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「涙」

第一章

一話








・・・・もうやめ・・て・・・・






あの戦いからもう三日たっている、昼夜問わず第三新東京市の復旧作業が行われ、使

徒の殲滅の為にあるネルフ今後は現状維持、それが国連の出した答えだ。本来ならば

使徒もう来ないとされている今ネルフの存在理由ないのだが、国連がエヴァと言う厄

介な物を、ネルフに管理させている形になっていた。そして非公開組織であることに

いまだ、変わりはなかった。





ネルフの一室では、モニターを覗く二人の女性の姿

「ああしてるのよねー、ずっと」

「シンジ君?」

ミサトの言葉に、リツコが答える赤木リツコは、あの後拘束を解かれ今ではあの姿を

知っているミサトにとって別人の様に、戻っているその理由はミサトは知らない、リ

ツコから語るわけもなくミサトも聞かない。ミサトにとって親友があの姿から、抜け

出せただけで十分なのだろう。

「家にも、帰ってこないし・・・」

「そう、つらいわね・・・」

二人はそう言いながらモニターに目をやる。そこには少年と少女の姿が映り出されて

いた。少年は少女を見ている、そして少女は少年を見ている。端から見ればただのお

見舞いにしか見えないだろう。しかしその少年には、生気は感じられず、瞳は死んで

いる人間と同じだ。それは少女にも同じ事が言える。


「いくら話かけても、駄目だし・・これじゃどっちが病気なのか、わからないわ」

「そうね、かなり衰弱してるわね、それでもこうして来るあたりシンジ君らしいわ

ね」

「そうなのよ、だから私も強引に連れて帰らないのよ、とりあえず昼はここに来るか

ら・・・でもあいつ夜何処にいるのか分らないのよ・・・」

「そろそろ限界か・・・」

「・・・入院させたいのは、やまやまだけど・・・」

「まあ、そうね下手に手も出せないか・・・」

「・・・・・」

「まあ、様子を見るしかないわねとりあえず、毎日ここに来るわけだし」

「そうね・・・」









「レイ、上がっていいわよ」

「はい」

リツコは振り返りそう言う、レイはLCLの入った筒状の物に入っていた。

「そう言えば、何でレイがここにいるの?」

「ああ、定期健診よ」

「そう・・・」

「あら、私が何かやってるとでも思ったわけ?」

「へらへら」ミサトは苦笑いをしている。

「大丈夫よ、ミサトが考えるような、ことはしてないから安心して」リツコはちゃか

す様に言う。そんな事をしているとミサトはレイが後ろに居る事に気づく。

「レイどうしたの?」

ミサトの言葉など聞こえないかの様に、その赤い瞳は一点を見ている。ミサトはその

視線の先を、見てようやくその意味がわかった。

「シンちゃん?」ミサトはわざと大きな声を出すと、レイは明らかに動揺を、見せる

「心配?」ミサトは微笑みかけ、語りかける様に話かける。

「・・・・はい」

「そう、なら力になってあげて」

「・・・・・・」レイは困った表情を見せる、それを見てミサトは、話し出す。

「レイがシンちゃんにしてあげたい事を、してあげればいいのよ」

「・・・・・・・・はい」レイは少し考えた後答える。

「レイ、あなたはもう1人の人間なのだから、自分がしたい様に、すればいいのよ」

リツコの言葉にミサトは一瞬冷やっとしたが、リツコの顔を見てそれは直ぐに消えた

リツコの表情は今までに、見たことのないほど穏やかだった。

「はい」

「じゃあ、今日はもうこれでおしまいよ、また月曜日にきなさい」

「はい」

「おつかれさま」

ミサトとリツコはそう言ってまたモニターに、体を向ける。レイは二三歩出口に進むと

振り返り一人の少年に目を向け、少し俯いてその場を後にした。




「よ、シンジ君達は、どうだい」

「ああ、加持君か」

「酷いな葛城」

あの事件から、数日たった頃に加持は、ミサトの前に顔を見せていた。彼は今ネルフ

に席を置いている、司令の近くで動いているらしい。

ミサトとの八年前の言葉は、「うれしい知らせなら、あなたが生きて居たことで、

今は十分、後はシンジくん達が直ってから聞くは」とミサトの言葉で、止められた。

「それより加持、シンジくんの居場所しらない?」

「居場所?知らないな」

「・・・・そう・・・・」

三人はモニターを、見詰めたまま時は流れる。







少年は独りたたずんでいた、そう最後の使徒渚カヲルと出会った場所、そして自分を

かばっていってしまった所。その少年碇シンジは、夜に成るとそこに姿を

表していた、そして日が昇ると病院に足を運んだ。その機械的な事を繰り返していた。

それは自分の意志でおこなっているようには、とても思えないほど彼の姿は、病的な

のだ。そう、あの惣流・アスカ・ラングレーのように・・・・・






赤い瞳の少女は、自分の中から湧き起つ物に、戸惑いを感じていた。頭の中に浮かぶ

のは、やせ衰えた「碇シンジ」を見た時の感覚だった。



・・・こころがいたい・・・なぜ・・・



「私は三人目なのに・・・・」



・・・しらないはずなのに・・・・


[この感じはなに・・・]



[・・・つらい・・・かなしい・・・いたい・・・」



・・・でもしってる・・・



レイは静かに目を閉じる



入って来るのはあの笑顔、そう涙を流しながらの綺麗な笑顔



・・・・・あなたは、わすれたの?・・・・



[・・・わからない・・・]



・・・本当に?はじめて・・・



「涙」      「・・・ありがとう・・・」






「・・・・・碇君・・・・・」




レイはそのまま、ドアを開け放し外へ出ていった、部屋の中は静まりかえっていた。







・・・・・そう、よかったわね・・・・・










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ver.-1.00 1997- 5/15公開
ご意見・感想・誤字情報などは nisioka@mx4.meshnet.or.jpまで。



 「めぞんEVA」に24人目の仲間がやって参りました!

 [にしおか]さんの第一作は『涙』第一章 第一話 です!!

 あの戦いから3日目・・・
 シンジがカヲル君を殺してから3日目・・・・

 一番辛い時期ですね。

 シンジは罪の意識や喪失感にさいなまれ、
 アスカは壊れてしまっていて・・・
 レイは・・・・・

 3人のチルドレン達もこれからが重たく伝わってきます。
 彼らにどの様な時がやってくるのでしょうか?

 絶望の話になるのか、救いの話になるのか・・・・・
 

 訪問者の皆さん。新住人のにしおかさんにメールで一言声をかけて下さい。



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