ミサトのマンション、
アスカの部屋
アスカがベッドに顔をうずめて泣いている。
「シンジ、どこへ行ったの・・・・・」
「お願い、アタシをひとりにしないで・・・・」
シンジの名を呼びながら嗚咽するアスカ。
「うっ、うっ、シンジぃ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
だが、無情にもその想いが届くことはない・・・・
シンジはネルフと決別し、ゼーレと手を結んでいたのだった。
父、ゲンドウを倒すために・・・・
そして、それを知らないミサト達は、ジンジを必死になって探す。
・・・ シンジ君がいなければ初号機は動かせない ・・・
・・・ もし使徒が攻めてきたら ・・・
ミサトの脳裏にそんなことが浮かんでくる。
「シンジ君、無事でいて・・・」
・・・ アスカも泣いてるのね ・・・
ミサトはアスカの部屋のドアの前に立った。
「アスカ、入るわよ・・・」
沈黙。
中から返事は返ってこない。
「アスカ・・・」
ミサトがそっとドアを開け、中に入る。
そこには、ずっと泣き続けているアスカの姿があった・・・・
「アスカ、大丈夫よ。きっとシンちゃん見つかるから。心配しないで・・・、ね。」
ミサトがいることに気づいたのか、アスカが顔を上げる。
「うっ、うっ、ミサトぉ・・・・」
ミサトにすがるようにして、声を上げるアスカ。
「アスカ・・・・」
ミサトは優しい笑みを浮かべながら、アスカの髪をなでる。
「アスカ、泣きたいのは痛いほど分かるわ。
でもね、あなたがそんなんじゃ、シンちゃん見つからないわよ。
がんばって探さなきゃ。」
「・・・・・・」
「ね、アスカ。」
「・・・・・そうね。そうよね。
あのバカシンジに、アタシが泣き顔なんか見せるわけないじゃない。」
「さあ、アスカ。行きましょう。」
「うん。」
ネルフへと向かう二人。
ミサトの車の中で。
「で、ミサト。何か手がかりはつかめたの?」
「それがね、さっぱり。全然分からないのよ。」
「でも、シンジをさらったのがゼーレっていうのは、分かってるんでしょ。」
「そうだけど、それも推測の域を出ない情報だから。」
・・・ ゼーレ、か。加持君の言ったとおりね ・・・
ネルフ本部
「初号機パイロットはまだ見つからないのか?」
「はい、かなり広範囲で探しているのですが、全く手がかりすらつかめていない状態です。」
冬月の言葉に、マコトが答える。
「そうか。で、ゼーレの動きは?」
「今のところ、表だった動きは見られません。」
「分かった。」
そのときだった。
ビー ビー
警告音がけたたましく鳴り響く。
「どうした?」
冬月がマヤに問う。
「本部施設に何かが侵入してきます。最外層ブロック破られます!」
「? 使徒の攻撃ではないのか?」
「違います。パターンは青ではありません。」
・・・ しまった、ゼーレか ・・・
冬月の表情がキッと強ばる。
「総員、第一種戦闘配置。同時に対人戦闘用意。」
「対人戦闘?」
冬月の指令に皆が疑問を浮かべる。
・・・ 敵は、戦略部隊。つまり人間ってことか ・・・
シゲルは、そう悟ると、銃の用意にかかる。
ドォン
爆発の衝撃が伝わってくる。
「外層ブロックに、こちら側の人間は何人ほどいる?」
「現在、約30名を確認。」
冬月の問いにシゲルがハッと顔色を変える。
「まさか、見殺しにするつもりですか?」
「緊急事態だ。やむを得ん。至急外層ブロックを閉鎖。
総員Fブロックまで後退せよ。」
「対人戦闘では、分が悪いな。碇。」
「ああ。
奴らも本気でここを潰しに来たな。」
「現在の状況は?」
ミサトがリフトから駆けてくる。
「こちらが押されています。
・・・アスカはどうしたんですか?」
「アスカには弐号機で出るように指示してあるわ。
大丈夫。エヴァの中が一番安全なのよ。」
「・・・そうですね。」
「敵部隊、Eブロックまで侵入してきています。」
「く、早い。」
「! 外部監視用の施設が次々と破壊されていきます。」
「兵装兵器でくい止められないのか?」
「だめです。間に合いません。
・・・ 全てやられました。」
「ちっ、やつらここを孤立させるつもりだな。」
「まずいな、ここで航空兵器なんかにこられたら、お手上げだな。」
「碇司令、爆撃に備えてショックアブソーバを展開します。よろしいですね。」
「ああ、構わん。やりたまえ。」
「アブソーバを展開、全開よ!」
ミサトが声を張り上げる。
「了解。アブソーバを展開中。
現在、30パーセントまで完了。完全展開まで、あと60秒。」
「できるだけ急いで。」
「大変です。通信回線も遮断されていきます。」
「リツコ! なんとかならないの!?」
「MAGIにコネクション維持プログラムを最優先で走らせて。早く!」
「はい!」
「ミサト、出れるわよ!」
スピーカからアスカの声が聞こえてくる。
「アスカ、あなたは直上からの爆撃を防いでちょうだい。できるわね?」
「あったりまえじゃない。アタシを誰だと思ってるの?」
・・・ アスカ、行くわよ ・・・
「弐号機、地表面へ射出完了。」
「これで爆撃はなんとかなるわね。
本部への侵入状況はどう?」
「かなり押されています。Fブロック突破は時間の問題です。」
・・・ 相手が人間ではお手上げか ・・・
そう悟ったミサトは次の指示を出す。
「非戦闘員はドグマまで後退。戦闘員はHブロックへ。」
「ケイジより連絡。別の部隊が侵入中です!!」
・・・ 奴らのねらいは初号機か ・・・
・・・ ということは、シンジ君はやはりゼーレに ・・・
「急いでケイジにベークライト注入。作業員は緊急待避!」
「了解。ベークライトを注入します。」
「碇、やはり奴らは初号機をねらってきたな。」
「ああ、だがあれは渡せんよ。」
「しかしどうする。君の息子がゼーレの手に落ちたことは確実だぞ。」
「・・・これも結果だ。やむを得まい。」
「アスカ、そっちはどう?」
「今のところ、爆撃してくる様子はないわね。」
「そう、わかったわ。じゃあ、そのまま警戒してて頂戴。」
「了解。」
「! ケイジに注入したベークライトが融解・消滅していきます!!」
「なんですって。」
「至急、戦闘員を動員しろ!」
ゲンドウが指示を出す。
「近辺にいる戦闘員は至急ケイジへ突入。」
「間に合うか・・・・」
「お願い。間に合って・・・・」
「ケイジより連絡。
しょ、初号機の姿が見つからないそうです。」
「そ、そんな・・・・」
「遅かったか・・・・」
「初号機は我らの手に落ちた。
いよいよ君の出番だな・・・・」
「・・・・・・ はい。」
<あとがき>
・・・AGOでございます。
・・・・「別離」第二話、いかがでいたでしょうか?
・・・・にせ「ReBirth」ってカンジになってしまいました。
・・・・はっきり言って、自分で書いててもつらいです。
はぁ。ホントにアレといい、全く、シナリオを変更したいくらいですな。
・・・・・では、次回予告です。
向かい合う初号機と弐号機。
残酷な現実が二人を引き裂いていく。
そして、ゼーレの真意を知ったミサトたちは ・・・・
「別離」第三話、乞うご期待 ・・・・
AGOさんの『別離』第二話、公開です。
帰ってこないシンジの無事を祈るアスカ。
来れないのは強制ではなく、シンジ自身の意志による物という真実。
事実を知っている読み手には辛いですね・・・
二人は相対したときにどういう判断を下すのでしょうか。
さあ、訪問者の皆さん。
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