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第三新東京市と第三新東京国際空港とは離れている。
普通に走って車で2時間かかる。
その他にはリニア鉄道が走っているのだが、
やっぱり車の方が便利な場所である。

そこをシンジは飛ばしに飛ばし、1時間で空港まで着いた。
すでにアスカが乗っていた飛行機は到着しているはずだった。

「やばいよ、30分の遅刻だよー。
 どうやって言い訳しようか。  『寝坊した』なんていえないよなぁ。
 『時計が狂っていて』なんて言えないし。
 そうだ、車が混んでいたってことにしておこう」

などと言い訳を考えながら、空港の中に入っていた。


その頃アスカといえば入国審査も済ませていた。

到着した時に、シンジが迎えに来ていないのを確認すると
やっぱりといった顔をして

「シンジのヤツ、やっぱり遅刻したか。
 どうせ寝坊したんだろうけど。
 シンジらしいといえばシンジらしいんだけど」

とかブツブツ言いながらコンコースの喫茶店に入ってコーヒーを飲んでいた。


「どこにいっちゃんだろう。
 怒っているだろうな、アスカ。
 『あんたねぇ、レディを待たせるなんて100年早いのよ』
 なんて言うんだろうなぁ。
 でも、遅刻したのはボクがいけないんだから、しょうがないか」

と、いいながらシンジは冷や汗を感じつつ、アスカを探し回っていた。

アナウンスで呼び出してもらおうかとも考えたが
そんな恥ずかしいことをすれば、
「アンタねぇ、そんな恥ずかしいことしなくたっていいじゃない!」
と、烈火のごとく怒る様子が目に浮かんだ。

それでいなくたって、怒っていると思うと
必死にならざる得ないシンジだった。


アスカが喫茶店に入ってコーヒーを飲んでいたが、
30分経ってもシンジが現れないことに苛立ちを覚えていた。

「まったく、このワタシを待たせるなんて100年早いのよ」

などとグチりながら、喫茶店を後にしてコンコースに出た。
キョロキョロ見回していると、ちょうどそのとき、

『ドン』

一瞬の静寂のあと

「あ、すいません。ケガはないですか」
「アンタいったいどこ見てるのよ。ケガしたらどうするのよ!」
「「あっー」」

なんというベタな遭遇の仕方だろう(笑)。

「アンタ、いったい何分待たせるつもりなの!」
「ごめん」
「どうせシンジの事だから寝坊したんでしょ」
「そ、そ、そんなことないよ」
「ウソ、顔に『寝坊しました』って書いてあるわよ」
「うっ...」
「このアスカ様がシンジのことが分からないわけないじゃない!」
「う、そうかもしれない...」
「ほら、ぼけぼけっとしてないで、荷物持ちなさい!
 遅刻したんだから」
「はい...」

と、完全にアスカに言いくるめられるシンジだった。
この辺は中学の頃と変わっていない。
あのとき考えた言い訳は2度と使われることはなかった。



でもアスカはシンジが迎えに来てくれるということに嬉しさを感じていた。
ユイおばさんが気を回してくれたことに感謝していた。

車を買ったことはシンジから聞いていた。

助手席には誰も乗せていないことはヒカリから聞いていたので知っていた。

車を買ったその日、ヒカリの話によれば、
鈴原や相田、レイと一緒にシンジの家に行ったそうだ。
スポーツタイプの4人ぐらいが乗れる車だろうと思っていたら
真っ赤なオープンカーでそこにいたみんながびっくりしたらしい。
しかも2シーターの車だったので、最初に誰が乗るかで揉めたそうだ。

でもシンジは「悪いけど、今は乗せられないんだ」と言って断ったらしい。

ヒカリの話によれば
「アスカを初めて助手席に乗せたいからでしょ」と言っていた。

レイも同じことを言っていた。
「ワタシが甘い声で『乗せて』といっても乗せてくれなかったのよ」と。

これを聞いたアスカは
「何言っているの、そんなわけないじゃん」と言った。
ヒカリにはただアスカに「素直になりなさい」とだけ言った。

そのシンジは本当に私を最初に助手席に乗せたかったのかは分からないけど、
今日、こうやって車で迎えに来てくれたということは、
ヒカリやレイがいうことは当たっていたということだろう。
そのことを思うと、本当はシンジに『ありがとう』っていうと
決めて帰ってきたつもりだった。

日本に帰ってくるときにママに
『今度は素直になってくるのよ。
 シンジ君だっていつまでアスカのことスキだか分からないんだから』
って言われていたのに。やっぱり素直になれない。

でもシンジはどんな顔して車に乗せてくれるのだろうか、
と思うと嬉しくなってくる。顔にも表情が表れる。遅刻してきてもだ。


駐車場に向かうシンジにアスカは小悪魔な笑みをしながらこう言った。

「ねぇシンジ、駅はこっちでしょ」
「いや、こっちでいいんだよ」
「どうして?」
「来れば分かるよ」
「言ってくれなきゃ分からなーい!」

と、アスカはいぢわるをしてみた。


するとシンジは顔を赤くしながら言った。

「車で来たんだよ。アスカを迎えに」
「車?」
「そう、車。アスカを乗せたくて車で来たの。
 初めて助手席に女の子を乗せたかったから」

と、言って、アスカの手を取って車の前まで引っ張っていった。
するとアスカの目の前には真っ赤なオープンカーがあった。


なんか嬉しいんだけど、素直になれないアスカは

「シンジ、事故なんか起こさないでよ」
「大丈夫だよ」

頬が照ってるアスカだった。
アスカは嬉しさのあまり素直になれずに、あんなことを言ってしまったが
本当は嬉しくてしょうがなかったのだ。
「自分のことを特別な存在」として見てくれているシンジに。

そんなことを考えていたので、アスカはぼーとしていた。

「アスカ?アスカってば!」
「何?」
「どうぞ、こちらへ」

ちゃんと助手席のドアを開けてエスコートしているシンジ。
アスカはここは素直になろうと、助手席に乗った。
シンジはトランクにアスカの荷物を入れてエンジンをスタートさせた。

「さぁ、いくよ。アスカ」

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ver.-1.00 1997-06/24公開
ご意見・感想・誤字情報などは lager@melody.netまで。

どうも初めましてLAGERと申します。
自己紹介が何で2話でなんだと申しますと、
私がプラモデルなんぞ作っていたからだったりします。
何のプラモデルから聞くまでもないとは思いますが(^^;;

車がここで登場してきますが、これは実際にある車の名前です。
本当はアルピーヌを使いたいところなのですが
あまりにもベタすぎるので、やめました(笑)

そんな感じですが、よろしくお願いします(^^)

 LAGERさんの『UN HOMME ET UNE FEMME』第2話、公開です。
 

 3年ぶりの再会。
 素直になろうという決意も気恥ずかしさに押し切られる。
 アスカの一言一言に彼女の心が表れていますね。

 シンジも大切に守っていたはじめて助手席をアスカにプレゼントして、
 幸せそう(^^)
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 LAGERさんに感想メールを送ってあげて下さい。
 引っ越してきたばかりの彼を暖かい言葉で歓迎してあげて下さいね。


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