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「Grow up」
episode 1
「見知らぬ出会い」
ピピピッピピピッピピピッ・・・
・・・・カチッ
シンジはいつも通りの目覚ましの音で目が覚めた。
いつも通りの朝。
いつもと違う朝。
知らない天井が目に広がる。
ここに引っ越してから二日がたった。
この二日間、引っ越しの後片づけに追われて、ゆっくりすることができなかった。
今日は後片づけからも解放されて、ゆっくりできる。
今日は久しぶりに帰ってきたこの街を見て回ることに決めていた。
また暖かいベッドには未練があるが、ベッドから抜け出してカーテンを開ける。
外は気持ちがいいほど晴れている。
時計はまだ8時半前。
風呂で昨日の汗を流して、目を覚ます。
濡れた髪をドライヤーで乾かして、お気に入りの服を着る。
そして、鏡の中を見る。
・・・誰もボクのことなんか見ていないのに・・・何やってんだろ・・・
鏡の中には自嘲気味に笑うシンジがいた。
もう夏を思わせる日差しが容赦なく照りつける。
日曜の午前中ということもあって、まだ通りには誰もいない。
朝の澄んだ空気がシンジの鼻孔を刺激する。
誰もいない通り
知っていた街
だいぶ変わったんだ
朝の住宅街をぶらぶら歩いていると、まだ朝食を食べていないことに気づいた。
一度意識してしまった空腹感はなかなか忘れることができない。
シンジはあきらめて近くのコンビニへ足を向けた。
コンビニでパンと飲み物を買って、
さすがに歩きながら食べる気にはならないので、小さな公園に向かう。
その公園は、ブランコと砂場があるだけの小さな公園だった。
誰もいない公園は、寂しさを感じるが、
朝の日差しがこの公園に命を与えているかのように、シンジには輝いて見えた。
ベンチに座ると、暖かな風が吹いてくる。
風が、明日からの憂鬱な毎日を忘れさせてくれる。
何がイヤなんだろう
ただ流れるだけの毎日?
違う
それはボクが望んでいた事
何でこんな気持ちになるんだろう?
シンジ自身何がイヤなのか解らないでいた。
ただ感じる漠然とした不安。
不意に大きな影がシンジに襲いかかった。
「!!?」
ソレはシンジの食べかけのパンをひったくるように奪うと、
シンジの目の前でパンを食べ始めた。
犬?
こんなに大きな?
それにしても・・・間抜けな顔・・・
長い白い毛をした犬だった。
異様なほどでかい。
しかし、その間の抜けた顔が見る人間に恐怖感を与えない。
「ごめんなさい。大丈夫だった?」
この犬の飼い主らしい女の子が心配そうに声をかけてきた。
「うん・・・大丈夫だけど・・・」
「そう。よかったぁ。
全くこの子ったら、食べ物の匂いがすると見境なく食べるもんだから・・・
ホント、ごめんね」
そう言いながら彼女は、ケラケラと声を立てながら笑った。
空の色をしたショートカット、
不思議な暖かい感じのする赤い瞳、
印象的な、見る方が元気になるような笑顔。
しかしシンジには、どうでもいいことだった。
「しかも・・・食べた後って寝ちゃうのよね〜
ねぇ・・・隣、空いてる?」
「え? あっ、うん、空いてるよ」
「君、暇なんでしょ?
この子が起きるまでつきあって。いいでしょ?」
「いいけど・・・」
「・・・・って言うのよ。おかしいでしょ?」
彼女はそこまで言うと、本当に楽しそうに笑う。
話し出してから、シンジは彼女の笑い顔を何度見たことだろう。
シンジには理解できなかった。
初めて会ったばかりの自分と、こんなに長く話し、笑う彼女が。
そんな彼女を鬱陶しく感じながらも、話しかけてくれることが嬉しくもあった。
シンジを襲った犬がもぞもぞと大きな欠伸をしながら動き出す。
「やっと起きたみたい。じゃ、そろそろ行くね。じぁね」
「うん」
シンジの返事を笑いながら聞くと、
のろのろと歩き出す犬をつれて入り口の方へと歩いていった。
よく笑う娘だな・・・
でも関係ないか・・・
シンジは彼女に背を向けると、俯きながらもう一つの出口へと向かっていった。
アルファさんの後書き・コメント欄
テストなどで、時間が開いてしまいました。
取りあえず、完結させたいと思ってます。
感想のメールをくれると嬉しいです。
予告
次回、気付かぬ再会
(そのまんま(^^; )
アルファさんの『Grow up』episode 1、公開です。
やってきた新しい街。
新たなる生活をいとなむ街。
朝のあたたかな日差し。
少女の明るい笑顔。
しかし、暗く、晴れないシンジの内。
何だ?と感じるほどの無気力というか、厭世感。
シンジという少年には一体何が・・・・
さあ、訪問者の皆さん。
ぜひ、この世界を紡ぐアルファさんにメールを送ってください。
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