司令部に生々しく響くアスカの絶叫。
弐号機の腹部は初号機によって貫かれ、今度は伍号機と六号機によって両腕をもがれ
ようとしている。
「神経カット、急いで!」
「だめです。カットできません。回線が妨害されています。」
ミサトの言葉に、マヤが悲痛な叫びで返す。
「なんですって!!」
「アスカ!!」
皆も悲痛な叫びをあげる。
もはや、アスカがさらに両腕をもがれる痛みを受けることは避けられない。
これ以上のダメージが、彼女の生死に関わるのは目に見えている。
弐号機 エントリープラグ内
アスカは凄まじい痛みに必死に耐えていた。
だがそれも限界に近づきつつあった。
腹部からの出血、自由の利かない両腕。
彼女は、『死』を覚悟した。
・・・ アタシ、死んじゃうのかな ・・・
・・・ イヤ! アタシはまだ死にたくない! ・・・
・・・ まだ、あの言葉を言ってないのに ・・・
・・・ こんなところで負けてられないのよ! ・・・
アスカの瞳に、一時は消えかけていた光が再び戻ってくる。
そして、弐号機の4つの目にも光が・・・・・
「このぉ、バカシンジ!!」
2体のエヴァを振りほどいて、立ち上がる弐号機。
「アスカと弐号機のシンクロ率が急激に上昇しています。」
「なんですって?」
いきなりの弐号機の変化に慌てるミサト達。
「70,80,90・・・、まもなく100に達します!!」
「100!! 弐号機と完全にシンクロするというの?」
モニターに映る弐号機を見上げるリツコ。
「! シンクロ率が100に安定します。」
「すごい、シンクロ誤差を自己修正するなんて・・・」
「自己修正?」
「そう、パイロットとエヴァの間の双方向回線が完全に開いているのよ。」
「じゃあ、今アスカは弐号機と一体化しているってわけ・・・」
「そういうことになるわね。」
「弐号機から高エネルギー反応! どんどん反応が高まっていきます!」
「一体、何が始まるというの?」
「アスカ・・・・」
「計測限界を突破していきます。計測不能です!!」
「おーーりゃぁーー!!」
アスカは振りほどいた伍号機と六号機にとどめを刺しにかかる。
・・・ 初号機は、シンジは何も仕掛けてこない ・・・
・・・ 今なら行ける!! ・・・
そう直感で判断したアスカは、伍号機に飛びかかり、プログナイフを突き刺す。
伍号機から飛び出るおびただしい量の体液。
弐号機はその返り血を浴びながら、六号機のほうへと向きを変え、
そして、伍号機同様、プログナイフを突き立て、活動を停止させる。
「ハァハァ・・・」
荒い息づかいをしながら、初号機を視界に入れる。
「シンジ・・・・・」
そうつぶやいた、そのときだった。
「え? な、何コレ?」
弐号機が凄まじい光に包まれていく。
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・・・ ここは? ・・・
光の中で気が付くアスカ。
・・・ アタシ、どうなっちゃったの? ・・・
そんな疑問をふと思い浮かべる。
アスカちゃん、アスカちゃん。
・・・ だれ? ・・・
アスカちゃん。
・・・ ママ? ママなのね? ここはどこなの? ・・・
ここは弐号機の、ママの心の中・・・
・・・ ママの心の中? ・・・
そうよ。ママはずっとアスカちゃんのことを見てきたのよ。
・・・ そうだったんだ。ずっとアタシのこと、見ていてくれたんだ ・・・
・・・ ママ、ひとつ聞いて欲しいコトがあるの ・・・
何かしら? 言ってご覧なさい。
・・・ シンジがアタシたちから離れていっちゃたの ・・・
・・・ アタシ、どうしていいか分からないの ・・・
シンジ君? 初号機の彼ね。
・・・ そうなの。アタシが何か言っても、もう答えてくれないの ・・・
アスカちゃん。もし、あなたが彼のことを大切に思うなら、
いつもと同じように接してあげなさい。
そして・・・
・・・ そして? ママ、どうしたの? ・・・
ごめんなさい。ママにはもう時間がないの。
・・・ え、そんなのイヤよ!! アタシをひとりにしないで!! ・・・
大丈夫。アスカちゃん、あなたはひとりじゃないわ。安心して、ね。
・・・ 嘘よ。アタシにはもうママしかいないの!! ・・・
アスカちゃん、あなたは命を救ってもらった人のことを忘れたの?
・・・ 救ってもらった? マグマの中に入った、あのとき ・・・
そうよ。
じゃあ、アスカちゃん、さようなら ・・・・
・・・ 待って! ママ、行かないで ・・・
・・・ 分かったわ、ママ ・・・
ママ・・・・、ありがと・・・・
光の中でひとり微笑むアスカ。
既に彼女の顔からは憂い・悲しみは消えている。
シンジ・・・・・、アタシが助けてあげるからね ・・・・・
「弐号機からのエネルギー反応が低下していきます。」
「まもなく、通常計測域に戻ります。」
「一体何が起こったというの・・・、リツコ分かる?」
「大体はね。恐らくエヴァそのものからのコンタクトを受けていたと推測されるわ。」
「エヴァから?」
「そう、エヴァの中に取り込まれている魂から、ね・・・・」
「バカシンジ!! いい加減に目を覚ましなさい!!」
アスカは初号機に向かって怒鳴りつける。
「・・・アスカ、残念だよ。僕の気持ちを分かってくれないなんて・・・」
シンジの声が返ってくる。
「お願いシンジ、アタシの話を聞いて!!」
「・・・・・」
「どうしてそんなに碇司令、お父さんのことを憎むの?」
「・・・・・」
「答えて!!」
「・・・ 父さんは僕を使って、この初号機でサード・インパクトを起こさせようとしたんだ!!」
「え・・・?」
シンジの思いもよらなかった言葉にアスカは戸惑いを覚える。
・・・ 碇司令も、ゼーレと同じことを ・・・
「僕にたくさんの人を殺させようとしたんだ!!
だから、だから僕は自分の意志で父さんを・・・・・」
「自分の・・・意志?」
アスカはシンジの『自分の意志』という言葉に気づく。
「そうだよ。僕は自分の意志でやってるんだ!
さあもう邪魔をしないで!!」
「マインドコントロールじゃないの?」
その会話を聞いていたミサトもアスカと同じことに気づいていた。
「碇司令の真意は、サード・インパクトを起こすこと、か・・・
でもそれは副司令が私たちに話してくれた・・・
・・・まだ何かあるわね・・・・」
リツコも同様であった。
「アスカ! いったん退きなさい!」
シンジがマインドコントロールされているわけでないという事実がミサトにその言葉を出させる。
が・・・
「イヤよ。退くのはこのバカを元に戻してからよ!!」
「アスカ・・・・」
「ミサト、お願い・・・・」
「・・・分かったわ。あなたにすべて任せるわ。頼んだわよ。」
「ありがと、ミサト。」
・・・・ アスカ、行くわよ ・・・・
<あとがき>
まいどどうも、AGOでございます。
最近、更新ペースが遅くなってゴメンナサイ。
自分のとこのHPの小説も書かないといけないんで・・・
うーん、3本同時進行はキツイかも・・・。あ、5000Hit記念も書かないとなぁ。・・・・・・・・・
・・・では、第五話にて。
AGOさんの『別離』第4話、公開です。
アスカに触れた母の心。
アスカに届いた母の声。
確かな目的を持った彼女の活躍に期待ですね。
シンジの目を覚まさせることが出来るのでしょうか?
・・・マインドコントロールではありませんから「覚まさせる」と言うのとは少し違いますね(^^;
明るい日々を取り戻して欲しいです。
さあ、訪問者の皆さん。
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