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違う。
何かが違う。何かが狂っている。
イカリ=シンジは半ば絶望的に思った。
その視線の先では、彼の父親と姉がやたらと楽しそうに何かの準備をしている。
「ねー、お父さん。これ持っていった方がいいかなー?」
「いや、それよりもこちらの方がいいだろう(ニヤリ)」
セリフだけ見れば、家族旅行の前夜にも見えなくはない。
少なくとも、レイの持っている『これ』が神経攪乱ガス発生装置で、ゲンドウの言った『こちら』が攻城用魔力爆弾で無ければ。
ゲンドウの言った「殴り込み」は、何故かシンジ以外の人間全員の賛成により、明日実行されることになった。まさしく「善は急げ」である。
レイ曰く「みんなあんたのためにゼーレ村に殴り込みに行ってくれるのよ」
嘘だ。
シンジはそう思った。
絶っっっっ対に嘘だ。
父さんも姉さんも、みんな僕の怪我を口実に暴れたいだけなんだ。
そのシンジの考えは80パーセント以上は当たっていた。
ただ違うのは、レイとアスカ、ユイに限り、「シンジのため」と言う要素が無いというわけでも無いかなーと言う可能性もなきにしもあらずと言うことももしかしたらあるかもしれないなーというわけで……やっぱりみんな暴れたいだけかもしんない。
とにかくそんな絶望的な思考の迷路にはまっているシンジをよそに、殴り込みの準備は着々と進んでいくのだった……
そして、翌日――
ゲンドウの言った、「朝9時半に村の入り口集合」を大多数の人間が守り、集合場所である村の入り口――別に柵や塀があるわけではないので、どこからでも出入りできるのだが――には、ゲンドウ、ユイ、レイ、シンジ、アスカ、リツコの6人がそろっていた。
だが、「集合時間」というやつが決められていると、どうしても遅れないと気が済まない人間というのが居る。
そして、間違いなくそういった人種であるカツラギ=ミサトは、予定の時間よりも20分ほど遅れてやってきた。横には、何故か寝不足気味のカジも連れている。
カジ=リョウジは、自称「ミサトの恋人」である。ミサト自身は否定しているが、この二人の関係を見ていると、「恋人」以外の何者にも見えない。
しかも、三十路を来年に控え、そろそろ焦り始めるはずなのに、いつまでたってもミサトがカジと結婚しようとしないのも、ネルフ村7不思議(3つは未定)の一つである。
まあ、今は別に関係のないことだが。
「やーごめんごめん、チョッチ遅れちった」
「よ、皆さんお揃いで」
似合わないブリッコで言うミサトと、男臭い笑みを浮かべて会釈するカジ。
どちらも全く反省している様子はない。
これについてはいつものことなので、特に咎める者もない。
「さて、それでは出発するか」
そうゲンドウが言ったとき――
「あら、みんなそろって何やってんの?」
突然背後から聞こえた声に全員が振り向くと、そこには、キョウコ&イルク夫妻が立っていた。
「パパ! ママ!」
両手一杯に荷物を抱えたイルクと、左手に小さめのバッグを持っているキョウコ。
キョウコの長袖のシャツの右袖は、時折風に揺れていた。
アスカの父でもあるイルクは、筋骨隆々と言う言葉がしっくりとくるような大男だ。アスカに受け継がれたきれいな金髪を短く刈り込んでいて、それでいてその愛嬌のある顔つきは、見る者から警戒心を奪う効果がある。
一方、アスカの母であるキョウコは、やや小柄な女性で、イルクと並ぶと、それがより目立つ。ユイとは対照的に長くのばした黒髪を、無造作に垂らしている。彼女はアスカを生む前に冒険で右腕を失っているので、家事などもイルクが色々と手伝っているのだ。
余談だが、ユイとキョウコは、二人とももう40を過ぎているはずなのに、20代と言っても十分通用する容姿を維持している。ほとんど反則である。
この二人は街まで出かけていたのだが、ちょうど今帰ってきたらしい。
「ふ、ちょうどいいところに帰ってきた」
そう言ってゲンドウが説明する。
「まあ! 楽しそうね!」
「ちょうどいいや! どうもこのごろ体がなまってたんだ。どれ、それじゃあ、俺は荷物をおいてくるから、ちょっと待っててくれや!」
この二人のセリフは、シンジの不信感に拍車をかけることになった……
10分後、シンジ達はゼーレ村に続く山道を歩いていた。隣村と言っても、結構距離があるのだ。
「ねえ、アスカ」
「ん? どうかした?」
「いや、今ふと思ったんだけどさ……」
「うん」
「リツコさんの召還獣が僕に襲いかかってくるのっていつもの事じゃないの?」
「ちがうわね」
突然後ろから会話に入り込んでくるリツコ。
「シンジ君に襲いかかるのはあくまで何も命令を与えてない時よ。私があの『サキちゃん2号』をキール村長に売ってから、シンジ君が襲われるまで3日間が過ぎているわ。キール村長も魔法学院を出てるほどの魔術師なんだから、3日間も何も命令を与えずに放置していたというのは、少し考えにくいわ」
「はあ……」
「恐らく、キール村長はイカリ先輩にかなり恨みを持っているはずだから、その復讐の手始めね。まずイカリ先輩と親しい人間を一人ずつ殺していき、精神的打撃を与えた後で先輩を殺すつもりなのよ」
「そ、そんな……」
ショックを隠しきれないシンジ。
「僕が父さんと親しい人間だと思われてたなんて……」
こらこら。
「まあ、一応親子だしね……」
シンジを哀れみの目で見るリツコとアスカ。おいおい。
ごんっ。
突然シンジの顔面に石が命中する。どうやら聞こえていたらしい。
「な、なんで僕だけ……(涙)」
そんなシンジの問いに答える者は居ない。
さて、そんな馬鹿なことをやっているうちに、どうやら目的地に着いたようだ。
シンジ達10人は、入り口の辺りから中の様子をうかがっている。
村の中央にひときわ大きくそびえ立つキールの邸。そのまわりには村の自警団らしき人影が巡回していた。
「へえ、なかなか厳重じゃねえか」
イルクが感心したように呟く。
「昼間では不利だ。ここで夜をまとう」
ゲンドウが言った。
「と、父さん……だったら、何で朝に集合する必要があったの?」
「昔から集合は朝と決まっとる」
シンジのもっともな問いに訳の分からない答えを返しつつ、ゲンドウはすでにキャンプの準備を始めていた――ちゃんと用意してきたらしい――。
シンジは、ため息を一つつくと、キャンプの準備を始めた。
「人の言うことにはおとなしく従う。それが彼の処世術なのね」
「まあ、あの家族じゃねぇ……」
その光景を見て何故かぐっと拳を握りしめるリツコと、疲れたように呟くミサト。
戦いは、すぐそこに迫っていた……
どうも、ぎゃぶりえるです。
今回も短いですねー(^ ^;
映画を見た直後なので、このノリで書くのはきついんです。
まあ、映画については賛否両論あるようですが、私としては十分楽しませてもらいましたし、たとえ本編が終わってもまだまだ色々なところでエヴァは続いていきますしね。
それでは、第六話で会いましょう。(次回で『サキちゃん2号編』は完結予定)(^ ^)/~~
ぎゃぶりえるさんの『ネルフ村の平和な日常』その5、公開です。
本当に短いですね(^^;
1週間に2回、10KBの作品を送ってくれるより、
1週間に1回、20KBの作品を送ってくれる方が嬉しいです(爆)
夏休みに入ってから1日5本UPはざら・・・・
今日などは10本・・・・
眠る時間がないんですよ (;;)
贅沢な悩みでした。
愚痴はこの辺で(^^;
ゼーレ村に向かう頭の線が切れた面々。
シンジの為と言う当初の目的はとっくに霧散・・・
どんどん増える危ないメンバーにシンジの苦悩は深まるばかりです(笑)
がんばれシンジ。
君には不幸が友達だ(^^;
アスカという宝石を手にしている君にはその分不幸が降りかかるんだ・・・(^^;;;
さあ、訪問者の皆さん。
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