「さあシンジ、旅の扉は開かれたわ!冒険の始まりよ!」
「アスカ、あんなに行くの反対してたじゃないか〜」
「なに言ってんのよ!シンジがどうしても行くって言うからあたしがついてってあげようってんじゃないの!あんた一人じゃ危なっかしくて放っとけないわよ!!」
「あの、僕もいるんだけどね」
「あ、そうだったわ!カオル、あんたとシンジと二人だけで行かせたらシンジが何されるかわかんないわよ!絶〜っ対一緒に行くからね!」
「やれやれ、ずいぶんひどい言い様だね」
「アスカ〜、強引なんだから・・・」
「ゴタゴタ言うのはこれ位にして、それじゃあ出発〜!!」
というわけで・・・・・・・
シンジアスカの大冒険?
その1予告
ミサトに連れられ、病室に入ったシンジが見たものは精神崩壊したアスカの悲惨な姿だった・・・
泣き崩れるシンジ、だが〜?
シンジアスカの大冒険その1、
アスカ復活?
「バカシンジにしては上出来じゃない・・・」
その1 アスカ復活?
303・・・惣・A・ラングレー・・・・
シンジとミサトはそう書かれた表札の前に立っていた。
「それじゃあシンジ君、入るわよ」
「はい・・・・」
ミサトがドアのノブをにぎり、ゆっくりと回す。
その動作を見守るシンジの鼓動が急速に高鳴ってゆく。
きしんだ音をさせてドアが半分開くとミサトはシンジを促した。
「さあ・・・・」
シンジは立ちすくんでいる。
引き返したい衝動を必死にこらえているが、前にも進むこともできない・・・・
「つらいでしょうけど・・・あなたはアスカに会わなければならないのよ、シンジ君」
「・・・・・・・・」
ミサトはシンジの肩に手を回し、半ば強引に病室内に引き込んだ。
そこでシンジの見たものは・・・・・・
窓から射し込む大量の光にさらされ、シルエットとなった数台の医療機械から幾本もの線がベッドへと伸びていた。
その線達はベッドの主へまとわりつく様につなげられている。
ベッドに横たわるのは・・・・・・・この前までシンジを元気にバカにしてきた少女・・・・
やや、やつれたその顔にはなんの表情も見られず、半開きの眼は意味無く天井を眺めている。
ピッピッピッピッピッ・・・・・・
脳波だか心音だかの計器が早いテンポで静寂の病室内に唯一の音を響かせている。
「アスカ・・・・・・なんでだよ・・・・どうして・・・?」
表情をこわばらせて立ち尽くすシンジにミサトが話しかけた。
「シンジ君、アスカは・・・・アスカは、本当はとっても弱い、壊れやすい心の持ち主だったのよ・・・・シンジ君と同じなのよ。弱いから精一杯強がって自分を保っていたんだわ。だけど・・・アスカは自分を保つ事ができなくなってしまった・・・・」
シンジはすでに涙で頬を濡らしていた。
一歩一歩、震えながら小さな歩幅でベッドに近寄る。
「アスカ・・・起きてよ・・・お願いだから・・・・・アスカー!!」
シンジはくず折れながらアスカの体に顔をうずめて泣きじゃくりだした!
「うああああ・・・・うう」
「シンジく・ん・・・」
なり振りかまわず号泣するシンジの姿にミサトの声は途切れてしまう。
(・・・・もうあたしの言う事なんて聞こえてないわね・・・)
ミサトは話を続けるのをあきらめた。
同じ様に弱く、傷付きやすく、そして傷付いて来たからこそ、シンジにアスカの力になって欲しいとここに連れて来たのだが今はそっとしておくしかない・・・・
シンジは泣き続ける・・・アスカの肌のぬくもりを感じながら・・・こんなに暖かいのにどうして!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・?
シンジは自分の頭に軽く何かが触れているのを感じた。
それはゆっくりと彼の頭髪を撫で始める・・・・・・・手だ・・・・・・・?
顔を持ち上げその手を見る。
白い・・・・しなやかな・・・・・・ 誰の?
シンジの視線がつたいながら手から腕、肩へと、進んでゆく。
そしてその視線の終着点には・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あたしのために泣いてくれるの?バカシンジにしては上出来じゃない・・・・」
そこには・・・・首をもちあげシンジを見つめているアスカの顔!
「ア・・・アスカ?!」
シンジの頭の中が真っ白になった 。
ミサトにアスカが心を閉ざしたと聞かされたのはついさっきのことだ。
なのに・・・今・・アスカは・・・目の前で・・・・ええ??
驚きと混乱が体をかけめぐりシンジは硬直したまま動けなくなってしまう。
・・・・数瞬ののち頭をアスカの腹にうずめたままだと気付き、慌ててシンジは上体をのけぞらせた。
それに連動してシンジの頭に手をのせているアスカの上半身が起き上がる。
「驚くか泣くかどちらかにしてよ・・・・」
アスカは無表情な顔で淡々とシンジに語りかける。
しかしその青い両の瞳はしっかりとシンジに向けられていた。
「アスカ・・・・・・アスカ!大丈夫なんだね!」
目の前で起きた奇跡とも言える出来事。
理由を考えてなどいられない。
シンジはようやく驚くのをやめて喜ぶ気になった・・・・アスカが蘇った事を!
「アスカ・・・・よかった・・・うう」
シンジはふたたび声をあげて泣き始めた。
さっきシンジがのけぞったので密着していた体に空間があき、アスカの手だけが泣いてるシンジの頭の上に乗っかっている。
しばらくの間この奇妙な状態が続いた後・・・・アスカはのせていた手をシンジの首の後ろまでずらすと、ぐいっと引き寄せた。
その結果シンジはアスカの胸に倒れ込み顔をうずめることになった。
「あっ・・・・アスカ?」
「言ったでしょ、驚くか泣くかどっちかにしてよ・・・・遠慮はしなくていいわ」
シンジは普段のアスカからは考えられないその言葉に一瞬驚いたが・・・・結局泣く方を選んだ・・・・アスカの胸に抱かれながら・・・・・
ミサトは事の一部始終を唖然としながらただただ傍観し続けていた。
突然アスカの手がシンジに伸びた時に息を呑んでしまってから、その後アスカのシンジに対する行動、雰囲気を目の当たりにして二人の間に言葉を挟むきっかけさえ失ってしまったのだ。
まさに我が目を疑うとは今この時のことだろう。
(どうなってるの・・・?いったい何がアスカを・・・・)
今、その胸に抱いたシンジをまばたきもせず見守る彼女は相変わらずとても冷めた表情をしている。
にもかかわらず、その姿から和らいだ、暖かい空気を感じてしまうのはなぜだろうか?
そのときミサトの心の奥底から今のアスカにこの上なく当てはまる、しかし予想もしない単語が浮き上がった。
(・・・・・・・母性?)
ミサトは自分の考えに狼狽した。
(アスカにそんなものを感じるなんて・・・でもこの姿は・・・・)
生まれたばかりの赤ん坊を抱いた時の母親のイメージが浮かぶ・・・もちろんミサトは母になった事などないのだけど。
複雑な気持ちで二人を眺めるしかないミサトに不意にアスカが顔を向けた。
ミサトは慌てて思考を中断し、アスカに向き直る。
「ミサト、びっくりした?訳有りなのよ。説明するわ、シンジも聞いて・・・・」
そう言いながらアスカはシンジの両肩に手を乗せると自分の体からゆっくりと離した。
涙を流しながら見上げるシンジの眼に自分が映っているのを確認してアスカは話し始めた。
「あたしは使徒に心を汚され、エヴァを動かせなくなって、挙げ句の果てに精神がこわれた・・・・」
いきなりアスカの口から出たのは自分から話すにしてはあまりに辛い内容。
にもかかわらず、アスカは相変わらず冷静な口調で話している。
疑問を感じつつ、ミサトは次の言葉を待った。
「その逆も可能って事よ。あたしの心に入り込んで癒してくれたの。使徒がね」
「なんですって!」
声を張り上げるミサトを無視してシンジを見据えるアスカ。
「誰だと思う?シンジ・・・・・」
「誰って・・・」
「あんたのよく知ってる人」
「・・・・・・まさか?」
「カ・ヲ・ル・よ」
「ええっ!!」
「嘘じゃないわよ。だってそうでなきゃ、あたしがカヲルのこと知ってるはずないじゃない」
アスカはシンジにおでこ同士を突き合わせると、初めてにっこりと笑った。
シンジは眼前の笑顔を凝視しながら、 アスカの言葉をどう解釈して良いか混乱する。
(カヲル君がアスカを助けた・・・?そんな、いったい・・・・・いつの間に?)
混乱しながらもシンジはいつカヲルがアスカを助けたのか疑問に感じ始めた。
なぜならカヲルはすでに自分の手で・・・・・
「シンジ、聞いてよ!」
シンジの顔がにわかに曇っていくのを見て、慌ててアスカは言葉を続けた。
「カヲルがあたしを癒してくれたのはついさっきなのよ!わかる?」
「ええっ!?」「なんですって!」
アスカはシンジの両肩から手を離し、真剣な眼差しを向けた・・・・・・・・
「・・・・・・・・カヲルは生きてるわ・・・・」
その1終わり
その2予告
幼なじみのシンジとアスカ。
それなりに仲良くやってきた二人の関係が、転校生渚カヲルの登場によってギクシャクし始めた。
下校時にまで二人について来るカヲルに遂にアスカがキレる!
カヲルに食ってかかるアスカだが、つるんと足がすべって後頭部を打ってしまった!
失神したアスカははたして正気を取り戻せるのか?
次回シンジアスカの大冒険?その2、
アスカ復活?
「その1とタイトルいっしょじゃないか・・・」
すかさず、その2へ
その2 アスカ復活?
キョウコは随分御無沙汰になっていた部屋の掃除をする決意をした。
朝からずっと悩んだあげくに。
普段は夫に手伝わせている(というか半分以上やらせている)が、あいにく仕事で不在だ。
共働きで同じ会社、同じ職場である。
忙しい時は二人して休日返上で職場に泊まり込み、代わりの休みが平日に思いついた様にポンと入る。
二人同じ日というのが原則だが、今日は珍しく自分だけが休みになっていた。
こういうパターンの休日はかえってけだるさを増してしまう・・・・・・
つけっぱなしのテレビの画面には遊び人の金さんが入れ墨を見せびらかしている所が映し出されていた。
すでに二時半をまわっている。
このままだと掃除と夕食の支度がつながってしまう。
はあ・・・・・・
ため息をつきながら掃除機のコードを引っぱり出そうとした・・・
ピポーン ッ
呼び鈴の音を合図に掃除の中止は決定された。
急に気持ちが軽くなるのを感じながら玄関へと向かう。
「おばさ〜ん!開けてよ、早く!」
(シンジ君の声だわ。にしてはかなり大声ねえ?)
いぶかりながらスリッパのまんま玄関に踏み出した。
「アスカが大変なんだ〜!!おばさん、早くっ」
「え?なんですって!」
思わぬ言葉に慌ててドアに駆け寄りカギを開けると、勢い良くシンジがなだれこんで来た!
しかも背中にアスカをおんぶして・・・
その後ろから見慣れない少年が入ってくる。
銀髪、ぬける様な白い肌、赤い瞳、しかもかなりの美形・・・・シンジと同じ学校の制服を着ている。
しかし普段ならともかく、今はこの常人離れした美少年に気を留めてはいられなかった。
なぜならシンジの背中におぶさったアスカの眼に、まるで精気が感じられなかったのだ。
「アスカ!!どうしたの、いったい!」
叫びながら娘に近寄り顔を覗く、が、反応がない。
「おばさん、ころんで頭打っちゃったんだ!ここのエレベーターの中で!とにかく寝かさなきゃ」
そう言いながらアスカを背中におぶったまま、シンジはアスカの部屋へどたどたと走り出した。
銀髪の少年もそれに続く。
動転する気持ちを押さえてキョウコは二人の後を追いかけた。
彼女が娘の部屋へ入った時にはベッドの前でシンジがアスカを背中から降ろそうとしていた。
「カヲル君、頼むよ」
「ああ」
カヲル君と呼ばれたその少年はアスカの両足をかかえる。
シンジのほうは両脇を後ろからかかえると、二人がかりで手際良くアスカをベッドにおいた。
「おばさん!」
シンジが振り向き声をかける。
「あ、はい」
「僕、病院に電話してきます、アスカをみててください」
言うが早いか部屋を出ていってしまった。
カヲルもついていく。
そして室内には母と娘だけが残された・・・・・・
あまりに急激な事態の展開に思考が追い付かなかったキョウコは、まだアスカにさわってもいない事に気付いた。
腰をしずめベッドに寄り添うと、アスカの顔に指先を触れながら、改めて様子を観る。
自分譲りの青い瞳は虚ろな視線を天井に向けて投げ掛けていた。
血の気がひいた青白い顔は指先に温度を伝えて来ない。
ぴくりとも動かない体には生命感は感じられない。
心配になったキョウコは手を移動させ、アスカの左胸に置いた。
規則正しい心臓の鼓動が伝わってくる。
(大丈夫、生きてる・・・でも・・・・・)
次第に恐怖に近い不安がキョウコの心にわき上がっていく・・・・・
もしアスカがこのままの状態で元にもどらなかったら・・・・・・?
不安はどんどんふくらみ、ほんの数秒で一気に頂点に達した。
感情が爆発して彼女はわが子の両肩をつかみ、揺さぶり、叫んだ!
「アスカ!アスカ!・・・・起きて!・・・・ママよ、わかる?・・・・お願い、返事をしてよ・・・・・」
反応はない。
キョウコはアスカの頬に手を触れた。
「聞いてる?・・・アスカ!ママはここにいるわ!」
アスカの顔に大粒の涙がぽとぽとと滴り落ちた。
開かれたままの瞳に自分の泣き顔が映っている。
「見えないの、ママが?アスカ!アスカ!!」
キョウコの落とした何滴かの涙のうちの一粒がアスカの眼の中に溶け込んだ。
・・・・・・・溶け込んだ涙がこぼれ落ち、 アスカの眼が一回だけまばたきを見せた。
「アスカ!?」
閉じられた唇がわずかに開く。
「・・・・・・・・・マ・マ・・」
「アスカ!・・・そうよ、ママよ!!」
虚ろいでいたアスカの瞳の焦点が定まり、キョウコを見た!
「ママ・・・・・?」
その顔に精気がもどり、アスカは首を持ち上げた。
右手を使って眼を凝らそうとする。
そのしぐさを見てキョウコはアスカの回復を確信した。
「アスカ!!」
感極まったキョウコは娘を引き起こすと、背中とうなじに手をまわし抱きすくめた。
ぎゅっと音がしそうな位に強く、そして優しく・・・・・
一方、アスカはくっ付きすぎて見えなくなってしまった母の顔を首をそらして確認する。
「ママ・・・・なのね・・・ママ、ママ!!」
正気を取り戻したアスカから一気に涙が溢れ出した。
むせび泣きながら母に負けない位強く、体がきしむ位に抱き着く。
自分がどうしてここにいるのか、自分がいままでどうなっていたのかを考える気にもならなかった。
今はただ母のぬくもりを感じていたかった・・・・
「アスカ・・・・心配させて・・・もう!」
「ママ・・・ママァ〜!!」
「良かった・・・回復したみたいだ。本当に良かった・・・」
「シンジ君、君も泣いているのかい?」
「・・・・・・」
「なんなら僕の胸で泣くかい?」
「カヲルく〜ん!・・・ところでもう病院に連絡しちゃったけど?」
「いいんじゃないかな?しないのもおかしいしね」
ドアの隙間から様子を覗き見ていた二人はアスカの回復を喜びながらも、やや間の抜けた会話をしていた。
とにもかくにも、しばらくは親子水入らずでほっておくほうがいいだろう・・・・
「それじゃシンジ君、僕はこの辺で失礼するよ。後はシンジ君にまかせるからね」
「うん・・・じゃあね、カヲル君」
笑顔を絶やさずに立ち去って行くカヲルを目で追いながら、シンジは涙を拭くと再び部屋の中を覗きだした。
中ではさっきと全く同じ情景が見える。
時間の流れなど関係ないといった風情で飽きることなく母娘は抱き合っている。
シンジはもう一度同じ言葉を繰り返す気になった。
「本当によかった・・・・」
その2終わり
その3予告
巨大な湖となった第3新東京市を散歩するシンジとアスカ。
これってデート?
戸惑うシンジにアスカは何を思う・・・?
次回シンジアスカの大冒険?その3、
「やっぱあんたバカシンジだわ・・・」
「アスカ、こっちは女湯だよ・・・」
2つ合わせてもかなり短いその1その2合併号ですが・・・うまく書けへんわい・・・
ギャグを考えるのもしんどいけどギャグでごまかせないっちゅうのも大変ですな〜。
判る人はすでに勘付いているかもしれないけどこの話は実は・・・・・・・大ぼけエヴァの続編です。
なんでやねん!!
しばらくは真面目な話になるはずです。
いつまでもつでしょうか?
ver.-1.00 1998+06/01公開
ご意見、御感想、誤字情報などは m-irie@mbox.kyoto-inet.or.jp まで・・・