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五話








・・・・・おはよう碇君・・・・・






レイは朝早くに部屋を出ていった、今日は本部に行く日なのだ、レイはまだ眠って

いるシンジを起こさないように、静かに部屋をでた。少女の足取りは少し早足ぎみだ

知らない人が、見れば何とも、思わないだろうが、レイを少しでも知っている人が、見

れば驚く光景だろう。



「委員会には、話は付いたのか、碇」

「・・・・・」

ゲンドウは冬月にいつもの、格好で答える。

「だがどうする気だ、碇」

「・・・・・」

冬月はゲンドウからは何も読み取れない、冬月は辛そうな表情しながら口を開

く、それは重い口調だ。

「二人の事だぞ」冬月は怪訝そうに問う



「ああ、今はこれでいい」



「そうか・・・・話は私が、つけておこう」

「・・・・・」

・・・・・ルールル、プールルル、沈黙の中電話が鳴る、冬月がそれを取る。


「なんだ君か」・・・「ああ、かまわん」・・・・・・「服?」・・・・・


「それは、君にまかせる」・・・・・「ああ、そうだ」・・・・・カチャ



























「・・・・シンジ君裸で外に出たそうだ・・・・・」


「・・・・・」

「いいんだな、碇」

「問題ない」

「・・・・・・」









本部に着きレイはリツコのもとへ行くとミサトが居る、はっきり言って本来なら

ミサトに仕事と呼べる物はない。シンジとアスカのことがなければ・・・・・・

うってかわってリツコは忙しい、年中アスカを見ては、居られる状態じゃない。

「あらレイおはよう、早いわねー」

「おはようございます、葛城三佐」

レイはいつもの、口調であいさつをする

「おはよ、レイ」

「おはようございます、赤木博士」

リツコは奥の部屋から出てきながらあいさつをする。

「レイこの前の続き、するは直ぐ用意して」

「はい」

レイはリツコが出てきた部屋に向かうミサトは、それを見て呟くように言う。

「レイはかわらないわねー」

「なにが、いいたいわけ」リツコは、キーをたたきながらミサトに言う。

「別に嫌味じゃないのよ、ただレイはかわらないなーて思ってさ」

「そう」





「それにしでも、こないわね」

「シンジ君?気が早いわよ、まだ時間も早いのよ」

「そりゃそうだけど、いつもなら来ていい時間よ」

ミサトはモニターを見ながら言う、リツコは相変わらずキーに手を走らせる

「レイ準備いい」

「はい」

リツコは違うモニター越しに、レイを見てそう言う。

「じゃ、はじめるわよ」

レイはただ目を閉じる。リツコの見ているディスプレイの文字が流れ始める。

どの位たっただろう、その文字の流れが止まりリツコはレイに終わりを、告げる

「レイ、上がっていいわ、お疲れさん」

「はい」





「どうミサト」

リツコはミサトに、歩み寄りながら尋ねる

「こないのよー、まったくもー」ミサトは口を、ふくらましながらそう言う。

「そう」

リツコはまるで、聞いていないかのに、ミサトにすげない返事しながらモニター

を覗く、そこには、確かに少女の姿しか写っていない。

「こないかも・・・・・」

「・・・・・」

ミサトのつぶやきにリツコの返事はない。ミサトも返事を求めた訳ではなく

無意識に口から出た言葉、そうあって欲しく無いこと。少しの沈黙、それを破った

のはレイである。

「赤木博士」

「なに」

リツコはいきなり後ろからの声に、驚いたのか声は上ずる。

「私帰ってもいいですか」

「ええ、いいわよ、これで定期健診は終わりだから」

「はい」

「おつかれさーん」

スタスタと出て行くレイに、ミサトは言うと、またモニターを見る。

そのミサトを見てリツコが話す。

「ミサト」

「なあに」

ミサトはリツコを、見ずにモニターに視線を置いて答える。リツコは呆れたよう

に言う。

「そんなに見てたって、ジンジ君こないわよ」

「わかってるわよ!!でもシンジくんの居場所もわかんないし・・・・」

ミサトはリツコに、顔を向けそう言うと、リツコがモニターに駆け寄る

「なに!?」リツコの取った行動がわからず、リツコを見てそう言う。

「来たわ!!」

「え!!」

リツコの口にした言葉に、一瞬何が来たのかわからなかったが、モニターを見て

直ぐにその言葉の意味する事を理解した。モニターに少年の姿が写り

出されて居るのだ。そして入り口から、入って来る少年を目で追う二人の瞳が、

止まる。そう、少年はあの椅子に座り少女を見る、当たり前の事だが、ミサトに取

って当たり前では、すまない事なのだ。

しばらくすると、反応の無かった少女が少年の方を向く、まるでなにも無かっ

たように、そう、当たり前のように・・・・・・

「ちょっと行って来る」

「ミサト!」

ミサトは言うや否や、走って出て行こうとするが、リツコの手によって止められる。

「ちょっとリツコ!」ミサトはリツコを睨みつける。

「何も今直ぐ行かなくても、アスカはシンジ君を待ってたんでしょ」

「え、あ、・・・まあそうね」

ミサトは自分の取った行動がはずかしいのか、声は小さい。

「逃げやしないんだから」

「わーてるわよ」

さっきの反動か、大きな声を、上げて答える。そしてシンジが来たからか、ミサ

トの顔は、明るいものになっていた。





「確かに、こうして見ると、恋人どうして感じよね」

しばらく二人はモニターを見ていると、リツコがぽそっと言う。

「なに、リツコもそう思った、私もそう思ってたのよ」

ミサトは笑顔で言うが、頭に浮かんだ事に表情は一気に曇り呟く

「これで、二人が元気なら言う事ないんだけど・・・・・」

「・・・そう、上手くもいかないわね・・・」

リツコの言葉で、二人は明るさを無くす。






レイの部屋には、少年の姿はなかった。


                         
                ・・・・碇君・・・・










六話へ
ver.-1.00 1997- 5/19公開
ご意見・感想・誤字情報などは nisioka@mx4.meshnet.or.jpまで。

 [にしおか]さんの連載、『涙』第一章 五話、公開です。

 シンジは再びアスカの元に辿り着きましたね・・・・・

 シンジが居る筈の位置を
 ずっと見つめていたアスカの心に変化は現れるのでしょうか?

 そして、今まで彼を包もうとしてレイは
 シンジがアスカの元に向かったことをどう受け止めるのでしょうか?

 未だ一言もないシンジとアスカ。
 彼らのこれからは・・・・・?
 

 訪問者の皆さんの心に伝わったことをぜひ西岡さんにメールして下さい。


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