【 TOP 】 /
【 めぞん 】 /
[えいり]の部屋に戻る/NEXT
大ぼけエヴァ
第参話 「ならよいですわ」
「バカシンジ!!」
「はあっ!」
「ようやくお目覚めね、バカシンジ」
「なんだ、アスカか・・・おはよう・・・あれ、母さん・・・母さんまで起こしに来たの?」
「碇くん、私はレイよ、気はたしか?」
「くぉらあああ、今何時だと思ってるのよ!5時よ、5時!夕方の!そしてここは学校の保険室!アンタ気絶してここに運ばれて来たの!目覚めたかと思ったらまた気絶して・・・・二度寝はアンタがしょっちゅうやってるけど二度気絶なんて初めて見たわ!」
「えっ・・・何があったんだっけ?」
「碇君、おぼえてないの?」
「えーと、そう言えばなんか夢をみたような・・・いもむし?」
「ストーップ!三度目の気絶はなしよ!ホンットさっきまで心配してたのがバカらしくなってきたわよ」
「僕のこと心配してくれてたの?」
「う・・・・・とにかく事情はミサトが話してくれるわ。口止めだそうよ」
「?」
しずみゆく夕陽が鱗雲を紅く染める。
登校時に渋滞でまったく流れていなかった六車線の道路は下校時もやっぱり渋滞。
数珠つなぎの状態でまるで時が止まったように動かない車を夕焼け空の赤がゆっくり浸食してゆき、時間の経過を感じさせる。
車道とは対照的に人通りのまばらな歩道。
空と同じ色になった道を長くのびた影法師達が移動していく。
学校のクラブ活動を終えて帰る生徒、仕事帰りの会社員、遊び疲れて家路につく子供達、そして・・・・・二人の少女の間に挟まれて引きずられていく少年!
今の彼にはちゅーとはんぱな情景描写など無意味なものでしかなかった。
シンジは今、右側をアスカに、左側をレイに肩を借りてほとんど自分の足に体重をかけずに歩いて(?)いた。
ミサト先生から事情を聞き、自分の見たものが夢ではなく本当であったことを知り、腰が抜けてしまったのだ。
「ねー、碇君の家、あとどれくらい?」
「ま〜だ半分よ、今朝ここら辺でシンジとぶつかったんでしょ?」
ということは、ここから道が分かれるという事だ。
「もう帰ってもいいわよ、あとはアタシ一人で大丈夫だから」
「だけど碇君全然自力で歩いてないよ。最後まで送ってくわ」
レイが肩を貸してることを内心快く思わないアスカだったがシンジがこれでは仕方ない。
「本当になさけないんだから、バカシンジ!」
見ていないからそんな事いえるんだ、と言いたいシンジだけど今はアスカに言い返す気力すらない。
「言いすぎよ、アスカが碇君の立場だったらどうなってたかしら?」
(あ、綾波、ありがとう。君はやさしいんだね)
自分の気持ちを代弁してくれたレイにシンジは感謝した。
「もし私が碇君と同じ目にあったら・・・でも数十cmのいも虫っていっぺん見てみたい!ねー、どんなだった?碇くーん!」
(か、かんべんしてよ綾波〜)
ますます萎えてしまうシンジ。
「アンタバカァ?シンジによけいにダメージ与える様なこと言ってどーすんの!」
「でもリツコ先生結局、中に入れてくれなかったんだもん」
「もうー、その話はやめ!気分悪くなるわ」
アスカに話をさえぎられたレイは別の話題をさがす。
「じゃあ話は変わるけど、アスカは何人?」
「なにじんってアンタ・・(コイツ本当に話が変わるわね!)・・ドイツ人よ、ただし半分だけなの。残りはアメリカと日本の血が流れてるの。つまりアタシはクォーターなの」
「クォーターってなにもの?」
「4分の1って意味よ!そんなことも知らないの!?」
「だってドイツ語しらないもん」
「英語よ!アンタ中二ならそれくらい分かりそうなもんでしょ!」
「あっそーか、てヘへへ・・・ところでアスカは毎日碇君と登校してるんでしょ?」
「そうよ!今度はなに聞きたいのよ?」
「いや、ご近所どうしかなーと思って」
「・・・同じマンションよ」
「えー、同じおうちにいっしょに住んでんの?」
「アンタ表現の仕方おかしくない!?」
「うーん、私の住んでたとこ一軒家ばっかりだったから」
「そんなの関係無いでしょ!もお、なんなのよアンタ!
」
自分を間に挟んで こんな会話をされるシンジこそいい迷惑である。
(は、はやく自分の足で歩けるようにならないと・・・)
シンジはひきずられる足をなんとか動けるようにしようと必死に力を入れるのだった。
シンジの努力が功を奏したのか自分のマンションの前まで来た頃には、自力で立てるようになっていた。
「もう大丈夫だよ、綾波、アスカ、すまなかったね」
「碇君、ほんとにもういいの?」
「うん、少しふらつくけどこれくらいなら・・・」
「こんなバカシンジ心配することないわよ。それじゃあレイ、また明日ね」
「綾波、今日はほんとにありがとう。それじゃあね」
「碇君、おだいじにー。アスカもばいばーい」
手を振りながら走り去っていくレイ。
レイを見送るシンジにふたたびアスカが肩を貸そうとする。
「アスカ、もう大丈夫だって、本当に」
「なによ、アンタいつから女の子の前で見栄張れるご身分になったの?
信じらんない!」
アスカに対してはいつもあやまってばかりのシンジは当然アスカに見栄など張れる立場ではない。
シンジはレイに対して見栄張ってる、とアスカは感じたのだ。
勘違いも甚だしいが、自分の両端で行われた言葉の応酬が理由とは絶対言えない。
シンジが観念してアスカの肩を借りたとき・・・
すでに100mほど先にいるレイがくるりと振り向いた。
いいもの見ちゃったという感じでにっこり笑う。
そしてまた走り出す。
(なんで肩貸したとたんにふりむくの?どーしてわかったのよ!)
それはアスカの声が大きいから・・・・・
エレベーターが6階で止まりドアが開く。
いっしょに出るシンジとアスカ。
もうシンジは自分で歩いている。
そのまままっすぐ歩いてシンジは601号室で、アスカは602号室で止まる。
「じゃあね、シンジ」
「うん、またね。アスカ」
シンジがドアのカギを開けて入ると部屋の明りがついている。
(そうか、父さん達もう帰ってるのか・・・)
「ただいまー」
「あらシンジ、遅かったじゃないの。もうすぐ夕飯よ」
そう言いながらエプロン姿の母、ユイがシンジを出迎える。
「あ・・・・・・・」
見慣れたはずの母の顔を見たとき、潜在的にシンジの頭の中に潜んでいた疑問が今、解明された!
「どうしたのシンジ、間の抜けた顔して?」
「あのさ、母さん・・・・」
「なあに?」
「母さんの親戚に綾波って人いる?」
「初めて会った時からなぜか綾波のことが気になって仕方なかったんだ」
「なんですってえ!」
「だ、だからなんで気になるのか家に帰ってからやっと判ったたんだよ」
「どおいうことよ?」
「綾波ってさ・・・母さんに似てない?」
「え?おばさま・・・・あああ!」
「ね、似てるだろ?どういうわけかヘアスタイルまで」
「そうね、たしかに」
「それで母さんに聞いてみたんだけど親戚に綾波って名字の人もいないしレイって名前も知らないって」
「じゃ、無関係じゃない!」
「うん、でもこの話聞いて母さんも、父さんまでも綾波に興味をもっちゃって一度家に連れてきなさいってことになっちゃたんだ」
「なによ〜それ!」
「もしかしたら母さんの見落としてるとこで血がつながっているかもしれないから直接会って確かめてみましょう、だってさ」
「・・・・・で、レイにそう言うの?おばさまに似てるから一度来てって」
「うん、明日休みだし。学校着いたら話してみる」
これだけの会話を登校途中、遅刻しないよう全力疾走しながら話していたのだ!
日頃の積み重ねとはいえ、すでに特殊能力である。
しかし、そんな二人の後ろから足音が追いついてくる。
「おーい、碇君、アスカ、おはよー」
「レイ!」「綾波!」
昨日は口に食パンくわえていたが今日はくわえてない。
手にドーナツ持っている。
ドーナツは食パンよりもくずれやすく、口にくわえたままだとポロッと落として・・・恐らくレイ以外には全く不要な知識だろう。
「やー、昨日あのあと道に迷っちゃって交番で自分ん家聞いちゃった」
「なんなのよ、それ!」
「何しろ引っ越してきたばかりだから・・・行きと帰りじゃ風景も全然ちがうし」
「もういいわよ。ところで、シンジから話があるそうよ。ね〜シンジ!」
アスカがシンジのほうに嫌味のある笑顔で振り向く。
「うん、実は・・・」
次の日。
時刻は午後一時頃。
ピンクのストライプのTシャツに白のパンツルックという出で立ちでレイはシンジのマンションの前に立っていた。
自分とシンジの母が異常に似ているという餌にダボハゼのように食らいつき、シンジの話を二つ返事でOKしたのだ。
もっとも、レイの好奇心からすればどんな理由でもOKだったろう・・・
昨日は夕焼けの日差しで判らなかった建物の色はレンガ色。
見た感じかなりの高級マンションといった感じだ。
一応マンションの名を確かめておく。
二階あたりに取り付けられたやけにメタリックな看板にネオンジェネシスとある。
いつ頃建てられたかすぐ判りそうな名前だ。
21世紀直前頃は21とかニューとかセンチュリーや新世紀といった文字が入った建物や乗り物や会社や団体が雨後の竹の子のごとく現われ、果てはネズミ講や英語のインチキ教材販売、裏DVDの通信販売などの社名にまで使われまくったため、2015年現在の評価はセンスのないネーミングで一致してる。
入り口の自動ドアまで来たレイは、ふと立ち止まった。
「何階だっけ・・・」
ピンポーン
レイが呼び鈴を押すと待ってましたとばかりにドアが開く。
「遅いじゃない、どうしたのよ!」
「あ、アスカ、こんちわー。よく考えたら何階の何号室か聞いてなかったから1階から順に探してたの」
「あきれた、それで遅れたの・・・もう、そんな探し方しか思いつかなかったの!」
「いらっしゃい綾波。おかしいな、ちゃんと教えたはずなんだけど。」
「こんにちは碇君、それじゃ私が聞きのがしたのかな?」
「とにかく早く上がりなさいよ、おばさまもおじさまもお待ちかねよ!」
「うん、ところで・・アスカまるで自分の家みたいだね」
「・・・・はやくしなさい!」
靴を脱いだレイをひっぱってダイニングキッチンを通るアスカ。
手を引かれながらきょろきょろ見回すレイ。
後に続くシンジ。
応接室の前まで来るとアスカは急に笑顔をつくってそっとドアを開ける。
「おじさま、おばさま、レイが来ましたわ」
それを合図にソファに座っていたユイとゲンドウが立ち上がった。
アスカがレイを前に押し出す。
「あ、あの綾波レイです。はじめましてー」
ペコリと頭を下げるレイ。
「いらっしゃい、レイちゃん。シンジの母のユイです」
その声に頭を上げユイを覗き見るレイ。
二人の視線がぴたりと合った!
(似てるわ・・・・確かに!)(確かに・・・・似てるわ!)
お互い笑顔のまま静止している二人!
そしてその傍らでさらにするどい視線を眼鏡越しに投げかける中年男・・・
(似てる・・・・・・・若い頃のユイに!)
「レイ君!」
その言葉に固まっていた二人の時が動き出す。
「私がシンジの父の碇ゲンドウだ・・・・」
ユイの傍らでたたずむゲンドウに視線を移すレイ。
もみあげとつながった顎ヒゲ、眼鏡の下から見える目つきの怖さ・・・
(うわー、すごい迫力ある顔、というか顔面!毛が顔面のまわりを一周してるよ。それに眉の上がややフランケンしてる。碇君と全然似てな〜い!)
ゲンドウの迫力に押されながらもしっかり観察しているレイ。
ここでレイは自分の前にたたずんでいるゲンドウに妙な違和感を感じた。
(この人なんとなくポーズとってるような気がする・・・)
応接室はガラス戸を隔てて南向きのバルコニーに続いている。
今の時間帯は日差しがかなりきつい。
そのためレースのカーテンを引いて光をやわらげている。
冷房のきいた室内でレイはゆったりしたソファーにちょこんと腰掛け、オレンジジュースを飲んでいる。
その向かい側に日の光を背にしてゲンドウとユイ。
西側にシンジとアスカ。
どれも三人程すわれる豪華なソファーに対し、テーブルはシンプルな木製。
角が丸い長方形で片手で運べそうなほど小さい。
元々、食事をする所ではないからこれで十分なのだろう。
ユイが話を切りだした。
「レイちゃんはどこで生まれたの?」
「北海道の夕張です。しかもかなりへき地でした。」
「あら夕張。いいとこねえ。」
と言いながらユイは夕張に行った事もなかったし親戚も知り合いもいなかった。
「そのあと6才から8才まで福島に引っ越して、また夕張にもどったんです。どっちもカエルや虫なんかがたくさんいる田舎でした。」
「そうなの。・・・・レイちゃん、あなたを見てるとやっぱりどこかで血縁関係があるんじゃないかって気がするのよ。これだけ似てるんだものね。だからこれから話すことはあまり楽しい話にはならないかもしれないけど許してね。質問ばかりになっちゃうと思うの」
「わかりました!なんでも聞いてください」
元気に答えるレイ。
目が好奇に燃え、むしろ望む所といった感じだ。
ユイは一枚の紙を取り出した。
パソコンから親戚関係の住所録をプリントアウトしたものだ。
「それじゃあまず、ご両親のお名前を聞きましょうか」
「ハジメ。母はフミヨです。兄弟はいません」
「じゃあお母さんの旧姓は?」
「えっと、白帆です。(ほ)は船の帆です」
そんな苗字があったことすら知らない。
「う〜ん・・・レイちゃんは御両親のどちらに似ているのかしら?」
「どっちにもあまり似てません」
「どっちにも?」
「実は私、生まれた時未熟児で1600gしかなかったそうです。それでなんとか死なずに育ったんですけど、いわゆる虚弱体質だったんです」
「ええっ!」「えっ・・・」
声をあげたのはアスカとシンジ。
学校でのレイからは想像つかない事だから。
「だから父も母も私みたいに目が赤っぽかったり、髪の毛の色が薄くて青っぽかったり、肌が白すぎたりしないんです。これは私が未熟児だったころの名残です」
衝撃の事実で急激に部屋を沈んだ空気が包む・・・・
レイとゲンドウ以外の三人の顔が深刻なものに変わっていった。
(悪いこと聞いてしまったわ)
(綾波が未熟児だったなんて・・・)
(とても信じらんない!)
(虚弱体質の美少女・・・いい響きだ)
「父も母も体育会系ってやつで体つきも顔つきもがっちりしてて、北海道に住んでたわりに色黒だったし・・・少なくとも自分では似てないと思うんですけど・・・」
「そうだったの・・・・大変だったでしょうね」
「ええ、父も母も大変だったと思います。私自身、小さい頃は自分が虚弱体質って知らないわけだし・・・」
ユイは悲しい雰囲気に酔ってしまい、つい突っ込んで聞いてしまう。
「いつ頃知らされたの、そのことを?」
「はい、小学校一年の時、友達を二年の男の子がいじめて、仕返しに落し穴つくってその子を落っことして上からヒキガエルとアメリカザリガニとヘビの抜け殻とハトの死がいほおりこんでやったら、それが母の耳に入って、あなたは虚弱体質なんだからもっとおとなしくしなさいって言われまして」
「・・・・・・・・・・・・・」×4
目を見開いたまま動かないユイ、白眼むいて動かないシンジ、開いた口がふさがらないまま動かないアスカ、さっきから動かないゲンドウ・・・
「それで自分の生まれた時のこととか虚弱体質の意味とか教えてもらったんですけど、それまで全然自覚がなくって・・・というか今だに自覚がなくって」
確かに親は大変だっただろう、と思いつつユイは目を元の大きさにもどした。
「やっぱり育った環境が良かったんでしょうか、病気ひとつしたことありません」
「そ、そう、良かったわね」
冷や汗かきながら作り笑顔で答えるユイの前でレイはジュースを一気に飲み干した。
「良ければこれもどうだね?」
ゲンドウが自分のジュースを差し出す。
「あ、すいません、マンションに着いてからここに来るまでにけっこう汗かいちゃったもんで。いただきまーす」
ストローで飲み始めるレイ。
その様子を眺めながらゲンドウの口元が微かにニヤリとゆがんだ。
そのジュースは全然飲んでない様に見えて 実はゲンドウが一口だけストローで飲んでいたのだ・・・
仕切り直し・・・・・
といったところで再び質問を始めるユイ、しかしかなりやる気が減退している。
「ご両親の出身地はどちらかしら」
「父が福島県いわき市、母が新潟市です」
「う〜ん、接点ないわ。福島も新潟も。私の親戚西日本に集中してるのよ」
紙とにらめっこするユイ。
「私の親戚が新潟にいるのだがな」
「あなたにいても仕方ないでしょ」
「ああ、わかってるよ、ユイ。レイ君、趣味はなにかね?」
「え?趣味って・・・私ん家、ほんとなんにもないとこだったから自然と戯れる以外は家の中でテレビ画面見るしかなかったんです。ビデオやゲーム、衛生放送にインターネットとか・・・父がお笑い番組好きで衛生放送のお笑い専門チャンネルと契約してよくいっしょに見てました。吉本新喜劇とか漫才とか」
「ほう、そうかね、私の知ってる漫才というと、『あんた、つぼみたいな顔して・・』」
「あ、ダイハナだー」
「あなた、話が脱線してるわよ」
「ん、質問ばかりでは取り調べみたいで堅苦しいだろう。こんな話もおり混ぜたほうがよかろう」
ユイの眉がピクリと動く。
ゲンドウの鼻の下が長年連れ添った者でしか判らぬほどわずかに伸びているのにユイは気付いていた。
「・・・ご両親にご兄弟は?」
「母に兄がいます。レイイチと言って登山家なんです」
「登山家・・・」
いやな予感。
「うむ、山はいいぞ!」
やっぱり・・・
「レイ君の住んでた所は近くに山はなかったかね?」
「はい、ありました。てっぺんに栗の木があってよくそれ目当てに登ってました。」
「私も若い頃は山で森林浴などしたものだよ」
(よく言うわ・・・・)
ゲンドウと共に山に登り森林浴をしたのは他ならぬユイである。
しかも一回だけ。
少ない引きだしを駆使してレイと話をはずませようとするゲンドウはかなり異様に映った。
しかも普段のゲンドウはなにを考えているか判らない位、無表情で仮面をかぶってるみたいなのに今は彼にしては相当ゆるんでいる。
(良くないことでも起きなきゃいいけど・・・)
顔で笑いながら不安を隠しきれないユイ。
しかし、顔で笑うことすら出来なくなった者が一人・・・
「おばさま、すみません、ちょっと出ます!」
アスカがシンジに小声で囁く。
「シンジ、ついてきなさい!」
「え、なんで?」
「なんでも!」
合点がいかないまま、アスカに手をひっぱられて部屋を出ていく。
「なんなのよ、あれは!」
シンジに怒鳴るアスカ!
「ご、ごめん・・・てなんのことだよ?」
「まったく、レイばっかりちやほやして!」
「しかたないだろ、初めて来たお客さんなんだから」
「ちがうわよ!おばさまはまだいいの、問題はあのデレーッとしただらしないおじさまの姿よ!」
「ええっ?」
「あんなおじさまの顔初めてよ!シンジはどうなの?」
「うっ・・・確かにあんなのは僕も見た覚えは・・・・・・・ない!」
「でしょう?アタシはもう十年もシンジん家に出入りしてるのよ!なのにおじさまアタシにあんな顔見せた事ないじゃない!」
「まさかアスカ・・・・・父さんのことを!」
ペシッ
「なんでそうなるのよ!アタシはただ・・・」
アスカはうまく言葉にできず絶句した。
要するに十年間碇家と家族同様の付き合いをしてきた自分よりレイが優位に立つのがゆるせないのだ。
しかし頭の中でうまく整理できないアスカのしぼり出した言葉は・・・
「む・か・つ・く」
「わー、夕張メロンだー!」
小さなテーブルいっぱいに並べられた皿の上には、同じ大きさに五等分されたオレンジ色のメロンが置かれていた。
「いったいどうして夕張メロンを用意できたんですか?私、夕張市出身だってさっき言ったばかりなのに?」
レイが不思議がるのも当然だ。
「私が買っておいた」
ゲンドウが答える。
「昨日シンジがレイ君が二日続けて夕張メロンパンをお昼に食べてたと聞いてな」
「それは僕が母さんに言ってた事だよ」
「ふっ問題ない」
(ほんっとにいつどこで聞き耳立ててるかわかんないんだから)
現在のユイはゲンドウをネガティブにしか見れない状態になっている。
「こっちに来てから見るの初めてです!おいしそー」
レイは夕張メロンに飢えていた。
いままで夕張メロンパンで代用していたがやはり無理がある。
メロンパンは元々メロン味なわけではないのに夕張メロンパンなんてパンを売ってる事自体おかしい。
◯◯パンはどーゆー神経してるのやら・・・・
「いただきまーす」
さっそく食べ始めるレイ。
スプーンで種を取り除いてから、手に持って直接かぶりつく。
「うー、おいし!」
少し行儀が悪いがレイのキャラクターには合っている。
「いや、これだけ喜ばれるならわざわざ買っておいた甲斐があったな」
ゲンドウがにやけるのを横目にユイ、シンジ、アスカは静々とメロンを口にいれる。
応接室の空気は二極化していた。
「ごちそうさまでした!」
「よかったら私の分もどうかね?」
「い、いえ、それは悪いです」
「遠慮することはない」
(このためにわざわざメロンに手を付けないでおいたのね、あなた)
このままではいけない、と思ったユイは二人の会話に割って入ることにした。
「レイちゃん、結局なんにも判らなかったわね。いろいろ聞いたけど名前や出身地や親戚関係も全然接点がなかったし。レイちゃんとはやはり無関係みたいね。今日は質問ばかりで私もあまり楽しめなかったわ。せっかく初めて来てくれたのに・・・次の機会にはただ遊ぶためだけに来てちょうだいね。」
「いえ、とっても面白かったです!」
ユイは腕時計を見た。三時二十五分・・・
「私はそろそろ買い物にいかなくちゃ・・・レイちゃん、まだ帰るには早いわね。そうだわ、シンジ、たしか新しいゲームソフト買ったんだったわね。」
「うん、そうだけど」
「やりましょ、やりましょ!レイ、それでいいわよね!」
「え?ええ、いいよ」
ユイもアスカもゲンドウがTVゲームと全く縁がないことを承知している。
あ、うんの呼吸でレイをゲンドウから引き離すことに成功した二人・・・シンジ以上に絆は強い?
ユイは商店街へと続く道をやや早足で歩いていた。
夕食までたっぷり時間がある。
別に慌てる必要はないのに・・・
いつものように十字路を右に曲がり、商店街に入ろうとしたとき彼女の眼にはいったのは・・・『工事中につき、ご協力お願いします』の看板。
(こっちは通れないのね。良くないことは重なるものねえ・・・良くないこと?重なる?)
ユイは急に胸騒ぎを感じた。
(こんな所で私はなにをしてるのかしら?)
買い物にきまってる。
(こんな事してる間に家でなにか良くないことが起きてやしないかしら?)
それは行って見なければわからない。
ユイは自分の勘を信じて、引き返すことに決めた。
駆け出すユイの頭の中にはゲンドウのゆるみきった顔面が占拠していた。
「よおっし、やった!」
「うう、また負けた・・・」
「碇君、ご愁傷様・・・」
シンジは自分の買ったゲームで負け続けるというベタな展開にはまってしまった。
「二人とも本当にこのゲーム初めて?」
「なに言ってんのよ、これバーチャファイター15じゃない。基本操作は14と変わんないじゃないの!楽勝、楽勝」
「私も13もってるよ」
「シンジじゃ相手にならないわ、レイ、勝負よ!」
「うん・・・ちょっと待って、その、おトイレに・・・」
立ち上がるレイにアスカが囁く。
「場所わかってる?」
「うん大丈夫」
部屋を出ていくレイを目で追うシンジ。
「こら、なに見てんのよ、H!」
ユイはマンションの中まで入った。
エレベーターを待つ時間がやけにまだるっこい。
一瞬、考えてユイは階段を昇ることにした。
レイはトイレから出るとシンジの部屋へ続く廊下を歩く。
廊下の角を曲がろうとしたとき、突然、人影が!
「うあっとっと、あ・・・」
「やあ、レイ君」
ゲンドウがレイを見下ろしていた。
さっきと違い表情に感情が見られない。
「すまないが私の部屋へ来てくれないかね」
その顔面に威圧されてしまうレイ。
「・・・・・・・は・・い」
ゲンドウに連れられ廊下を進むレイ。
今のレイは好奇心と恐怖心が入りまじった不思議な気持ちになっていた。
程なく部屋の前に着き、ドアを開けるゲンドウ。
「さあ、入りたまえ」
うながされて部屋に入ると・・・ レイはまず机に目がいった。
机の上いっぱいに得体の知れない生き物のホルマリン浸けのガラス瓶が並んでいる。
(わー!おととい窓からのぞいた理科準備室みたい・・・)
他には本棚に難しそうな書物、ごく普通の和だんす、といったところ。
ゲンドウは机の引きだしから、なにかを取り出しレイにふりむく。
「レイ君、君は若い頃のユイにとてもよく似ている・・・・」
「遅いわね、レイ」
「もしかして・・」
ポカッ
「まだなにも言ってないじゃないか!」
「大じゃないわよ、たぶん」
「じゃあなに?」
「・・・・・シンジ、ついてきて!」
部屋を出るアスカの頭のなかにはゲンドウのたるんだ顔面が浮かんでいた。
廊下に二人が出たそのとき!
ガチャッバタンッドドドドドドドッ
「な、なに?」
シンジがその音に驚く間もなくユイが二人の前まで突進してくる。
「レ、レイちゃんは?!」
息を切らして質問するユイの勢いに押されながらアスカが答える。
「トイレに行ったきり、帰って来ないんです。まさか、おばさま心配になって戻ってきたんですか?」
ユイの眼を見るアスカ・・・以心伝心、考えることはいっしょ!
ゲンドウの部屋へ走るユイ!続くアスカ!あわてて追うシンジ。
部屋につくやいなや、ユイがドアに手をかけ思いっきり開く!
そこでユイが見たものは・・・・・・・・
ゲンドウの背中!
しかもレイの首の後ろに両手をまわそうとした状態の!
「あなた!なにしてらっしゃるの?!」
「ユイ?」
驚いて振り向くゲンドウの顔面に買い物袋が飛んできた!
ベシャッ
その瞬間、ゲンドウの手にあった紫色の物体が吹っ飛んだ。
「なにをしてるか聞いてるんです・・・・・」
「あ・いや・・・」
レイは急転直下の展開に慌てまくった。
(うわー、よく判んないうちにとんでもないことになっちゃった!どーしたらいいの?そうだ、こういう時は・・・逃げちゃおう!)
「えへへへへ、あのう、私そろそろ失礼します〜」
ゲンドウから離れユイの脇をすりぬけドアの影から覗いてるシンジとアスカに「ばいばい」と手を振り走り去るレイ。
シンジだけがレイを目で追っていた。
(いっちゃった・・・)
取り残されたゲンドウをまばたきもせず睨みつけるユイ。
「あなた・・・まさかあなたが・・・
こんなことをするなんて!!!」
「ユ、ユイ!ちがうんだ、話をきいてくれ!」
ゲンドウの声を無視して、ユイはゆっくり本棚に歩を進めた。
女性と男性では体力の差が大きすぎる。
また、普通、女性は格闘技の経験などなきに等しい。
素手による直接攻撃には無理がある。
間接的で有効にダメージを与える手段が必要になってくる。
したがって妻が夫に戦いを挑む場合、妻は物を投げるという行為で夫を攻撃することになるのだ。たぶん。
「よりによって中学生に手を出すなんて・・・・・・・・よくもそんなまねを!!」
ユイは本棚から本を引き抜き、手当たり次第投げはじめた!
「あなたって人は!あなたってひとは!」
まず上段の文庫本を一つかみ数冊単位で投げる、投げる!
文庫本の雨を受けながら叫ぶゲンドウ!
「 ユ、ユイ!話ぼぐぅっ!」
百科事典の角がゲンドウのこめかみにつき刺さる!
ユイの手はすでに二段目の辞典、図鑑の棚に伸びていた。
さすがに文庫本のようにはいかないが、それでも片手で一冊ずつ、両手をフル回転してぶん投げる!
ゲンドウは両手を前に出してガードの体勢をとる。
しかしユイはおかまいなしに三段目の雑誌を投げ始めた。
辞典類よりダメージが弱いため、前進を試みるゲンドウ。
だが!そこに最下段に置いてあった鉄製のブックエンドの束が飛んできてゲンドウのガードを吹っ飛ばし、顔面をとらえた!
ばきっ
ゲンドウの眼鏡が宙を舞い、ドアの影に身をひそめるシンジ達の足元に落ちる。
(母さん・・・・母さんてこんなことする人だったの?)
生まれて初めて両親の夫婦喧嘩を見て、シンジは母のイメージが音をたてて崩れていくのを感じた。
それはアスカも同じである。
(おばさま!やめて・・・こんなのおばさまじゃな〜い!!)
アスカにとってユイは理想の母親像なのだ。
現実の母、キョウコはユイと比べ、やや雑なところがあり、あこがれの対象には成りえなかったのだ。
今、その理想の母親像が強烈なインパクトと共に破壊されようとしている!
しかし、それを止める術は二人にはない。
ところで二人の今のゲンドウに対する思いは・・・特になかった。
ユイは次に机に目を向けた。
机上にはホルマリン浸けのガラス瓶が占拠してる。
元々大学の研究所で生物学の研究をしていたゲンドウのコレクションである。
まずユイはギボシムシの入った瓶を投げつける。
「ユイ、話を聞いて・・・」
がしゃんっ
瓶がゲンドウの鼻をとらえた。
ギボシムシを頭にはりつけたまま鼻血を出すゲンドウ!
たちまち部屋中にホルマリンの異臭がたちこめる。
そんなことに委細かまわず、次々瓶を投げつけるユイ。
ウミケムシの瓶、テズルモズルの瓶、ヒゲムシの瓶・・・・・
がしゃんっがしゃんっがしゃんっ
「ユイ、話を聞いてくれ〜」
鼻血をしたたらせるゲンドウの周りに異様な形状の生物の死骸が転がる。
ユイは最後にハオリムシの瓶に手をのばし、迷うこと無く投げつける!
ギボシムシやテズルモズルならともかく、ハオリムシまで投げるとはもはや完全に正気を失っているとしか言いようが無い。
ゲンドウは投げられた瓶を両手ではっしと受け止め、そこねて額で受け止めた!ぐあしゃっああん
額からも出血するゲンドウ。
「ユイ、話を聞いてく・・・」
今度はタンスを睨むユイ。
手をひろげ、タンスを抱えようかという仕草をするユイ。
え?まさか!ゲンドウもシンジ、アスカもそれは無理だと思った瞬間!
ユイはタンスの引き出しを両手で引っこ抜き、横に振り回してしてゲンドウにほおり投げた!
ハンマー投げの要領である。
ぶーんっ 「ユイ、はな・・」 ごんっ ぱらぱらぱら
ゲンドウにぶつかった引き出しから飛び出たシャツやズボンがぱらぱらと舞い落ちる。
続けてユイは第二投、第三投と連射した!
ばごんっどこんっずこんっ
パンツや靴下が舞い散る中、ゲンドウは引き出しの下敷きになりかけていた。
最後の引き出しが投げられたのを見計らってゲンドウが脱出を試みたとき、空になったタンスが降ってきた!
ずしっ
さらに、さっきの本棚が
どすんっ
とどめに机が倒れてきて
ずず〜ん・・・・・
静寂・・・・ホルマリンの臭いで充満した部屋には引き出しとタンス、机、本棚でできた小さな山・・・その周りに本やパンツやシャツ、ズボンなどの下着類、上着類などが散りばめられ、所々に海棲生物の死骸がうちあげられている・・・・その傍らに座り込む女性の息づかいのみがこの部屋に聞こえる音・・・・・
「ユイ、話をきいてくれ〜」
静寂が打ち破られ小山ががらがらと崩れ落ち、ゲンドウが出現する。
あれだけの目にあいながら、目立った負傷は鼻血と額の皮膚を切った位のようだ。
ゲンドウを見つめるユイ・・・・・・
さっきとは違いその表情から怒りが消えている。
「聞きましょう、あなた・・・・」
「レイ君を見たとき、君に似ていると思った。そう、初めて会ったときの君に・・・その頃のことを思い出したのだ」
「・・・・・その頃のこと」
その頃・・・すなわち京都大学の研究所時代のこと。
二人はそこで出会い、交際を始めたのだった。
「色々な想いでをつくった。君といっしょに・・・」
遠い目をするゲンドウ。眼鏡がないからよくわかる。
「だが、君の知らない想いでもある。ある時、私は君に贈り物をしようとしたことがあった。しかし君に渡す前に紛失してしまったのだ。半年程たって、ひょっこりと出てきたんだが、そのときはもはや君に渡すことは出来なくなっていた。だからそのことは君も知らない」
「どうして渡せなくなったんですか?」
「そのとき、すでに君と私は結婚していたからだ。その贈り物とは・・・京都嵯峨野の野宮神社のお守りだったんだ。つ、つまり・・・・」
あろう事かゲンドウの頬が赤く染まる。
「縁結びの神のお守りだ・・・・」
「ヘ?」
「縁結びの神だ!」
うつむくゲンドウ・・・・・まったくキャラクターに合ってない!
恥じらいながら視線をはずし、下むいてるゲンドウなどシンジとアスカにとっては不気味にしか見えやしない。
(父さん・・・父さんだよね?)
(気持ち悪い・・・・)
しかしユイの見方は全く二人とは異なっていた。
(カワイイ!!)
赤面しながら続けるゲンドウ。
「そのお守りがまだここにあったことを思い出したのだ。だからレイ君に渡そうとした。もはや私やユイにはいらないからな」
ここからゼスチュアーに入るゲンドウ。
「お守りのヒモをこう持って、レイ君の首の後ろに手をまわしてだな・・・」
そう言ってゲンドウのとった体勢はユイがドア開けたときと同じ格好だった。
「このようにして首にかけようと・・」
「あ〜、なるほど!」×3、ポンと手を打つ三人。
「はいはい、そこまで。よ〜くわかりました、あなた・・・・・・・」
見つめ合うユイとゲンドウ。
しばらくの沈黙・・・・・・・やがてユイが微笑む。
「ならよいですわ」
「お〜ユイ、わかってくれたか!」
「ええ。でも、お守りを首にかけた後、なにかする気だったんじゃないでしょうね?」
「そ、そんなつもりはなかった、神にかけて誓う!」
「そうね、あなたにそんなことはムリよね・・・・・くすくすくす」
「ふ、はははははは」
「うふふふふふ、ふふふ」
「わーはっはっはっはっは」
どういうわけか笑い続ける二人。
「アスカ、いったいどうしちゃったんだろ。父さんも母さんも・・・」
「とにかく雨降って地固まるってことね、アホらしいけど」
「ふーん、そうなんだ・・・」
シンジとアスカの見守る中、二人はしばらくの間、何かに憑かれたように笑い続けた。
「ふふふふうっふふうふふふふっふふふふふふふふふふふうっふうふっふうふふ」
「あはははははあははははあははあははははっはあっっはあはあっはははははは」
「ふふふふふ、ふうふう、あら、もうこんな時間。晩ご飯の支度全然できてないわ」
「ははははは、はあはあ、そうか、それでは久しぶりに外で食事をしよう」
「まあうれしいわ、あなた。それでは早速準備しなくちゃ!」
ユイの肩を抱いて部屋を出るゲンドウ。
「シンジ、これから母さんと外へ出る。悪いが部屋をかたずけておいてくれ」
「ええっそんな!」
シンジは拒絶しようとしたが、すでに肩寄せ合って二人だけの世界に入りこんでいる両親に何を言おうと無駄であることは明白であった・・・・
部屋中に散らかった本やらパンツやらガラスやら気持ち悪い生き物やら・・・それをぼんやり眺めながら途方にくれるシンジ。
「ほら、なにボケっとしてるのよ!始めるわよ」
「え、なにを?」
「なにって部屋をかたずけるに決まってるでしょ!さっさと始末しましょ!」
「手伝ってくれるの?」
「悪い?」
「う、ううん、そんなことない!」
(信じられない、アスカがこういう時、手伝ってくれるなんて・・・僕は今、猛烈に感動している!)
その晩、シンジは一人寂しく食事をすることになった。
両親が共働きのためか、料理が得意のシンジだったが今はその気力もなく、レトルトパックのカレーですましていた。
結局アスカは途中で帰ってしまった。
残されたシンジは孤独をかみしめることとなった。
(うう、父さん、母さん、僕はいらない子なの?アスカもどーして急に帰るんだよ!)
レイと母が似ているということからこんな結果になるとは・・・
「辛〜!どうして激辛しか残ってないんだよう!」
シンジの叫びを聞くものはどこにもいなかった・・・
アスカは自分の部屋に戻るとスカートのポケットに手をつっこんだ。
そして取り出したのはゲンドウの部屋をかたずけてる時、ちょろまかしたお守り袋だった。
紫色の袋に金糸で野宮神社 縁結びのお守りと書かれてある。
紐は銀色。なかなか綺麗なお守りである。
指ではじいてみる。
くるくる回って金糸の部分がきらきら光って美しい。
とはいえ女子中学生が目の色変えて欲しがる種類のものには見えない。
「縁結びの神・・・アタシをさしおいてレイに渡そうとするなんてね・・・」
なによりレイが貰うはずのものを自分のものにしたことが大きかった。
「そーよ、アタシのものになって当然なのよ!」
ところで・・・・
「どう使えばいいのよ、これ?縁結びの神だから・・・好きな人と結ばれるために・・・」
急激に赤面するアスカ。
「と、とにかく必要になる時が来るまでしまっとこ!すこしホルマリン臭いけど」
アスカはお守りをお気に入りのオルゴールの中に大事にしまっておくことに決めた。
第参話完
次回予告
制服という入れ物、ジャージという入れ物。
中身は同じでも何故ゆえジャージだと校則に触れるのか?
ヒカリはクラス委員としての立場と黒ジャージ男の二者択一を迫られる!
次回大ぼけエヴァ題四話
「だめ!脱ぎました?」「アホ!」(仮題)
次回も「いやじゃ〜!ワシは絶対ジャージを脱がんぞ〜」
映画に間に合わなかった。
ほんで映画見たら益々遅れた。
自分の中で消化するのに少々時間がかかりました。
それと試行錯誤しながら書いてるのですが、書いてるうち枝葉が繁ってしまう癖があるようで今回は長くなってしもた。
長けりゃ遅くなるということで、次回は短めにしよう。
最近夕張メロンパン見かけんな・・・
えいりさんの『大ボケEVA』第参話、公開です。
ゲンドウ、イヤーン(^^;
間接キスにニヤリだなんて・・・
ロリオヤジ・・・・
お守りをあげたあと、本当にそのまま返すつもりだったのか?・・・あやしい(^^;
自分よりもレイを気に入ってしまったようなゲンドウに、 アスカの魅せる反撃は?
別に反撃はいらないかなぁ・・・シンジにどう思われるかが肝心なんだし・・・
でも、『親』と言うのは大きなファクター・・かな?
何か良く分からなくなってきた(^^;;;;
あと、
メロン5等分というすご技を魅せたユイさんに拍手!
これ切ったのユイさんだよ・・・ね??? オヤジが切ったのかな
さあ、訪問者の皆さん。
Airに苦しめられたえいりさんに励ましのお便りを!
めぞんに戻る/
TopPageに戻る/
[えいり]の部屋へ戻る