TOP 】 / 【 めぞん 】 / [フラン研]の一日:2000頃起床。餌(野生の物と異なり、草以外も食べる)を食べる。しばらく落ち物ゲームをニコリともせずやり、一時間ほどすると二度寝。0100頃再び起床。テレ東の深夜アニメを環境ビデオ代りに、声優のインターネットラジオを聞きながら掲示板をうろうろ。その後三度寝。(後編に続く)/ NEXT
バナー(ミニ4ファイターとエンジニアマン)

 
航星日誌、宇宙暦、47751.2。これからの作戦行動について本部の話を聞く為、エバンゲリオンは第03-3440-0111宇宙ステーションにやって来た。副長によると、ここで以前この船に乗っていたクルーが休暇を取って乗船してくるそうだが、私は彼の名前に覚えが無い。
 

シンジ・クラッシャーはその可愛らしい目をくりくりとさせながら、部屋を見回した。
かつーん。ぶよぶよぶよぶよ。かつーん。ぶよぶよぶよ。かつーん。ぶよぶよぶよ。

「…エバンゲリオンはちっとも変わってないみたいだね、母さん。」
(何の擬音の説明も無いまま)微笑むシンジ。

「そう。あなたも順調に存命しているようで嬉しいわ。」
リツコは気の無い様子で答える。

「(…存命?)」

「じゃ、私はこれからロジック選手権の神奈川予選の中継を見ないといけないから。」

「え? ロジックって、何? 男と女は、って母さんがよく口癖(というか言い訳)で言ってるあのロジック。」

「違うわ、パズルの一種よ。じゃ、ぼちぼち余生を楽しみなさい。」
白衣のドクターは片手を上げると、シンジの客室を出て行った。

「…(よく分かんないけど、母さん、実験以外に趣味が出来たんだ…まあ別段変ってはいないみたいだけど…)」
シンジは小首をコクリと傾けた。
 
 

「クラッシャー君。」

シンジはドアの向こうの声に顔を綻ばせた。
「ああ、レイタ! 久しぶり!」

「久しぶりね。」無表情に頷くアンドロイド。

「シンちゃん、お、ひ、さー。」レイタの隣りからマヤが顔を出す。

「あ、あの…どちらさまですか?」

「やだシンちゃん私の事忘れたのぉ! マヤよ、ロー・マヤぁ。シンジ君には特別に、マヤちゅうぅうん、って呼んでもらって構わないわあ。」

「は、はあ…って、あれ? レイタ、ビューティーは?」

「ビューティーって何でしたっけえ。」

「艦長が一時期自称していた称号よ。」
ローに答えるレイタ。
「艦長は現在ステーションの方でナチェフ提督と会見中よ。」

「へえー、良かった、ビューティーが来ると色々大変だし…」

「どうして。」「何が?」

「え、だって、また僕に纏わり付いてうるさいし…」

「…何で艦長が、シンジ君に纏わり付かなきゃなんないの?」不思議そうに聞くロー。

「え、だって、ねえ、レイタ。」

「クラッシャー君。あなたの状況判断は現在適当性を欠いていると考えられるわ。でも、あなたは現在当船の運行には何の関係も無いただの一乗客に過ぎないのでその事を気に病む必然性は低いと考えられるわ。良い滞在を。」

「う、うん…」

「じゃあまったねーん。」
レイタとマヤはドアの向こうに歩いて行った。

「また、ねーん…」
シンジは呆気に取られたように呟いた。


―宇宙。そこは最後のボランティア(意味不明)。これは、宇宙戦艦エバンゲリオン号が、新世代のクルーの下に、24世紀において概ね任務を続行し、未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求めるふりをしつつ、人類未踏の宇宙に、アバウトに航海したりしなかったりする小話である―

Evan Trek -The Legend of Galactic Fools
Evan Trek The Next Generation
新エヴァントレック
 
Job's End
第二十七話「新たなる鼻血」 

 
リョウジは風車をカラカラカラ、と鳴らした(賛辞の意味)。
「まんじゅうにカリカリ梅、それにアールグレイのバター茶ですか。」

会議室のテーブルで、紙輪っかの飾り付けをしているフユツキは苦笑する。
「ああ。この前提督と直接会った時は、私は危うく首を切られそうになった。」

「っていうか切られたんでしょう。」

「ああ。だから今回は、出来る限り彼女を持ち上げた状態で何とかやり過ごしたいのだよ。触らぬロリエに横漏れ無しと言うだろう?」

「それ、語呂だけで意味全然無いですね。」

ピカードは副長のコメントに肩を上げる。
ぽろろん。

「艦長、提督がお見えになりました。」

「お通ししろ。」

士官に答える艦長。
 

会議室のドアからレミちゃんが現れた。
「ああ、これはどうも提督、どうぞこちらにおかけになってください。こちらのカウパーカリカリ梅等はいかがですか。この香ばしい香りはレプリケーターでは出せませんぞ。」

提督は顔を動かさずちら、と副長に目を向けてから、艦長に告げる。
「艦長、2人で話がしたいの。こっちの僕ちゃんには外して欲しいんだけど…」

目で合図するフユツキ。リョウジは肩を上げた。
「ごゆっくり。オバ。」
副長は会議室から出て行った。怒るでもなく息をつく提督。

ナチェフは向き直ると、ピカードの向かいの席に座った。
「提督、長旅でお疲れでしょう、まずはこちらのバター茶でも…」

ナチェフは軽く手を上げた。
「あーコウちゃん、心遣いは有り難いんだけど、本題に入らせてもらって良いかしら。」

「…ええ、どうぞ。」

「アオバシアの…あら、あれポまんじゃない。」
ふとまんじゅうに見入る提督。

「え、ええ、その通りポマトまんじゅうです。我がピカードポマト園の最高級品、無農薬ポマトのみを使用しています。」

「へえー。」
まんじゅうを手に取る提督。
にちゃっ。

まんじゅうを口にしてレミは頷いた。
「うーん。この半熟感。それに苦みと甘さと酸っぱさの度を越えた同居がポまんの醍醐味よねえ。」

「良かったらまだまだ、どうぞ。」

「あえあほ。ほえれアオバヒアの話なんがへど、」
バター茶を飲むレミ。
「連邦とアオバシアの国境策定作業がほぼ終了したのよ。これが新国境。」

パッドを手渡すナチェフ。
「…結構な数の連邦の星がアオバシアに行くんですね。」
パッドの表示を見てピカードが言う。

「協定は双方の妥協の産物よ。お互い譲れる所は譲らないと、いつまで経っても国境なんかひけないもの。今までこっちの領域だったけど今度から向こうにいっちゃう所もあるし、逆に今までアオバシア領域だったけどこっちに来る場所もあるわ。」
レミはまんじゅうに手を伸ばす。
「これ、結構いけるわ。」

「なるほど…」

「むぐ。で、今回のコウちゃんの任務はね。…今まで連邦に所属していたけど今度国境の向こうにいっちゃう星の中に、Mクラスの物もあるのよ。その内の一つが、ドンベエ5号星っていうんだけどさ。」

「…確か、ネイティブアメリカンの部族のコミュニティがあった星では?」

「あら、詳しいわね。そうよ。で、その星の住民達に、新しい場所に移住してもらうよう、コウちゃんに説得して欲しいのよ。」

フユツキは顔を上げた。
「…つまり、立ち退かせろと?」

「まあありていに言っちゃえばそういう事ね。…何か不満?」

「それで、彼等は簡単に納得するでしょうか…」

レミは立ち上がった。
「んなこた知ったこっちゃないわ。彼等が納得しようがしまいが、とにかく何がなんでも立ち退かせるのよ。良い事コウちゃん、これは連邦とアオバシアの平和の為の代償なの。俺達のやっている事は、社会が必要としている事なのさ…俺達みたいな汚れ役がいなかったら、建つ物もおったたねえって訳さ!」
金のロレックスをじゃらじゃらさせる提督。

「…はあ…」

「これはもう艦隊の決定事項なの。分かった?」

「はい、了解しました…」
 

「そう、それなら良かったわ。」提督は頷くと、出口へ歩き出した。
「それにしてもこのポまん美味しかったわ。ええっと、無農薬でしたっけ?」

「…あ、ええ、しかし有機肥料ですくすくと育っていますから。」

「有機栽培なんだ。」

「ええそれはもう。何しろボットン便器の直下がポマト園」
ぶへーっ。
「ど、どうされました提督!」

急に倒れ込む提督に驚く艦長。


エバンゲリオンは海の色が地球によく似た惑星の軌道上を航行していた。
 

ぴぎゅいいいいいいいん。
惑星上の建物の中に、艦長と副長が転送されてきた。

土壁の建物の中には、5、6人のネイティブアメリカン達が座っていた。
「始めまして。私はUSSエバンゲリオンの艦長、フユツキ・コウゾウ・ピカードです。こちらは副長のライカー中佐。」

中央の長老らしき人物が立ち上がった。口髭と妙な帽子がうるさい人物だ。
「あー、わざわざ丁寧に挨拶などする事はない。我々は君達が来るのはずっと待っておったのじゃ。わしの方こそ自己紹介が必要じゃろうな。わしはこのコミュニテーのリーダー、アンスワラ・ノチラスじゃ。」

「よろしく、ノチラスさん。」

「まあまあかけなさい。」席を示すノチラス。
「遠い所から御足労じゃったな。何はともあれ、一口ブルーハワイジュースでも飲むのじゃ。」

「有り難う御座います。」
椅子にかけたピカードは、毒々しい色のコップに恐る恐る口を付ける。

「君達の用件とは、あれじゃな? 我々にここを出て行けと言いたいのじゃろう?」

「…」
フユツキは着色料で真っ青にそまった口を開いた。
「そう一方的な物ではありません。もう御存知かとは思いますが、連邦とアオバシアの新しい国境策定案ではこの星系は向こうの領域に入る事が決定しました。そこで皆さんと、これから新しい星を探す作業を一緒に行いたい、皆さんのお手伝いをさせて頂きたいと思って今回はやって来たのです。」

副長が頷いた。
「船のコンピューターで調べましたが、この星系の付近に限って言っても3つほどMクラスの惑星があります。そういった所を皆さんと見てみてですね、」

「我々は現在のこの星に満足なんだ!」

ノチラスは手で若者を制した。
「まあまあキャコティ、そう急くでない。お2人さん、言うは易しじゃが、行うは難しじゃ。あんた方お上がどう思うとるかは知らんが、こっちは出て行けと言われてはいそうですかと、そう簡単に出て行けるものでも無いのじゃよ。」

キャコティという若者がアンスワラに詰め寄る。
「アンスワラ、彼等にこんな話をしても無駄です、彼等は我々の信仰など、ただの迷信としか考えていないのですから。」

「俺達は君達の信仰は尊重するつもりだ。」

アンスワラは副長の方を見た。
「それならば、理解するのじゃ。この星、ドンベエはのう。単に大気や重力、自然環境が地球に近いというだけの星ではない。そんな星なら他にもたくさんあるじゃろうがの。我々が特にドンベエに住んでおるのには理由があるのじゃ。それは即ち、この星には神がおるという事。良い神が、この星には住んでおるのじゃよ。」
アンスワラは背後の窓をさす。
「あの山、空、小川、その全てに良い魂が宿っておる。どうか分かってくれ。我等にとってこの星は、運命の場所なのじゃ。我々の祖先は200年もの間宇宙を旅し、ようやくこの星を見付けた。代りの星などそう簡単に見つけられるものではない。」

「…なるほど。まあ取り敢えず、今日の所はお互い色々と、ゆっくり考えた方が良いかもしれませんな。」
ピカードは立ち上がった。

「ああそうじゃな。理解してもらえる事を祈っておるぞ。」


「マコト。」

(いつものように)機関室のバッタ動力エンジンの前にいたマコトは顔を上げた。
「ああ、シンジ君か。久しぶりじゃないか。」

「うん。久しぶり。」

「学校の方はどうなんだい。」

「まあ何とか、ぼちぼち…」言葉を濁すシンジ。
「学校は良いんだけど、船の皆が何かこう、随分変わっちゃったような気がして。」

「あー、もうシンジ君はここを離れてどれ位になったかな。確か2年近く前…」

「いや、もう3年以上前だよ。しばらくは僕のクローンがいたから。」

「ああ、そうか。それだけ経てば人は変わるもんさ。ユイカ、ここの蟻動力リレーのチェックをしてくれるか。」
近くのヴァルカスカ人士官に声をかけるマコト。

「了解。」

「もう3年になるのか。その間にはここのエンジンも随分進歩したと思うよ。」
 

マコトは嬉しそうに微笑むと、壁面のパネルの一つを開いてみせた。
「この連結リレーを見てくれ。エンジンからの出力を、今まではこっちの回線を通してディフレクターに送っていただろ? でもふと思い付いて、こことここをヤベッチ回線で繋いでみたんだ。」

「ふふ…」

マコトはシンジの様子に眉を潜めた。
「何がおかしいんだい。」

「だってマコト、こんな離れた場所を繋がなくても、ここからここをヤマダマリア回線で繋げば、ずっと効率が良いし出力も上がるだろ?」

「あ、ああ…そういう手があったか…」
 
「ヤベッチ回線なんて、この回線の繋ぎ方はもう時代遅れなんだよ。」

シンジの口調にかちんと来たご様子のマコト。
「あーあー、そりゃあアカデミーに通ってらっしゃる無敵のシンジ様にはかないませんよ。」

「べ、別にそんな言い方しなくても。ただ僕は、その方が良いエンジンになるからって、」

「正直な事を言うと地球人は怒るのよね。」

「ユイカ、君は関係無い。」
振り返るラ=フォージ。
「シンジ君、君も変わったな。どんなにエンジンに詳しいか知らないが、君みたいな態度の人は、僕はここにいて欲しくないよ。」

「マコト、いくらミサトさんと一緒にいるとストレスがたまるからって、別に僕に当たらなくったって…」

マコトは顔色を変え、シンジににじり寄った。
「ミサトさんをそんな風に言うな! ミサトさんはなあ、いま日がな部屋の中で体育座りして、誰とも喋れない状態なんだよ。理由は分からないけど、急に失語症になっちゃったんだ。他の事ならともかく、ミサトさんを馬鹿にするのは僕は許さないぞ。それから僕はあくまで君より年齢も階級も上なんだ。他の人にはちゃんと「さん」を付けているのに、僕だけ呼び捨てで呼ぶのは止めろ!」
マコトはふんっ、と背を向け、シンジから離れて行った。


「ふん、何だよ。皆して僕をのけ者扱いして。最初の頃は必ず僕がオチに使われていたのに…」
シンジはぶつぶつ言いながら惑星の村の通りを歩いていた。

土埃が舞い、地球のアメリカ地方に良く似た雄大な山脈の景色をかすめさせる。
ここに移住してきた部族はネイティブアメリカンの中でもかなり特殊らしく、数軒ある店は全て配管工事屋だ。
広場では子供達が数人、社交ダンスをして遊んでいた。

陽の眩しさにシンジは目を細め、軽く深呼吸をしていた。
「あなたはシンジ・クラッシャー君よね。」
シンジは背後の声に振り返った。

「え…と、あなたは…」
シンジは(何故か)宇宙的に有名人なので、知らない人から声をかけられるのは結構慣れている。しかし目の前の大柄な女性は連邦の制服を着てはいなかった。長い黒髪を縛り、サリーを着ている。ここの住民に違いない。(そんな部族。)

「私はサヨコ。サヨコ・ラカンタ。始めまして、かな。私の事知ってるかしら。」

「い、いいえ、知らないと思います…」自身無さ気に語尾を弱めるシンジ。

「あら、そう。私はあなたの事を結構良く知っているんだけどな。好きな食べ物、一日の生活パターン、嫌いな科目、夜のオカズ…確か昨日は、」

「え、え、え、」

「ごぼうのきんぴらだったわよね。」

「べっっっっったべたですね。」

サヨコは気にせず続ける。
「私が夢を見ている間、あなたには何度も会ったの。だから私にとってはあなたは既に親友のようなものなのよ。」

「夢、というのは…」

「自らの魂が導くもの、という言い方も出来るわ。…シンジ君、私達ネイティブアメリカンにとって、一体何が聖なる物か、知ってる?」

シンジは周囲を見回した。
「聖なる、物…あの山とか?」

サヨコは微笑んだ。
「山だけじゃないわ。答えは全ての物、よ。私達にとっては水も、土も、生き物も、パイプも、残飯も、カラーヒヨコも、ビフィズス菌もチ○カスも、全て等しく聖なる物なの。」

「ち、チ○カスも、ですか。」

「少なくとも私の部族に関してはそうよ。この一言さえ入れとけば何を言ってもオッケーね。」

「は、はあ…」

「そしてシンジ君、あなたもまた、聖なる存在なの。」

「…チ○カスと並べられましても…」
 

聞いてないラカンタ。
「聖なる物を大事にしなかったら、それはその物への冒涜になるわ。シンジ君、あなたは自分を大切にしてる?」

「自分を、大切に…? さあ、良く分かんないですけど…」

「それなら、自分の魂に問い掛けてみる事よ。こっちに来て。」サヨコは土壁の階段を上がっていく。戸惑ったまま付いていくシンジ。


「あなた方の祖先は、住み慣れた地球を出て新しい星を探す決断をなされた。ノチラスさん、今こそあなたの御先祖の勇気を思い起こされる時ではありませんかな。」

再びアンスワラ達のいる部屋にやってきたピカードはブルワイジュース(気に入ったらしい)を飲みながら語り掛けた。
 
「艦長。それではあんたはわしらにもう200年、宇宙をさまよえと言われるのかな。確かにうちのひひじじい、あやつが地球を出ると決めたのじゃが、やつは決断の人間じゃったよ。しかし今は、200年前とは状況が違う。わしらは既にこの星で20年以上、ささやかではあるが暮らしを営んできたのじゃ。そうそう簡単に家を捨てる事など出来んのじゃよ。」

「…副長。」
ブルワイのグラスを置いた艦長は促す。

何故か風車や花の代わりにパラボラアンテナの刺さっている副長が告げる。
ぴこーんぴこーんぴこーん。
「残念だが、既に連邦本部とアオバシアの意向は決定済みです。もしあなた方が立ち退かないようであれば、非常に残念ですが私達も強硬手段を取らざるをえません。」

ややざわめく住民達。しかし長老はニッと笑うと、ゆっくりと頭を振った。
「だめじゃ。無理矢理追い出す等と言う事は、君達には決して出来んぞ。…時に艦長。君は自分の先祖について詳しいか。」

「え? ええ…比較的詳しい方だとは思いますが…ピカード家は代々、フランスのバルベールという所でポマト園をやっております。収穫期はよく、ポマト特有の刺激臭で死者が続出する事で近所では有名ですな。」

「わしも君の先祖について一しきり調べてみたのじゃよ。わしらの部族のことわざの一つに、「敵に打ち勝つにはまず敵を知れ。やってて良かった公文式。」というのがあっての。」
ノチラスは髭を震わせる。
「歴史の文献によると面白い事が分かったのじゃ。艦長。ガッツキ・モチツキ・ウソツキ・モナムール・ヴァンサンカン・シトロエン・クロワッサン・ボンジュール・ウシロユビ・ササレグミ・ピカードという男を御存知かな。彼は1786年のニューサウス土浦の大虐殺で、わしらの先祖を殺戮した張本人なのじゃ。」

ピカードは顔をしかめる。

「その男、ガッツキ以下略ピカードこそ、お主の先祖なのじゃよ。…艦長。わしはあんたがここに来ると聞いて以来、ずっとその事の意味についてー考えておった。全ての物事には何らかの意味というものがあるものなのじゃ。あんたがここに来た意味を、わしはようやく分かった。あんたは自分の祖先の犯した罪を700年経った今、我々に償いにやって来たのじゃ。」

ピカードとライカーは困ったように目を合わせた。
ぽろろん。
 

「何か通信が船から入ってきたようです。少し席を外しますがよろしいですか。」
立ち上がるフユツキ。

部屋の隅の方に来た艦長は通信機を叩いた。
「どうしたのかね。」

「ギブソン級のアオバシア船が現れた。地表へ人員を転送したようだ。」
ゲォーフの言葉に、ピカードはますます顔をしかめた。


建物の外に出てきた艦長と副長に、士官がやってきて手で示す。
「あちらです。」

見ると3人ほど、銃を構えたアオバシア兵が階段を降りて来ている。
「ほらほらほら、邪魔だからどくっす! ロッケンロー魂を邪魔する物は許さないっすよ!」
 

「…シゲック。お前か。」
体一杯、溜息をつくピカ。

「おお、これはピカードの兄貴じゃないっすか! 御無沙汰してるっす! それじゃあここでさっそく一発」
「しないでいい!」

「まだ何するかも言ってないっすよ!」

からからから。
「…シゲック、今日はまた、どういう風の吹き回しだ。見ろ、住民達も脅えているじゃないか。」

「あーっと、あなたは副長の…ビーバスさんでしたっけ。」

グフ、グフ。
「ライカーだ。」

「ああ、ライカーさんね。覚えておくっす。それにしてもまーだ住民がいるっすね。引き渡しはもう一週間後っすよ。」

「ああその事だがシゲック、実はここの住民達はあまり出て行く事に積極的ではないのだよ。」

「住民の意向なんか知った事かっす。追い出さなきゃ建つ物も建たないっすよ。」

「どこかで聞いた言葉だな…」考え込むフユツキ。

「君達の方こそ、何でここにいるんだ。引き渡しは「まだ」一週間後だ。ここはまだアオバシア領域じゃないんだぞ。」

「地質や環境の事前調査の為っすよ。タイラーさん。」

「ライカーだ。」
 

ピカードはシゲックに向き直った。
「よかろう。調査は構わん。しかしシゲック、ここは今はまだ連邦の領域である事を忘れないでくれ給えよ。住民を傷つけたら、私が月に代わってお仕置きしてやるからな。」

「…」シゲックは鼻で溜息をついた。


シンジはサヨコに連れられ、建物の二階の部屋に入っていた。
「ここはタコベヤーンと言ってね。私達の信仰では、特に聖なる場所なのよ。」

「え、じゃあ僕なんかが来たらまずいんじゃ…」

「言ったでしょ、あなたも聖なる存在なの。」
ラカンタは何やら壷から石粒を取り出し、寝台のような物の周囲にまいている。

仮面や置物、絵等がたくさん並べられた室内を見回していたシンジは、ふと呟いた。
「あれ、フェレンスケの置物だ。」

サヨコは微笑んだ。
「よく気付いたわね。そう。このタコベヤーンでは、私達ネイティブアメリカンの魂だけじゃなく、コヨーテの魂も、ヨーロッパ人の魂も、ヴァルカスカやゼレンゴン、フェレンスケの魂も、もちろんビフィズス菌の魂も、全て受け入れているの。全てのものたちの良い所は受け入れるのよ。それが私達のやり方。」
シンジは感心半分、引き半分で頷いた。

「そこに寝て。」
ベッドを指すラカンタ。

「え。」

「良いから。」
彼女は何やらお香に火を付けた。

「…こうですか。」半ば渋々ベッドに寝るシンジ。

サヨコはシンジの顔に煙をかざした。
「目を閉じて。心を集中させて。そして自分の魂の言葉に耳を傾けるのよ。」

「…そ、そんな難しい事、僕には…」

「自信を持つのよ。あなたなら出来るわ。さあ、心を集中させて。あなたの魂は、どこにあるの。」
シンジは煙に誘われるかのように目を閉じた。


だめだめだめだめ、だめ、だめー。

「(妙にうまいのがムカツクな…)」
ナチェフの後ろでステップを踏むダンサー達に、ピカードは縦線が入っている。

「気持ちは分かるけど、もう決定しちゃったんだもん。」

「しかし、彼等はそう簡単には出て行きそうにありません。それどころか長老は、私が彼に償いに来たとすら言っています。」

「償い?」
画面の向こうの提督が眉を上げる。

「あ、ええ、何でも私の祖先が数百年昔に彼等の祖先を虐殺したとかで。まあ恐らく言いがかりだと思いますが…」

レミはウサ耳を毛ばたきで手入れしながら首を振った。
「彼等の歴史がどうかはこの際問題ではないわ。問題なのは現在よ。コウちゃん、もし彼等が出て行かないというなら道は一つよ。強制退去しかないわ。」

「…提督、この星だけでも連邦の領域になるよう、再検討は出来ませんか。」

レミは顔を上げた。
「その再検討案は私が3日前に提出して、却下されたわ。コウちゃん、力になれなくて済まないけど、命令は命令よ。分かってるわね。通信終了。」
艦長室のフユツキは溜息をつきながら、レイちゃんボディーピローの上に顔をうずめた。


シンジが目を開くと、そこにはあられもない姿でドクターとちちくりあっているメグミ・ウワヅル・クラッシャーが
「きゃああああああああっ」
メグミの掌底をくらうシンジ。

「ぐはっ、と、父さん。……って呼ぶべきなのかな…」

「ちょ、ちょっと向こう向いてて!」
メグミに一喝され、シンジは目を逸らした。

「…さあ、これで良いわよ。」

「…」
シンジが振り返ると、ドクターの姿は消え、メグミはトラック野郎風のどてら姿でハチマキをしめていた。
「父さん…その格好は、一体…」

「私の普段の格好はこうなのよ。シンジ、しばらく見ない内に、大きくなったわね。」

「う、うん…」右手(だったっけ?)を何度か握り締めるシンジ。

「今日はどうしたの。何で私の所に来たのかな。せっかく良い所だったのに…

「あ、その、邪魔するつもりじゃなかったんだけど…何か、魂が…ビフィズス菌で…その、煙が、ボワーッと、それで、チ○カスが…」

「チ○カス?」

「いやその、あー、さあ、何で父さんに会えたんだか、僕にも良く、分からないんだけど…」

すーっ、ぷはー。
「まあシンジ、正直あなたがどうであろうと私的には全然関係無いわ。っていうか良い所を邪魔するのだけは止めてよね。」

「いやだから、邪魔するつもりじゃ、」

「違う、あなたの存在その物が邪魔なのよ!」
ずどーん。
タバコを持った手でシンジを指すメグミ。

「そ、そんな…」

「まあ何て言うのかしら、あなたはチャーハンにおけるグリーンピース的存在よね。ううん、邪魔って言うのは言い過ぎたわね。いてもいなくても同じって言った方が良いのかなあ。」
親にあるまじき発言を連発するメグミ。と言うよりそもそも親の自覚はない。

「ぐ、グリーンピース…」

「あんまり調子にのらない方が良いわよ、あくまでグリーンピースなんだからね。あるいはユースケサンタマリアとか…」
もわもわもわ…

「え、父さんそれで終わり!?」

メグミ・ウワヅル・クラッシャーは煙の向こうに消えた。
 

シンジは目を覚ました。
もぞもぞもぞ
「って何やってるんですかっ!」

ぎく
「あ、ああシンジ君もう目が覚めたの。思ったより早かったわね…」
くわえていた物から慌てて離れるサヨコ。
「結構薬の量多めにしたんだけど…」

「え゛ええ?」

「あ、いや、こっちの話よ、はは。そ、何か見えたものはあった?」

「…ええ、まあ、変な物は見ましたけど。」
降ろされていたパンツをはき直すシンジ。何だか慣れているようだ。
「ただの薬の幻覚だったんですね?」

「いや、それは違うの。信じてシンジ君。」

「ラカンタさん…」

サヨコはふと真面目な顔になって呟きだした。
「しんじてしんじくん…しんじってしんじくん…ぷぷーっ、ボキャブってるボキャブってる。」

「…」

「ああ、何でもないのシンジ君、気にしないで。…シンジ君、寝顔があまりに可愛いんで、つい襲おうとしちゃったのは謝るわ。でもこれだけは信じて。あなたが目を閉じている間に見た物は、あなたの魂が見つけた真理なのよ。」

「真理…グリーンピースが?…」

「グリーンピース?」

「(せめてシューマイのグリーンピースの方が良かった…)…いえ…」
シンジはベッドから降りると、タコベヤーンの部屋を出て行った。


外に出たシンジは連邦の職員達が多数出歩いているのに眉をひそめた。

「お前達3人はあの建物の向こうで待機だ。」
ゲォーフが士官達に何やら命令している。

「あの、ゲォーフ、一体何やってんの。」

「ん? ああ、シンジか。今私達は実力行使の作戦行動中なのだ。」

「ちょっと待って、つまりここの人達を無理矢理立ち退かせるって事?」

「ああ。そういう事だ。」

「そんな、ここの人達の意向も無視して…艦隊はそんな事を平気で出来るの?」

「…これは平和の為の代償なのだ。」

「そんなの勝手じゃないか! 皆さん! 彼等は皆さんを」

「お、おい、シンジ!」

「ふんっ」

「きゅう。」シンジの母親譲りの魔法に倒れるゲオ。

シンジは住民達に叫ぶ。
「彼等は皆さんを追い出そうとしてます! 強制退去させようとしているんですよ!」
「え?」「何だって!」「どういう事だ!」
通りは住民達の怒りの声で大騒ぎになった。


「シンジ君、これは一体どういう事かね。」
シンジを艦長室に呼んだフユツキは厳しい口調で問い掛けた。リョウジもフユツキの隣りに座っている。

「…」

「良いかシンジ君、今回の事について君が個人的にどんな意見を持つのも自由だ。しかしその制服を着ている間は、君は艦隊の一員だ、違うか。」
ピカードは息をつく。
「艦隊の規則の大原則「気持ちはマル遊、心はマル知」を忘れたとは言わせんぞ。」

「「(そんなの初めて聞いたんですけど…)」」
心の声が一致するシンジと副長。

「それは…」

「つまり、艦隊の一員である以上は上官の命令はそれがいかなる物であっても絶対服従だという事だ。」

「「(なら最初からそう言えよ…)」」

「今風の言い方で言うと、ちゃんと上官の言う事に従えばマル金。従わないのはマルビ。という事だ。」

「は、はあ…」

「これがいわゆるめちゃイケという奴だな。ナイナイ最高! 「岡ちゃん」のコント、面白いね!」
何故か物凄く馬鹿にした様子で憎々しげに言い放つ艦長。

「(何に対して怒ってるんだろう…)」
 

シンジは右手をぴょくぴょくさせながら言う。
「…か、艦長だって、僕の事、すっかり忘れてたじゃないですか…」

「それは…今の話とは関係無いだろう。」

「そりゃ、ないですけど…少しは覚えててくれたって…」

「お、覚えていたとも! 私が君の事を忘れる訳はなかろう?」

頷く副長。
「もちろんだシンジ君。艦長はシンジ君の事は何も忘れてなんかいない。ただ、1回艦長が君が空を飛ぶのを見た後それがかなりトラウマになったんで、ドクターが艦長の知らない間に艦長の頭の中の君の記憶を消去したりはしたんだが、」

「「え。」」

「あ、いや、その、冗談だ。冗談。…J、O、D、ANだ。」
ポーズをつける副長。

「と、とにかく、あんな事やそんな事までして、僕の体をああもこうもした艦長が今になって何も覚えていないだなんて、ちょっとひどすぎます!」
「J、O、D、AN、J、O、D、AN、このANのアクションがやっぱり」
「って副長はそこで何やってるんですか!」

「ああもううるさーい。知らん知らん知らん知らん知らーん。良いかシンジ君、君の私に対する気持ちがどうかも、今回の事とは全く無関係だ。とにかく君の行動は、艦隊士官としての自覚に著しく欠けるものだった。今回の事では、私も君の事をあまり守れないからそのつもりで。今後絶対にこのような事の無いように。良いな。」

「…良く、分かりました。」シンジは立ち上がった。
「つまり、こういう事ですね。僕は艦隊にいちゃいけないんです。」
シンジは自分の胸のバッジを取ると机に置いた。

「正式な辞表は明日出します。今までお世話になりました。失礼します。」
シンジは驚く2人を残し、艦長室を後にした。


「どうぞ。」
鞄に荷物をつめていたシンジはチャイムに顔を上げた。

「艦隊を辞めるそうね。」

「って、何で来るのが母さんじゃなくてレイタなんだろう…」
うつむき気味に呟くシンジ。

「私では邪魔かしら。」

「い、いや、そんな事無いよ。入って。」

レイタはシンジのそばの椅子にちょこん、と座った。と言っても彼女の実際の体重は185キロだ。
「クラッシャー君。私には人間の感情は理解できないのでその点に言及はしないわ。ただ少なくとも、一時の感情に任せて長期に影響する事柄の判断を下すのは、賢明ではないと思われるのだけど。」

シンジは頷いた。
「うん…レイタの言う事も良く分かるよ。…でも、僕が辞めようと決意したのは単に艦長に怒られた腹いせじゃないんだ。実は…この星で、あるネイティブアメリカンの人にタコベヤーンという部屋に連れて行ってもらったんだ。その、祈祷に使う場所らしいんだけど。そこで瞑想…かな?…をしたら、僕の父さんに会ったんだ。」

「あなたに父親は存在しないわ。」

「気持ちの上での父さん、だよ。そういう人が僕にはいるんだ、レイタ。それで父さんは、僕を調子に乗るなと諭したんだ。多分、プレッシャーを気にせず自分のやりたい事をやれ、みたいな事も言っていたと思う。うーん…言ってたんじゃないかな…」
段々自信無さ気になっていくシンジ。

「それではあなたは、幻覚の言葉に従ってあなたの将来を決めるのね。」
 

首を振るシンジ。
「いやレイタ、それだけじゃないんだよ。今思えば、元々僕は、艦隊には向いていなかったんじゃないか、とも思うんだ。その…艦隊の人達ってさ。個性の強い人が多いって思った事、ない?」

「そう?」

「うん。変な格好をしてる人とか、変な口調の人とか、変な趣味の人とか…普通の人がたまにいると凄く珍しい感じがするし。でも僕には、そういう環境は向いてないのかもしれない、って最近結構思うようになってたんだ。」

「そう。」

「レイタ、僕の事心配してくれて有り難う。でも、申し訳ないけど、艦隊は僕の居場所じゃないんだよ。」

「あなたは士官としての能力は低いもののマスコット的意味において非常に有用だったので、艦隊の脱退は惜しまれるわ。」
シンジは苦笑する。続けるレイタ。
「でも以前、トードー・トラベラーという生命体はあなたの事を「お前さんは普通の人間を越えた能力がある」と高く評価していたわ。あなたには確かに別の道があるのかもしれない。」

「有り難う。レイタなりに誉めてくれてるんだね。」

首を傾げるレイタ。
「私は事実を述べているに過ぎないわ。」

「うん、そうだね。」
シンジは微笑んだ。


シンジはサヨコに会いにドンベエの地表に降りていた。シンジは周囲の様子を怪訝気に見回した。

2人のアオバシア兵に、血の気の多そうな若者の住民達がフェイザーを突きつけていた。
「お前達ロン毛野郎は出て行け!」
口々に叫ぶ住民達。

近くにやって来たゲォーフが住民達に言う。
「お前達、武器をしまえ! 彼等はただ事前調査にやって来たに過ぎん、勝手な真似は止めろ!」

「勝手な真似をしているのはお前達連邦やアオバシアだ!」
ゲォーフにもフェイザーを向ける住民。後ずさるゲオ。

「か、かんちょおー。住民達がアオバシア兵を人質に取ってしまったー。」
ゲォーフは通信機を叩き、冷や汗をかきながら囁いた。
 

「何ですって!」
エバンゲリオンのブリッジでピカードと会談中だったシゲックは声を上げた。

「ガル・シゲックより戦艦キース・リチャーズ。」

「こちらキース・リチャーズ、ブリッジ。」

「我が方の兵士が原住民に人質に取られた模様だ。直ちに応援班の準備、侵攻に備えよ。」

「ファック・アン・ロッケンロー。(訳:了解)」

自分の船との通信を終えるシゲックにピカードは迫った。
「シゲック、そんな事をしたらどういう事になるか分かっているのかね。もし君達が現段階でこの星を攻撃すれば、我々も住民を守らざるをえない、」

「つまり、戦争が再び始まるという事っすね。」
自分の言葉を継ぐシゲックに艦長は眉をつりあげた。
 

「ふんっ」
住民に囲まれているアオバシア兵の内の1人が、彼等からフェイザーを奪おうとした。騒然とする通り。しかし彼は取る事が出来ず、アオバシア兵達と住民達は揉み合いだす。
「やっちまえ!」
「くそっ」
「絶対コケるぞウェブTV!」

「くらえっ!」
ぴしゅん。
そして住民の1人がアオバシア兵にフェイザーを
「やめろおおおおおおおおっ!!」
 

シンジが叫ぶと、全ての景色は静止画のようにピタリと止まった。フェイザーの光線も、飛び出したアオバシア兵も、その外の住民達も全て止まっている。
「…え? な、一体何が…」
周囲を見回すシンジ。

建物の前の住民達の中から、サヨコが現れ、シンジの前に歩いてきた。彼女とシンジだけが普通に動いている。
「ラカンタさん! これは一体…もしかして、僕の魔法が効き過ぎたのか…なるべく抑えるようにしていたんだけどな…」

「これは単に魔術といって片づけられる物ではないわ、シンジ君。シンジ君は今、通常の概念で言う所の「時間」を超越したのよ。」

「…ラカンタさん、あなたは…」
サヨコ・ラカンタは微笑むと、その姿をモーフィングさせた。
「…トラベラー!!」

「俺はお前さんがここまで立派な男になるのをずっと待っていたんだ…」
トードー・トラベラーはその70年代ダンディズムな顔でニヒルに笑った。
 

「って、ちょっと待って下さい、つまり僕の…をしゃぶ…ってたの…って…」

「細かい事は気にするな、坊主。」

「僕にとってはそれほど細かくない事なんですけど…」
と言いながら何故か頬が紅潮気味になるシンジ。

「お前さんは見ての通り、時空を飛び越えた。これは人類が新たな生命体に進化する為の第一段階だ。」

「は、はあ…でも、じゃあタコベヤーンで僕が見た物は、トードーさんが?」

首を振るトラベラー。
「俺はお前さんの可能性をほんの少し、後押ししただけさ。あれを見たのはお前さん自身の力だよ。坊主、俺と一緒に、この新しいステージを修練していく気はないか。この先は楽しいぞ。酒はうまいし女は綺麗。誰かロマンチック止めて。胸が、胸が、切なくなるー。だ。」

「…でも、ここの人達は?」

「ここの奴等は心配する事はない。奴等はちゃんと、自分達で事態を解決していくさ。」

「あの、これって…プロポーズ?」
自然と表情が上目遣いになるシンちゃん。

「……そんな大袈裟なもんじゃねえよ…」トードーは(何処からか出した)煙草の煙を吐きながら答えた。

「…」
シンジはトードーを見つめ、無言で手を取った。

「良いんだな。」

頷くシンジ。

「じゃあ、行くか…」

トードーとシンジが歩き出すと、彼等の背後の世界は再び時間が進みだした。


住民の撃ったフェイザーはアオバシア兵を直撃した。倒れるアオバシア兵。
 

「我が方が1人狙撃を受けました! いつでも上陸可能っす、指示を願います!」
キース・リチャーズからシゲックへ通信音が入る。

「…」口を開きかけるシゲック。

ピカードはバッジに呼びかける。
「ピカードより保安部! 保安班を地表へ転送準備。いつでも出撃できるよう待機し給え!」

「了解。」

「シゲック。よく考え給え。ここで今何をすべきで、何をすべきではないのかを。また戦争を始めるつもりか?」

「ガル、指示をお願いするっす!」

「…」

「シゲック! これまでの平和への双方の努力を水の泡にするとは言わせんぞ。そんな事をしたらJAROに訴えてやるからな! ハウス食品の洗脳的な深夜のCMの多さと一緒に訴えてやる!」
ダチョウ倶楽部の「やー」のポーズを構えるフユツキ。

「ガル、指示を!」

シゲックは歯を食いしばった。
「…ガル・シゲックよりキース・リチャーズ。そのまま待機しろ。」

「…は? ガル、こちらが1人やられてるっすよ!」

「待機しろと言っているんだ、聞こえなかったのか!」

「ふぁ、ファック・アン・ロッケンロー。」
通信は切れた。

「ピカードより保安部、保安班は持ち場に戻って良し。」

「了解。」
 

「ふう…」
シゲックは溜息をついた。
「ピカードあにぃはグレートな兄貴っす。…ここで兄貴と殺し合いはしたくない。」

ブリッジのクルー達はほっとした様子で目を合わせた。


「それで本当に良いのですか、ノチラスさん?」
エバンゲリオンの会議室で、フユツキは不服そうな表情でアンスワラに聞き返した。

「ああもちろんじゃ。わしらはこの決定に文句は無い。元々連邦政府とも大して関係があった訳ではないのじゃ。今更領主が変わった所でどうという物でも無いわな。お主も、それで構わないのじゃろ?」

テーブルの向こう側に座っていたシゲックが答える。
「皆さんの安全を保証する事は出来ないっす。でも、皆さんが中央政府に口を出さない限りは、我々も干渉はしないでしょう。」

「ほれ。これで全て丸く収まるという訳じゃ。」

「しかし、これからは星はアオバシアの領域になります。皆さんがこれからもここに残られるという事は、今までとは違い、皆さんの身に何が起きても私達が守りに来る事は出来ないという事です。その点は分かって頂けますね。」

「それで構わん。これにて一件落着じゃな。」

シゲックは立ち上がった。
「さ。兄貴、名残惜しいっすけど、そろそろ失礼するっす。これから上官相手に報告ソングを作曲しないといけませんので…」

「頑張ってくれ給え。」

「それじゃ。」
シゲックは会議室から立ち去った。
 

アンスワラはニヤリと笑って見せた。
「ピカード大佐。言った通りになったじゃろ。お主はわしらを動かす事など出来んと。ま、お主は先祖の罪を立派に償ったとは言ってよかろうな。いやいや、中々のもんじゃったぞ。」

「…(ヒゲ引き千切ったろか…)」ピカードはムッとした表情で答えた。


トラベラーは自分の腕に抱き付いているシンジに、思い出したように告げた。
「ああそれからもう一つ言っておくが、お前さん達の世界ではお前さんは死んだ事になったからな。」

「え。」

「死んだから。いやあ、まだ地球人は生きたまま行ったり来たりは出来ねえんだなあ。」

「ええええええ!!!!!!! ちょ、も、ちょ、ちょ、も、戻してよ!」

「それは俺の力でも無理だなあ…」

「おいいいいい!!!」
 

「それにしても、間一髪でしたね。」

「(あのー。)」

「ああ、シゲックには助けられたよ。」

「(僕の事、忘れてませんかぁー。)」

「艦長、ドンベエ星の軌道を離れるわ。」

「(おーい。)」

「分かった。ワープ5、発進。」
 

「思いっきり忘れられてる…」
エバンゲリオンの様子を見ながらブルーになるシンジ。

「奴等は忘れてる訳じゃない、ただ、俺が奴等からお前さんに関する記憶を消しただけさ…」

「ちょ、ちょっと、酷いじゃないですか!!」

「その方が騒がれないし、ラクだからな…」

「最悪だ…」
 

その時ブリッジにカウンセラーが現れた。
「どうしたカウンセラー、まだ休んでいて良いぞ?」

「え、ええ、でも、仕事もありますから…」やや青い顔ながらよたよたと歩き、風呂場に潜るカウンセラー。
 

トードーは眉を上げた。
「え、あいつ生きてたのか。記憶消すの忘れたな。」
 

ミサトは水から顔を上げる。
「あれぇ? シンジ君がたしか乗船する予定でしたよねえ。もう帰っちゃったんですか。」

「「「「え?」」」」
 

「ミサトさぁん。」(TvT)
 

「先輩、また誰かと間違えてんじゃないすかあ。」

「カウンセラー、君はまだ疲れているようだな。」

「は、はあ…」ミサトは自身無さ気に周囲を見回す。

「そのような名前のクルーが当船に乗船したという記録は無いわ。」

「そ、そう…」

「トロイ、ゆっくり休んだ方が良い。」

「…はあ…」

「(あんたら…)」

ミサトは納得したように頷いた。
「…いないか、そんな印象薄い名前の奴なんか。」

「(…ミサトさぁん。)」(ToT)

ぶくぶくぶく。

つづく
 


次回に続くよどこまでも
 
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次回予告

ヒカリは最近のシンジの苛立った様子を見兼ね、何か体を動かすよう忠告する。何とはなしに大学の山岳部に入部するシンジ。最初こそやる気のなかった彼だが、知らない内に山の魅力に取りつかれていた。残雪の春山を登る事になったシンジ達。しかし部員が怪我で足りなくなり、急遽第二東京大学山岳部と合同で登る事になる。そこの部長はトウジだった。シンジとトウジはさっそく指揮系統のあり方を巡って衝突。先輩達に押さえられるが、気まずい雰囲気のまま登山が始まる。
八合目に差し掛かった頃、トウジは危険な南ルートを使う事を主張する。決裂は決定的となり、2グループは分かれて進む事に。それから数分後、シンジ達はトウジ達のSOS信号を聞く事となった。
他のメンバーは無事だったが、トウジは足を滑らせて谷に落ちていた。しかしこれ以上動くと大きな雪崩が起きるかもしれない。シンジは、トウジの「来るな」という言葉も聞かず彼の元へ行き、間一髪でトウジを救出する。そしてその時トウジの右足が無い事に気付く。彼は高校生の時に交通事故に遭って以来、義足をつけていたのだ。
山を下りたシンジとトウジはお互いの今までを話し合っていた。和解する2人。シンジの詳しい話を聞いたトウジは、シンジが今でもアスカの事を好きなのではないかと尋ねるのだった。シンジは自分にはヒカリがいるからと軽く否定する。
翌日、アスカの研究室の前に来るシンジの姿があった。次回「真夏の子供達」第28話、「御殿場JCT」。御期待下さい。

本当の次回予告:最終回イブイブ。脇役達の話。
 



 
後書きコーナー

「あれ、何で僕が後書きに出るんだ?」
「メインのレギュラーキャラで2度出てないのってマコっちゃん位だって事に気付いたからです。」
「いや、シンジ君を呼ぶのが怖くなったからじゃないのかい?」
「(平然と)それも大きいです。」
「…」
「ところで、何でシンジ君を殺しちゃったんだ?」
「自分で質問してるし。」
「それはですね、特に意味は無いのですぅー。」
「フラン研君、ちょっと大丈夫か?」
「はいですぅ。」
「…暑さにやられたのか?…」
「さ、たまには真面目に作品の解説をしてみよう! 今回のテーマは、「エヴァトレ自体の変化」だ!」
「また自慰的なテーマだな。」
「エヴァトレは基本的に思い付きで書かれているにも関わらず量だけは結構な物になっているので、一杯設定が溜まる訳だわ。例えば今回なら第二話をちらっと見直したり、「ペング偏執の謎風味」の時は以前リナーが出た回を見直したりする訳だわな。でこの時に、昔と今のエヴァトレがまるで違う小説になっている事に気付く訳だ。」
「それは何故かというと、思い付きで書いているからだね?」
「うっさい。もう既にこの小説がエヴァ小説じゃなくなっている事や大きさの変遷等は良く知られていると思うが、ここでもう一つ例を挙げよう。それは、フォントの拡大だ。」
「フォントの拡大。」
こういうやつね。これが基本的にどんどん少なくなっていっている。今見たら、今回なんか今使った分以外は1個もなかった。」
「それは一体何か意味があるのかい?」
「フォントを拡大するという事は即ち「ここで笑って下さい」という印な訳だ。それが無いというのは、それだけ笑いに自信がある証拠、作りの笑い声を入れないお笑い番組のような物だな。客に媚びていない訳だ。」
「何だか、相当な自信だな…」
「まあ、他の人のギャグ小説を読んでいないからこそ持てる自信だな。(きっぱり)」
「じゃだめじゃん。」
「はいですぅ。」
「それで逃げるのか…それにしてもシンジ君は本当に死んだのかい? しかもこんな呆気ない死に方で。」
「さあ?」
「さあ?かよ。」
「必要になったら生き返させるかもね。でも取り敢えずは必要無さそうだしね。」
「どうしようもないな。」
「これで良いのだですぅ。そんなとこだメガネ君。」
「…また、随分懐かしい言い方だなあ。」59秒後作者死亡。(死因ラブゲッティ(トレンディだねえー)。)

以下次回





 フラン研さんの『新エヴァントレック』第二十七話、公開です。




 ”影が薄い”
  なんてもんじゃなくて
 ”忘れ去られたいた”彼。


 ああ、さようなら〜



 全ての人の記憶からきれいさっぱり−−−

 ここまで行くと、気持ち良いやね(^^)



 次回予告のシンジは主人公しているから
 こっちはこれでいいのだ!    いいのか?!(爆)





 ふと思いついたんだけど・・

 26でのあのテクニック、
 「18禁小説で導入してくれないかなぁ」


 全編を通して読みたいとき、
 肝心のシーンだけ読みたいとき。 (^^;

 便利だと思うんだ・・


 うっしっし。





 さあ、訪問者の皆さん。
 感想メールは喜びです。フラン研さんにメールを!



TOP 】 / 【 めぞん 】 / [フラン研]の一日:(前編の続き)0900頃また起床。寝過ぎで頭痛。WWWCで巡回チェック、しかるのち掲示板巡り。1100頃発情期。1200頃昼の餌(シーフードヌードル)。その後しばらく落ち物ゲームをやった後、衛星放送のスタトレのビデオを見る。1500頃、就寝。今日も有意義な一日であった。