TOP 】 / 【 めぞん 】 / [フラン研]と愉快な仲間達:[モグタン]モグラの進化したフレンドリーウィザード。通常パワー8.5。普段はチーズに目が無いがいざという時は光のパワーと風のパワーで敵を攻撃だ! ただし現在援交デート帰りの酔っ払い運転で起こした事故で交通刑務所に服役中、出所の見込み無し。/ NEXT
バナー(面白くてためになる)

 
マヤは鼻をツンとつく臭いにあどけない顔を綻ばせた。
「ああ! これってもしかして。」

「そう。イブジョーの梅ケーキよ。こっちはマロンフラワースープ。」

マヤはリツコに目をウルウルとさせて近づく。
「ああぅ、やっぱり先輩が一番私の事を大切にしてくれてますっ!」

「へえ、そうなんだ。」隣で梅をつまむカウンセラーがボソッと言う。

「な、あ、ま、カウンセラーも、私にとっては一番です。」

「へえ。」細い目のドクター。

「あ、う。」

ミサトは頭を振って微笑んだ。
「無理しないで良いのよマヤちゃん。気の迷いなんて誰にでもある事なんだから。…にしても、何っちゅうの、最初会った頃に比べるとマヤちゃんも変わったわよね。」

「へえ、そうですかあ?」

頷くドクター。
「この船に初めて赴任した頃はかなり暴走気味の、いかにも過激なイブジョー人だったわね。」

「そうよ。すぐ、うわーんって大泣きしてさ、皆の鼓膜を破っちゃって大変だっていう、」

「微妙に他の人の設定とごっちゃになってるわよ、ミサト。」

「え、そうだっけ? でも何か最初はそんな感じだったじゃない。」
ミサトは微笑んだ。
「ま。それだけマヤマヤも落ち着いた連邦士官として成長したって事でしょ。」

「えへ。えへへへ。」ローは頭に手を当ててニヤニヤ笑った。
 

「ああ少尉、今度の研修の成果の方はどうだったかね。」

マヤはやってきたピカに微笑んだ。
「あ艦長、とても有意義な物でした。無事高等戦略コースの資格も取れましたし。」

「それは良かった。1ヶ月の間も船を離れて、何も得られなかったらそれこそ、骨折り得の丸儲けだからな。」

「…当り屋ですか?」
ローは自分達のいる、飾り付けのされたテン・フォワードを見回してにっこりした。
「でもホント、わざわざこんな帰艦歓迎パーティーまで開いてもらってありがとうございます。」

「いやあ、私は特にやる気はなかったのだがね、ドクターとカウンセラーが3P用のムードを作る為にやれと脅迫を、ああいや違うのだ、何でもない、私は何も言っていないぞ、」
ぴろりろりん。
「ブリッジより艦長。」

助かった、という様子で通信機を叩く艦長。
「何だねレイタ。」

「アオバシア船キース・リチャーズから救難信号が入ったわ。ショタキから攻撃を受けているとの事よ。」
艦長とマヤは目を合わせた。
 


―宇宙。そこは最後のボランティア(意味不明)。これは、宇宙戦艦エバンゲリオン号が、新世代のクルーの下に、24世紀において概ね任務を続行し、未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求めるふりをしつつ、人類未踏の宇宙に、アバウトに航海したりしなかったりする小話である―

Evan Trek -The Legend of Galactic Fools
Evan Trek The Next Generation
新エヴァントレック
 
Preemptive Stripe
第二十九話「惑星連邦ゲリ部隊」 

ナースは顔をひくつかせた。
「な、何なの、これ…」

エバンゲリオンの医療室は、負傷したアオバシア人兵士達であふれ返っていた。
「むう…ふんっ! はい次。」
ドクターは一人一人に両手を当て、何やら気を放っている。

「…艦長の船が近くにいて助かったっす。やっぱりピカード兄ぃは、俺の心の配偶者(とも)っすよ。」

ぞくう
「何か今漢字間違えてなかったか?」

「漢字?」
ドクターのお陰で怪我の跡も無くなったガル・シゲックは、ピカードに聞き直した。

「いや良い…まあ、とにかくシゲック、我々が着くと途端に奴等は逃げていったよ。被害が少なくて何よりだったな。」

「少ない?」シゲックは眉を上げた。
「とんでもない。兄貴は知らないかもしれませんが、最近ショタキどもの攻撃はますます酷くなるばかりっすよ。とてもじゃないが手におえないっす。」
頭を振るシゲック。
「俺はこんな話は信じたくないっすけど、今アオバシアでは、連邦がショタキを使って我々を壊滅させようとしているのではないかと専らの噂っすよ。」

「わい、えむ、えー、えぬ、わい、えむ、えー、えぬ、ワイマーン!!」

「って兄貴全然話聞いてないしっ!!」

む。
「失礼だな君は。私はいつでも人の話はちゃんと最後まで聞いているぞ。」

「あ、す、すいません兄貴。」

「まあ飽きた時は別だがな。」

「おいおい。」

艦長は息をついた。
「それはとんでもない話だぞシゲック。我々惑星連邦は、アオバシアと友好関係にあるのだ。これまでずっと和平交渉を進め、ようやくここにおいて非武装地帯の設立までこぎつけた我々が、何故それを壊そうとするゲリラ集団に力を貸さねばならんのだ?」

「しかしショタキのメンバーに元連邦の士官が多い事は否定されないでしょう?」
シゲックとピカードの視線がぶつかる。

「まあ、俺はもちろん、兄貴のいる連邦がそんな馬鹿な事をするはずがないと思っているっすけどね。」

「それは賢明だな。…時にシゲック、ショタキ達がこれだけ活動を活発化させている理由は何なのだろうな? 風の噂で、アオバシアは領土内の他民族から今でも強奪の限りを尽くしているという話を聞いたが、まさかそんな事はあるまい?」

「何を言うっすか。俺達はいつも領域内の諸民族へ愛を持って接しているっすよ。ショタキの奴等こそ、ただの強盗団っすよ。違いますか?」

「どうだろうな。」ピカードは体操を再開した。

シゲックは首を振った。
「いずれにしても、このまま奴等の無法な攻撃が続くようではアオバシアも黙っている訳にはいきません。兄貴、惑星連邦も、ショタキ壊滅には協力してくれるっすね?」

すぽっ、ゴロン。
「…ああ、もちろんだ。」
体操のやり過ぎで手を投げ飛ばしながら、艦長は頷いた。


フユツキは何かのテレビドラマを釘付けになってみている。
「それじゃあ、結婚してくれるのかい?」
「…うん。」

「おおおお。」口を丸く広げるピカ。
ポロロン。
「…」
通信が入って来た事を知らせる電子音に艦長こと脱げ脱げ星人はむすーっ。とした様子になった。

「…こちらピカード。」

「元気そうじゃない、艦長さん。」

らーるるらるらーらーるーらー。
「う、うるさいです。凄くまぶしいんですが…」

「ダンサー達の踊りもますます冴えてるっしょ?」
画面の向こうのレミ・ナチェフ提督はえっへん、とばかりに胸を張る。

「ええ、御用の方は…」

「いや、今度の艦隊対抗サンバ合戦でコウちゃん達と一緒に出場するのを申し込んだ、っていう話は置くとして、」

「ええ!?」

「問題はショタキよ。」

フユツキはレミの言葉に顔を引き締めた。
「それでは既に艦隊本部でも知られているという事ですか。」

ウイ、ドゥイ、ネー、ヤー、ダーーッ!

「その通りよ。」

「(一々踊るんかい…)」

「報告見たわ。ま、シゲックやアオバシア自体がどれだけ被害を被っているかは、どうも疑問が残るわね。とはいえ、最近の国境エリアの彼等ゲリラの活動に目に余るものがあるのも事実だわ。」

「やはりそれだけアオバシア側の圧政がひどいという事ではないでしょうか。」

レミはそれ自体が豆電球できんきらこんこんと光り輝いているウサ耳を揺らしつつ頷いた。
「まあ、確かにね。彼等の置かれた状況は確かに同情に値するわ。とはいえ、彼等のしている事の違法性に変わりは無いわ。多くの元連邦士官を含む武装組織が、時には連邦からも武器を盗み、連邦と既に和平条約を締結しているアオバシアに攻撃を仕掛けているというこの事態を、連邦としては看過する事は出来ないわね。」

「確かに。」

提督は上唇をとがらせ、モニタに迫った。
「で、コウちゃん。ちょっと頼みがあるんだけど。」

「は、はい、何でしょう?」モニタにうつる毛穴に腰の引ける艦長。

「あなたの艦の娘を貸して欲しいのよ。あのー、ポーだっけ、モーだっけ? そうそうロー。」

「人身御供ですか…どうせならもっとピチピチしたのが…」

「別に私に貸す訳じゃなくて。作戦に参加してほしいって言ってるの。」

「サンバにですか?」

「殺すわよ?」レミは微笑んで答えた。


「要はこういう事ですよね。」
眉はマヤをひそめた。じゃなくてマヤは眉をひそめた。
「艦隊本部は、私にショタキに参加して、彼等のスパイになって欲しいと。」

「…その通りだ。」何やら一生懸命端末のパネルを操作中の艦長が答える。
「そして彼等の武器ルートや、攻撃の予定や、指揮系統等、今まで我々が知り得なかった情報を伝えて欲しいのだよ。」

「何故、私に…」

「まずはもちろん、君がイブジョー人だという事だ。そして君は以前大尉にまでなったが、イブジョーのレジスタンスに加担した為に少尉に降格となった過去がある。また今、高等戦略コースを取った所だし、その為この1ヶ月艦隊から離れてもいる。…うーむどうも光の当る方向がおかしいなあ…」

「なるほど。」下唇をかむマヤ。
「ショタキの主張は、私も良く聞きました。…実は、本部での訓練中、私の教官が途中で艦隊を辞めてショタキに入ってしまった事があったので…」

「そうだったか…」

「分かりました、やりましょう。」
ローは艦長に頷いて見せた。
「正直同胞の多い彼等を欺くような事は、というより、あのアオバシア人達の助けになるような事は一切やりたくないんですが…艦長の頼みですし、ちゃんと仕事しないとセンパイにも怒られちゃうから。」

「…そうか。」
フユツキはおもむろにマヤに自分のモニタを回して見せた。
「ところで私の今作っているこのアイコラだが…もう少し顔部分の色合いが赤めの方がぼうううっ」

エロオヤジに回し蹴りを喰らわせマヤは艦長室を後にした。


全部抱ーきーしめてー♪ 君と歩いて行こーうー♪
イブジョー人向けの歌謡曲が流れる薄暗いバーに、民間人の服をまとったローが現れた。どうやらここはどこかの惑星らしい。

マヤはに周囲を見回し、カウンターに座ろうとした。カウンター向こうでは金髪の美男子がマヤに微笑みかけるが、マヤはにこりともしない。

ずん、どさっ、ばしっ。
「そこをどいて。」
入り口から聞こえてきた静かな声(と人をぶん投げる音)にマヤは顔を上げた。

「レ、レイタ、やり過ぎではないのか。」

「…問題無いわ。ただの脱臼よ。」

「いや、だからだな…」
マヤは突然バーの隅の、一人で飲んでいるエイリアンの席の向かいに座り彼にキスをしだした。

入り口から、連邦の制服姿のレイタとゲォーフが現れた。
「ちょっと良いかしら。人を探しているのだけど。」

どうやら制服の人間がここに来る事は珍しいらしく、バーの客達は静まり返り2人を注視している。

「短い黒髪のイブジョー人の女で、ロー・マヤという名前だ。彼女はアオバシア人を1人殺している。」

カウンターの金髪の男が、ゲォーフの言葉に「ああ」と相槌を打った。
「その女なら今さっきこの店に来たな。」

「どこへ行ったか分かる。」聞くレイタ。

男は顎に手をよせた。
「いやあ…急いだ様子で、そっちの裏口から出ていったよ。…どこへ行ったかまでは聞かないでくれよな。」

「分かったわ。協力ありがとう。ゲォーフ、行きましょう。」

「…」ゲォーフは周囲の、どこか敵意のある視線を向けている客達を見回すと、無言でレイタと裏口から出ていった。
 

バーは通常のざわめきを取り戻した。
「ぷっはー。」顔を隠すようにキスを続けていたマヤは半ば呼吸困難になって顔を離した。

「…」「化粧品開発の第一人者」かと思わせる程恐ろしい顔つきのエイリアンが、名残惜しそうにローの顔に手を当てる。

「またね。」苦笑いしてテーブルを離れるマヤ。

「マスター、」「スルメのゴルピス。」カウンターにつきバーマスターに注文しようとしたマヤの声は、金髪の男の声に遮られた。
「それ位おごってやるよ。」ウインクする男。

「ありがとう。」マヤは肩を上げた。
「どうして助けてくれたんですかあ?」

「世の中には、ロック好きのロン毛を殺すよりタチの悪い事なんか幾らでもあるだろ。」

「ふふ。」マスターからグラスを受け取ったマヤは口を歪めた。
「中々良いセンスの持ち主ですねえ。私が何をしにここに来たか、分かりますぅ?」

「さあ?」

「あなたみたいな考え方の人達に、会いに来たんですぅ、そういう人達って、実はこの辺には結構たくさんいるっていう噂で」
ぴしゅん。
男が懐から撃ったフェイザーで、マヤは気を失った。


マヤが目を覚ますと、彼女はどこかの建物の中の一室で柱に縛り付けられ、床に座らされていた。建物は白い石造りのようだ。
「ここは?」

「我々の住んでいる所だ、位は言っても構わないだろうな。」
マヤが目を向けると、そこにはあさ黒い肌の野生的な女性が立っていた。マヤの座っている部屋には、彼女と、バーで会った男と、老人の男性がいた。顔で判断する限りでは、どうやら全員地球人のようだ。

「お前に聞きたい事がある。アオバシア人を一人殺したというのは、本当か?」
カスタムメイドらしいナイフを自分の手に叩きながら、女性が聞く。

マヤは嬉しそうに高周波を上げて見せた。
「いきやああああああああああ、そんな、恥かしいですうううううう。」

高周波に軽く顔を歪めながら、女は老人とアイコンタクトをとった。
「君わあ、一体い、誰ですか?」
一人椅子に座る老人は声を震わせて尋ねた。

「私はぁ、ロー・マヤと言いますぅ。イブジョーの難民キャンプで生まれ育ちましたぁ。昔はとっても、純でオチャメなおませさんだったんですよ。てへっ! でもぉ、ある日私の父は監獄で、アオバシア人の歌で気が狂って死んじゃいましたぁ。その日以来私は、男達から自分の身を守り、毎日を必死に生きてきたんですぅ。え、何を守ってきたかって? それは、えええええうえうえ。」

「親を殺されたか。私と同じだな。」女性が呟いた。

「続けて下さい。」

「で、何だかんだあって結局連邦艦隊に入ったんですけどぉ、こないだ自主除隊って言うんですかぁ? 要は体よく首切られちゃってぇ。」

「それはまた。一体何があったと言うんです。」

「何だかぁ、最近連邦はアオバシアと友好的にやってこうとか何とか抜かしくさっちゃってるじゃないですかぁ。それがもうとってもプンプン! って感じでぇ、上官とかに抗議したら怒られちゃってぇ。でも、あの薄汚いロン毛達だけはやっぱり許せないじゃないですかぁ。」

「なるほど。そうでしたか。」温厚な雰囲気の老人はゆっくり頷いた。

「私からもお、一つ、聞いて良いですかぁ?」

「何でしょう。」

「あなた達ってぇ、やっぱり、ショタキとかいう人達なんですかぁ?」

「だとしたら?」若い男が言う。

マヤはニコ、と微笑んだ。
「だとしたら、私も入れて下さいっ! お役に立ちますっ。」

老人は仲間2人に告げた。
「ヨウコさん、アゼイアさん、彼女の経歴をさっそく確認してもらえますか。」

「…」「りょーかい。」

「ぶーっ。私ぃ、ホントの事しか言ってませんよぉ。」

「…なら良いがな。」

「又後で会おうぜ、マヤっぺ。」

2人は部屋から出ていった。

「それでは…私達も少し散歩しましょうか。君もいつまでもそこにいたら、背中が痛むでしょう。」



 
「まだ私の方は名乗っていませんでしたね。私はマチアス・ローキョーシ・タカハシと言います。」
タカハシとローは、イブジョーを思わせる白い石造りの街並みを歩いていた。街を歩く人は地球人とイブジョー人がやはり多いようだ。

「でもマチアスさん、良いんですかあ? 私をこんな自由にさせちゃってぇ。」
マヤはやや不思議そうにマチアスに聞いた。
「もし、私が連邦のスパイか何かだったりしたらどうするんですかぁ?」

「もしそうだとしたら、」いかにも好々爺といった風情のタカハシは答えた。
「私も「めっ」等と言って行き付けの女王様から酷く怒られるかもしれませんな。かっはっは。」

「おじいちゃん?…」
つらー、と生ぬるめの汗をかくロー。
 

「見て下さい、ここの町を。人々を。」タカハシは黒ぶちのメガネを上げた。
「アオバシア人達はこういった植民星の数々を奪おうとしているのです。」

「でも、別にロン毛達の弁護をするつもりは無いですけどぉ。」眉はマヤは上げたはマヤは眉。
「奪うって言ったって、この辺はアオバシア領ですよねぇ、一応。」

「彼等が周辺の領域を手に入れる時に決まって口にする約束は、元々いる住民達をおびやかさないという事でした。しかし、彼等がそれを守った事など一度もありませんでしたな。武力や、不公平な法制度等で常に我々を追い出そうとしています。」

「それはそうでしょうねぇ。奴等ははなっから、搾取する事しか考えてないし…」

「しかし、惑星連邦も、その他の政府も、我々のこうした現況は全く分かっていないようだ。あー唯一、この状況を理解し、正義の為に立ち上がっているのがショタキなのです。」
微笑のような表情を崩さず言うマチアス。
 

マチアスは、オープンカフェ気味の軽食コーナーを指差した。
「マヤさん、お腹も空いた事でしょう。そこでギャニチャーハンなど、どうですかな?」

「え、ええ…ありがとうございますぅ…」
 

トレイを持った2人は、屋外のテーブル(しかないのだが)に座った。
「どうですか、ここのギャニチャーハンは。」

スプーンで一口食べたマヤは、思わす眉を寄せた。
「う、うーん…申し訳ないんですけどぉ、私には、ちょっと苦みが足りないかも…」

「ああ。やっぱりそうでしょう。私も良く言うんですよ、ここのはマイルド過ぎるというのはねえ。」

マヤは意外そうに微笑んだ。
「え? マチアスさんってえ、地球の方ですよねえ?」

「ええ、でも私が子供の頃はイブジョーに住んでいたんですよ。そりゃあ良い所だった。でもある日突然、アオバシア人達がやって来ましてねえ。彼等は誰に対しても容赦がなかった。ある日、私の父親が、あー当時私の父は科学者としてイブジョー科学省に勤めていましたが、」

30分経過。

「…それでも私は抵抗しましてねえ。何とか井戸のある場所までは辿り着いたのですが、そこからがまた大変でした。近くに民家らしい民家も見つからないのでこっちも持久戦です、ある日私は、」

1時間経過。

「…まあそれでその時は、部下のものにもこっぴどく叱られましてねえ。それでも何とか作戦を成功させて、まあ、このように現在にいたる訳です。はい。」

「ぐー。すー。ぐー。すー。」

「マヤさん?」

「あ、ひゃい、き聞いてましたよおもちろん。」

「マチアス、裏が取れたよ。確かにこの可愛い娘ちゃんは、1ヶ月前まで艦隊にいたロー・マヤ元少尉だ。」
2人のテーブルにアゼイアが現れて報告する。

「しかしもし艦隊のスパイなら、それ位の偽情報は流すんじゃないのか。」
アゼイアの後ろから、腕を組んだヨウコが口を挟む。

「いいや、マヤさんは信用できます。」

「何故そんな事が分かる、マチアス。」

「ふぉっふぉ。それはもちろん、彼女はギャニチャーハンの味を分かっているからじゃな。」
「ボケた?」と言わんばかりに目を合わせるアゼイアとヨウコ。マヤはマチアスに微笑んだ。


マヤ達のいる街は夜を迎えていた。
マヤは街の集会場らしき場所へ通されていた。二十人弱程度の人々が集まる中、中央でここの指導者らしい女性が説明をしている。
「情報によると、アオバシアはなれ鮨性兵器を本格的に量産する計画を進めているらしいわ。」

「おいおい本当かよ。」呟くアゼイア。

「この武器が出来たら私達にとっては例えようも無い脅威ね。何としてでも彼等の計画を止めさせる必要があるわ。」

1人の男が聞く。
「どうやって?」

「原材料を輸送する所を襲う計画よ。と言っても、まだいつ誰が輸送するまでの情報はつかんでいないから、具体的な行動までは決まっていないわ。」

「なるほど?」

リーダーは腕を組んだ。
「ところで、関係無いかもしれないけど、村の医療物資がついに切れかけているわ。誰か何とか出来ない?」

「いやあああああああああっ、私ならそれ、出来ますぅ。」

思わすおさえた耳から手を離したリーダーが聞く。
「あなた誰?」

「今日会った元連邦艦隊の子ですよ。」タカハシが答えた。

「私こないだまでぇ、エバンゲリオンに乗ってたんですよぉ。だからセキュリティとか知ってるから、か・ん・た・ん・に頂けちゃいますぅ。きゃはっ。なはっ、なはっ、せんだみつおゲエエエーム。死ねえええっ!」

「彼女は信頼できます、やらせてみる価値はありますよ。」

ヨウコは眉を上げた。
「本気か、マチアス?」

リーダーの女性は(まだ何か叫んでいる)マヤの顔を品定めするように見ていたが、やがて頷いた。
「まあ、他にこれといった策も無いし、良いでしょう。マチアスが薦める子ならね。」

「ありがとう。」マチアスは頭を下げた。

「私も行くぞ。」不満気な様子のヨウコが進み出た。
「誰か監視を付けておくに越した事はないだろう、違うか。」
リーダーはヨウコに頷いた。

「ああっ、ヨウコさんもちろん大歓迎ですぅ。私が本当に役に立つっていう証人になってくれるんですよねっ、マヤ感激ですっ!」

「そうなる事を祈るよ。」ヨウコは肩を上げた。


小さな鉄人ロボット型の1隻のショタキ船が、惑星の軌道を離脱していた。
操縦席ではヨウコがマヤを物言いたげに見ていた。

「まずは、エバンゲリオンを呼ばない事には始まらないですね。」

「待て、その前にまずアオバシアから連邦への国境をどうやって越えるか、だろう。」

「そんなの簡単、ちょちょいのちょうねんてんでろんでろんですよお。」
ぱ、ぽ、ぴ、ぴ。

マヤはパネルを操作しだした。
「うん、これで国境の監視ブイのセンサーは全部ダウンしましたよぉ。今時NT使ってるんだから、Nukeでちょちょいの超!コメディ60分ホンコンさんアワーですっ。」

「本当か?」
モニタを確認するヨウコ。

「もう国境越えちゃいますよぉ。」

…せいじゃく…

「ああ、確かに、向こうのセンサーは何も反応していないようだな。…やるな。」
やや感心した様子のヨウコ。

「でへっ。」

「しかしどうやってエバンゲリオンを呼ぶんだ?」

マヤは満身の笑みを浮かべた。
「救難信号を出しましょう。」
 

レイタが瞬きをした。
「艦長、救難信号を受信したわ。科学調査中の船がムツゴロウ星系で遭難したとの事よ。」

「そうか、それでは直ちに向かうとしよう。」

レイタは振り向いた。
「警告するけど、そこは星系固有のチャトラン現象の影響でセンサーの反応が鈍くなるわ。」

「何かの罠かもしれませんね。」副長が言う。

「そうだな。それでは警戒しつつ行く事にしよう。レイタ、星系へワープ6だ。」

「了解。」
 

「しかしお前、本当にいかにもなイブジョー人だな。」
ヨウコは少し面白そうに言った。

「何がですかぁ?」

「別に。気にするな。」ふとモニタに目をやったヨウコは、目を見開いた。
「おい、これは…」

「お魚さんですねっ、うふっ。」
センサーにはギャラクシー級の船の信号が表示されていた。
 

「他のセンサーは事実上使用不能なので単方向性センサーに切り替えるわ。」

「捜索は長くなるかもしれませんね。」

「うむ…一体どこで遭難したのだろうな…こんなの良いから早く武富士ダンスをマスターしたいのだが…」

「え?」

「ああいや、こちらの話だ。」
 

「ここいらで…もういっぱつ。」
 

「艦長、再び同船から救難信号よ。この星系の第四惑星軌道近くにいるようね。」

「すぐに向かい給え。」
 

「奴等がどんどん近づいてくるぞ。それで、どうやって医療品を頂く? 奇襲か?」

「そんな無理言わないで下さいよお。こんな船1隻でギャラクシー艦に太刀打ちできますう?」
マヤはヨウコに微笑んだ。
「安心して。ちゃんと手は考えてますからぁ。」

マヤはエバンゲリオンが近づいてきた隙に、エバンゲリオンの後部にトラクタービームを発射した。

「吸い付くつもりか?」

「お魚のお尻にね。」
 

「やはりセンサーには何の反応も現れていないわ。」

「一体どういう事だ…」

「艦長、何でそんなにマカレナ上手いんですか?」
 

「見つからないか。」

「どぁいじょうぶ。エバはバックミラーが無いから後ろから侵入するのがベストなんですぅ。…あ。」

「どうした?」

「さすがにクルーもバカじゃないですねぇ、防御シールドはちゃんと張ってる。」

「つまり転送が出来ないという事だな。」
 

「艦長。エバンゲリオンの後方に1隻の小型船を確認したわ。ショタキ船のようね。」

「何?」

「ロー少尉の船でしょうか…」

「ああ、そう考えると説明が付くわ。」レイタは頷いた。
「先程の二度目の救難信号の最後に、少尉のIDコードと同じ文字列が付いていたわ。最初ノイズによる偶然かと思ったのだけど。…恐らく少尉は、この船のシールドを突破しようとしているものと推測されるわ。」

「なるほど。だから特に後部から近づいている訳だ。後ろはシールドが弱いですから。」

「…レイタ、船のシールドを、彼等が通過できる程度にまで弱めるんだ。」

「了解。」
 

びー、ぴぎゅ。
シールドに接触するとともにマヤ達の船は多少揺れたが、どうやら無事中に入れたようだ。
「実はシールドも後ろは弱いんですよぉ。」
マヤは肩を上げて見せた。

「それじゃ、医療用倉庫の薬品を速い所頂くとし・ま・しょ。」
ぱ、ぽ、ぴ、ぷ。
「転送開始。」
ぴぎゅいいいいいいん。

ショタキ船後部にぎっしりと、マンドラゴラや冬虫夏草や精製カフェインやどくだみシロップ等が転送されてきた。
ヨウコは口笛を吹いた。
「大した物だな。」

「後は、ずらかる、あいけない、逃げちゃうだけっ。」
 

「医療物資を転送した少尉の船は、シールドを抜けて脱出しようとしている模様よ。」

やんややん、やんややん。やんややん、やんややん。やんややん、やんやや、やんやーややややん。
「構わん行かせてやり給え。ただし途中で船を攻撃するのだ。…外してな。」
手と手を合わせたり合わせなかったりする踊りをひたすらやりながら、艦長が命令する。
 

ぴぎゅ、ぴぎゅん。
ショタキ船の方向にエバンゲリオンからフェイザーが発射された。
「あらあら気付かれちゃいましたねえ。」

「あらあらじゃないだろ、早く行くぞ!」

「もちろん。」
マヤの操縦する鉄人は、何とかエバンゲリオンの攻撃を振り切り星系を抜け出した。



 
「へへー。」
街に戻ってきたマヤは2人を見回した。

「疑って済まなかった。マヤ、お前には感心したよ。」
ヨウコはマヤの肩を叩いた。

「私は君がスパイなどでない事は、はじめから分かっていましたよ。」マチアスは開いてるんだか閉じてるんだかわからない目で言った。
「でもマヤさん、気を悪くはしないで下さい。ヨウコさんも別に悪気があった訳じゃない。ただ、ここではまずは人を疑ってかかるのが普通なだけなのです。」

「もちろん、分かっていますって。うふふ、えへぐふうふえへえー。」


航星日誌、補足。ゲリラ部隊の信頼を充分得たロー少尉は、既に自分用の船を自由に飛ばせる立場になったらしく、一人でエバンゲリオンにやって来るようになった。

エバンゲリオンの、シャトル格納庫近くの廊下で、マヤは言った。
「アオバシアはなれ鮨性兵器の量産を計画中だという噂です。」

「なれ鮨性兵器…いや、その話は聞いていない。あれはまだ研究段階のはずだ。」
首を振るピカ。
「いや待てよ…その話はうまく使えるかもしれん。」

「使う?」

「ああ。つまりだな…君はある日、ある場所でこういった船がやって来るという情報をつかんだ、と皆に知らせ給え。その船がなれ鮨性兵器の原材料を運んでいるとするのだよ。もちろん、おとりの貨物船はこちらで用意する。そうすれば、この地域一帯のショタキ船団が大挙して群がってくるのではないかね。」
ふっふっふ…
「もしかして私は天才ではないだろうか…頭の良くなるガムを毎日かんでいたかいがあったという物だ。」

マヤは苦々しい表情でハゲに言った。
「つまり…彼等を罠にかけろと、そうおっしゃりたい訳ですね。」

「ん? その通りだ。」

「…」
マヤは溜息をついた。

「ドクターは君の勇敢な仕事ぶりに感心すると言っていたぞ。」
ピカはどこからか、写真らしき紙片を指ではじきながら言った。

「な、それ何の写真ですかあっ!?」飛びつこうとするローと表を見せないピカード。
「わ、分かりました、やりましょう、やらせてくらさいっ!」
目をらんらんと輝かせ、よだれをふくロー少尉。

「君ならやってくれると信じていたよ。」艦長はニヒャリと笑った。


「と、言う事なんですよお。」
マヤの言葉に集会所の面々はざわめきだした。

「それは本当なのか?」

「少なくとも、私の傍受したエバンゲリオンの通信によると。」マヤは聞いてきた男に答えた。

「でも、そんなに堂々と運べるもんなのかい?」
不思議そうに聞くアゼイア。

「つまりこういう事だろう。一般的な兵器の殆どは、その化合の仕方に技術がいるだけで、原料は意外にありふれた物だ。それはなれ鮨性兵器であっても恐らく変わらんだろう。いくつかの原料を別々に、未加工で運ぶ分には、何の特別許可もいらないし別段怪しまれる心配も無い。」

「はい、その通りだと思いますぅ。」ヨウコの説明に頷くマヤ。

「これは見逃せない情報ですなあ。」

「そうねマチアス。他のセクションのリーダーにも連絡して。久々に大規模な共同戦線になるわよ。」

「分かりました。」タカハシはリーダーに従ってメッセージを送りはじめた。



 
集会所から出てきたタカハシは、どうやら嬉しそうにしているらしかった。
「あーえーママさん。」

「マヤです。」

「マナさん?」

「マヤです。」

「ああ。マイルーラさん。」

「ま。や。ですぅ。」

「あーそうそうマヤさん。さっそく準備に取り掛からないといけませんな。」

「準備って? 攻撃の準備ですか?」
夜の通りを歩く2人。

「いやいやそうではない。お祝いの準備ですよ。今度の出撃が成功した時の為のねえ。」
ヤギ面がはむはむ言う。

「お祝いは…まだちょっと、気が早く無いですかあ?」
苦笑するロー。

「そんな事はありません。君の情報のお陰で、ショタキは大きな勝利を収めるでしょう。間違い有りません。」
マチアスは空を見上げた。
「お祝いの席で、本場の苦みばしったギャニチャーハンを作りましょう。私はカエルフルートで曲を吹きます。」

「カエルフルート…」

「どうしました。」

「…私の父は、小さかった私が夜になると泣くので、毎晩カエルフルートを吹いてくれていたんですぅ。夜の、魔物を追い払うために。でも、ある日、それが動物虐待だというアオバシア人に逮捕され、父は行ってしまいましたぁ。あの時…父でも、追い払えない魔物はいるのだなぁと、私は…」
涙ぐむマヤ。

「…マヤさん。待つ事などありませんな。今すぐ、ギャニチャーハンを頂きましょう。そしてメッコールで乾杯だ。」

「な、何に乾杯するんですかぁ?」

「あー、何でも良いでしょう。さあさ、座って座って。」
オープンカフェの椅子をマチアスがすすめる。

ぴぎゅん。
その時2人のそばをフェイザーがかすめた。


「隠れてっ!」
マチアスと一緒に塀の陰に走るマヤ。どうやら相手は3人のようだ。

「アオバシア人、どうしてここに気付いたのかしら…」

「彼等は利口ですからね。いつかは見付ける物ですよ。だから私達は、お互いバラバラになって」

「おじいちゃん、ゴタクは後で聞きますっ!」
マヤは陰から顔を出し、手持ちのフェイザーで襲撃してきたアオバシア兵に向けて撃つ。
ぴぎゅ、ぴぎゅん。

向こうの噴水の陰ではヨウコがライフルを撃っている。

ぴぎゅ、ぴぎゅん、ぴぎゅ、ぴぎゅん。
「やったああああああっ、一人命中ううううううぅううう」

ぴぎゅん、ぴぎゅん。
「げ。」
再び陰に隠れ、頭を振るロー。
「(そうそう場所がバレるからなるべく叫んだりしないって初歩中の初歩じゃない、ずーっとここでいかにもなイブジョー人を演じるうちに忘れかけてたわ。)」

広場に拡声器の声が響く。
「安いよ安いよー、宮村氷上流出物だよー。マスターテープで画質は最高。うちの通販は信用できると評判だよー。」

「何じゃて!」

「マチアスさんそれは罠っ!」

ぴぎゅ。
「ぽくっ」

「おじいちゃんっ!!」
 

ぴぎゅん。
ヨウコが最後のアオバシア兵をしとめた。どうやら援軍はいないようだ。荒く息をつき、汗を拭うヨウコ。
 

「医療キットを持ってきて! 速く!」

「あ、ああ。」マヤに慌てて頷くと、ヨウコは部屋に走っていった。
 

倒れたマチアスにマヤは寄り添う。
「おじいちゃん、死んじゃだめですよぉ。おじいちゃん!」

「まあ、幾つになってもスケベジジイは直りませんねえ。ふぉっふぉっふぉ…でも、本当は、」

「本当は?」

「ヴァイスのAVが…見たかった…」
ぽっくり。

「おじいちゃあああああああんんんんんんんっ!」
高周波で老人にとどめを刺すロー。


すてい・うぃず・みー ガーラッスの少年時ー代のー♪ 破ー片が胸へと突ーき刺ーさるー♪
例のバーに現れたフユツキは、壁際のテーブルに物憂げに座る女を見つけた。

「調子はどうかね。」向かいに座るピカ。

「うふうふあはえへうふ、とおっても快調ですよお。」

「…」

「…引かないで下さい艦長、これが普通の受け答えなんです。」
小声で囁くマヤ。

「そ、そうか…そうか。快調なのは何よりだ。」

ぱち、ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。
「うふーん。」
指でフユツキのデコをはじくマヤと、どんどん額に交差点の増えていくフユツキ。

「我慢して下さい、これがこの辺では普通で」

「分かっている。……どうだ、今晩は空いているか?」

「うふーん。」マヤはわざとらしく声を上げた。
「作戦は失敗に終わりました。」周囲を素早く見回したマヤは、再び小声で艦長に囁いた。

「失敗? 何故だね。」

「彼等は情報を信じなかったので。」

傍目にはエロジジイと売春婦の振りをしながら、2人は話を続ける。
「彼等が今度、大規模な作戦行動をとるという通信を傍受したのだが、それは間違いだと言うのかね?」

「…」

「聞かせてくれ、一体何が起きているのだ。」

「…正直、私は自信がありません。」

「何の話だね。」

「…そろそろ財布を出して下さい、値段の交渉をして良い時間です。」

「あ?…ああ。」財布から金の延べ棒らしき物をちらちらと見せる艦長。

「私は…先輩やカウンセラーの期待を裏切りたくはありません。でも、あの人達を罠にかけるのも嫌なんです。あの人達は純粋で良い人達なんです。艦長、私をこの任務から解任して下さい。」

「…駄目ざます。」マヤはフユツキの言葉に顔を上げた。
「もう作戦は後戻りできない所まで進んでしまっている、今から変更する事は出来ないのだよ。」

「…」

「もし君がこの任務を破棄するようであれば、査問委員会にかけなければならない。当然写真も見せる訳にはいかん。」

「な。…分かりました。士官として、任務は全うします。」

「大変よろしい。…だが念の為、副長を同行させた方が良かろうな。」
ピカードはふいに立ち上がった。
 

「駄目だ。そんな値段は高すぎる。他をあたるんだな。」わざとらしく言う艦長。

「きゃああああああっ、レデエに向かって何て失礼なあああっ!」がすっぼすっごすっがすっずさっ。

「すいません艦長、ここまでデフォなんで…」マヤは再び小声で謝ると、屍を踏みつけバーを出ていった。


「ショタキ達はこの地点で貨物船を襲うものと推測されるわ。」
レイタはモニタの座標を指差す。

「あーじゃあ、私達が今この星雲の中にいるのは、そこへ行く為にこのルートでやってくるであろうショタキ達を、国境を越えた所で一網打尽にしちゃおうっていう作戦な訳ね。」

「その通りよ。彼等の戦力は基本的に大した物ではない以上、これは非常に効率的な攻撃になるわ。」

「ほえほえ。」トロイはレイタに頷いた。

「艦長、計算ではそろそろ彼等が国境を通過するわ。」

「ゆっくり待ち給えレイタ、焦って彼等に見つかってしまっては元も子も無いぞ。」

「了解。」
 

「そろそろ国境を通過します。」
鉄人型(と言ってもサイズはシャトル並)のショタキ船の中で、パネルを操りながらマヤが言う。

イブジョーの民間人の服を着て、ギザ鼻のメイクを付けた(しかしアンテナは取らない)ライカーは頷いた。
「了解、それじゃ各船を先導してやるとしよう。」

ぴぎゅん、ぴぎゅん。
ライカーは一瞬状況が分からないようだったが、隣を向いて怒鳴った。
「何をやっている、少尉!」

「マヤよりヨウコ機、これは罠ですうっ!」

「何? 本当だ、今お前が星雲へ撃ったフェイザーの反応で隠れている船の影が分かるぞ! 全員散会!」
 

「ショタキ船団は急に方向を反転、国境の向こうへ戻っていくわ。」

「私達も行っちゃえば良いじゃん?」

「…アオバシアへの越境攻撃になるわ。」ミサトに答えるレイタ。

「少尉だな…」呟く艦長。
「ゲォーフ、船が到着次第ロー少尉を拘禁する準備を進めてくれ給え。」

「了解した。」
 

「そこを動かないで!」
立ち上がったマヤはリョウジにフェイザーを構えた。
「ちょっとでも動けば撃ちます、本気ですっ!」

「君は…行くのか。」

「ええ。」目を涙に潤ませて頷くマヤ。
「久しぶりに…私の本性を思う存分解放できる場所に会えたんです。どれだけ叫んでも、怒られる心配の無い場所に…」

「…それ、悩んでたのか?…」

「士官だっていうプレッシャーで、叫ぶのを押さえてたのが結構ストレスになってたみたいで、最近おつうじも…ってそれは置くとして。副長、最後に、お願いが有ります。」

「何だ。」

「そこのパッドのメッセージを、クルーの人達に伝言して下さい。」

「…分かった。」

片手でフェイザーを構えたまま、マヤは壁の通信機を叩いた。
「マヤよりヨウコ機。一名そちらへ転送。」

「了解。」通信の声が聞こえると、マヤは船から転送されていった。

ショタキを壊滅させる計画は失敗に終わった。


「最後まで彼女は、艦隊、いやドクターへの忠誠心と、自分の気持ちとの間で悩み続けたようです。これを渡してくれ、というのが彼女の最後の言葉でした。」
ライカーは艦長室のピカードに持っているパッドを手渡そうとした。受け取ろうとしないピカード。ライカーは机の上にパッドを置いた。

「そんじゃ失礼。」
ライカーは艦長室から出ていった。
 

フユツキはしばらくただ呆然とレイちゃん脱穀機を眺めていたが、やがてパッドを手に取った。
 

「うむ? …老眼になったか?」
呟く艦長。

つづく…
 


艦長室のテレビモニタにこの間のドラマの続きが流れ出したようだ。

 

シンジは出版社に勤務していた。毎朝決まって7時になると起き、自分と妻の分の朝食を作り出かける。アスカは比較的遅くに出勤できるので、まだこの時間は寝ているのだ。
2人は忙しくて会えない事も多く、決して喧嘩もしない訳ではなかったが、概して穏やかで幸せな生活を送っているようだった。
5年目の結婚記念日の朝、シンジはアスカに、そろそろ子供を作らないかと待ちかける。アスカは今の2人の経済状況から難色を示すが、どこか嬉しそうに微笑んでいた。
チャイムが鳴った。
「はい、今出ます!」エプロンを外すシンジ。
「おとうさん!」
ドアの向こうに立っていたのは、シンジそっくりの見知らぬ男児だった。
子供の話と持っていたIDから、彼はレイの子供である事が分かった。その時レイから電話がかかってくる。「シンゴ、そこにいるのね?」 彼は家出をしていたのだ。
シンゴを預かるアスカ。シンジは取るものも取りあえずレイの家に向かうのだった。彼女の家のすさんだ様子にシンジは言葉を失った。
シンジはレイに話を聞く。レイが子供を身篭ったのは高2の春だった。別れた後とはいえ、彼女が急に第三東京を離れたのはその為だったのだ。しかしまだ17歳のレイにとって子供を育てるのは並大抵の苦労ではなかった。特に研究所育ちのレイは子供への愛情のかけかたが分からない。シンゴはレイにとって、半ば呪われた存在となっていった。乱暴な子供に育つシンゴ。学校では子供達から母親の事で苛められ、家では何事にも不器用な母に幼いながら暴力を振るうのだった。
「何で僕に一言も相談してくれなかったんだ?」
「…」
「レイ、相談位してくれたって良かったじゃないか! 僕の子なんだろう? 何で知らせてくれなかったんだよ!」
「迷惑をかけたく…なかったから…」
「迷惑とかそういう問題じゃ…それに…今更こんな事言ってもしょうがないけど、17で子供を産むなんて無茶じゃないか。しかも一人で。」
「私の…碇君との…想い出、だったから…」
「…」
何故かシンジは、気付くとレイの唇を吸い、激しく体を抱き寄せるのだった。
その日以来、シンジ、レイ、アスカは協力し、荒れたシンゴの心を癒そうと努力する。週末シンゴと遊ぶシンジ。アスカから部屋の掃除の仕方を教わるレイ。シンゴに護身術を教えるアスカ。4人は、まるで一つの家族のような生活を始めていくのだった。
シンゴは小学5年生になっていた。その朝アスカは、今日が8年目の結婚記念日である事に気付く。ベッドを見ると、横にシンジはいない。急に涙が止まらなくなるアスカ。昨晩もシンジは向こうの部屋に行っていたのだ。アスカは家を飛び出す。
謝罪し、何とかなだめようとするシンジ。しかし3年間も彼が公然の浮気を続けてきた事実は変わらない。アスカは私こそ悪いと謝る。
「シンゴの事を考えたらしょうがなかったのは分かってる。…でも、ダメなの。理性で分かっても気持ちが許せないの!」
「ごめんアスカ、君の気持ちも忘れて…でも、これからは絶対一人にはしない。約束する。」
「ダメなの、それじゃダメ、あたしだけじゃなきゃイヤなの!」
「…」
「あたし、勝手な事言ってる? 無責任な事言ってる? あたしはここで我慢しなきゃダメなの?」
「アスカ…」
「もう…こんな生活は…イヤなの…」
シンジとアスカは離婚した。次回「真夏の子供達」第30話、「エゴイスト」。御期待くだ
 

「おおおおおお。」パッドをすっかり忘れて声を上げるピカ。

つづく

本当の次回予告:特に無し。


次回に続くよ次最後
 
ver.-1.00 1998+9/15公開
 
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後書きコーナー

「何か皆さん、騒がしいですよ。」
「騒がしい? 何が?」
「何でも、エヴァトレの一番可愛い女の子は誰かとかで…」
「あーはいはい、そーすかそーすか。」
「?。…最後近くでまた、新しい設定が出てきましたね。しょたき、ですか?」
「あ、そう。これ最初から決まってた設定としては一番最後、つまり今回になって出てきましたね。」
「え、ここまで第1話を書く前から決めてたんですか?」
「っていうか、こんなに連載に時間がかかるなんて思ってなかったし…」
「へえ…」
「この間に、ここでは書けないような事も色々あったしねえ…」
「へ、へえ…」
「ところで。この前の前の回の話の続きみたいだけど、設定は変えられないけど、この間には、中身の雰囲気はどんどん変わっていったよね。話題が変わったのは何度か触れたけど、書き方も変わった。」
「はあ。」
「以前は毎回、言葉の表現の幅を広げようという努力をしていたんだけど、今は内容の90%以上台詞で、その間を「言った」とか「肩を上げた」「顔を上げた」「頭を振った」「眉を上げた」あたりがずーうううっと繋いでるよね。独白的な心理描写とかは皆無で。」
「全然ダメじゃないですか。小学校低学年の作文じゃないんですから。」
「違うの。これはこういう定型の美学なの。」
「手抜きの美学?」
「定型の美学。」
「開き直りの美学?」
「違うの!!」
「私には、良く分かりません…」
「…あ、ところで、せっかくマヤさんがいるんだし、普通の後書きもこれで最後でしょうから聞いときたいんですけど、結局マヤさんは、赤木博士とシンジ君のどっちが良いんですか?」
「…」
「…」
「…」
「(マズ、不潔センサーに引っかかったか?)」
「…………うーううううううううん、同時?」
「…」59秒後作者死亡。(死因bigの唐沢。

以下次回





 フラン研さんの『新エヴァントレック』第二十九話、公開です。





 マヤさんが大活躍♪



 スパイとして適地に潜入・・・なんて難易度の高い任務なんだ。

 そんな物にマヤちゃんを任命してしまうとは、

Q1  他に人材はいないのか?
Q2  ボスは何を考えている?




A1  いないの。
A2  ボス自体そうなの。

 って所なんでしょうか(笑)




 さあ、いよいよ次回は最終回。

 外国物のドラマって、はっきりとしたエンディングがない感じの物が多いけど、
 新エヴァトレはどんな感じなのかな?


 たのしみ〜





 さあ、訪問者の皆さん。
 3つ目の連載を締めくくるフラン研さんに感想メールを送りましょう!



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