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英雄達の叙情詩

第1話

「出会い」


夏の日差しがまぶしい。

このクソ熱いのに何がうれしいのか黒のローブを着込んでいる男が一人。

やせ気味で、どこか陰険な感じの漂う青年である。年はまだ20前後と言ったところだろう。

その青年は、魔法学院の生徒だった。

そう。ここは”魔法都市”ジオフロント。大陸中の魔術師が一度は訪れる、まさに魔術師の聖地である。

魔法学院では、規定の授業を全て終えると、最後の卒業試験として、2年以上の修行の旅に出なければいけない。

旅の中で得た物を帰ってからレポートにまとめて提出し、それが認められて初めて公式の魔術師となれるのだ。

そして、その青年はたった今その修行の旅に出たところだった。

とはいっても1日目から旅に出る気分にはなれない。

元々この青年はあまりまじめな生徒ではなく、「魔法学院の後継者」とか「学院始まって以来の天才」などと持ち上げられてみても、あまりそんな気分にはなれなかった。

この旅にしても、適当に2年間その辺りをぶらついて、適当にレポートを出せばいいだろうなどとかなり甘いことを考えていたのである。

青年が来ている黒ローブも、この街で知らない物は居ない魔法学院の制服である。

とりあえず酒でも呑もうかと思って、ちょうど近くにあった酒場にはいる。

よく酒場には食堂や宿を兼ねたものも多いが、ここはそう言ったたぐいの酒場ではなく、正真正銘の酒を飲んで騒ぐだけの場所だった。

真っ昼間からこんな所に平気ではいる辺りこの青年の性格が伺い知れるというものである。

とは言っても、似たような人間は世の中には結構居るようで、酒場の席はすでに6割方うまっていた。中にはもうすでに出来上がっているような奴もいる。

青年はとりあえずカウンターの席に座って、蒸留酒を一杯頼んだ。

カウンターにはもう一人、4つほど席を空けて女性が一人座っていた。

その姿を見て、青年は一瞬、かすかに疑問を抱いた。

腕利きの女戦士とかならともかく、昼間とはいえ女性が一人ではいるような店ではない。

さらに、その女性は腕利きの女戦士とはほど遠く、どちらかと言えば温室育ちのお嬢様といった雰囲気があった。

おまけに、酒場の中にいるのに下戸なのか、ミルクを一人で飲んでいる。

だが、すぐに目の前に蒸留酒が運ばれてきたので、そこで青年の思考は中断された。

そうなると、もはやその女性についての興味もほとんど失い、ただ目の前の蒸留酒を飲み干すことだけに精神を集中させる。

やがて、青年の席の下に蒸留酒のビンが3本、果実酒のビンが2本、醸造酒のビンが5本ほど転がった頃、酒場の中に異変が起きた。

まあ、それはほんの些細な異変ではあったのだが、青年の興味を引くには十分だった。

先ほどの女性に、見るからにチンピラという格好をした大男が言い寄っているのだ。

女性は明らかに迷惑そうな顔をしているが、大男はそんなことは気にもとめず、「一緒に呑もう」と言い寄っている。

その光景を見て、青年はわずかに不快感を覚えた。――その理由はわからなかったが。

とはいっても、そのまま助けるでもなくただ横目でその光景を見ている。

すると――

「ふざけんなよっ!このアマ!」

突然大男がかんしゃくを起こしたように叫ぶ。

酒場中の視線が一瞬にして集まった。

どうもいくら言い寄っても手応えがないので、実力行使に出ることにしたらしい。

「この俺が一緒に呑もうって言ってるんだ。てめぇは黙って酌すればいいんだよ!」

女性の方は、やや顔が青ざめているが、それでも毅然とした態度は崩さずに言い放つ。

「あなたのような人と一緒にお酒を飲むつもりはありません! もうはなしてください!」

だが、その言葉は大男の神経を逆なでするだけだった。

「なんだとぉ〜」

大男の右手が振り上げられる。

女性は思わず目をつぶった!

…………

だが、いつまでたっても大男の腕が振り下ろされることはない。

女性がおそるおそる目を開けてみると、そこには、腕を後ろで押さえられている大男と、その腕を押さえている、さっきから底なしかと思うほどに呑んでいた青年が居た。

「て、てめぇ! 何しやがる!」

「女性に暴力を振るうのは感心しないな」

そう言うと、その青年は腕を放した。

すぐさま向き直り、青年と対峙する大男。

「てめぇ!」

大男の考えはこうだった。

さっきは不意をつかれたとはいえ、相手は所詮魔術師だ。力でねじ伏せれば俺が勝つ!

だが――

ぶんっ。

次の瞬間、勢いよく青年に殴りかかった大男の体は、宙を舞っていた。

「え?」

間抜けな声をあげて、大男の体は地面に叩きつけられる。

その手首をつかんでいた先ほどの青年がニヤリと笑った。

「腕力なら勝てると思ったかね?」

「て、てめぇ!」

近くのテーブルから、事の一部始終を見ていた大男の仲間のチンピラ達3人が立ち上がった。

一人目が青年にいきなり殴りかかってくる。

青年は、体を少し横に動かしてその拳をかわすと、カウンターの左ストレートを思いっきり入れる。

たまらず吹っ飛んだチンピラの後を追うように、自らもパンチの勢いで、そのまま前転した。

――と、一瞬前まで青年の頭のあった場所を二人目の回し蹴りが通りすぎる。

青年は前転からしゃがんだ状態のまま、二人目の軸足に足払いをかけた。

たまらず転倒した二人目の鳩尾を、すかさず立ち上がって踵で思いっきり踏みつける。

一瞬にして二人のチンピラを片づけた青年。あれだけ呑んでいたというのに、酔いをみじんも感じさせない動きだった。

それを見て、チンピラの3人目が、ナイフを抜く。

青年の視線がわずかに厳しくなる。

「やめておくことだな。それを抜いてしまったら、命の保証は出来ない」

だが、その3人目は、それが聞こえていないのか聞いていないのか、ナイフを勢いよくつきだしてくる。

青年は、右手でナイフの平をはじくと、体勢を崩したチンピラの顔面に回し蹴りを放った。

顔面に綺麗な回し蹴りをもらったチンピラは、たまらず他の客のテーブルにつっこんで深い眠りに落ちた。

「ふん」

青年は床に無様に転がったチンピラ達を一瞥し、そのまま席に戻ろうとする。

「あ、あの」

突然背後から遠慮気味に聞こえた声に振り返る青年。

そこには、先ほどの女性が立っていた。

そうだ、そう言えばこの人を助けるために戦ったんだった。

途中から喧嘩そのものに喜びを感じていた青年は、そのことを綺麗さっぱり忘れていた。

「なんか、助けていただいたみたいで……それで、その……どうもありがとうございました」

ぺこりと頭を下げる女性。

そのどこか子供っぽい仕草がよくあっていた。

「それで、何かお礼をしたいんですが……」

その女性の言葉にはっとする青年。

お礼など全く考えていなかった。だが、その時自分の言うべき言葉はもう決まっているような気がした。

「それでは……少し一緒に呑みましょうか?」

それが、イカリ=ゲンドウと後のイカリ=ユイの出会いだった……


つづく
ver.-1.00 1997-07/26 公開
ご意見・ご感想・誤字情報などは gyaburiel@anet.ne.jpまで。


シンジ「シンジでーす」
アスカ「アスカでーす」
レイ 「南は〇おでございます」
シンジ「…………」
アスカ「…………」
レイ 「ちょ、ちょっとあんた達! 何でつっこまないのよ!」
シンジ「そんなこと言われても……」
アスカ「あんたバカァ!? そんな作者も実物見たことがないようなボケやられたら、あたし達どうすればいいかわかんないじゃない!」
レイ 「キィィィィ! あんたら、年長者を敬う気持ちとか、そういったもの、もってないでしょ!」
シンジ「い、いや、僕は別に……」
アスカ「敬ってほしかったらもうちょっと敬われるようなことしてみなさいよ!」
レイ 「なぁんですってぇ! この赤毛猿!」
アスカ「何よ! この色素不足女!」
どかばきずごばきょ
シンジ「ああ、もう。二人とも喧嘩はじめちゃった。しょうがない。僕が締めないと」
シンジ「ええと、「英雄達の叙情詩」第1話
どかっ
「出会い」いかがだったでしょうか?
ずごっ
本編の合間にでも書いていきますので、これからも
ばぎっ
どうかよろしくお願いします」
アスカ「もう許せないわ! くらえ! アスカちゃんダブルウエスタンラリアァァァァト!」
レイ 「なんの! レイちゃんフライングボディプレェェェェェス!」
ばぎずがっ
シンジ「な、なんで二人とも僕に当てるの……」
レイ&アスカ「「そんなところにいるあんたが悪い(キッパリ)」」
シンジ「ひ、ひどい……(涙)」
ばたっ

ぎゃぶりえる:あいつらにやらせたの、間違いだったかな……(^^;


 ぎゃぶりえるさんの『英雄達の叙情詩』第1話、公開です。
 

 シブいっすねぇゲンドウちゃん(^^)

 魔法使いでありながら、一切本業を使わずのチンピラ退治。
 全くの余裕で4人を軽くあしらう。
 

 そしてユイさん、はかなげで可愛い(^^)

 シンジとアスカをからかう今の状態とは全然違いますね、
 彼女に何が起こったんでしょ(笑)
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 格好いいゲンドウを描くぎゃぶりえるさんに感想のお便りを!


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