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BREAK−EVA

第四話 MAMA DON'T BATTLE




ゴオッ・・・・・・ビシュッ

 「!!」

 頭の後ろに三枚の羽根のように装甲板を広げ、背中のバーニヤから炎を吹いた細身で真っ白のEVAがトウジのEVAである”サインボルフ”の頭上から襲いかかる。そしてそのしなやかな右手で持った銃から一本の鞭のようなものが伸びる。不意を付かれる格好になったトウジは、一瞬の驚きの後左腕のライフルを発射する。

ドゥッ、ドゥッ

 「南無三!!」

 祈るような気持ちで放ったトウジだったが、その弾丸は目標をかすめるように後方の岩に当たりそれを破壊した。それとほぼ同時に、”サインボルフ”の首(?)元に鞭が巻き付く、その持ち主は華麗に着地するとトリガーを引いた。

バリバリッ・・・・プッシュー・・・

 「おわあぁ」

 黒煙を吹きながら崩れ落ちひざを突く”サインボルフ”から鞭が離れた。そして側には、決戦に勝利した白い機体が広げていた装甲板を降ろし立っていた。その姿は、降ろした装甲板が長い髪のような女性的なものであった・・・

 

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 「戦闘中の疲労回復に、ロングランバトル用ドリンク”L・C・L”新発売!!・・それではここに使用した方の感想を聞いてみましょう・・えーと、水野くんだったよね?どうだった」

 「はい水野です!えーと喉越しがまったりとしてそれでいて後をひくような味が・・・(中略)・・・みなさんも是非使ってみて下さい」

 「そうですか!次は一番厳しいあなたが”L・C・L”の効果を確かめてみて下さい!新しくカルシウムばっちりのめざし味もでました!!・・・・・」

 『・・・便乗商品のCMっていったい・・・』

 どよめきが収まらないゼーレパレス国府支店のモニターに映るCMを見ながらそんなことを考えていると、筐体からシートがせり出してくる。

 「くそ!しくじったわ!!」

 「トウジ!」

 でてきたパイロットに声を掛けるシンジ、その時モニターには黒髪の緑の眼をした女性が映り話を始めた。ちなみにこの女性は、CGアイドルである。

 「HI!!こちらは、”デンジャープラネットV”全国大会地方予選オフィシャルスタジオ・・・第二十七圏の準決勝結果が出そろったようね!Aブロックの勝者は、第三新東京市ゼーレパレス国府支店からのエントリーSINJI&”九朗”、惜しくも敗れたのは、同市新屋敷支店からエントリーのS.A.L&”ベンケイ”・・大会史上初の時間切れドロウゲームでマスターシステムの判定により”九朗”再度の勝利が決定!素晴らしいバトルだったわ・・・・」

 「シンジ!」

 「あれ、アスカどうしてこっちに?」

 「それがヒカリがどうしてもって言うから・・・にしてもせっかく来てやったのにあっという間に負けちゃって・・全く情けないわね!」

 シンジの問いに一瞬ヒカリの方を振り向くとそれに答え、さらにトウジに向かって呆れたように言った。

 「なんやとぅ!もういっぺん言うてみ・・」

 「アスカ!!なんて事言うのよ!鈴原だって一生懸命やったのよ、それを・・・」

 「ご、ごめん・・ヒカリ・・・」

 くってかかろうとする言葉を遮りヒカリが大きな声で注意する。その剣幕に押され謝るが、収まらず尚も追求しようとする。そんな姿を見て冷静になったトウジが宥めに入りシンジもそれに加勢する。

 「も、もうええて!・・・惣流も反省してるみたいやしな・・・」

 「そ、そうだよ・・・だ、だから落ち着いて・・」

 その言葉にハッと我に返ると俯きながらアスカに謝る。

 「・・・ごめんねアスカ・・・・・あたしったらつい・・・」

 「いいのよ・・・そ・れ・に、自分の彼氏バカにされたら誰だって怒るわよ」

 そんな言葉に真っ赤に染まった顔を上げると動揺しながら返答するが、目の前にあるアスカの顔を見てまた俯いてしまう。

 「な、な、何言ってるのよ!!・・・わ、私たちまだそんなんじゃ・・・」

 「そ、そや!!そ、惣流!な、何言うとるんや!」

 「・・・先ほど終了したBブロック準決勝戦の勝者は、ゼーレエンターテイメント加盟店・犬尾町”シトラスハウス”からのエントリー、MAMA&”ヒステリックマドンナ”・・・”彼女”の電磁鞭に倒れたのはゼーレパレス国府支店からエントリーのTOUJI&”サインボルフ”・・・」

 そんな二人の慌て振りを見てニヤニヤしていたが、アナウンスと共にモニターに映ったEVAの姿を見て、シンジに振り返ると先ほど気になったことを聞いた。

 「ねえシンジ・・・あのEVA妙に”九朗”に似てない?」

 「あれ、アスカもそう思う?」

 聞き返すシンジに復活したトウジが答える。

 「あまいでセンセ!ありゃ”九朗”や」

 「えっ!?」

 「”九朗”のデータハックされとるんとちゃうか!?」  

 「そ、そんな・・・・いまどき・・」

 あまりに突拍子な話に戸惑うシンジに腕を組み頷きながら続ける。

 「電脳空間に出て直に戦うまでまさか思うとったが・・・ありゃ外面を無理矢理レディーシルエットにカスタムしただけや・・・なんや、自分で造ったEVAがわからんのか?」

 「無理ないわ、普通なら自分と戦うことなんてあるわけ無いもの」

 今だモニターを見ながら手を顎に添え考えるように答えるアスカ、そのモニターでは先ほどのDJが写り今後の予定をアナウンスしている。

 「第二十七圏の決勝は、明日、明後日の土日を挟んで3日後の月曜に行われるわ・・・軽量型フルカスタムEVA同士の戦いね!当日、午前11時までにパイロット・EVAとも万全のコンディションで各店にスタンバイのこと!!オーライ?・・・・それでは決勝をお楽しみに!・・・圏担当DJは、私、アーシニー神崎でした・・・またお会いしましょうGOODLUCK!!」

 「がんばれSINJIのにーちゃん!!」

 「応援に来るからな!!」

 終了のアナウンスと共にざわつくギャラリーの中で、シンジ達を見つけ声を掛ける者に愛想笑いを浮かべながらそれに答え移動する。店の隅の方のテーブルにつくと先ほどの話題を相談する。

 「たくっ、どこのどいつなんや!」

 「トウジの思い過ごしだよ・・・」

 「思い過ごしなら良いけどね!もし鈴原の言ったことが確かだとしたら絶対に許せないわ!!」

 若干興奮気味のトウジにシェイクをすすりながら穏やかに答える。しかし、それに拳を握りしめながら少し大きな声でアスカが言った。

 「・・・もう、アスカまで・・・確かにパソコン通信でオプションパーツ買ったりするから可能性はあるけど・・・」

 「あのMAMAって言う人が碇君のEVAのデータを盗んで使ってるって事!?そんな事して良いの?」

 「良いわけないやんか!」

 「でも証拠が無いのよね・・・」

ガタッ

 みんなの話が一段落ついたのを見計らってシンジが席を立ち、同時に俯きながら意見を述べる。

 「そう!証拠がない・・ハッカー本人が認めない限りデータを盗まれたという証明は出来ない・・・・騒ぎ立てるだけ無駄だよ」

 「でも!・・・」

 何かを言おうとするアスカに、笑顔で顔を上げ話しかける。

 「大丈夫だよ・・・アスカ・・・・・・じゃあ僕帰るから・・・”ベンケイ”にスクラップにされた”九朗”のデータ修復しないとね・・」

 「・・・そう・・・じゃあがんばってね!」

 その言葉にアスカは、同じく優しい笑顔で応え、シンジはゼーレパレスを後にした。

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 『ああは言ったもののどうしようかな・・・』

 店の前に出てきたシンジはそんな考え事をしながら歩いていた。

 「シンジ!」

 シンジの後を追って出てきたトウジが呼び止め、その声にシンジは振り返り立ち止まる。そこに走りより話しかける。

 「まちーや!センセほんまは、えらい動揺してんとちゃうか?」

 「・・・・分かる?」

 「わからんわけないやろ!13年来のつきあいなんやからな」

 と、ズボンのポケットに片手を入れ歩きながら会話する二人、ちなみにこの暑さにも関わらずトウジは黒のジャージを着用している。

 「・・・ハックされたかどうかはおいといても・・・”ヒステリックマドンナ”の機動性は、多分”九朗”と互角・・・それに問題はあの武器だね・・・電磁鞭なんてキワモノだと思ってたけど使いこなされるとあれほど恐ろしい武器はないよ・・・」

 「そやな〜、電気系統をやられてもうたら、どんなEVAでも戦闘不能でゲームオーバーやしな・・・・・でどないする気や?」

 「う〜ん、まだよくは考えてないんだけど、取りあえず電撃を回避するには距離を保って銃撃するか懐には入って格闘に持ち込むかだし・・・どちらにしても早く帰って”九朗”の修理と対策を練らないと・・・・」

 前を向きながら真剣な顔で話すシンジに、トウジは、手を頭の後ろで組むと若干呆れ顔で続ける。

 「銃の命中精度あげてラバーコートの装甲を着せるちゅうんか?・・・”サインボルフ”と同じめにあうで・・・・」

 「!!」

 「考えてもみい、あのスピードに銃が通用すると思うんかい?」

 「・・・そう、そうだよね・・・どうしよう・・・」

 「ま、性能が互角やったらあとはパイロットの技量やな、一番技量のあるやつに特訓してもらえや!」

 「・・・・えっ!?・・・・それってアスカのこと?」

 驚きの表情で見つめるシンジにトウジは、無言で頷いた。

 

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 翌日 新屋敷支店

 

 「へーそれで朝からやってるのね!たしかに鈴原達の中じゃアスカが一番場数を踏んでるしね・・・のべ戦闘時間が3倍近いもの」

 「げっ、そ、そうなんか?」

 カウンター越しにそんな会話をしている二人に、筐体の方から怒声が聞こえてくる。

 「あーもう!ぜんっぜんなってない!!」

 「えっ」

 「だからどうしてそんな効率の悪いことするわけ!?信じらんない!!」

 「だっだって」

 「・・・・しごかれてるわね・・・」

 「・・・・・そうみたいやな・・・」

 「だ・か・ら!そうじゃないったら!!」

 「えーっ!?」

 しばしそんな会話が続いていたが、あまりにも覚えの悪いシンジに業を煮やすとツカツカとカウンターの方に歩み寄りヒカリにプリペイドカードを放り投げた。

 「ヒカリ!コクピットを一つ練習用プログラムに切り替えて!!」

 振り向きざまにそれだけ言うとまたシンジの元に帰っていった。ヒカリとトウジは、アスカのあまりの勢いにボーッとそれを見ていたが二人が筐体の中に消えると機械を操作した。

ウイイィィィン

 筐体が収まっていく軽い作動音を聞きながらシンジは戸惑っていた。なぜならその普段一人の為の空間は狭く、自身の体はベルトによってシートに固定されている、そしてそこにもう一人、それも自分の最愛の少女が入ってきているのだ。そんなシンジがやっとの事で言葉を絞り出す。

 「あ、あの、アスカ・・」

 「うっさいわね!ガタガタ言うんじゃないわよ!!だいたいあんたはね、オプション(銃器)に頼りすぎ!」

 その言葉を途中で遮ると大きな声で言いながら筐体内のボタン操作を始めた。そのたびに電子音を鳴らしながら話を続ける。

 「あーもう!各スイッチの設定も複雑すぎるわ!”九朗”みたいな軽量EVAならなおさら改造コンセプトにあわせて操作性を絞り込まなきゃダメじゃない!!」

ピッ、ピッ、ピッ

 「例えば格闘専門のEVAならこう!!」

 『・・ア、アスカって・・・・』

 「分かった!!」

 軽快な操作を見ながらだんだんと落ち着いていき黙って見守っていたシンジ、そこに一段落ついたアスカが振り返りながら言った。

 「えっ、う、うん生花堂の”シトリン”」

 「・・・何が?」

 怪訝な顔で訪ねるアスカに慌てながら答える。

 「あ、えっと、そのシャンプーの銘柄・・・・ア、アスカってさ夢中になると前後不覚になるんだね・・・」

 「!!」

 そう、その狭いコクピットの中でアスカはほとんど全てのスイッチの設定をしていたのでその体はシンジの上に乗っているような格好になっていた。慌てて離れるとアスカは、恥ずかしさのあまりシンジのヘルメットを両手で押した。

 「ばっバカー」

ゴン

 「な、なんで・・・」

 思いっきり情けない顔で訪ねると、そのシンジの瞳を上目で見つめながら答えた。

 「・・・ごめん・・だって絶対勝ってほしいのよ・・・シンジが・・”ベンケイ”を倒すために今まで必死でチューンしてきた”九朗”なんだもん・・」

 『うっ、か、かわいい・・・』

 そんなアスカの様子にドギマギしてしまい思わぬ事を口走ってしまう。

 「ア、アスカ・・・その・・・キ、キスしても良いかな?」

 「えっ、・・・・ばっバカ!な、何いってんのよ!こ、コクピット内部は、サービスカウンターで逐一モニターされてんのよ!!」

 「そ、そうだよね・・・ご、ごめん・・」

 「・・・・・・バカ・・・」

 真っ赤になって反論するアスカに同じく真っ赤になって答える。そんなシンジを見て一言呟いたが、それは、誰の耳にも届かなかった。そしてそんな様子をモニターで見ていた二人のコメント・・・

 「なにやっとんのや・・・」

 「・・・・・・うらやましい・・・(ぽ)」

 

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 月曜日 第三新東京市犬尾町 

 雑々としたビル街の中三人の少年少女が歩いている。その内の少年は、線の細い顔つきをしていて、青いジーンズ、上にTシャツにDP用のジャケットを腕まくりして着たシンジと、なぜかいつも黒いジャージを上下着用しているトウジであり、少女とは、茜色の髪を後ろで結び、白いサマーセーターにシンジと同色のスラックスをはいたアスカである。

 「こんなごみごみしたところにゼーレパレスがあるわけ?」

 「”シトラスハウス”はゼーレパレスじゃないんだ」

 「そや、筐体置いてるだけの小規模店やな」

 辺りを見回しながら言ったアスカの言葉に二人が答えを返す。そんな答えに一寸眉をしかめると聞き返した。

 「なんでそんな所にわざわざ出向くのよ?」

 「あ、それはトウジがどうしても相手の顔を見るって聞かなくて・・・・」

 「お!ここや、ここや!」

 シンジが困ったような顔で答えているとき辺りを見回していたトウジが声を上げた。そしてその視線を追った二人が同時に声を上げる。

 「「・・・・ここ?」」

 「そうやら直通のエレベーターみたいやな・・・」

 三人の目前には、様々なテナントが入っているビルが立っていて、その玄関の脇に地下に直通のエレベーターがあり、そのプレートには”シトラスハウス”と書いてあった。そこでそうしていても仕方がないので取りあえず三人はそのエレベーターに乗り込んだ。

 「・・・なんか胡散臭いわね・・・」

 「・・・どうやって筐体を搬入したんだろね・・・」

 そんな会話の中程なくチンという音が響き扉が開いた。それと同時に店からむせ返るような空気が流れ込んできてその臭いが三人の鼻をつく。そして目の前には薄暗い証明の中バニーガールが酒を運び、中央のステージでは踊り子が怪しげなダンスをしている光景が広がった。

 「「「!!」」」

 「あら、かわいいお客さん達ね!でも残念だけどここは未成年者は入れないのよ・・・」

 驚いてなんにも言えない三人の前に現れたのは、赤紫がかった髪に白衣のような真っ白なドレスを着た真っ赤なルージェが特徴的な女性だった。そんな妖しい魅力を持った女性が言った言葉にやや怯えながら聞き返す。

 「あ、あの・・・で、でも、ここって”ゼーレ”の加盟店じゃ・・・・・」

 「本業は、24時間営業のショーパブよ・・・スクール卒業したらまた来てね(はぁと)」

 その女性はそう言いながらシンジ達に投げキッスを送る。そこに傍らのカウンターでカクテルをたしなんでいた別の女性が声を掛けた。

 「あー、ナオコ、ナオコ!良いから入れてあげて!!保護者同伴だから・・・・・あ、マスターこれもう一杯ね(はぁと)」

 「か、母さん!!!」

 声のする方を振り返ったシンジが見たものは、今日の朝何気ない様子で家から出かけていった自分の母の姿だった。脇の二人はそのシンジの言葉と視線の先にある姿によって声も出せないほど驚いている。

 「あら、じゃああなたがシンジ君ね・・・私は、ユイの友人の赤城ナオコよ、よろしくね」

 「えっ、あ、い。碇シンジです・・・どうぞよろしくって・・・どうして母さんがここに?」

 一応求められた握手に答えたものの一番疑問だったことを口にした。その言葉に席を立つとユイがこちらに歩いてきてハンドバックから一枚のディスクを取り出し話し始めた。

 「あら、シンちゃんが良いって言うから私もDPやろうと思ってナオコにカスタムを教わっていたのよ、こう見えても元は、優秀なシステムエンジニアだったのよ!」

 「えっ、じゃあ”ヒステリックマドンナ”って叔母様の!?」

 その言葉に我に返ったアスカが思いついたことを口にした。その問いに笑顔で答えるユイ。

 「そうよ、結構美人でしょ!あなたは、確かアスカちゃんだったわね、シンジからいつもあなたのことは聞いてるわ、この前は、ごめんなさいね、おかまいもできなくて・・・」

 「えっ!?い、いやこちらこそ・・・」

 「・・・・・もしかして、そのEVAの基は僕の机中にあった・・・・」

 「そう、だってシンちゃんこの間好きなの持っていって良いって言ったじゃない」

 「そうね、いくら私でも基が良くなかったら初めてでいきなり最初からあんなに良いものは作れなかったわ」

 「それに、洒落のつもりでエントリーした大会の圏決勝までいけたしね〜」

 「・・・・・・・・・」

 自分の問いに答えたユイとナオコの話の間シンジは、ずっと俯き肩を震わせていた。その壁に埋め込まれている大型モニターに先日のCGアイドルが映ってアナウンスを始める。

 「HI!みなさん週末は楽しかった?こちらは、”デンジャープラネットV”全国大会地方予選オフィシャルスタジオ・・・・いよいよ今日は決勝戦ね!出場予定者はスタンバイOKかしら?第三新東京市ゼ−レパレス国府店による事前の報告によるとSINJI&”九朗”側は、相手側のホームベース犬尾町シトラスハウスへ出向いているらしいわ、こうやって同好の輪が広がるのも通信対戦の楽しいところね!!」

 「・・・・・広がってないで・・・・」

 「あ、ほらユイ始まるみたいよ!」

 「あら、そうみたいね!ほら、シンちゃん急いで準備しましょ!」

 そう言いながらユイは、シトラスハウスの備品であるヘルメットを持って筐体に近づいていく、その言葉に顔を上げるとシンジは真剣な顔で喋る。

 「・・・・母さん・・・手加減しないよ・・・」

 「・・・望むところよシンちゃん・・でも初心者だからってなめちゃダメよ・・・私だって昔はゲーセンで有名だったんだから・・・」

 ユイは、立ち止まり首だけ振り返ると微笑みながら言ったがその瞳は笑ってはいなかった。

 

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 「今日のバトルフィールドは、太陽系第4惑星”カオスエリア(無秩序地域)”、グラフィックは、NASA提供の最新情報による特別あしらえよ、期待してね!・・・それじゃあGOODLUCK!!」

 「カタパルト射出します」

ゴォオッ・・・・・ドシュッ

 アナウンスについで聞こえてきた合成音声と共にシンジの操る”九朗”が長銃を片手に飛び出していく。その姿は、いつもの軽装に若干の追加装甲を腕などに付けただけのものであった。そして同様にユイの操る”ヒステリックマドンナ”も飛び出してくる、お互い背中から炎を吹き出しながら接近していく。

 「へぇ、ライフルもって真正面からとは奇襲のつもりかしら?・・・それとも・・・」

 そんなことを呟きながら機体を相手に近づけていくが、当の”九朗”はなんの素振りも見せず近づいてくる。

 「・・・まっいいわ!・・・いくわよシンちゃん!!」

ビュッ・・・バシィッ

 ”ヒステリックマドンナ”が右腕を振り上げ手に持った電磁鞭を振り下ろした。それは”九朗”が持っていたライフルに絡まるが、当然のようにそれを捨てると一度地面に降り立ちそれを蹴って抵抗の無くなったライフルを引きバランスを失った相手に向かい飛び、その胸部に左腕でアッパーカットのように殴りかかる。

バキャッ・・・・ズザザザザザザ

 「きゃあ!・・・何すんのシンちゃん!!」

 「へ!?・・・い、いや何するって・・・・母さん・・・」

 ぎりぎり胸部装甲の一部を吹き飛ばされただけで終わりそのまま着地すると距離を取ろうと後ずさる。シンジは、スピーカーから聞こえてくる声に一瞬呆気にとられたが気を取り直して距離を詰めると今度は右手で殴りかかった。ちなみにこの二人は通信回線を開いたまま戦闘をしている。

 「あ、ところでシンちゃん・・・アスカちゃんとはもうやった?」

 「!!」

 「・・・・・デート(はぁと)」

 その言葉に動揺したシンジはスカッと言う擬音が聞こえそうなぐらい見事に空振りしてしまった。そしてその肩を”ヒステリックマドンナ”が後ろから右手で固定する。

ガッキン

 「グッ!」

 「あら、何考えたのシンちゃん?」

 もうこれ以上は無いという笑顔でからかいながらも左の肘を振り下ろし肩の付け根から”九朗”の右腕を叩き折る。

 「ずるいよ母さん!!」

ベキッ

 叫びながら機体を反転させると左腕を水平になぎ払った。それが顔に当たり装甲が半分砕け落ちる。

 「女の子の顔を傷つけるなんて・・・シンジ!母さんはあなたをそんな子に育てた覚えはないわよ!!」

 「何言ってんだよ!」

ボン・・・・・・・・ドシッ・・・・・・ビシュッ

 言いながら右足で蹴りをいれ相手の左腕を小さな爆発と共に吹き飛ばす”九朗”、しかし”ヒステリックマドンナ”は軽く相手の胸部を蹴るとそのまま後ろに飛び距離を取った。そしておもむろに右手の電磁むちを振るう、それは、バランスを崩し立て直そうとしている”九朗”の首に正確に巻き付いた。

 「!!」

 「これまでね!」

カチッ

 ユイは自分の勝利を確信しトリガーを引いた。しかし、シンジはここがチャンスだとみて、心の中で叫びながら右手のコンソールにある赤いボタンを押す。

 『今だ!カットオフ!!』

ピッ・・・・・・・・・バリ、バリ、バリッ・・・・ズシャン

 その瞬間、”九朗”の眼からヒカリが消え同時に電磁鞭からの電撃が襲いかかりその場に崩れ落ちるように倒れ込んだ。

 「これにて一件落着(はぁと)」

 その様子を見て、電磁鞭をゆるめ収納しようとしたが、それを動かない筈の”九朗”が掴み作動音と共に起きあがる。

 「!!」

キュィーン・・・・・ボン

 その隙を突いた動きに一応電磁鞭を振るうが当たるはずもなく高速な体当たりを受けあえなく砕け散った。

 「―――――――勝者決定!!」

 そのアナウンスに店内モニターで見ていたアスカやトウジ、さらにその戦いを見ていた人々から感慨の声があがる。そのモニターの中には、両腕を大破し体のあちこちから黒煙を吹いている満身創痍の”九朗”が立っていた。

 「第27圏代表は、SINJI&”九朗”!!」

プス、プス・・・シュー・・・・・・・・・ガッシャン・・・・

 「あら?・・・・・・・・えーと・・・」

 辺りに静寂が漂いしばらくしてそれが笑いに変わる。そう、”九朗”あまりにも機体の損傷が激しくそのまま沈むように地面に横になったのだ。結局このバトルの正式結果は”両者戦闘不能”になり、かろうじてシンジ側が判定勝ちを得ることになった。

 

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―――

 「ありがとうアスカ・・・・おかげで勝てたよ」

 「あったり前じゃないこのあたしが特訓してあげたんだから!!」

 出てくるなりアスカに駆け寄り微笑みながら礼を言うシンジに両手を腰にあてながら答える。そこにこちらも出てきたユイが笑いながら声を掛ける。

 「あら、やっぱりこんな強力なパートナーがいるシンちゃんには勝てないわね〜」

 その言葉に一瞬お互いを見つめると真っ赤になって俯いてしまった。それを見ながらユイの隣にいたナオコがシンジに問いかける。

 「あ、そうだシンジ君、どうやって回路のオーバーヒートを回避したの?」

 「え、あ、・・あのそれは、そのアスカと相談して、スイッチで全ての電気回路を遮断できるデータを組み込んだんです」

 「聞いたユイ、やっぱり愛の力にはかなわないわね」

 さらに赤くなる二人を見て嬉しそうに話している大人達をしり目にトウジがシンジに話しかける。

 「おめでとさんセンセ!・・・しっかしこらまた派手にやられたもんやな・・・データの修復大変やで」

 「あ、ありがとトウジ、う〜ん、しょうがないからこの間取ったバックアップディスクから部品取りをすることにするよ」

 「それは無理だと思うわ」

 「えっ、どうして母さん?」

 「だってそのディスクってこれの事じゃないの?」

 言いながらユイは、全損した”ヒステリックマドンナ”のディスクを取り出す。そのやり取りを見ながら復活したアスカが口を挟む。

 「大丈夫ですよ叔母様!バックアップは一枚だけじゃないだろうし、ね!シンジ!!」

 「・・・・・・・・・・」

 「・・・まさか・・・・」

 振り返りながら問いかけるアスカに俯きながら無言で返事を返す。信じられないような表情で声を出すとシンジは静かに首を縦に振った。

 「・・・明日からの全国大会は無理みたいやな・・・・・」

 

 

 

第四話終了 


つづく・・・
ver.-1.00 1997-08/25 公開
ご意見・感想・誤字情報などは klein@mxh.meshnet.or.jpまでお送り下さい!
Ohtuki: 第四話お届けします(^^)・・・・もっとオリジナルを入れなくては(^^;;
       あ、それはそうとみなさんメールありがとうございましたm(_)m
       この4話についても頂ければなお嬉しいです(^^;;
       最近私IRCチャットにはまっていまして、毎日のように顔を出しています(^^)
       私に直に何か言いたい人はめぞんのちゃっとにいけば運が良ければ親切な人(笑)が
       優しく教えてくれるはずです(^^)
       それではこれからもよろしくお願いします(^^)

ドッカーン(雷神の鎚) 

Ohtuki:(@@;;

#*@¥%&:「いいのか?こんなんで・・・・」
       「こうなればこの俺様がストーリー構成を作るしか・・・・暇がほしい。」


ではまた(^^;/~~

次回 第五話 BUM HAVE


 Ohtuki&Mizunoさんの『BREAK−EVA』第四話、公開です。
 

 シンジの圏予選の相手はおかん。
 ユイさんのキッツイツッコミに惑わされまくりながらの薄氷の勝利!

 ・・・こうして見ると、
 シンジくんって「マザコン」の気があるのかも・・・(^^;
 

 特訓の段階でもアスカに終始リードされていたし、
 「尻に引かれるタイプ」なのは確実?(笑)
 

 そろそろ”男”を見せるときか?!
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 メールを求めるOhtuki&Mizunoさんに応えて上げて下さい!!

 

 ドリンク”L・C・L”
 いらんわ!(笑)
 ・・・・・青汁よりたち悪いぞ(爆)


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