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2週間後、じっくりと情報収集をしてきた3人は実際に放送原稿を書いていた。
どこでどういう風に話して、どういう音楽をかけてと考えている。

アスカとレイはテーマパーク巡りをしていたときは、
情報収集というより、仲のいい女の子を遊びに行った状態だったので
全くアテにならず、ほとんどの基本構成はシンジが考えることになった。


2週間で5カ所も回り、シンジはクタクタになっていた。
女性陣2人はそれでも飽き足らない様子で、まだ行く予定を立てていた。
それを強引に止めたのがシンジだった。

シンジは「アンタが演出するんでしょ、行かなくてどーするのよ!」と
2人から言い寄られ、連行される状態になっていた。

話すのは2人なんだから、自分たちが足で情報を稼いでと思っていたのだが
番組を仕切るのは自分だから、自分の目で見ておくことも必要なんだと
ヒデキに言われていたのを思い出して、しょうがなくつき合っていた。


放課後、サークルの活動場所でもある教室で
シンジはS-DATを聞きながら放送原稿とQシートを書いていた。

「オレはいつから放送作家になったんだ?」

と思いながら、テーマパークの差別化はどこで図ってきているのかとか、
アトラクションの面白さとか、その辺りの内容の骨組みを書いていた。
あとはどういう曲をかけるかだな?と曲の選考に入っていた。



発声練習を終えてきた2人はシンジの元にやってきた。

「ねぇ碇君、だいたい出来た?」
「こんな感じかな?」

レイはアスカとシンジが考えた構成を見ていた。
2人とも任せきりだったので、まぁこんなものかしらねって、
いう感じで放送台本を読んでいた。

「ねぇここまで書いたなら、カップルが多かったテーマパークっていうのも
 入れてもいいんじゃない?一応情報収集していたわけだしぃ」
「ホントにアスカは情報収集していたのぉ?」
「何言っているのよ、ちゃんとしていたわよぉ!」
「だって綾波と一緒にはしゃいでいたように見えたんだけど...」
 花火大会に言ったときも、そんな風に見えなかったんだけどなぁ」
「碇君、言っていいことと言っていけないことがあるわよっ」
「綾波までそんなこと言わなくたっていいじゃないか...」

アスカに突っ込んだはずのシンジだったが、レイまでにも切り返され
タジタジになってしまったシンジだった。
まぁ2人がいうならしょうがないなぁという感じで構成の中に組み込んだ。
実際に話をするのはこの2人なのだから。

カップルが多かった場所ってことで花火大会のことも組み込んだ。

あとはどういう曲をかけるかということで悩んでいるというと
話しているときはフュージョン系の曲、出来ればギター系の音楽で統一して
と、までは簡単に決まったが、合間にかける曲が決まらずにいた。

まぁカップルが一番多かったところの後は、
そういう事を歌っている曲をかければいいということになったが、
テーマパークの紹介の後にかける曲が思い浮かばなかったのだ。

「じゃぁデェズニーに関係した曲をかけるとかは?」
「...うーん。しょうがないわねぇ。そうやって逃げるしかないかぁ」
「でもベタな展開になちゃうわよねぇ」

3人は悩みに悩んだ挙げ句の果てに、
ベタベタな展開で乗り切るしかないだろうということで納得した。

DJのスタイルは人によってマチマチなのだが、
きっちり原稿を書くと形にはまってしまって、とっさの時に何も出来ない事が多い。

マサコの指導では「何を話すかだけ、項目だけ挙げておいて、
それを話すようにした方が自然な言葉が出てくるわよ」ということだった。

マサコの指導通り、項目で何を話すかだけを決めて、どのくらい話すかを考えていた。
ざっと話してみて、時間をストップウオッチで測っていた。

シンジがその時間を見てQシートを書いていた。


全体で20分の尺で、オープニングとエンディングで3分。
話す時間がだいたい12分ってところだから、
曲をかける時間は5分ということになる。
構成的には話すところが3パートに分かれているから
曲は2曲選ばなくてはいけなかった。


そのシンジが書いたQシートを見て、ヒデキが

「そうだなぁ、初めての番組だから、時間の感覚がないと思うんだよ。
 だから、曲は長く書かけると思っていたほうがいいな」
「どうしてですか?」
「マサコもそうだったけど、早くなっちゃうんだよ。
 今は練習もしていないから2人とも分かってないけど、
 実際話ししてみると意外と短いことがよくあるんだよ」
「それ予測していたんですか?」
「まあな。高校の頃から放送やっていたから。
 マサコも初めてだったし、ちょっと対策を練っておこうと思ってね」

さらっと言うヒデキがカッコよく見えた。

マサコもアスカとレイの原稿を見ると、こんなに長くていいの?っていうくらい
原稿は考えていたほうはいいわよとアドバイスしていた。
自分の経験談を交えながら、いろいろと話をしていた。


この日から実際にミキサーを設置して練習を開始した。
シンジ達の他にも2年生から2グループ出場するので、時間を決めての練習だった。

2年生のグループはさすが先輩というところを後輩に示し、
自分たちの拙稿さを見せつけられた。

ある意味先輩たちもシンジたちはライバルでもある。
でもやっぱりそこは、同じサークルの仲間として、鋭い指摘をバシバシと入れる。

活舌があんまりよくないとか、腹式になってなく喉から声を出しているとか
原稿が短いと思うから、長くしてみたらと様々なアドバイスを受けていた。
厳しい部分もあったが、マサコは「それも先輩としてよ」と言った。

シンジもディレクターの様子を見て研究していた。
アスカとレイは先輩のDJに素直に思ったことを言っていた。
何も経験のない2人の意見は、先輩達からは「こんな風に見られている」と
色が付いてないだけに、視聴者としての意見とイコールなのだ。

初日は先輩達は敢えてシンジ達に時間を割いてくれた。
初めてのDJにマサコやヒデキ以上に指導してくれたからだった。

「どうもありがとうございました」
「いやいや、碇たちのDJを聞いていると去年を思い出すからな」
「そうなんですか?」
「なんていうのかなぁ。自分たちもヒデキさんに指導受けてきたからなっ」

先輩はそういうと、シンジの頭を叩いた。
自分たちのことを考えてくれている先輩たちにちょっとした嬉しさを感じていた。

そうこうしているうちにサークルをあがった。



月が綺麗に出ている夜道を3人は歩きながら、おもむろにアスカがいった。

「じゃぁ、今日から合宿をするわよぉ」
「「合宿??」」
「そう合宿。参加する以上は予選トップで通過する気持ちで望まないと」
「でもアスカ、先輩達の方が上手いし、他の大学だってうちらより上手いんじゃ...」
「甘いわよ、シンジ。最初から『うちらには無理』って決めて参加したら
 ただ参加するだけじゃない。目標は高い位置に掲げてってヤツよ」
「それもそうね、アスカ。碇君、トップ通過目指しましょうよ」
「レイもそうきたんだから、シンジ、覚悟決めなさいよ!」
「...はい」

この日から2週間、猛練習の日々が始まった。
アスカは完璧を期すために、シンジの家で合宿をすることになった。

レイとアスカは自分の部屋じゃなく、ユイとゲンドウの部屋で寝ることになった。
ユイは「この部屋はいつでも使っていいわよ」とアスカにいっていたのだった。

ユイの頭の中では、シンジとアスカが一緒になるのなら、
この家をあげてもいいと考えていたみたいだった。
自分たちは2人がゆっくりした老後を暮らせるだけの家があればいいと思っていた。


アスカは1度決めると、何があっても曲げることないことは
レイもシンジも分かっていたので、3人はシンジの家に着くなり、
「レイだけは例外よね」といってシンジの助手席に乗ることを許可した。

「いいの、ワタシが乗って?」と意外そうな顔をしていたが
アスカはレイなら助手席に乗ってもジェラシーを感じないかららしい。
そもそもシンジの車なのだから、シンジに決定権があるのだが
アスカが実権を握っているところがこの2人らしい(^^;;


シンジはレイを車に乗せて、レイの家に向かった。
レイは大学進学と同時に1人暮らしをすることにした。

レイの家に着くと、レイは着替えを大きな鞄に詰めていた。
シンジは車のドアにもたれてレイが戻ってくるのを待っていた。

(こういう時に煙草飲むとかっこいいのかもな。
 煙草って美味しいのかな?大学では飲んでいる人多いけど...)

月を見ながらそんなことを考えていた。
そして、戻ってきたレイの鞄をトランクに入れて自宅に戻った。


一方、アスカは3人分の夕食を作ることになった。
さっそく練習に入りたかったので、簡単なラーメンを作ることにした。
レイが肉が駄目なのも分かっていたので、野菜ラーメンになってしまったが。


「ただいまぁ」
「おじゃましますぅ」
「何か美味しい匂いがするね、アスカ、何作っているの?」
「おかえりなさい、タイミングよかったわ。のびちゃうところだったわ。
 お腹ペコペコだから早く食べましょ」

シンジはレイの鞄を持ちながら、キッチンのドアを開けると、
アスカはそういって、2人を早く座らせた。
レイは奥さんが旦那さんの帰りを待っているように見えて思わず笑ってしまった。

アスカは自分が作った料理を笑われたのかと思って怒ったが
そうじゃなくて、自分が思ったことをアスカにいうと
いつもの否定をするアスカじゃなく、声小さく「...そう見える」と。

レイもシンジもいつもとは違うアスカに違和感を感じていたが、
シンジはしおらしくなっているアスカが可愛いなぁと思い、
レイは「この2人には見せつけられるわよねぇ。まったく」と
考えながら、アスカが作ったラーメンを食べていた。


食事を済ますと、リビングでさっそくDJは打ち合わせに入った。
話す内容を煮詰めていき、ここではこういうなど約束事を決めていた。
シンジは紅茶を入れて、2人の会話を聞きながら、構成をまとめていた。

3日目からは、読み合わせを始めた。
実際に機材を家に持ち込んでということは不可能だったので、
シンジはタイミングとトークの時間だけを測定していた。



そして予選当日、10大学3グループずつエントリーされ、コンテストが審査された。
審査委員はFM-3rdのディレクター2人、パーソナリティ2人、
各大学から1名の審査委員を出していた。
各大学からの審査員は自分の大学の審査はすることは出来なかった。

第三東京大学からは2年生が2チーム、1年からはシンジ達だった。
この予選の上位10校が、決勝進出となる。
しかし、同じ大学で3グループが10位以内に入っていた場合、
順位は変わらないが、その中での最下位は決勝には進出できないシステムだった。
同じ大学でも2グループしか出場できないということだった。

各大学とも決勝で優勝、準優勝を狙えるグループを出していた。
3グループ狙えるなら、3位独占出来るくらいのレベルだった。


シンジたちは気持ちは優勝を目指していたが、無理だと思っていたので、
自分たちの出来る範囲でベストを尽くすことだけに重点を置いていた。

3人は絆の証としてこの日のために買ってきた白、赤、青のバンダナを
レイははちまきを締めるように前で結び、アスカはポニーテールを結ぶのに、
シンジは右腕の手首に巻いた。


15番目にシンジたちの順番が回ってきた。
上手センター寄りにマイクが2本セッティングされ、下手にミキサなどがあった。
セットポジションにそれぞれが着くと、シンジはアスカ、レイを見ると

「アスカ、綾波、いくよ」

心で念じながら、アイコンタクトを取った。


審査員の「始めて下さい」との言葉がかかると、
シンジはミキサのフェーダを上げ、DVDのplayボタンとストップウオッチを押して
オープニングをカットインさせた。


ここからはシンジもアスカもレイも何をしたのか、何を話したのか覚えていなかった。
目の前にあるQシートと原稿ににらめっこしながら、無の境地でこなしていたからだ。

最後のトークが終わって、決めコメントが出たところで、
シンジはマイクのフェーダを下げ、エンディングのボリュームを上げて
ストップウオッチを見ながら、カウントダウンをしながらフェーダを下げた。


番組が終わると、3人は審査員に挨拶をしてステージを降りた。
あとは審査結果を待つだけだった。


3人は大会会場のロビーで終わった後の安堵感に襲われていた。
シンジはおもむろに自動販売機で缶コーヒーを買ってくると
DJで疲れている2人に渡した。

「おつかれ。アスカ、綾波」
「ありがと、シンジ」
「どうだったかな、私たちのDJ」

レイはそうシンジに聞くと、シンジは笑顔で
「大丈夫だよ、やることはやったし」と充実感あふれる言葉で返した。
目標は高かったけれで、結果なんてどうでもいい、というのが3人の考えだった。
渡された缶コーヒーを飲み干すと、会場の中に入って他のDJを聞いていた。



「では審査結果を発表します」
審査委員長がコンテストの順位を発表した。

シンジたちは10位入賞すら出来なかった。当然の結果といえば当然の結果だ。
ただ本人達は参加することに意義があったと思い、
すでに照準を来年のコンテストに気持ちは向いていた。

2年生の2グループは無事に決勝にコマを進めていた。


本戦にはいけなかったけど、自分たちとしては満足のいったコンテスト。
また他の人のDJを見ておくべきだとういうこともあってか
本戦を見に行って自分たちとの強大なレベルの差を再確認してしまった3人。

しかし、落ち込むどころか来年こそは予選トップで通過して
本戦は優勝すると誓うアスカとレイだった。
妙に強気になっている2人を見てありゃりゃりゃとなっているシンジだった。

「はぁ...」
「どうしたの、ため息なんかついちゃってさぁ」
「いやレベルの差を感じちゃってさぁ」
「何言っているのよ、来年こそは予選トップで通過、本選もいただくわよ」
「碇君がしっかりしてくれないと、私たちだけの技術が何もならないんだからねっ」
「分かったよ。でも来年予選トップで通過なんか出来るの?」
「出来るのじゃなくてするのよ」
「今年はあくまでも慣れるが目的だったからね、アスカ」
「はぁ、じゃぁボクもレベルアップしなくてはいけないね」
「そういうことだから、3人でがんばろうね、アスカ、碇君」

そんなことで落ち着いた3人だった。


ロビーに出ると去年の優勝者のマサコとヒデキは出迎えていた。
労いの言葉をかけて、3人の健闘を称えた。
本人達は初めてのDJにしては納得いく様子だった。


「マサコ、さっきの1年のDJってこの子達?」
「そうです。ん?....。お、お久しぶりです、マヤさん」

マサコとヒデキの後ろには、マヤ、マコト、シゲルの3人が来ていた。
ちょっと驚きが隠せなかったマサコだった。

「どうしたんですか、先輩たちは?」
「いやヒデキに『ちょっと先輩たちに似ている後輩がいて』って言われてさぁ」
「で、来たわけさ。コイツに言われたら」
「来ないと、まずいでしょ?」

そういうと、ヒデキはにっこり微笑んで親指を立ててポーズを取った。

「そうです。こいつらなんですけど、どうでした?」
「初めてにしては上出来だったよ。
 コンテスト自体は上手いやつが多かったから順位は低かったけど、
 脈はあるよね。バランスっていうのが取れているし」
「マサコさん、どういう人なんですか?」
「うちのサークルの先輩で、マヤさん、マコトさん、シゲルさん」

マサコに紹介を受けて、新人は先輩に自己紹介をしていた。

話をしているうちに、マヤがディレクターで、マコトとシゲルがDJをするという
珍しいユニットだったらしい。その珍しさも手伝って注目を集めていたとのことだった。
まさに自分たちを見ているみたいで、ちょっと新鮮さを感じていたOBだった。

自分たちとは男女の構成は逆だけど、お互いを信頼しきっているというのが
OBからも見ていていて分かったようだ。
ただ今回は技術が伴っていないから、順位は低かったが、
次回のコンテストでは上位に入ってくると太鼓判をおしてくれた。


「あなたが碇君ね。可愛いのね」
「ありがとうございます...」


「何よシンジ、ちょっと誉められたからってもうデレデレしちゃってさぁ。まったく!」
「アスカ、そんなジェラシー見せなくたっていいじゃない」
「何よレイ、ただ思ったことを言ったまでじゃない.......」
「ボクが一体何をしたっていうんだよー」
「ちょっと可愛いって言われてさっ、デレデレしちゃってさぁー。
 もう節操がないっていうの、もー」


「マヤ、その辺にしておけ。後輩に恨まれちゃうと遊びにこれなくなちゃうから」
「マコトの言うとおりだよ。よく思われないと居場所なくなっちゃうからさっ」
「何よ、2人していうことないじゃない。
 ワタシがちょっかい出したようにいわないでよねっ。」
「でもマコトさん、シゲルさん、碇君って結構モテるんですよ。
 1年の中では、アスカとレイがいるんで、手出せないんですけどね。
 2年や3年の中じゃ、1番人気なんですよ」

マヤはちょっかいを出したっと言うわけじゃなく、
素直に自分が思ったことをいっただけだったのだ。
その素直すぎる性格の為にどれだけの人間が迷惑してきたかはマヤは知らない。
マヤも人気があったので、迷惑をかけられても許してしまう男は多かったのだ。

一緒にDJをやっていたマコトとシゲルはそういう光景を散々見てきた。
2人も最初は「どっちが付き合うか?」で争ったこともあったが、
そんな不毛な争いで、チームワークが崩れるなら、争いはやめようと
休戦協定を結んだ訳ではなかったが、自然に意識しなくなっていった。

そういう自然なつきあいが出来ていたおかげで、
3人で一緒にどっかにいったり、悩みを相談したりするような仲にまでなっていた。

そういう自分たちの関係だったから、
3人の関係は比較すると違うのかもしれないけども、似ている部分を感じていた。


シンジが何か悪いことをしたというわけでもないのに、アスカに怒られていて
レイはすぐに止めに入ることもなく、しばらく様子をみて楽しんでる。
アスカの怒りがエスカレートしてくると、止めるという調子だ。

レイはアスカをコントロールをしているように見える。
アスカはレイに言われると、何故か素直になってしまう。
さっきまでは怒っていたハズなのに??という感じでシンジが見ている。


こんな様子を見せられては、マヤもマコトもシゲルも笑うしかなかった。


「ごめんさい、惣流さん。悪気はなかったの」
「いえ、伊吹さん。このバカシンジがいけないんで気にしないでください」
「バカシンジってなんだよー」
「アンタはワタシがいないと何も出来ないんだから、バカシンジでしょうが!」
「アスカ、その辺にしておかないと、印象悪いわよ。
 せっかく褒めてもらった言葉が台無しになっちゃうし。
 私たち、このままどこかで食事して帰ります。
 おつかれさまでした」
「おつかれさん」

レイはこのままにしておくとまたケンカを
端から見ていればじゃれているにしか見えないのだが、
さっさと切り上げた方が得策と考えて帰ることにしたのだ。

しかし、シンジとアスカはまだやり合っていた。
さっきのマヤの言葉でデレデレしていたことを怒っていたみたいだった。
帰りの食事はシンジのおごりよねと言えば、何でおごらなくてはいけないんだよーと
激しい応酬を見せていた。レイは静観しながら、2人のケンカの舵取りをしていた。

「やれやれ。なぁヒデキ、お前も可愛い後輩に恵まれたな」
「そんなことないっすよー」
「でもよー、碇君もあんな可愛い子に囲まれて幸せだろうな」
「そうでもないみたいですよ。
 アスカがぞっこんだからもう他の人間を寄せ付けないんですよ。
 レイは許しているみたいなので、問題ないみたいですが」
「本当に惣流さんに悪いことしちゃったわね」
「大丈夫ですよ。マヤさんがそんなに心配することじゃないですよ。
 アスカもマヤさんに対して怒っているわけじゃないですから。
 たぶん碇君が自分以外の女の子に...」
「嫉妬ってヤツですよ、マヤさん」
「したら、碇君っていい彼女を持ったよなぁ」

マコトとシゲルはシンジのことを羨ましいと思っていた。
あんな可愛い子に思われていて、しかも2人に。
2人に思われているのに、関係が崩れないというのは
男性として羨ましいと表現する以外に言葉は見当たらない。

もし自分たちのどちらかが、マヤとつき合っていたとしても
そういう関係を築いていたかと言われると疑問符がつく。

マヤもそういうのを分かっていたフシはあった。
どっちからも好かれているというのは分かっていたが
どっちかを取れば、今まで楽しくDJはやっていけないと考えた。

正式に言われたことはなかったが、言われたらそう伝えるつもりでいた。


3人とも口にはしなかったが、こういう気持ちがあったから
「伝説のDJユニット」として後輩達に語り継がれてきていたのだった。


今も相変わらずいい関係が続いている。

3人で食事に行ったり、遊びに行ったりする。
ただマヤは研究室で赤城博士の助手をしているので
マコトとシゲルが研究室に行くということが殆どだか。



「ねぇ今日も泊まっていい?」
「別にいいけど、何で泊まるのよ?」
「反省会をしようと思ってさっ」
「レイ、アンタさぁ、ただ飲みたいだけなんじゃないのぉ〜」
「あら、バレてた。アスカだって飲めないってわけじゃなんだからいいじゃない」

半ばレイの強引ともいえる反省会と言う名の飲み会を
シンジの家でやることを提案したのだった。
アスカはぶつぶつ言っていたが、
自分で自分に『おつかれさん』って言いたいとも思っていた。

結局レイの考え通り、シンジ邸にて打ち上げをやることとなった。
ただ1人、シンジだけは『この2人とお酒を飲んでいいことはない』ことを
よく知っている唯一の証言者なだけに、
この日の夜が早く過ぎ去ってくれることを祈っていた。

レイとアスカは完全に意気投合してしまい、
家の近くの酒屋に入るなり、ビールやらつまみやらを買い込んでいた。
レイとアスカが荷物を持つわけはなく、
大量に抱えたシンジが後からよろよろとついていく状態だった。

家に着くなり、荷物から解放されたシンジではあったが
それ以上にレイとアスカがくつろいでいた。
なんか自分の家にしていないか?この2人は?と疑ってはみたが
今更何を言っても無駄、まして今日ここで酒盛りをするとなればなおさらなので
何も言えないシンジが、キッチンでお茶をすすっていた。

リビングのソファーで寝っころがっていた2人はシンジがお茶を飲んでいるのを見て
「「私たちも紅茶が欲しーいぃぃ!!」」と、絶叫していた。

紅茶を飲んでいたら、空腹に耐えきれずにピーピー鳴いている小鳥のように
くつろいでいた2人は「「お腹も空いた!!」」と更に絶叫していた。
結局、シンジが家の冷蔵庫にあるもので何か適当に作ることとなった。

(結局、ボクが作ることになるのかよ。
 アスカも綾波も疲れているかもしれないけど、ボクだって疲れているんだからなっ。
 まぁこの2人に言っても無駄なだけだから、何も言わないけど。

 アスカは最近料理作らなくなったよなぁ。
 綾波は合宿中は作ってくれたけど、自分でも自炊しているの分かるよなぁ。
 アスカも合宿中は作っていたけど、なんだがボクが作っている事の方が多いかも。
 まぁいいや、料理作るの嫌いってわけじゃないから)

そう思いながら、今日の夜の宴会の簡単なつまみを作っておいた。



この後、修羅場と言っても間違いないような光景があった。
アスカとレイがシンジに絡みまくっていたらかだ。

本戦に進めなかったのはバカシンジのせいだからねってアスカが言えば
レイが、何言っているのよ、碇君はよくやったと思うわ。アスカがとちったからでしょ
と、こんな調子で、シンジを取り合いしている女の戦いにしか見えなかったのだ。

アスカもレイもだいぶお酒が回ってきているみたいで
飲むペースのだんだんと増えてきている。

シンジはといえば、飲むには飲んでいるのだが、
2人の事が気になってあまり酔えるという状態ではなかった。

そんなシラフな状態のシンジに2人は絡み、口を開けて共同作業で飲ませていた。
自分たちが満足すると酔いが回ってきた様子でソファで寝てしまった。
仲の良さを表すかのように、ぴったりくっついて寝ていた。

そんな2人にタオルケットをかけてあげると、
スースーと寝息を立てて寝ている寝顔を見ながら、

(片づけは明日やろう。今日はいろいろあったし。
 今日の締めくくりがこうなのは、アスカと綾波だからしょうがないか)

こんなことを考えながら自分もベッドで寝た。

NEXT
ver.-1.00 1997-08/01 公開
ご意見・感想・誤字情報などは lager@melody.netまで。

LAGERですぅ。

実際にDJというか放送っていうものはこんな感じです。
テレビとかラジオってはっきりした分業になっているのですが、
大学のサークルってこんなモンです。

でも話す方が原稿を書いたりQシートを書いたりして
演出プランを考えるのですが、まぁこの2人はシンジに任せているということで。

結構番組仕切りながらの時間の計算ってめんどくさいんですけどね(^^;;


伝説のDJの先輩も登場しましたし、主要キャラは出たんじゃないかな?
カオル君はどこで出そう?何も考えてないや。
マナはどうにか出せるけど、サターンのゲームやってないんだなぁ。

買わないとやっぱりまずかったりして(^^;;


 LAGERさんの『UN HOMME ET UNE FEMME』第11話公開です。
 

 シンジ゛・アスカ・レイの初めての挑戦。

 3人で力を合わせて、
 一つの目標に向かって。

 順位という結果は出ませんでしたが、
 また一つ3人の距離が近づきましたね。
 

 男一人に女二人。
 女は二人とも男が好き・・・

 これで良い関係が保たれている。
 素晴らしいですね・・・・
 

 さあ、訪問者の皆さん。
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