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EVANGELION 〜神話にならざる少年〜 

 


 

プロローグ

 


 シンジには、自分の手についている赤いものがなんなのか、まるでわからなかった。

 ゆっくりと周りを見渡すと、目の前には力無く倒れている人影、そして足下には月明かりに照らしだされている真っ赤に染まった銀色の刀身のナイフが転がっている。よく見れば、その人影からもその赤いものが流れ出している。まったくわけがわからない。疑問が、次から次へとわき出してくる。

(僕はなんでこんなところで立ってるんだ?)

(この赤いものはなんだ?)

(なんでこの人は倒れてるんだ?)

 なにひとつわからない──というか、なにも思い出せない。一体自分はなにをしたんだ?

(いきなり後ろから襲われて……。それで──?)

そうした記憶の反芻すらも、今のシンジにはさらなる疑問の対象となる。彼の思考は、ループを描くように混乱していた。

(襲われた? 誰に? この──目の前に倒れている人に? なんで? わからない。どうして──?)

 シンジはわけがわからないながらも、その人影の安否を確認するために一歩踏み出す。

「あの……。大丈夫、ですか?」

 返事はない。シンジは、もう一歩踏みだそうとする。刹那、誰かに押しとどめられるように肩をつかまれた。呆然とした表情のまま、シンジは後ろを振り返った。そこには、一人の男──いや、少年が立っていた。少年は沈痛な表情で、首を横に振った。

 ──君が悪いんじゃない。仕方なかったんだ──

(仕方なかった? なにが仕方なかったんだ?)

 なにを言ってるんだ?──しかし、シンジはその言葉を口にすることは出来なかった。

完全に肉体が硬直している。先ほど歩いて、しゃべっていたことが嘘のようだ。

 背後から、いくつか気配が近づいてくる。それらはシンジを通り過ぎて、倒れている人影に歩み寄った。男のそばにかがみ込んで、首を左右に振っているのが見える。同時に、つぶやきも聞こえてきた。声は、完全に沈み込んでいる。

 ──だめ、完全に死んでる。即死ね、これは。さすが、と言ったところかしら──

 死んでる? 即死? どうして? どうして──僕の前で?

 再び、目の前に先ほどの少年が前に現れる。そして、言った。

「気にすることはない。仕方なかったんだ。これは、正当防衛なんだよ。君のせいじゃない。君が悪いんじゃないんだ。……それにしても、相変わらず見事な腕だな。たぶんこの人は、自分が殺されたことにも気づかなかったと思うよ」

 見事な腕? 正当防衛? 殺された? じわじわと、全身にふるえが襲ってくるのがわかった。同時に、麻痺していた感覚が蘇ってくる。左腕が、ずきんと痛んだ。

(折れてる?)

 そう思った瞬間、あたりに漂っている臭いに気づく。錆びた鉄の臭い──

(血の臭い……?)

 死んでいるらしい人間、血塗れのナイフ、死んでる、即死、正当防衛、君が悪いんじゃない──すべてのことが頭を渦巻く。そして、最後の一言。

 ──殺されたことにも気づかなかったと思うよ──

「……あ……あぁ──」

 シンジは頭を鷲掴みにして、なにかをこらえるようにうめき始めた。がくんと、膝の力が抜けたように座り込む。そして。

「う──うわあぁぁぁ!」

 シンジは、絶叫した。思い出したのだ。その男に、ナイフを突き立てている自分を──

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

「──それで?」

 闇。暗い部屋。二つの人影が、お互いに向き合っていた。男は椅子に腰掛け、手を組み合わせた姿勢のまま、ただ一言そう訊いた。

「はっ。自我崩壊を引き起こしかけましたが、持ち直したそうです。ですが──」

 答えたのは、女性だった。会話になんの感情も含ませていないと言う点では、彼と彼女は同じような人物といえた。言いよどんだ女性に、男が再び問いかける。

「なんだね?」

「記憶の喪失、及び若干ですが人格の変異が起こったようです。これでは使えるかどうか……?」

 彼女のそれは問いかけと言うよりも、確認だった。実際、返ってきた答えは彼女が予想していたとおりのものだった。

「かまわん。彼が彼であればいい」

「はい。では、予定通りに……?」

「そうだ」

「わかりました。直ちに……」

 女性は、そういって男に背を向ける。会話は、そこで終わった。

 

 


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ver.-1.00 1997-08/14
 ver.-1.10 1997-12/17 公開

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 本日2人目の御入居者、
 めぞん通算57人目の住人です。

 隠者の紫さんようこそ(^^)

 『EVANGELION 〜神話にならざる少年〜』プロローグ、公開です。
 

 ・・・・本日2人目・・・・
 本当は別の日にいただいていたのですが、
 ちょっと忙しくて新規の作業に手が伸びなかったんですよ(^^;

 ・・・・忙しい・・・・・・
 めぞんの空き部屋はあと2つですが、
 参号館は建てる余裕無いかも(^^;;;;

 ・・・・参号館・・・・・・
 縁起が悪い名前ですね(爆)
 

 閉話休題

 プロローグ。
 いきなり色々な伏線・謎がばらまかれましたね。

 人を殺したシンジ。
 彼を取り巻く人々。

 何がこの先?
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 隠者の紫さんを貴方のメールで迎えて下さい!


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