パッパァー
「うわ!!」
「な、なんや!!」
パァー・・・キーキキー・・・ガッシャン・・・・ガーーー・・ドン・・・・プシュー
夏休みも終わり、学校帰りに一周間振りに新屋敷店に向かうシンジとトウジ、その脇を一台の黒塗り高級車がクラクションを鳴らしながら猛スピードでかすめていった。その時シンジ達は進行方向に対して右の歩道を歩いていた。そう、その車は、片側3車線のガードレールのない道を逆そうしてきたのだ。そして二人が驚愕の声を上げた瞬間クラクションを鳴らす対向車を避け、その拍子にタイヤが縁石にあたりその勢いで横転すると逆さまになったまま歩道を滑り電柱に激突し白煙を上げながら沈黙した。
「「!!」」
「・・・・・・・どうする?・・」
「・・・・・・いや、どうするゆうたかて・・・」
・・・・・ギシ、ギシ・・・・・ガチャッ
突然に繰り広げられた惨事にやっとの事で口を開くとその原因である車の後部座席のドアがきしみ音をたてながら開いた。
「ててて・・・まったくもう」
その中から這い出てきたのは、青みがかった銀髪と真っ白な肌の中でルビーのように朱い瞳が印象的な少女だった。その少女は出てくるなりすっと立ち上がり服に付いたほこりを簡単に払うと、運転席の窓から這い出ようともがいてる運転手の腕を掴み引っ張った。しかし、その太めの体が災いしたのかなかなか出てこられない、諦めて手を離すと辺りを見渡し始めた。そして、呆然とこちらを見つめる二人を見つけると嬉しそうに近寄ってく。
「ごめん!ちょっと手伝ってくれないかなぁ?」
「えっ!・・・あ、うん、も、もちろんいいよ・・・・ねえトウジ?」
「あ、ああ、そや、困ったときはお互い様や」
何事もなかったようににこやかな笑顔で話す少女に戸惑いながらも同意する。そして三人がかりで四苦八苦しながら車から出すとその運転手に少女が少し怒ったような顔で言った。
「まったくこれで何度目よ!もっとちゃんと運転できないの?」
「す、すいませんお嬢様!・・・・・でも、まだこの前よりは・・・・」
『この前って・・・・』
『いつもこないなことやっとんのかいな・・・』
「そう言う問題じゃないでしょ!・・・はぁ・・もういいわ・・・じゃあとはいつものように処理してね・・」
「かしこまりました!お嬢様!!」
「はぁ・・・・」
そう言うと運転手は懐から携帯電話を取り出しテキパキと事後処理を始めた。そのあまりの手際の良さに少女はこめかみに人差し指を添え、目を閉じながら軽くため息をついた。そしてふと振り向いた先でその様子をボーっと見つめているシンジ達に気づき不思議そうな顔で訪ねる。
「どうしたの?」
「あ、あの、体はなんともないの?」
「へ!?どうして?」
「・・いやどうしてってゆうたかて・・・・あんなん見せられたらなぁ・・・」
言いながらトウジは親指で逆さまになった車を指す。少女はそれを見て納得したような顔をすると笑顔で話し始めた。
「だって慣れてるもん!」
「・・・な、慣れてる?」
「うん!それにこの前落ちた崖とか、ダンプと正面衝突したときに比べたら今日はまだましよね(はぁと)」
「・・・・・さよか・・・・」
あまりにもあっけらかんと物騒な話をする少女に呆れ顔で返事をした。そこに自分の目的を思いだした少女が質問する。
「ところで、この辺で一番近いゼーレパレスってどこ?一応日本で最大手のアミューズセンターなんでしょ?」
「ここからだと新屋敷店かな・・・あれ、でも行ったことないの?」
「だってわたし日本に来たの初めてだもん」
「なんや、そうやったんか」
『なら、さっきのことも頷けるわ』頷けるか(爆)←作者
頭の後ろに手を組みながら返事をしたトウジは納得したような顔で頷いている。そんな様子を見ながらシンジが自分の時計を見て声を上げる。
「ああ!!もうこんな時間だ!」
『まずいよアスカ怒ってるだろうなぁ』
「あっ、もしかしたら急いでたの?」
「・・・えっ・・・あ、そう言う訳じゃないけど・・・・そ、そうだ僕らも今から行くから案内してあげるよ・・・え〜と・・」
その声に少女が申し訳なさそうに聞いてくる。それに我に返ったシンジが慌てて返事をする。しかし相手の名前を知らないことに気づき情けない顔で黙ってしまった。それを見てクスッと笑うとおもむろに自己紹介を始める。
「わたしは、レイ、綾波レイ、よろしくね!」
「あ、僕は碇シンジこちらこそよろしく」
「わしは、鈴原トウジや」
「ところで綾波はどこからきたんや?」
「イギリスよ、父の出張についてきたの」
そんな話をしながら三人は、新屋敷に向かって歩いていった。あとには壊れた車とその脇でのんきに煙草を吸っている運転手だけが残された。
一方ゼーレパレス新屋敷店
自動ドアが開き一人の少年が店内に入ってきた。その少年の容姿は、色素が抜け落ちたような白い肌に、銀髪、そして赤い瞳という不思議な魅力を持ったものだった。その瞬間店内の少女達からざわめきが起きる。その少年は口元に僅かな笑みを覗かせたままテーブルの一団に近づいていく。
「ねえ君たち、この店に最近”デンジャープラネットV”のトップパイロットがよく来てるって聞いてきたんだけど?」
「キャー!キャー!話しかけてきた!どうしよ!ねえどうしよう!」
「わー!やっぱ美形よ!美形!!」
「やーん!どうしよう」
「か、かっこいい(ぽ)」
話しかけた瞬間大騒ぎになってしまう4人の少女。そんな様子を見て頭の後ろに大きな汗を浮かべた少年がひきつったような笑顔でもう一度問いかける。
「あ、あの、君たち・・?」
「あっ!ええと・・・・何だっけ?」
「いやだから・・・トップパイロットは今日来てるかな?」
「ええと・・・・ねえトップパイロットってあのかわいい顔した男の子よね?」
「そこが良いのよ・・・なんか母性本能をくすぐられるって言うか・・・」
「そうそうこの前なんかね・・・・なのよ」
「それ本当!・・・じゃあさ・・・なんてのは?」
「あのー・・・」
「あ、ごめんなさい!う〜んと・・・今日はまだ来て無いみたいね・・・2番目に強い人ならいるみたいだけど」
「そう言えば最近見ないわね〜」
やっとの事で聞き出した情報に、また話が脱線するのを恐れたのかその少年が聞き返す。
「それでその2番目の人って言うのは?」
「あそこ!!バトルロイヤルの真っ最中!」
そう言いながらその少女は大型モニターを指さした。そこに映っていたのは今まさに一体のEVAを主砲で破壊した”ベンケイ”だった。その少年は少しの間それをじっと見つめていたが笑顔で少女達に礼を言うとカウンターの方に行き、懐からカードを取り出しヒカリに渡した。
「ゴールドカードだけど使えるかな?」
「は、はい、一寸お待ち下さい!・・・お父さ〜ん!!」
「イングランド州ブリストル店か、ああ、使えるぞ、ゴールドメンバーは料金全て銀行引き落としだからそのカード機械に通すだけで良いぞ・・・・そうだ、モニターで顔写真だけは確認してくれ・・・」
「わかったわ!」
それを聞くとヒカリは少年の方に向き直りにこやかな笑顔で応対する。
「───では、お客様、この次のバトルにエントリーでよろしいですね?」
「いや・・・今やってるバトルロイヤルにイントルーション(乱入)を頼むよ」
バキャッ・・・・ドン・・・・・グワァン
「あんたが最後よ!!」
目前のEVAの懐に潜り込んだ”ベンケイ”その腹部を右手で殴りつける。そのまま体勢を崩した相手に狙いを付け主砲を打ち込んだ。その瞬間コクピット内部のアスカは軽くため息をつきながらシートに深く沈み込んだ。
「ふぅ、6機か、ちょっとキツかったわね・・・」
『最近は、レディメイドEVAでも基本性能あがってきてるわね・・・・”ベンケイ”もそろそろ本格的にカスタムしないとまずいかしら・・・・』
そんなことを考えていると正面のモニターを覆っていた白煙がはれてその中から影が現れていく。
「・・・うそ!!ゲーム続いてるの!?」
アスカが驚きの表情でモニターを見つめていると完全に白煙が無くなり、頭部が馬で、ヨーロピアン調の甲冑のような装甲をまとって右手に大きな槍を持った灰色のEVAが現れた。それを確認すると不適な笑顔を浮かべ呟いた。
「!!・・イントルーダー(乱入者)ね・・・・」
そして相手がこちらを確認し槍を構えたことで戦闘の火蓋が切って落とされた。
数分後
「あ、いらっしゃい・・・って鈴原久しぶり!」
カウンターからモニターを見ながら何気なく入ってきたお客に対して挨拶をするが、その主が分かると笑顔で振り向いた。
「おう、一周間振りやな」
「そうね・・・どうしたの?」
「いや、べつにどうっちゅう事もあらへんけど・・・」
「あの、・・・こんにちは、洞木さん」
シンジの言葉に慌ててその方向に向き直り挨拶を返すヒカリ、そして思い出したように先ほどから見ていたモニターの内容のことを話す。
「えっ!・・・こんにちは碇君・・・あ、そうそうアスカが大変なのよ!」
「アスカがどうかしたの!!」
その言葉にヒカリはモニターを指さす。その先を見て思わず息を呑むシンジ、そこには”TIME OUT”と表示され、ほとんど無傷の”ベンケイ”と同じくもう一機のEVAが映し出されていた。とそこに終了のブザーとアナウンスが響きわたる。
ピーーー
「第2バトルロイヤルが終了しました・・・・」
『じ、時間切れ・・・・!?あのアスカが?』
「う、嘘やろ・・・”ベンケイが”バトルロイヤルで討ちもらすやなんて・・・何者や?」
呆然とモニターを見つめる二人の脇で静かにその様子を眺めていたレイが口を開いた。
「カヲルの”ゴールディ”だわ」
しかし、トウジはその声が聞こえなかったのかコクピットから出てきた少年を一瞥するとヒカリに向かって問いかける。
「なんなんや、あいつは?」
「知らないわ・・えーと渚カヲルって言うどこかのお金持ちらしいわね」
「私の従姉妹なの!」
「何や、そうやったんかいな、そんなら納得いくわ」
そこに渋い表情をしたアスカとその後ろに笑顔のカヲルがやってくる。
「アスカ久しぶり!」
「あっシンジ!!・・・EVA直ったのね!!」
「あ、いや・・・その・・全然・・・・」
「何やってんのよ!全く!!」
「ご、ごめん」
とそこへ、レイと一言二言話をしていたカヲルが振り返りアスカへ話しかける。
「女の子だったんだね、勇ましいEVAに乗ってるねぇ」
「・・・悪かったわね!あんたには関係ないでしょう!!」
「いや、良いEVAだと思ってね・・・良かったら名前を聞かせてくれないかな?」
「ふん、”ベンケイ”よ・・・そっちのは?」
「”ゴールディ”」
その言葉のあとシンジ達の方を向くと問いかけた。
「ねぇ、あの二人知り合い?」
「さっき道でちょっと会ったんやけどな・・・聞いたら驚くで、イギリスで今年のサマグラを制覇した二人らしいわ!」
「ふ〜んどうりで強い訳ね・・・」
『乱入されたとは言え残り十分間で傷一つつけられなかったなんて!』
そんなことを考えているとカヲルと話をしていたレイが言った。
「ふ〜ん・・・”ベンケイ”ってすごいEVAだってのは分かったけどアレじゃあねぇ・・・・」
その声に一斉にレイの方向を見るシンジ達、その中でもアスカは、怒りの形相でにらみつけると何か言おうとしたシンジを遮り、声を大きくして言う。
「!?ちょっと綾波さん・・・」
「なによ!!何か言いたいことでもあんのあんた!!」
その問いに静かな笑顔を浮かべたままカヲルが答える。
「失礼は僕から謝るよ・・・でも、僕もこのエリア(地域)のトップクラスの実力には失望したね・・・2番手がこの程度なら、彼女と実力が僅差だというトップパイロットとは戦うまでもないね」
「おい、ちょっとまてや!!聞き捨てならんで!」
反論するトウジをよそに肩を震わせながら黙って目を伏せているアスカ、そこに突然シンジの腕を抱きかかえレイが不満そうな顔で口を開く。
「えーっカヲルどうしてー!?せっかくトップパイロットを見つけたのに!!」
「わ!?・・ちょ、ちょっと綾波・・・・」
その様子を呆気にとられながら見ているアスカ、どうやら先ほどの怒りも頭の中から抜け落ちているらしい、そこに追い打ちを掛けるように顎に手を添えたカヲルが微笑みを浮かべながら話しかけた。
「へぇ、君なのかい・・・とてもそんな風には見えないよ・・・・君とは、戦うより寝てみたいよ」
「え゛っ!!・・・か、カヲル君・・・き、君が何を言ってるのか分からないよ・・・・」
狼狽えながら返事をし、その場から後ずさるシンジ、その脇では目を全開に見開いたアスカがたっていた。そしてその様子を見てカヲルが怪しい笑みを浮かべたまま話し続ける。
「ふっ・・君の心はガラスのように繊細だね、好意に価するよ・・・・」
プツン
その言葉でアスカの頭の中で何かがはじけるような音が聞こえた。そしてゆっくりとその目をカヲルに向けると右手で指さしながら大きな声で言い放った。
「あんたたち!よくも好き放題言ってくれたわね!!今のバトルじゃあたしは納得しないわよ!イギリスの田舎っぺが本場ででかい面すんじゃないわよ!!もう一度”ベンケイ”と対戦モードで勝負しなさい!!!」
『あ、アスカがキレた・・・・』
シンジがそんなことを考えながら呆然とアスカを見ていると、思わぬところから声があがった。
「あら、それじゃあつまんないわ・・・・う〜んと・・・そう2対2のタッグマッチでやろう!・・・・良いでしょシンちゃん?」
「えっ!」
その声に勢いよく振り向くと慌てて反論する。
「ちょ、ちょっと待ってよ!話せば長くなるけど僕のEVAはまだ修理のめどが立ってないんだ!!」
「修理するんだねシンジ君・・・僕たちが滞在する2週間の内にね・・・でなければ君の遊び相手の”ベンケイ”はデータ全損って事になるよ」
「ハンッ・・あたしは一人でも良いわよ、毎日ここに来てるから好きなときに相手になるわ!!・・・失礼!!」
そう言うと勢いよくきびすを返しカウンターでカードを受け取るとさっさと店を出ていってしまった。その様子を呆然と見ていたシンジにヒカリが言う。
「い〜か〜り〜くん!!追いかけて!!!」
「へっ!?」
「女の子泣かせたのよ!責任とりなさいよ!!」
ヒカリの怒気のこもった問いかけに一瞬間抜けな声を上げるが、何か考えた後に無言で頷くと走って店をあとにした。
『なによ、なによ!バカシンジったらちょ〜っとかわいい娘が来たからってデレデレしちゃってさ!それに何なのよあのカヲルってやつは、男のくせに、突然シンジのことが好きだなんてバッカじゃないの・・・・』
「・・・・・スカ・・・ってよ!」
『全くあたしのことが好きじゃなかったの・・・・・・あたしはこんなにって・・・・何考えてんのあたしはあんな奴別に何とも思っちゃいないんだから・・・・そうよ大体アイツからつきあってって言ってきたんだから・・・・バカシンジ・・・』
「アスカ待ってよ!!」
「!?な、なによ!!」
やっとシンジの呼びかけに答えたアスカは、前を向き歩いたまま返事を返す。
「だ、だって久しぶりなのにすぐ帰っちゃうから・・・」
「あ、あんたなんかあっちで日英親交に励んでたら!?」
こっちを見ようとしないで言葉を返してくるアスカに、困ったような顔で言葉を続ける。
「あのーアスカ、ちょっと聞いて良い?」
「何よ!!」
「も、もし違ってたら謝るけど・・・」
「だから何!!」
「あのさ・・・・その・・・・妬いてくれてるの?」
「あ、あ、あんたバカァ!!・・・なんであた・・!?・・・・」
ぴたっと歩みが止まったかと思うと、ものすごい勢いで振り返り顔を深紅にして叫ぶ。しかしその言葉を言い終わる前にシンジがアスカの肩を引き寄せる。
「な、な、な、何よ!?」
『な、なにあのシンジがこんな・・・・』
「アスカ、キスしちゃダメ?」
「・・・ダメ!!」
真剣な顔で訪ねるシンジに、恥ずかしさのあまり顔を背け否定の言葉を浴びせる。
「どうして?」
「・・・だ、だいたい!そんなことをいちいちことわることが女々しいっていってん!?・・・・」
「じゃあ勝手にやる!」
言うが早いか振り返り反論しようとした勢いを利用してその唇を奪った。
ばっちーん・・・
「と、とととんちづいてんじゃなわよバカシンジー!!・・・・知らないッ!!」
唇を離したあと若干うつむき肩を震わせていたが、その真っ赤に染まった顔を上げると、いきなり平手打ちを喰らわし言い放つと走り去ろうとした。シンジは、頬を手で押さえながら微笑むとその背に呼びかける。
「アスカ!!僕、”九朗”を直すよ!!」
その声に立ち止まると頭だけ振り返る。それを確認すると満面の笑みで話を続ける。
「二人で協力してやっつけよう!!」
「・・・・覚えてなさい!そのあとあんたをブッ壊してあげるわ!!」
それだけ言うとアスカは振り返り走っていった。
「あ、かえってきたわ!・・・碇君アスカ大丈夫だった?」
「・・・何やセンセどないしたんや?」
店に戻ってきたシンジに問いかけるた。トウジは頬を指さしながら訪ねるが、シンジは笑顔のまま答える。
「大したこと無いよ」
「・・・・・碇君・・・アスカと何かあったの?」
「な、何にもないよ・・・・ど、どうして」
「ううん、何でもないわ!」
『・・・・何かあったわね・・・あとでアスカから聞き出さなきゃ(はぁと)』
様子を見てからかうような口調で問いかけると、まるで何かありましたと言ってるように動揺して返答シンジ、それを見てヒカリは満足したのか適当に返事をすると頭の中で様々な作戦を立てていた。
「これは酷い・・・まるで阿修羅のような女性だね・・・好意に価しないよ・・」
「うわ!?ま、まだいたの・・・・」
「いや、そろそろ僕も帰りたいんだけど・・・・愛しの君に挨拶もせずに帰るのは惜しいじゃないか」
そう言ってにこやかな笑顔を浮かべると右手でシンジの後頭部を押さえ、片方の手で左腕を掴むと・・・・
「See you again my angelic boy!」
ぶちゅうぅ
「んーーーーーーーっ(@@)」
「うあ・・・・」
「あー!!カヲルったらずるい〜〜〜〜〜!!」
・・・・・・やめろよ!!ここ(めぞんEVA)に置いて貰えなくなるだろ!!!・・・・・・コホン・・・・え〜と、と、取りあえずその”行為”のあと放心したシンジに笑顔のまま話す。
「じゃあシンジ君、EVAの修理がんばるんだよ」
そう言うとレイに向かい一言かけ一緒に店を出ていく。
「帰ろうレイ・・・ここは女性客が多くて不愉快だ・・」
「・・・カヲル、あんたね〜・・・」
あとには放心したままのシンジと頭の後ろに大きな汗のマークを浮かべた多数の客が残された。
翌朝 国府高専
「ま、しかし会長はん達も”九朗”の修理に協力してくれるちゅう事になってよかったやないか」
「うん、そうだね、これできげんまで間に合うよ」
喧騒に包まれた教室の中で二人はちょっと前に会長達とのやり取りを話し合っていた。やがて時間になりチャイムと共に担任が入ってくる。
キーンコーンカーンコーン・・・・・ガラッ
「起立・・・礼・・・着席」
「えー、あー、知ってのとおり第三新東京市は、イギリスのヴェールズ州にあるニューポートシティと姉妹都市なんだが今度そこの工科大付属高校から交換留学生を迎えることになりました。では、入りなさい」
ガラッ・・・おおっ!!
「「あーーーーっ!!」」
担任の声と共に戸が開き入ってきたのは一人の少女であった。工業系の高専において女子の割合は微々たるものである、そのため驚嘆の声があがるがそれはその少女と一人の級友の声によって遮られた。そう、その少女――綾波レイと碇シンジによって・・・
「ラッキー!シンちゃん2週間よろしくね!!」
「ちょ、ちょっと綾波!?」
「ちくしょー!何で碇ばっかり!!」
「くぅー僕というものがありながら・・・」
「汚いぞ!碇!!」
言うなりレイはシンジに抱きついた。周りから罵声やどよめきが聞こえる中・・・少々危ない発言も含まれてはいるが・・・・まあ、取りあえず何とかその腕をはずし、一人昔話に興じている担任に進行を促しその場の収拾をはかる。やっとの事で落ち着いた教室の中でレイの自己紹介とともに席の場所が決まる。
「綾波レイです!よろしくお願いします!!」
「じゃっ、そう言うことで席は、え〜と・・碇君の隣があいてますね・・・・」
「・・・・こりゃ、報道関係がまた押し寄せてくるで・・・・」
昼
「相変わらず高スポはまめやなぁ・・・」
三人で昼食を取っている中、トウジが号外と大きく書かれた新聞を見ている。ちなみに今日は土曜日なので、授業はこれで終わりなのだがシンジ達は部活があり、レイはせっかく持ってきたお弁当を無駄にしないために残っていた。そしてその新聞には、”一年電子科のプレイボーイ留学生との甘い噂発覚!!・・・憤慨するインテンスファンクラブ”という大きな見出しとともに今朝転校してきたレイの情報と今までのシンジに関する事柄、そしてアスカのことがところせましと書きつづられていた。
「ふぁに?・・・モグモグ・・ごっくん・・・”インテンス”って?」
その新聞をサンドウィッチをほうばりながらのぞき込んでいたレイが問いかける。
「・・・アスカのことだよ」
「春の文化祭でな、うちらの同好会のアトラクションに参加して以来構内で有名になったんや、”インテンス”はそのとき乗っていたEVAの名前や」
とトウジが説明していた。しかしレイはシンジの方をみて一息つくと顎の下に手を添えながら聞く。
「ふぅ・・・シンちゃんはアスカのことほんっとに好きなのね」
「えっ!?・・・う、うん」
突然の問いに真っ赤になり俯くがしっかりと正直に返事をした。その答えを聞きシンジに近づくと真剣な表情で言う。
「でも、アスカはシンちゃんのこと好きかしら?」
「そ、それは・・・・」
「そ・れ・に!将来の約束するに至ってるとは思えないわ!!」
「・・・あ、あの、綾波・・・」
困ったような顔で声を出すシンジに、にこやかな笑顔で答えると話を続ける。
「だから、アスカの存在を理由にふられるのは心外なの・・・・・・大好きよシンちゃん(はぁと)」
「放送部DJ兼レポーターの水野です!碇君、今の発言について一言!!」
「校スポ編集部です!!綾波さんのことどう思いますか!?」
「そこのところどうですか!?ひとことお願いします」
どこからわいたのか突然十数人に囲まれる三人、シンジは黙ったままトウジを見る。するとそれに答えるように頷く、そして二人はレイの両脇を抱えると隙間を抜けて駆け出した。
30分後
やっとの事で報道関係者を振り切り、校門の前で息を整える三人。
「はぁ、はぁ・・・あ、綾波、滅多なこと言っちゃだめだよ・・・この学校ゴシップ好きなんだから・・」
まあ、最大のゴシップメーカーが言っても説得力に欠けるというものだが・・・そんなことをしているとレイの瞳に校門の前に止まっている黒塗りのロールスロイスがうつった。
「あっ!いっけな〜い、今夜は、パーティーでカヲルと一緒に出なければなんなかったのよね・・・・シンちゃんまた今度部活に誘ってね(はぁと)」
人差し指を顎に当て呟くと、シンジたちに手を振りながら笑顔で言った。
「あ、うん、じゃあまた来週」
「ほなら、またな」
「うん、じゃあ月曜日にね!!」
『『大丈夫なんだ(や)ろうか・・・』』
ニコニコ顔で車のドアを開ける運転手を見て、一抹の不安を覚える二人であった。そして、手を振りながら車に乗り込む彼女を見送った後、二人は部室に向かって歩き出した。
「あの二人、”ゼーレ”がらみの人間だったよ」
「「ええっ!?」」
「経済新聞にインタビューが載ってた」
そう言いながら燈谷は、手に持っていた新聞を二人に差し出した。受け取るのを確認しながら記事の説明を続ける。
「渚家とその分家である綾波家は日系の家系であるにもかかわらず、イギリスで5指に入る半導体メーカーを共同で経営してるとして有名らしい、ゼーレ社が今度イギリスで本格的にチェーン展開するためにそこの子会社と提携するんだけど、その子会社の社長の代理と言うことで日本市場を視察にきたのが”彼”みたいだね」
「渚・カヲル(18)14歳でブリッジ工科大へ入学・・・現在博士課程1年・・・・・・」
「典型的、金持ちボンボンの天才っちゅうやつやな・・・あの尊大な性格わ・・・・」 二人が説明と共に、新聞を読んで昨日の”惨事”を思い出していると、今までパソコンのモニターと向き合っていたシベリアンハスキーのような巨大な”犬”が、体を椅子ごと回転させシンジに話しかける。
「講義の合間に、朝頼まれた”九朗”の組立進めといたけど・・・・こんなもんでいいかな?」
「うわー!」
モニターを覗き込み驚嘆の声を上げるシンジの背中にその小さな鼻眼鏡をかけた”犬”が言葉を続ける。
「アッセンブリ以下の段階で少々改造らせてもらったよ、まだ市場に出てない部品を使ったけど問題ないだろ」
「こりゃすごいわ!」
「この調子だと予想以上の性能に仕上がりますねっ!」
「あとは、コンセプトを決めてオプション(武器)を選ぶだけだね」
「会長は、材料力学を専攻してるからね、細かい部品はお手の物だよ」
燈谷が部室の片づけをしながら話した。それに反応したトウジが言葉を続ける。
「その研究では企業から声がかかってるって聞きましたで・・・」
「いいの!卒業しても学校に残って研究すんの」
「卒業って・・・・今いくつなんですか会長・・・」
「教えてあげない!」
会長こと長船結城・・・・彼に関する情報は未だ謎に包まれている・・・・なんてね(^^;;
同日夜 パーティー会場
ここは、第三新東京市において最も豪華なホテルであるNew Tokyo−3である。その入り口付近に黒い高級車が壁に車体の三分の一をめり込ませて止まっていた・・・どうやら目的地には無事(?)についたようである・・・・
「日本のパーティーってつまんないわねー」
「まあまあ、仮にもゼーレ社が僕たちのために開いてくれた親睦会なんだから・・・・」
会場のほぼ中心で、胸のところに家の紋章の入った真っ白なパーティードレスに身を包み頭に同色の帽子をのせたレイが、同じく紋章入りのタキシードを着込んだカヲルと話しをしている。どうやらこの二人に怪我はなかったようだ・・・・そこにタキシードを着て、顔に怪しげなバイザーをつけた中年で、やや小太りのような体型の男が少々離れた位置から手を挙げ、声をかける。
「ミスター渚!」
「・・・ああ、お久しぶりです・・・え〜と確かゼーレジャパンのキール取締役でしたね・・・」
「はははは、覚えていていただき光栄ですな、ところでどうですか日本は?」
「・・・・・と言いますと?」
「いや、イギリスと比べると面白い所がたくさんあると思いましてな・・それに・・・・で・・・ですからな、はっはっはっは・・・・」
不快な気分を微塵も感じさせない顔で、目の前の男と対応している中一人残されたレイは、何気なく辺りを見回していた。
「あ!!」
《アスカ・・・いい加減、仏頂面はやめてちょうだい》
《だって、あたしこういう場所は嫌いなのよ!》
『・・・ドイツ語!?』
半ば目の前の男に愛想を尽かし、話を聞き流していたカヲルがレイの声と共に聞こえてきた声に振り向く。
《しょうがないでしょ、通訳の子が休暇中なんだから・・・》
《・・・まったく、そんなことでよく社長張ってられるわねママ》
《日本語でのビジネスは難しいのよ!・・・それに、日常会話ははなせるし・・・》
「アスカ!!」
「ふんっ、惣流社長か・・・」
今、会場に入ってきた赤いドレスに赤い帽子を合わせたアスカと薄いピンクのスーツを着込んだ母キョウコに注意を奪われたカヲルに気づき、そちらをむくと鼻を鳴らした。そしてこちらに気づき近づいてきた二人を紹介する。
「・・・ミスター渚・・・こちら株式会社ネルフの惣流社長と、その娘です」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ご存じでしょうな・・・今や”ゲルヒン”と並ぶEVAの優良メーカー・・・・」
「あら、アスカお知り合い?」
キールの声に耳も貸さないようにして、ほとんど睨み合うようなカヲルとアスカを見てキョウコが話しかけた。が、そのときフロア係の女性が電話を片手に近づき話しかける。
「恐れ入ります、渚様、国際電話が入っております」
碇家
♪〜♪♪RRRRRRRR・・・PI!
「はい、碇です・・・綾波!?どうしたのこんな遅くに」
風呂上がりに、クラシックを聴きながら”九朗”のデータリストをチェックしていたシンジが受話器をとりながらそのステレオのスイッチを切った。
「・・・ごめんねシンちゃん・・アスカから電話あった?」
『・・・電話してもらったことなんかないよ・・』
「ないけど・・・」
「あのね私たち・・・明日の夜の便でイギリスへ戻らなきゃならないのよ」
「え!?で、でも後2週間はこっちにいるんじゃなかったの?」
「・・・・今日、私たちの祖父が亡くなったの・・・」
「・・・・そうですか・・・・わかりました」
ピッ
電話を切ったカヲルは、レイの方を見るとその内容を話す。
「・・・総帥が亡くなった・・・物見湯山はおしまいのようだよレイ」
「!?・・カヲル・・・」
内容を聞いて驚愕するレイに予定を伝えるとアスカに向き直り、話しかける。
「明日の最終便の予約を取ってあるそうだよ・・・その前にフロイライン、君たちと対戦する約束があったね・・・」
「ちょっと!気は確かなのあんた!!」
その反論を聞き若干苦笑すると話を続ける。
「遺言でね・・・総帥が死ぬと一族内で人事が一つ繰り上がることになっている、僕は明日にでも大学を辞めてコンツェルンの役員にならねばならない・・・”デンジャープラネット”はお気に入りの遊びだったが、もうそんなこともしてられなくなるだろう・・・ラストバトルの相手が君たちでは少々物足りないきもするけど、この際時間つぶしにおつき合いいただけないかな?」
「・・・・と言うワケなの・・」
「そ、それでアスカは承諾したの!?」
「したわ・・・でも売り言葉に買い言葉になって条件は、タッグマッチのままなの」
「だろうね・・・」
『まぁ、想像はつくけど・・』
ヘッドホン型の受話器をつけたまま顔を手で覆いながら答えた。そこにレイが言いにくそうに続ける。
「・・・・それにその後・・」
「・・・その後?」
「あんた!それが人にものを頼んでる態度なわけ!!」
「はじめに喧嘩を売ったのは君のはずだけど・・・」
「ふん!そんなことはどうでも良いのよ!!どうしてもってんならそれ相応の態度を示せっていってんのよ!!」
「・・・・つまり頭を下げろと・・」
カヲルは一瞬顔をしかめるが、すぐにいつもの笑みを張り付けると言葉を続ける。
「そこまで言うなら一つ賭をしようじゃないか・・・」
「賭ですって?」
「そうだね・・もし君たちが勝ったら君たちの言うことを一つだけ何でも聞こう・・・だが君が負けたら・・・」
その言葉を聞き、不敵な笑みを浮かべ、聞き返す。
「・・・あたしが負けたら?」
「明日一晩おつき合い願おうか」
「なっ!?何いってんのよ!だいたいあんたは明日の夜帰んなきゃいけないんじゃないのよ!!それにあんた、ほ、ホ○じゃなかったの!?」
動揺しながら答えるアスカに、カヲルはその表情を崩さずに、しかも嬉しそうに返答する。
「フッ、そんなことはどうにでもなるさ・・・・それに男と女は等価値なんだ、僕にとってはね・・・それとも怖いのかい?負けるのが・・・」
「なんでぇすって〜!!・・・ハンッ、上等じゃないの受けてあげるわよ!!」
「と言うことになっちゃったのよ・・・」
「・・・・・わかった・・」
「・・・大丈夫シンちゃん?EVAの修理明日の昼までできるしら・・・お望みなら好きなEVAを用意するけど・・・」
「・・・いいよ、レディメイドEVAじゃ勝負にならない・・・」
「シンちゃんがこないと残念ながら”ベンケイ”は全損よ、それにアスカも・・・・」
「・・・何とかするよ・・・教えてくれてありがとう・・・じゃ、明日・・・」
ピッ
『・・・アスカ・・・・』
電話を切った後真剣な表情で受話器を見つめるシンジ、そして一息つくとそれを手に取り電話をかけ始めた。
翌日 昼 新屋敷支店
ハイネックの赤白の横縞のタンクトップに肩口が広がった薄黄色のサマーセーターそしてブルージーンズをはいたアスカと、真っ白なワンピースのレイ、灰色のDPジャケットに黒いジーンズをはいたカオルが一人の少年の到着を待っている。しかし、刻々と時間は過ぎ、とうとうゲームの準備を促すブザーとアナウンスが入ってしまう。
ビー
「”デンジャープラネットV”第7バトルを行います、エントリーパイロットは1分以内にコクピットにお入りください」
「リミットのようだね・・・君のナイトは間に合わなかったようだ・・・僕ももう一度彼に会いたかったよ・・」
アナウンスを聞きコクピットに入ろうとするアスカに同じく入ろうとしていたカヲルが話しかけた。
「・・・・あいつはナイト何かじゃないわよ・・・」
ヘルメットを被りながら呟いたその言葉は誰にも聞こえることはなかった・・・
フィールド上に”ベンケイ”と”ゴールディ”そしてその脇の一本の角を生やした頭部で、左腕に円形の盾を装備し、右手に大きなバスターソードを持った全体的にこれまたヨーロピアン調の装甲を装備した真っ白なEVAが対峙していた。
「最後に一つだけ聞きたいな・・・君の目的は何なんだい?・・”ベンケイ”は外見こそ大ざっぱだがスペックはかなり高度だね・・そしてそれだけのデーターをマスターシステム上で走らせるためにはかなりのプログラミング技術を要するはずだ・・・君のバックには専門家がいると踏んでいたが・・・まさか――――」
いつもの表情で問いかけるカヲルにやや自称しながら答える。そして言い終わるとほぼ同時に、右手の主砲を構え撃つ。
「ママの会社(ネルフ)なら無関係よ・・・そうね、”ベンケイ”を全損にしたら教えてあげるわ・・・」
ジャキッ・・・・・ドゴォー
アスカの前のモニターに爆炎が映し出された。しかし、その次の瞬間その中から白い機体が飛び出し、”ベンケイ”に斬りかかる。
カッ!!
「!?」
一瞬の虚を突かれた形になったアスカに、間の前いっぱいに映し出された、その白い機体の操縦者であるレイから通信が入る。
「・・・このバトル気が乗らなかったけど断然やる気出ちゃった・・・全損にするわよ覚悟してね(はぁと)」
「僕としては楽しみの一つが増えたことだしね」
ほぼ同時刻 ゼーレパレス国府支店
「ハーイ店長!!」
「げっ!国府高専のぬいぐるみ師!!まだ卒業してなかったのか・・・」
「うわっ!もう始まっとるやんけ!!」
カウンター越しにモニターを眺めていた店長に”あひる”が話しかけた。その後ろではトウジとシンジがモニターを見ながら騒いでいる。
「今やってる新屋敷支店の第7バトルに一人乱入させてくんない?」
「対戦モードに乱入はできん!!」
「タッグマッチモードを3人で戦ってるんだシステム上乱入はできるだろう」
「便宜上受け付けてません!!」
でっかい”あひる”の頭が迫ってくるため多少引きながら答えた。しかしそれはあきらめず、言葉を続ける。
「第7バトルの3人はみんな碇君の知り合いなんだ、君に迷惑はかけないから・・・でないとちょくちょく遊びに来るよ」
「う、そ、それは困る・・・・仕方ない・・・でもだましてんじゃないだろうね・・・」
言いながら機械を操作し乱入の手続きを進める店長・・・よほどきてほしくないのだろう・・・
「ありがとうございます店長さん」
「ついでにコクピット直通のマイクも借りるね」
「・・・・好きにして・・・」
お礼を言いながら筐体に向かって走るシンジの背を、ほとんど投げやりになっている店長が呆然と見ていた。
プシュゥー
「碇君聞こえる!?今回のスイッチ設定はぶっつけ本番だからこっち(外部)からサポートするよ」
「お願いします!」
「周波数ひろいました」
スピーカーから聞こえる言葉に返答すると同時に、外部では燈谷が怪しげな装置を操作してその状況を”あひる”に報告した。
「急げ!!ターボONはライトキーボードの赤ボタンだ!」
ピ!
「あ、酸素マスクはつけた方が良いよ、最大限のGがかるから気分が悪く・・・・」
「うわああああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜」
「遅かったか・・・スロットル戻して・・・」
シンジは流れてくる指示道理のボタンを押した。その動作と同時にまた声が流れてくるが、それは叫び声にかき消されることになった。
「敵さんの武器は火薬式の槍と、高周波振動のバスターソードだから、長引くとこっちがふりになるから気をつけてね」
一方そのころ”ベンケイ”は2体掛かりによる攻撃に大苦戦していた。そしてその機体のダメージは、半ば限界の所まで達しており勝敗の行方は誰の目にも明らかだった。さらに、”ゴールディ”がだめ押しとばかりに槍をふるう。
ドン・・・・・ズシャ・・
その槍は、正確に”ベンケイ”の右前足の膝間接に当たり、その後の爆発によってそれを根本から吹き飛ばした。その結果行動不能になった”ベンケイ”の目前にレイの機体が両手で剣を逆さまに構えている姿があった。
「とどめ!!」
『・・・ここまでか・・』
カッ・・グワァッン
「えっ!!」
言葉と共に振り下ろされたバスターソードを見てあきらめかけたアスカの筐体のモニターに一瞬、閃光と白い機体が肩口から両断される光景が映り、その後、爆煙と共に筐体に衝撃が伝わってくる。
「”アシュレイ”やられたのか!?・・・な、なんだい今のは・・・」
勝利を確信したカヲルは、目の前の状態を把握するのに手間取っていた。そこに爆煙がはれ彼のモニターに一体のEVAが映し出される。それは頭部の左に眼帯のようなものをつけ、甲冑のような装甲をつけて、日本刀を中段に構えた”九朗”だった。
「SAMURAI・・・!!」
キュァァァァ・・・ドン・・・カッ・・・・・グォオン
「バカな・・・・!」
その”九朗”は両胸の脇から大量の大気を吸い込み、それを圧縮して広報から一気に放出すると一気に”ゴールディ”との間合いを詰め一刀両断の元に切り捨てた。全てが終わった後、”ベンケイ”の方に振り向く。
「・・・アスカ生きてる?」
「何とかね・・・それより今の攻撃はなんなの?」
「図書館に居合い抜きの画像解析CGがあったから”九朗”のアタックパターンに取り入れたんだ・・・でもタイミングはマニュアル、もう二度とこんな危ない橋、わたりたくないよ」
ほっとしたような声にアスカは穏やかな笑みを浮かべた。
同日 夜 空港
「使われない武器として名高い”ジャパニーズブレード”でやられるとは思わなかったわ!・・・シンちゃんは本当にアスカのことが好きなのね(はぁと)」
「えっ!?・・・あ、えと、う、うん」
「ちょ、ちょっと何言ってんのよあんた!!・・・って、シンジも返事してんじゃないわよ!!」
真っ赤になりながら、返事をするアスカを見て吹き出すカヲル、当たり散らすようにそちらを睨み付けると例の賭の件を持ち出す。
「そこで、笑ってんじゃないわよ!!・・・それと忘れてないでしょうね何でもするって約束を!!」
「さて、何のことだったかな?」
「すっとぼけてんじゃないわよ!!あんた昨日の夜・・その、あたしが負けたら一晩つきあうって代わりに負けたら何でもするって言ったじゃないのよ!!」
ものすごい剣幕で迫るアスカを涼しげな顔であしらうカヲル、その様子を脇で見ていたシンジが真剣な表情で口を挟む。
「・・・・カヲル君、本当にそんなこと言ったの・・・」
「さあ、どうかな?」
「・・・僕はまじめに聞いてるんだ!!ふざけないでよ!!」
「ちょ、ちょっとシンジ?」
普段見ることのできない表情と、あまりの剣幕でカヲルに迫る勢いのため、戸惑いながら問いかけた。
「・・・アスカは黙ってて!・・・どうなのカヲル君・・・」
「冗談だよ」
「へっ!?」
相変わらず涼しげな表情であっけなく答えるカヲルに、間抜けな声で答えた。そしてそのままシンジの顎をつかむと、言葉を続ける。そして言い終わるか終わらないかでその顔をシンジに近づけていく・・・
「僕が好きなのは君だけさ・・・シンジ君」
「う、うわ・・・」
バキッ
「はぁ、はぁ・・・何やってんのよあんたわ!!」
「あ、アスカ助かったよ・・・」
シンジは必死でふりほどこうとするが顎と、いつの間にか腕までも完全にカヲルに捕まえられており、しかもこのきしゃな腕のどこにこんな力があるのか疑いたくなるほど強固に固定されていた。その光景を呆然と見ていたアスカは、はっと我に返ると、シンジの腕を引き寄せると右手でカヲルに正拳を叩き入れた。
「いたた・・・ふふふ、君たちは、ほんとに仲がいいんだね・・羨ましいよ」
「!?・・ちょっと、離れなさいよね!!」
「え、う、うん」
アスカは最初何のことかわからなかったが、自分の現在置かれている状況を思い出し、一気に顔が紅葉する。そう、無理矢理引っ張られたシンジはアスカにもたれ掛かり、二人は抱き合うような形でその場に立っていたのである。それを指摘され真っ赤になりながら慌てて離れる二人、そこに空港のアナウンスが流れてくる。
「ご搭乗手続きのご案内をいたします・・・日本航空560便モスクワ経由ロンドン行きにご搭乗のお客様は・・・・」
「時間のようやな・・・」
「シンちゃんこれ!・・・イギリスでの私の会話回線のコードよ」
そう言って番号の書いてある紙をシンジに渡した。そして受け取ったのを確認すると話を続ける。
「いつか世界中自由に通信対戦できるようになったらコンタクトして・・・・私はもうしばらく自由でいられそうだから・・・」
「・・・うん、必ずするよ」
「元気でね・・・」
「また来いや!」
「あっ!そ・れ・と、私はまだあきらめてないからね(はぁと)」
「もちろん僕もだよシンジ君」
「・・・・・」
その最後の言葉を聞き、うなだれながら手を振るシンジ・・・・がんばれシンジ君、君の未来は明るいぞ・・・・多分(^^;;
「・・・・ありがと、シンジ・・・・・でも・・・・」
ベットについたアスカは天井を見つめながら一言呟いた。
同時刻 機内
「それにしてもカヲル・・・あんた自分の婚約者の前でよくもあんなこと言ってくれたわねぇ・・・」
「・・・・レイ・・・僕が悪かった・・・でも君だって・・・・」
「何言ってんのよ!・・・だいたいあんたはいつもいつもそうやって・・・・・・・」
座席に座りながら、正面を向き眼を堅く閉じているカヲルの脇で聞こえる小悪魔のような”責め”は、イギリスに着くまで続いたという・・・・・合唱
「・・・・・って、聞いてるのカヲル!!!」
「お願いだから、許してくれ・・・・・」
第五話終了
#*@¥%&:「漫画にでているレポーターに、顔似てるかも・・・たぶん。」
Ohtuki:「・・・・名前もね・・・・(ボソ)」
ではまた(^^;/~~
Ohtuki&Mizunoさんの『BREAK−EVA』第五話、公開です。
凄いぞ!
何が凄いって、綾波家の運転手・・
もっと凄いぞ!
何が凄いって、その運転手を首にしない綾波家・・・(^^;
大切な”お嬢様”であり”本家跡継ぎの婚約者”でもあるレイちゃんを
こんな危ない車に乗せているとは・・・・
・・・・綾波家恐るべしっっっ
レイちゃん、丈夫ですね。
ダイアナさんも彼女ぐらい丈夫だったら(爆)
ま、まさか・・・・
レイちゃんには替わりがいるのか?(N2爆)
ぶち切れて、危ない約束をしたアスカちゃん。
ぶじ助かって、よかったです。
二度とこんなコトしちゃダメだよ。
さあ、訪問者の皆さん。
アスカ攻略法を発見した(^^; Ohtuki&Mizunoさんに感想のメールを!
プライドを刺激して体を賭けさせる・・・
ククク・・いい手だ(ニヤリ)