TOP 】 / 【 めぞん 】 / [にしおか]の部屋 / NEXT

三話










・・・ここは、どこ?・・・









・・・碇君・・・



「はい、口開けて」

何度となく、繰り替えした言葉、シンジただレイをじーと見ている。レイの手には

お粥が入った器が握られている。台所には、苦戦の後が残っていた、勿論レイは、

料理などしたことはなく、台所には、やけに新しい道具と本が置かれていた。

「碇君、おねがい、たべて・・・」

その言葉を口にしている、レイの瞳からは、涙がこぼれ落ちていた。レイはシンジ

の顔を、見ていられずうつむいている。



・・・碇君に・・・なにもしてあげられない・・・


・・・どうすればいいの・・・・・・どこにいるの・・・


「!!!!」

レイの頬に触れる、暖かいものそれは、間違いなくその少年から差し伸べられてい

た。その暖かさは、レイの心を救った。レイは顔を上げシンジに微笑み返す。

そこで見たものは、涙を流す少年の姿、表情は無表情のままだが、赤い瞳に写る、

少年の瞳は、自分が知っている、あの瞳を思い起こさせた。レイは、その瞳に力

をもらったように、レイの体は熱く感じていた。


「・・・ありがとう・・・」


レイはシンジを強く強く抱いた、それは、シンジのこころがどこにもいかな

いように、そしてシンジのこころに、少しでも触れていたい気持ちの表れ。

二人は抱き合いながら、泣いていた。でもその涙は暖かいとても暖かいものだった。

    

 「・・・ありがとう、碇君・・・」







「リツコ!!シンジくんどこにいるの!!」

「なにミサト?」

「とぼけないで!!シンジくん今何処にいるのよ!!」

「しらないわよ」

ミサトは部屋に入るなり、リツコに問い詰めるが、リツコは至って冷静だ。

「もういいわ!!」

「むだよ!」

ミサトはリツコに言っても、無駄だといわんばかりに電話をとるが、リツコの冷た

い声が飛ぶ。

「なぜ!!」

「さっき、連絡したわ」

「じゃあ、なんて言ったのよ!!」

「わからないわ」

「なんですって!!」

「いわないのよ、いくら聞いても、教えられませんの、一点ばり」

「どういうことよ、いわないて!!」

ミサトはリツコに、掴み掛かる。リツコはその手を、振り払い口を開くその表情は

険しい。

「あの状態シンジ君を、見失うとは思えないとすると、私達に言えない事か・・」

「あなたに、いえない・・・」ミサトは知っていた、リツコが知らないと言う、

事の危険性を。

「勘違いしないで、いまの私は上の情報には、ふれられないわ」

「こんな時、加持はいないのよね」

「・・・・・」

二人は黙り込む、しかしミサトは思い出したように、話し始める。

「・・・でもアスカが、シンジくんを呼んでるのよ」

「アスカが話したの!?」

「そうよ、弱々しい声で、彼を呼んだのよ、あのアスカがよ!!」

ミサトの言葉、終わりの方は泣き叫ぶように言う。

「・・・・・」

「私には、なにも出来ないけど、シンジくんを連れてくると、約束したのよ・・・」

二人は無言で、モニターに目をやる。鎮静剤の効き目であろう、そこにはすやすや

と眠る少女の姿が、写り出されている。リツコは一度視線を、外し語る。

「でも今の彼は、人を救える状態じゃないは、あなたも分かっているはずよ」

「わかってるわよ!!・・・でもその彼を、まってるのよ・・・」




「ミサト、一つ気になる事があるのよ」

「なによ、こんな時に」

「シンジ君の事よ」

「シンジくんの?」

「そう、これはあくまで仮説として聞いてちょうだい」

「なによ、早く話してよ」

「シンジ君の行動よ、おかしいと思わない?」

「それはそうよ、あんな事が会ったんですもの」・・・使徒・・・

「そう、そうね、でもこころの扉を、閉めてしまったアスカと違い過ぎると思わな

い?」

「まあ確かに違うわね、でもそれが何だって言うのよ」

「はー」リツコは、大きなため息をつきながら、話しを続ける。

「分かったわ、結果だけ言うわ、シンジ君のあれは、人為的に行われた可能性が、

あるわ、それだと、説明がつくのよ」

「なんですって!!」

「だから言っているじゃない、これは推測だって」


「・・・でもなぜ・・・」ミサトは落ち着いた口調でリツコに問う。

「EVAのパイロットなら、幾らてもあるわ」

「・・・また、EVAなのね・・・」ミサトはモニターを見ながらつずける。

「でもそれならなぜ、まあ、アスカは別として、レイは無事なの」

「・・・あなたも見たでしょあれを、レイには、手は出せないわ」

・・・・まだ秘密が、あるって・・ことか・・・ミサトは顔を、しかめる。

「ま、レイの事は、とりあえず良いは、それより、もしそうだとしたら、シンジく

ん、どおなの直るの」

「わからないわ」

「わ、わからないって、あんたねー!他人事じゃないのよ!!」

なんの躊躇も、感じられない冷めた言葉に、ミサトはリツコを睨む。それでもリツ

コは冷静に話す、しかしその手は強く握られ小刻みに震えていた。

「彼の事を診たわけじゃないのに、いい加減なことは、言えないわ」

「ごめん、つい・・・」

リツコの様子から、ミサトにも読み取れた。

「でも、希望がないわけじゃないわ、その証拠に彼女の所に来るわけだし、それは

完全に彼の意志がなくなっていない、証拠だと思うわ」

「まあそうだけど・・・今日来てないわ・・・」ミサトの声はしだいに小さくなる

「だから、さがすのよ」

「わかっているわ」

「さ、行った行ったアスカがまってんでしょ?悩むのは、あなたに、にあわないわ

よ」リツコは明るくミサトに言う。

「それどーゆう、意味よ!」その言葉とは、裏腹に声は明るい物になっていた。

「はいはい、こんな所であぶら売っててもいいの?」

「あ、そうだわ!リツコ、アスカ方よろしく」

ミサトは、そう言って走り出す、すると入り口で歩みを止め振り返り

「ありがと!」その一言リツコの向け、走り出していった。


            ・・・・罪滅ぼし、いいえ、ただの自己欺瞞ね・・・・









四話へ
ver.-1.00 1997- 5/17公開
ご意見・感想・誤字情報などは nisioka@mx4.meshnet.or.jpまで。

 [にしおか]さんの連載、『涙』第一章 第三話 公開です。

 シンジの精神状態、それに潜む人為。
 大きな謎が見えてきましたね。

 そのシンジだけでなくアスカも回復の兆しも見えない状態が続いています。

 ハードでシリアス。
 彼らにどの様な明日が訪れるのでしょうか?

 訪問者の皆さんも西岡さんに一言メールを送って下さい。


TOP 】 / 【 めぞん 】 / [にしおか]の部屋