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気になるあの子・第参話

 
−あの子と母さん−




 翌日は土曜日である。今日も朝からみんな元気だ。

 「ねえシンちゃん。きのうはふたりでどうしちゃったんだい」
 「ふたりでいっしょにかえってあそんだんだ」
 「ふぅ〜〜ん。こんどはぼくとみきちゃんもいっしょにかえろうよ」
 「そうだね。きょうからよにんでかえろう」

 シンイチとケンジの会話である。

 「りっちゃん」
 「なあにみきちゃん」
 「そのうでにつけているのなあに」
 「ええ〜〜と、あの」

 りっちゃんまっかっか。う〜〜んうぶりぃ〜〜。

 「今から聞いた事秘密にしてくれる?」
 「うん」
 「じゃ教えてあげる。私とシンちゃん婚約したの。これ婚約腕輪よ」
 「え!!こんやくしたの!!すごぉ〜〜い」
 「みきちゃん、声が大きいわよ。みんなに聞こえちゃうわ」
 「ごめんなさい。でもいいわ〜〜。およめさんはおんなのろまんよねぇ〜〜」
 「でしょ。シンちゃん立派なお婿さんになるっていってくれたの」
 「いいわね。わたしもだれかそんなこといってくれないかしら」

 ミキちゃんはケンジを見てそう呟く。おませな会話はまだまだ続いた。











 きんこんかんこん
 きんこんかんこん

 朝の始まりのチャイムが鳴ると、みんなはドタバタと席につく。

 廊下から足音が聞こえてくる。

 がらがらがらがら

 教室の戸が開き、お腹の大きくなった女の先生が教卓の前に立つ。

 「きりっつ。きおつけ。れい」

 「「「「「「伊吹せんせいおはようございます」」」」」
 「はいおはようございます」

 ミキちゃんの号令と挨拶と共にHRが始まった。

 「みなさん今日は土曜日です。午前中しか授業がありません。しっかりと頑張りましょう」
 「「「「「はぁ〜〜い」」」」」

 みんな元気に答える。
 伊吹先生はみんなを見渡す。今日も欠席は無いようだ。ふとリツコを見てこう言った。

 「あ、赤木さん。左手につけている物はなあに」
 「あ、あの。腕輪です」
 「可愛いわね。でも学校では外してましょうね」
 「はい。わかりました」

 リツコは名残惜しそうに腕輪を外すと、ランドセルから出したタオルにくるんでランドセルにしまった。

 「それでいいわ。あとまだ教科書届かないから、今日も西田君の教科書を見せてもらってね」
 「はい。わかりました」

 リツコは、喜んで机をくっつけると、シンイチに言った。

 「シンちゃん見せてね」
 「うん。いいよ」
 「ありがとう」

 にこ

 百万ドルの笑顔とはこの事である。やっぱりらぶりぃ











 さてさて時間は進んでいく。休み時間になった。

 「シンちゃん」
 「なあにりっちゃん」
 「はいこれ」

 リツコは奇麗に紙に挟んだ、数枚の写真を取り出した。

 「きのう借りていた写真を返すわ」
 「うん」

 シンイチは写真をランドセルにしまった。

 「それとこれ」

 リツコは薄いプラスチックの板をシンイチに渡した。

 「これなあに」
 「これはね」

 リツコはシンイチを窓辺に引っ張って行った。そこは穏やかな五月の陽光がさしていた。

 「この板をこうやって日の光に当てるの」
 「あ!!!!」

 プラスチックの上には10センチほどの人間の姿が浮かび上がったいた。それは写真の様に平べったくはなく、どこから見てもちゃんと立体に見えた。

 「お母さんの顔だ」

 シンイチの母、アカネの顔をその人型は持っていた。
 薄い青のブラウスに白いスカートの彼女はにっこりと微笑んでいた。

 「きのう戻ってから、あの写真を元にお母さんと合成したの。これあげる」
 「りっちゃんありがとう」
 「ううんいいの、だって未来の旦那様の為なんですもの」

 リツコは真っ赤になってシンイチに言った。

 「それと今日私の家に遊びにこない?」
 「うんいくよ。だけどけんじくんとみきちゃんもいっしょにいっていい?」
 「いいわよ」
 「じゃあそうするよ」

 きんこんかんこん

 「4時間目が始まるね」
 「うんせきにつこう」











 きんこんかんこん

 「これで今日の授業はこれでお終いです。今日は連絡事項はありません。月曜日までにお絵かきの宿題を忘れないようにしましょうね。じゃ終わります」

 「きりーつ。れい」
 「「「「「伊吹せんせいさようなら」」」」」

 「さようなら」

 わーい
  がやがや

 「ケンちゃん、ミキちゃん、これからりっちゃんのいえにあそびにいくんだけどいっしょにいく?」
 「ぼくもいく」
 「わたしもいく」
 「わかった。りっちゃん、ケンちゃんとミキちゃんも遊びに行くって」
 「わかったわ。じゃ1時に遊びに来てね。私帰って準備してるから」
 「うんりっちゃん。じゃさようなら。またあとで」
 「うん。シンちゃんケンちゃんミキちゃんまた後で」

 リツコはランドセルを背負うとパタパタとらぶりぃーな足音をたて帰って行った。

 学級委員のミキちゃんが先生に日誌を渡した後、シンイチ、ケンジ、ミキは一緒に帰ってった。













 てくてくてくてく

 「ねえシンちゃん」
 「なんだいミキちゃん」
 「きのうはどうしてたの?」
 「うん。ぼくのうちでりっちゃんとあそんでたんだ」
 「シンちゃんとりっちゃんこんやくしたんだって」
 「な、なんでそれをしってるの」
 「りっちゃんからきいたの」
 「そう。ほかのひとにはないしょだよ。ケンちゃんもだよ」
 「わかったよ」
 「うん。そうするわ。ねえ。こんやくってどんなことするの?」
 「えーと、こんやくゆびわかうでわをおとこのこからおんなのこにあげるんだ」
 「「それから?」」
 「キスするの」
 「キス?キスってくちとくちをくっつけるやつ?」

 ミキちゃんがすごい勢いで聞く。

 「そうだよ」
 「シンちゃんりっちゃんとキスしたの?」

 ケンちゃんが興味津々の顔で聞く。

 「うん」

 堂々と言うシンイチ。ミキとケンジは思わず引いてしまう。

 「シンちゃん」
 「なあに、ミキちゃん」
 「キスするとおんなのこってこどもができちゃうのよ!!!!!!」

 すごい話である。

 「え????」
 「だからシンちゃんりっちゃんにキスしたからりっちゃん伊吹先生みたいにおなかがおおきくなってこどもをうんじゃうの。だからそのまえにおよめさんにしてあげなきゃいけないの!!!!」

 暴走している子供達。

 「それじゃぼくどうしよう」
 「シンちゃん」
 「なあにケンちゃん」
 「ぼくてれびでみたんだけど、そういうときはおとこのこはちゃんとしたふくをきておよめさんのいえにいくんだ。そうしたらおんなのこのおとうさんやおかあさんに[むすめさんをください]っていっておよめさんにもらわなければいけないんだ」
 「そうなんだ。ケンちゃんものしりだなぁ」
 「えっへん」

 ケンジ得意顔である。

 「しんちゃん。だからきょういくときにちゃんとしたかっこうしてりっちゃんのおかあさんにあいさつしなきゃだめよ。おんなのこはいつもあいするひとをまっているのよ」

 ミキちゃんはケンジとシンイチを交互に見ながら仁王立ちして言った。

 「うんわかった。ぼくりっちゃんのおかあさんにりっちゃんをおよめさんにくださいっていう」
 「「しんちゃんがんばって」」
 「じゃ1時10分前にぼくのうちのまえにしゅうごうね」
 「わかった」
 「わかったわ」
 「あそうだシンちゃん」
 「なあにケンちゃん」
 「よめさんをもらいにいくときはゆいのうのしなっていっておさけをもっていかなきゃいけないんだ」
 「ふう〜〜んそうなんだ。わかったありがとうけんちゃん」
 「じゃまたあとで」

 ぱたぱたぱたぱた
 ぱたぱたぱたぱた
 ぱたぱたぱたぱた

 三人はそれぞれの家へ向かって行った。













 シンイチは家の前でケンジと別れると、自分の家に鍵を開け入って行った。今日、父のコウイチは休日出勤で家に居なかった。シンイチはパタパタと自分の部屋に入っていくと箪笥を開けた。少し迷った後、お気に入りの青い半ズボンと緑の上着に着替えた。首には蝶ネクタイを着けた。そして一階の洗面所に行くと顔を洗う。お父さんの櫛で髪の毛を整えた。

 次にキッチンの冷蔵庫の前に行きはたと考えた。

 「おさけのばしょしらないや」

 シンイチは少し悩んだ後、冷蔵庫からオレンジジュースの大瓶を出し、紙袋に入れた。そしてテーブルにお父さんにあてて手紙を書く。

 「いまからりっちゃんちにいって、りっちゃんをおよめさんにもらってきます
   しんいちより」

 時計を見るともう1時10分前であった。あわててドアを開け跳び出していく。家の前ではケンジとミキが待っていた。

 「ちょっとまっててね。かぎかけるから」

 がちゃん

 「シンちゃん、りっぱよ」
 「ほんとだシンちゃん。それならりっちゃんをおよめさんにもらいにいけるね」
 「うん。それじゃいこう」

 シンイチは二人を引き連れて歩き始めた。

 「ねえりっちゃんのおかあさんってどうゆうひとなの?」
 「え〜〜とね、りっちゃんににてるけどかみのけはちゃいろなんだ。あとくちびるがへんないろしてるの」

 どうやらルージュの色らしい。

 「あと、おばさんっていうとすご〜〜くこわいかおをするの。だからぜったいにおねえさんといわないとだめだよ」
 「「うんわかった」」

 てくてくてくてく













 三人で喋りながら歩いていくとすぐに福音荘へと到着する。
 103号室の前まで行くと、シンイチは背伸びをしてトントンとノックをする。

 「りっちゃん」
 「はぁ〜〜い」

 ぱたぱたぱたぱた

 がちゃん

 鍵が開くと、戸を少し開けてりっちゃんが顔を覗かせた。

 「シンちゃん、ケンちゃん、ミキちゃんあがって」
 「「「おじゃましまぁ〜〜す」」」

 戸を全部開くとリツコとナオコが立っていた。親子でお揃いの白衣を着ていた。白衣の下にナオコは青いボディコン、リツコは青いブラウスに青いミニスカートだった。今日のリツコは赤い髪止めではなく、青い輪ゴムできらきらと輝く金髪を一つに束ねていた。左手首にはちゃんと婚約腕輪を着けていた。

 「いらっしゃい。シンイチ君とケンジ君、ミキちゃんだったわね。リツコと仲良くしてくれてありがとう。リツコも仲のいいお友達が出来てとっても喜んでいるわ」
 「ぼくもりっちゃんだいすきなので、ともだちになれてうれしいです」
 「ぼくも」
 「わたしも」
 「今日は、リツコはシンイチ君の為に、リツコが張り切って準備した物があるからね」
 「なんなんですか?」
 「それは後のお楽しみよ。玄関で立っているのもなんだから中に入って」
 「「「はぁ〜〜い」」」

 三人がゾロゾロと室内に入ってくる。なぜかリツコはモジモジしている。

 「どうしたのりっちゃん」

 シンイチは不思議がってたずねた。

 「私のかっこ、変じゃない?」
 「ううん。てれびのせいぎのかがくしゃみたいでかっこいい!!!!」
 「そう。よかった」

 リツコもシンイチの誉め言葉に安心したのか、顔を上げ元気になった。
 室内は思ったより広かった。

 「ナオコおねえさん」
 「なあにシンちゃん」
 「すごくへやがひろい」
 「あ、これはね、101号室から104号室まで借り切っているの。どうせこのアパート二年後には取り壊しになるから大家さんに許可をもらって部屋ぶち抜いて改造したのよ」

 このての説明が好きならしく口元が少し釣り上がった笑顔になるナオコ。リツコ以外は少し引いてしまった。

 「さ。ここに座ってね。今ジュースとお菓子を持ってくるわ」

 ナオコは、戸を開けてキッチンへと向かった。
 四人はちゃぶ台の周りにちょこんと座った。

 「りっちゃん」
 「なあにミキちゃん」
 「ナオコおかあさんってきれいなひとね」
 「うん、きれいでしょ」
 「それにりっちゃんとそっくりね」
 「うん。私も大きくなったらお母さんみたいな立派な科学者になるの。そして純白の白衣を着てシンちゃんのお嫁さんになるの」

 リツコは、手を胸の前で祈るように組んで、お目目きらきらモードに突入していた。

 「りっちゃん。じゅんぱくのはくいじゃなくてウェディングドレスじゃないかしら」
 「そうとも言うわ」
 「でもじゅんぱくのどれすはおんなのろまんよねぇ…………」

 ミキちゃんもきらきらモードに突入していた。

 「シンちゃん」
 「なんだいケンちゃん」
 「ふたりとも…………いっちゃったね」
 「うん。そうみたいだね」

 こちらは漫才モードである。

 そんなこんなで話していると、ナオコがお盆にジュースとせんべいと中華まんを入れて戻ってきた。お盆をちゃぶ台に置くと、ジュースを配った。

 「さあ召し上がれ」
 「「「「いただきます」」」」

 ぽりぽり
 ぱくぱく
 わいわい

 話は弾む。ナオコはにこやかな顔つきで子供達を眺めている。室内にはおんぼろ扇風機があり、のんびりと風を送っていた。五月の穏やかな昼時である。

 「しんちゃん」

 ミキちゃんがこそこそとシンイチに聞いた。

 「なあにミキちゃん」
 「りっちゃんをおよめさんにもらうのはどうするの」
 「あっそうだった」


 シンイチは傍でみんなの話を聞いていたナオコの方を向いた。きちんと正座をしなおす。

 「ナオコおねえさん」
 「あら。かしこまっちゃって。どうしたの」

 リツコ、ミキ、ケンジもそちらの方を振り向く。

 「りっちゃんをおよめさんにください」
 「へ?どうしたの。いきなり」
 「ぼく、きのうりっちゃんとキスしたんです。それでこんやくしたんです。キスするとりっちゃんこどもができるからこどもをうむまえにおよめさんにください」
 「あ、そういうことなの…………ふふふ、そうだったの。リツコ腕輪の事恥ずかしがって全然説明してくれなかったのよねぇ。婚約腕輪だったの。いいわよ。リツコお嫁さんにあげるわ」
 「はいありがとうございます」

 リツコの方は顔をまっかかにして俯いていた。

 「りっちゃん」
 「なあにしんちゃん」
 「およめさんになってね」
 「うんいいおよめさんになる」

 もうリツコはゆでだこ状態になっていた。う〜〜んらぶりぃ
 ナオコが突っ込みを入れる。

 「ただしシンちゃん。まだだめよ」
 「えっ。どうしてですか」
 「シンちゃんが立派な大人になったら、ぜひリツコをお嫁さんにしてあげてね」
 「でもそうしたらりっちゃんこどもうんじゃう」
 「キスしただけでは子供は産まれないから安心して」
 「そうなんだ」

 シンイチはリツコの方を振り向いた。

 「りっちゃん。おおきくなったらけっこんしてもいいってナオコおかあさんがいっているよ」
 「うん。わかったわ。わたしもりっぱなおとなになるからしんちゃんもりっぱなおとなになってね」
 「うん。ぼくがんばる」

 二人は勝手に盛り上がってらぶらぶだった。

 「ケンちゃん」
 「なあにミキちゃん」
 「もしかしてわたしたちっておじゃまむしかもしれない」
 「たしかに……」

 ナオコは自分の娘にこんないい仲間が出来て満足だった。

 「あとこれゆいのうのしなです」
 「あらなに。オレンジジュースね。じゃ20年早いけどもらっておくわ」
 「リツコ」
 「はいお母さん」
 「そろそろアレ、シンちゃんにやってあげたら」
 「そうね。シンちゃんこれから面白い事をしてあげるわ」

 いきなりリツコの顔が引き締まり眼鏡がキラリンと光った。

 「おもしろいことってなぁに?」
 「それは秘密。とにかくみんなで隣の部屋に移りましょう」

 子供達とナオコは隣の部屋に移った。













 「「「うわ〜〜〜」」」

 リツコを除く子供達三人は一斉に驚きの声をあげた。
 その部屋には、何等かの液体で満たされた大きな水槽が二個と色々なパネル、キーボードとディスプレイ、コンビュータらしきものがいっぱいあった。

 「すご〜〜い。これなにするきかい」

 ミキちゃんが水槽をペタペタ叩きながら聞く。

 「これはね、DAVR−脳神経直接刺激型仮想現実創出装置ッて言うの」

 リツコが答える。

 「へ?DAVR…………なんなの?」

 ケンちゃんが混乱する。

 「簡単に言うと夢を見る機械なの」
 「そうよ。私とリツコで開発したのよ」

 ナオコがみんなに言う。

 「今日はリツコの彼氏、じゃなくて婚約者ね、ともかく、シンちゃんが来ると聞いたんで急遽この装置の微調整をしておいたのよ」
 「シンちゃん」

 リツコが言う。

 「なあにりっちゃん」
 「この機械に入って」
 「え!!この機械って?」
 「この水槽に、こっちにあるヘルメットをつけたまま入るの。この水はLCLって言って、中に入っても溺れない水だから大丈夫よ」
 「え、でも」
 「私も入るから」
 「だけど…………」
 「私を信じて。私から入って見せるから」

 そう言うと、リツコはどんどん服を脱ぎ始めた。さすが小学一年生。全然恥ずかしげが無い。腕輪も外して、丁寧にタオルに包んだ。すぐにすっぽんぽんになると、髪を留めている輪ゴムを外す。金髪がさぁ〜〜と広がる。羽根があればそのまま天使だ。その後少し躊躇したが眼鏡も外す。緑色の美しい瞳がきらめく。
 リツコは黙ったままヘルメットを取るとすっぽりとかぶった。顎に付いているベルトで固定する。水槽の横に立てかけてある梯子を使い水槽の開いている上端からそろそろと入っていった。足、腰、胸、首と徐々にLCLに漬かっていく。そして口も漬かると一気に頭の上までLCLの中に入った。水槽の底についたあと、口からポコポコ泡を出す。

 周りでは子供達が心配そうに見守っている。

 口から泡を出し終えたリツコは水槽の壁の近くまで来た。じっとシンイチを見た後首を少し傾けてにっこりと微笑んだ。

 「りっちゃん、きれい」

 おもわずミキちゃんが呟いた。

 水槽の中でヘルメットからはみ出た金髪をゆらゆらとなびかせながら、にっこりと微笑む緑の瞳の少女。夢か幻、天界の美である。

 ぽかんと口を開けてるシンイチにナオコが言った。

 「ほら、シンちゃん。お嫁さんがやったんだから今度はシンちゃんの番ね」

 シンイチはうなづくと服を脱ぎ始めた。素っ裸になると同じくヘルメットをかぶり留めた。梯子を使いもう一つの水槽に入ろうとする。

 「あ、シンイチ君、その中に入って少したつといきなり不思議な事が起きるけどびっくりしないでね」
 「ハイ、わかりました」

 梯子の上で振り向いてナオコのいう事を聞いていたシンイチは勢いよく水槽に入った。粘っこい液体はほとんど跳ねなかった。水槽の底まで降りたシンイチは、まだ息を留めていた。隣の水槽を見ると心配そうにリツコが見ていた。そしてガラスに指で字を書いた。



 シンイチはうなづくと思い切って息を全部吐き出した。そのあとLCLを吸い込む。
 少し息苦しくなったがすぐに元に戻っていた。そしてリツコに向かい笑いかえした。









 ナオコは二人の様子を見てディスプレイの前に座った。

 「ナオコおねえさんこれからなにをするの?」

 ミキちゃんが心配そうに聞く。ケンジも横で黙って見ている。

 「これからねシンイチ君に楽しい夢を見させてあげるの。リツコはそのお手伝いでシンちゃんの夢の中に入って行くの」

 そう言って、ナオコはプログラムをスタートさせた。











 シンイチはびっくりした。いきなり目の前からリツコが消えたと思うと、周囲が真っ暗になった。そしてすぐに明るくなったが、そこはなんにも無い空間だった。ただ地面だけがずっと続いていた。ぼぉっとして立っていると後ろから声がした。

 「シンイチ」

 シンイチは振り向いた。
 そこにはよく見た事があるが、会った事の無い女性が立っていた。

 「おかあさん!!!!」
 「そうよおかあさんよ」

 シンイチは駆け寄った。そして足にしがみついた。

 「ほんとにおかあさんなの」
 「そうよ。お母さんよ。りっちゃんとナオコさんに天国から呼び戻して来てもらったのよ」
 「ほんとなんだ、おかあさん、あいたかったよ」
 「私もよ、シンちゃん元気にしている?」
 「うん。げんきだよ」
 「お父さんは?」
 「おとうさんもげんきだよ」
 「お友達もいっぱいいる?」
 「うん、ケンちゃんやミキちゃんあとりっちゃんも、それにりっちゃんとはこんやくしちゃった」
 「へえそうなのじゃがんばっていいお婿さんにならないとね」

 その時少しアカネの顔が赤くなっていた。











 「ナオコおばさん」

 ケンちゃんが聞く。

 「ナオコお・ね・え・さ・んよ。でなあに」

 ケンジ少しびびっている。

 「シンちゃんとりっちゃんうごかなくなってるけどどうしちゃったの」
 「今シンちゃんはお母さんと会っている夢を見てるのよ。リツコは夢の中でお母さんの役をやっているの。ほんとは私がやった方がよかったんだけど水槽に入れないからね」
 「ふぅ〜〜ん。すごいんだぁ。シンちゃん、おかあさんにちゃんとあえてるかなぁ」
 「そうよね。シンちゃんおかあさんとあうのはじめてだし」
 「二人とも、シンちゃんが出て来てもリツコがその役をやっている事をばらしちゃ駄目よ」
 「「はぁ〜〜い」」











 「シンちゃんそろそろ私天国に戻んないといけないの。もっとこちらに居たいけどね」
 「もう行っちゃうの」
 「そうよ。でも私はいつでも天国からシンちゃんとお父さんの事を見守っているからね。もう行かないと」
 「うん。わかった」

 シンイチは泣きそうな顔で続ける。

 「おかあさん。また会いに来てね」
 「そうね。またいつかね」

 そう言うとアカネの体はすうっとうすくなっていき消えた。そしてシンイチは元の水槽にいるのに気がついた。ガラスの向こうではリツコが微笑んでいた。









 ナオコは梯子とロープを使い二人を引き上げた。シンイチはLCLから出る時、吐き出したLCLで咳き込んだが、リツコは慣れているようだった。ナオコは一人ずつバスタオルで包むと床に降ろした。

 床に降り、ヘルメットをとった二人の元にケンジとミキが近づいて来た。

 「シンちゃんどうだったの」
 「うん、ケンちゃん、おかあさんにあえたの、すごくうれしかった」
 「よかったね。シンちゃん」

 みんなの間に笑みがこぼれる。

 「リツコ、シンちゃん、体がべとべとしてるでしょ。お風呂沸かしておいたから入ってらっしゃいな」
 「うん。シンちゃん一緒にお風呂はいろ」
 「う、うん」

 シンイチは顔が赤かったが、眼鏡を再びかけたリツコに引きずられるようにバスルームに消えた。
 ナオコは二人を見送った後、ミキとケンジに色々な機械を説明し始めた。二人は目を輝かせてその説明を聞いていた。











 いっぽう、リツコとシンイチはバスルームの更衣室にいた。リツコはちゃっちゃとバスタオルを脱ぐと浴室に入って行った。シンイチもすぐに続いた。
 浴室は結構広かった。4畳半ぐらいはある。半分を洗い場、半分をバスタブが占めていた。二人はまず、身体中についたLCLをシャワーで洗い流した。手拭いを使い体のすみずみまでよくLCLを落とした。手が届かない背中はお互いを洗いっこした。ふたりともきゃっきゃっとはしゃいだいた。

 「シンちゃん先にバスタブに入って」
 「うん」

 シンイチは勢いよくお湯に入った。お湯がはねる。ちょうどいい温度だった。
 リツコは浴室の端に置いてある大きな箱を引きずって来た。

 「よいしょ」

 リツコはバスタブの縁に苦労して箱を持ち上げる。箱のフタを開けると中身を一気にバスタブにぶちまけた。

 「うわぁ〜〜」

 水面には、アヒル、ベンギン、船、ロボットetc色とりどりのプラスチック製オモチャが浮かんだ。
 シンイチがオモチャに気をとられている間に、顔を真っ赤にしたリツコがバスタブに入った。バスタブの縁を跨ぐカッコが恥ずかしかったようだ。幼いながらも微妙な女心である。
 リツコはバスタブに入ると、金髪を濡れないようにタオルでくるんだ。お気に入りのアヒルを手に取るとシンイチに背をむけて、バスタブのはじっこにちょこんと座っている。洗いッこをしていた時と違い、少し恥ずかしくなってきたようだ。
 一方おもちゃに気をとられていたシンイチも、リツコがバスタブに入って来たのに気付いた。シンイチは振り返るとリツコを見た。ぽちゃっと白い肌の背中が赤く染まり、タオルからはみ出た金髪が揺れていた。

 (りっちゃんてきれいだなぁ)

 シンイチはソロソロとリツコに近づいて行った。

 がば

 「きゃ〜〜!!!!しんちゃん。やめてぇ〜〜」










        

つづく





NEXT
ver.-1.00 1997-08/12公開
ご意見・感想・誤字情報・りっちゃん情報などは akagi-labo@NERV.TOまでお送り下さい!




次回予告


ミサト風


入浴シーンを書いた
だが、その描写はロリコンの嵐にのみこまれてしまう
そして、変態の時がくる
せまりくる、りっちゃん貞操の危機
主演交代の淵においつめられる小説
発動するりっちゃんまぐまぐ化計画
ロリコンのさまを直視しためぞん大家最後の決断

気になるあの子・最新版
あの子とあいつ
キス接吻

さーて、最新版もホールズホールズ





レイ風



もう一つのりっちゃん
もう一つのシンちゃん
MADの終りは新たなLASの始まりにすぎないのか
まっこうの願いは金髪美女と共に朽ちるのか
人々の希望はラブ米ヘと行き着くのか
人々の夢はアヤナミストへと続くのか

気になるあの子・最新版
あの子とあいつ
レイ巨大化

膨れるレイがマシュマロ   マン





アスカ風



リツコのいない作品はマヤを傷つけ
マコトのメガネは全てを照らす
派手な青葉のギターと共に
もてもてケンスケ舞い降りる
化粧崩壊したナオコは再び立ち上がる事ができるのか
りっちゃんを金髪にした作者は○○○も金髪にするのか
現存するCGにりっちゃん萌えはあるのか

気になるあの子・最新版
あの子とあいつ
アスカ炎上


アスカはアラエルと共に























































極秘
TOP SECRET

































全国で経済効果数百億ユニット
 
−習慣飯台



作者とうとうLASに屈する?

−毎朝新聞


主演女優交代か
 
−日刊アスク



ナ○ナはお菓子のホームラン王

−わ○ちゃん


作者主演女優にふられる?
 
−等級スポーツ









「僕はもう疲れた。LASやアヤナミストに苛められてもりっちゃんものを書くなんて。睡眠時間を削って納期に脅えてりっちゃんものを書くなんて。助けて。助けて、フラッピー」





















轟く悲鳴

  「きゃ〜〜!!!!しんちゃん。やめてぇ〜〜」
 「あ、痛い!!!!」







飛び交う怒号

 「あんたばか?」







届かない呟き

 「気持ち悪い」







届かない思い

 「たすけて、たすけてア…………」























 りっちゃん最大の危機、その時彼女は…………





     そしてとうとうあいつがやってきた












 気になるあの子・最新版




 次回は



 「あの子とあいつ」





 真実は残酷の中に

気になる
あの子 






 「私はあなたのテンホーじゃない」
 「ロン」
 「駄目、先輩諸氏をパクってる」






















 合言葉は「らぶりぃりっちゃん」







制作:りっちゃん萌え萌えCG欲しいよ委員会

協力:フラメンコ曼荼羅研究会       

提供:まっこう文庫            




 まっこうさんの『気になるあの子』第参話、公開です。
 

 な、なんて引きだ(^^;

 途中からなんだかロリーな展開になってきて、
 ラストが・・・(^^;;;;

 小学1年生のりっちゃんの
 LCLシーン、
 入浴シーンで妙にねちっこく脱衣を説明していたし・・・

 も、もしかしてまっこうさんはそうなんですか?!(爆)
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 まっこうさんの同好の士はぜひぜひ応援のメールを!


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