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EVANGELION Another Story "Separation"
EPISODE 03 Cruelty

別離

第三話 残酷が二人を引き裂くとき


 

 

初号機を奪われたネルフでは、今後の対応が検討されていた。

 

「零号機が大破した上に、初号機までを奪われては ・・・・・」

「弐号機だけで果たして大丈夫なのでしょうか?」

 などと、これから先を不安視する発言が飛び交う。

 

「碇司令、そろそろ本当のことを話してくださいませんか?」

 リツコがゲンドウに問う。

「本当のこと?」

 その言葉にミサトが疑問げに言葉を漏らす。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「碇司令!」

 

 リツコのさらなる要求にもゲンドウは口を開かない。

 そして、長い沈黙が続く。

 

「君たちに話す必要はない。」

 そう言い残してゲンドウはその場から立ち去ってしまった。

 

「副司令は何かご存じ無いのですか?」

 リツコが今度はコウゾウへ問いかける。

「碇がああ言うのでは、私も話すわけにはいかん。」

「・・・・・・・・・・」

「だがこれだけは言っておこう。

 エヴァ初号機は、唯一サード・インパクトを起こし得る存在であるということだ。

 だから奴らは、ゼーレは初号機とそのパイロットを手に入れようとしていた。

 そして、それは現実となってしまった。」

「初号機がサード・インパクトを?」

「そうだ。こうなってしまった以上、我々はゼーレがサード・インパクトを起こすのを

 阻止しなければならん。

 ただちに、初号機の奪回に全力を挙げるんだ。」

 そう言うと、コウゾウもその場を去った。

 

「ゼーレはサード・インパクトを起こそうとしている・・・・・」

「じゃあ、シンジはそれの片棒を担がされているってワケ?」

「恐らく、マインドコントロールか何かでね。」

 アスカとミサトは最悪の事態を想像して、表情が沈み込む。

 

 

 

 

 

ゴォー ゴォー

暗雲の中を飛行する三つの輸送機。

そしてそれには、紫の巨人と、白い巨人が積載されている。

『碇シンジ君、目標は分かっているな。』

 無線から男の声が聞こえてくる。

 そしてその声の主は、キールである。

「はい・・・。」

『それから、伍号機と六号機をバックアップに回す。

 確実に目標を破壊しろ。』

「了解。」

 

「投下地点へまもなく到着。」

 輸送機のオペレーターの声が聞こえてくる。

「エヴァンゲリオン、投下。」

 

暗雲の中に、三体のエヴァが投下される。

初号機の瞳に怪しく光が灯っている。

 

シンジはその中で呪文ように繰り返す。

「父さんを殺してやる。殺してやる。」

と。

 

 

 

 

 

「上空より飛行物体接近中!!」

 ネルフ本部に再び警報が鳴り響く。

「監視衛星からの映像、出ます。」

 

「「「!!!」」」

 

信じがたい光景が、モニターを見るものを驚愕させる。

 

「初号機・・・・・、そんな・・・・」

 

初号機は、伍号機と六号機を従えて降下してくる。

 

「初号機だけじゃないの・・・?」

 ・・・ 既に完成させていたなんて ・・・

 ミサトがチッと舌打ちする。

「アスカ! 急いで!!」

 弐号機の出撃を促すミサト。

 

「わかってるわよ。」

 ・・・ バカシンジ ・・・

 

射出される弐号機。

アスカには、地上にでるまでの時間がいつもより長く感じられた。

 

 受け入れたくない事実 − 今シンジが自分の味方ではないということ

 

 だが躊躇している余裕は無かった。

 殺らなければ、自分が殺られる。

 

 彼女がいくら強いと言っても、エヴァ3機を同時に相手にしたことはない。

 アスカが不利なのは誰が見ても明らかだった。

 

 ・・・ アスカ、行くわよ ・・・

 

 

「初号機が地表面へ着陸しました。」

「そう。で、アスカは?」

「まもなくです。」

 ・・・ アスカ、死なないでね ・・・

 

 

向き合う紫の巨人と赤の巨人。

 

 弐号機のプラグ内に通信ウィンドウが開く。

 初号機からだった。

 

「アスカ、僕のじゃまをしないでよ。」

 シンジはいつもの彼からは考えられない、凄まじい形相をしていた。

 殺意にかられているというのがすぐに分かる。

 

「シンジ!! アンタ、何をやっているか分かってるの?」

 

「わかってるよ。僕はネルフを、そして父さんを殺したいだけだ。」

 

「碇司令を? どうして?」

 

「アスカに話す必要はないよ。」

 

「シンジ・・・・・」

 

 重苦しい会話が続く。が、それは突然とぎれた。

 

「キャー」

 アスカが悲鳴を上げる。

 伍号機と六号機が襲いかかったのだ。

 

その様子は、司令部にも届いている。

「アスカ!!」

 ミサトが叫ぶ。

 が、その声が届くことはない。

 

 弐号機は、既に2体のエヴァに羽交い締めにされ、身動きを取ることができない。

 

「ちくしょう・・・・、ちくしょう・・・・」

 

「アスカ、これで分かったかい? もう、僕のじゃまをしないでよ。」

 再びシンジが回線を開く。

 

「ぐ・・・、だ、誰が分かるっていうのよ!!」

 苦しそうなアスカの声、いまだ羽交い締めにされたままだ。

 

「・・・・じゃあ、仕方ないね。」

 そうなんら感情のない言葉を言うと、初号機は弐号機のほうへ近づいていった。

 

 アスカは恐怖を覚えた。

 身動きがとれない上、今初号機が攻撃を仕掛けてこようとしている。

 そして、初号機には恐らく殺戮になんらためらいを持たないであろう、シンジが

 乗っているのである。

 

 初号機の瞳にさらに光が灯る。

 『悪魔』、

 そんな言葉を連想させる。

 

 そして初号機は、弐号機にその拳を振り上げる。

 

 ガァン!!

 弐号機の装甲に亀裂が入り始める。

 ガァン!!

 初号機は攻撃をゆるめない。

 

 プラグ内にもその衝撃が伝わってくる。

 そして、アスカに激痛が走る。

 もはやそれは言葉となって現れない。

 彼女の顔が苦痛にゆがんでいく。

 

 何も抵抗できない弐号機。

 

 

 

 そして、初号機の拳が、弐号機の腹部を貫いた・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 


続く
Version 1.0  97/07/29 公開

Homepage : http://www.incl.or.jp/~ago/write/
E-Mail : ago@asuka.nerv.to

 

 

 

 

<あとがき>

 

まいどどうも、AGOでございます。

ついに、初号機と弐号機が、シンジとアスカがお互いを傷つけあってしまいましたが、

いかがでしたでしょうか?(初号機が一方的に、ですが・・・)

激怒なさる方は多いでしょうね・・・・・ トホホ

 

 

 

 

 では、次回予告です。

  凄まじい光を発する弐号機。

  その中でアスカが見たものは・・・

 

 「別離」第四話、乞うご期待 ・・・・

 

 


 AGOさんの『別離』第三話、公開です。
 

 ついに戦うことになってしまった二人、シンジとアスカ。
 悲しい戦いですね。

 いや、
 一方的な攻撃、これは戦いとは言えないでしょう・・・

 どうして、こんな事に (;;)

 シンジの、アスカさえ排除の対象にしてしまう決意。
 ゲンドウは一体何をしようとしてるのでしょうか・・
 

 さあ、訪問者の皆さん。
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