜!!」
「ママ!」
「こうしてあげる。ホッホッホッホ」
初号機はコアをぽろりと落とすと足で蹴り上げた!
ばしんっ
宙高く舞い上がるキョウコア。
「次はヘディングよ」
空中で停止し、落下を始めたコアに角のついた初号機の額が待ち構える!
ぶすっ
「痛〜い!」
どこから声を出してるのか分からないキョウコアの悲鳴がアスカの耳を劈く!
その声に重なるかのように、アスカの絶叫が響いた。
「ママ!いや〜」
「ホッホッホッホ、仕上げといきましょうか」
初号機ユイは串刺しのキョウコアを引き抜くと、装甲をめきめきと裂きながら口を大きく開いた!
両手でつかんだコアを掲げ、開いた口にゆっくり運んでいくユイ。
「いただきま〜す♪」
「アスカ、アスカ、アスカ〜!!」
「ママ!!やめて、やめてよ〜!!」
ぱくっ
「だめえ〜!!」
ごっくん
「・・・・・・・・・・・マ・・・マ・・いやあああああああ〜〜〜」
「・・・う〜んSS機関より味が淡白ねえ、あまり美味しくないわ」
じゃじゃ〜ん!!
[アスカの目の前で母親を丸呑みにして不味いと言うエヴァ姑!!]
「うっうえっひっく、ママ・・・どうして・・・ママがこんな目に・・・どうして!!うえっひくっ」
バルコニーで泣き崩れるアスカに冷酷非情な笑い声が覆いかぶさった。
「ホッホッホッホ・・・・本当に子も子なら親も親ね。アスカさん、私に逆らう者はみ〜んなこうなるのよ。よ〜く肝に命じておきなさい。ホッホッホッホッホッホッホ〜ホッホッホッホッホ〜ホッホッホ」
アスカはうずくまり、肩を震わせて泣き続けていた。
とめどなく滴り落ちる涙・・・・・その時アスカの紺碧の瞳がギラリと輝いた!
(おのれバケモノ!よくもアタシのママを!こうなったらアタシもアンタに負けない鬼となって必ずママの敵を討ってやる!!必ず!!)
「ホ〜ホッホッホッホッホッホッホ・・・」
大きく開いた口を右手で隠して狂笑する初号機。
第3新東京市中にその声が響き渡るなか、アスカはユイへの復讐を心に誓うのだった・・・・
笑い続ける母を見上げてシンジは呆然と立ちすくんでいた。
「僕、どうしたらいいんだろ?」
じゃじゃ〜ん!!
[全く立場も存在感もないバカシンジ!!]
羅刹のエヴァ・完
次回『渡るエヴァンは鬼ばかり』に・・・・・・続いてたまるかあほんだらぼけかす!!
すんません、こんなあほ話書いて・・・・
ところでこの話、分かると思いますが発想の原点は二人の補完(外伝・「鬼ごっこ」)です。
あれを読んで二人の補完をネタにギャグ書こうと思いついたのですが、後半は全然違う話となりました。
嫁姑ものはいびりの王道だし、元ネタにつぎたしやすかったもので。
最初は意識的に話を軽めにしようとしたんですが、もっと重いノリのほうがギャップが出て良かったんじゃないかなどとも感じます。
ただ元ネタにあまり近付けてしかもギャグじゃ、二人の補完をコケにしてやせんかという事もあって色々と加減もしたのですが、結局メールをけびんさんに送って了解をとる事にしました。
快く承諾頂いた、けびんさんにこの場を借りて御礼申し上げます・・・読んで呆れられたのでは?
しかし一旦けびんさんからOKをもらうと気が大きうなってもっと似せておけばなどと不遜な事も考えてしまいました(なんちゅうやっちゃ!)。
なんだか反省だらけの作品やったけど・・・・とにかく笑ろてくで〜!!
ver.1.00 1998+10/10公開 ご意見、御感想、誤字脱字、その他もろもろは・・・・・
m-irie@mbox.kyoto-inet.or.jp
までお送りくさい
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えいりの部屋へ NEXTはないゆうに!!