TOP 】 / 【 めぞん 】 / [フラン研]の新発明:究極の安全カー:時速10キロ以上は出せません(出すと自爆)。更に前方10メートル以内に障害物を感知すると自動的に操縦席を射出した後、障害物を砲撃。ドライバーを衝突事故の危険性から守ります。/ NEXT
バナー(ヨッシーアイランド)
今回NC4以外の一部ブラウザ(例:IE4)ではJAVAScriptギミックの一部が作動しない事が確認されています。ごめんなさいね。


 
「ヌルキチャドン! きゃーっ、吸盤が5番、8番、大当たりーっ!」
ヌルキチャガールズが黄色い歓声(と青い稲妻、赤い血便)を上げている。

「ああああーしかし何ですネェモネタケさん。あきんどがこんな事ではいけないのでしょうが、正直最近のアイドルという物は、何とも良く分かりませんですネェ。」
スープをおたまでかき混ぜながら、チョビ髭のフェレンスケ人がカウンター越しに、そば湯をゆっくりと飲む宇宙人に話し掛けている。その宇宙人は顔の長さが1メートル近くあり、ぬぼーっとした様相で無言でそば湯を飲み続けている。

「モーニング娘。の。って一体何なんでしょうネェ。川平慈英に聞いてみたい所ですよ。それから元ウインクの片割れ。あれはまた、痛々しいですネェ…」
構わず喋り続けるプワーク。モネタケは無言、無表情だがプワークの言う事に頷いた。

「あのー。ちょっと良いかしら。」
モネタケの隣りの椅子に腰掛けた女性が、彼に話し掛けてきた。連邦の制服を着ている。
「ハゲで、年は60歳位、「だっちゃ」が口癖で木工用ボンドの臭いがする地球人をこの辺りで見なかったかしら?」

モネタケは彼女の言葉に目を泳がせていたが、やがて「ああ」という感じで人差し指を出し、彼女に何か言おうとする。
「あーっ、モネタケさん。もう今日は大分、飲み過ぎましたネェ。さあ、そろそろお帰りになった方がよろしいでしょう。ねえ。」

「ちょ、ちょっと、私は今彼に聞きたい事が」

「あーモネタケさん、明日は特別に養命酒を一本タダでお付けしておきますよ。ですからもう今日は。ささ。」
カウンターから出てきたプワークは、モネタケを半ば無理矢理ラーメン屋から連れ出そうとする。
モネタケは2人を見ると、肩を上げ、女性に手を振ってラーメン屋から出て行った。
 

「ちょっとぉ。私の邪魔をする気い?」
その女性、カウンセラー・ミサト・トロイは眉をつり上げてプワークに迫った。

髭をぴーん、と張らせるプワーク。人差し指をあげる。
「あーっ、お美しいお姉さん、どうやら少しいらいらしてらっしゃるようですネェ。こんな時は生プリン付き野ワサビフガフガなんかが…」
「プワークさん。どうかされたんですか。」

「うっ…」
プワークが振り向くと、ルドーとエリナがニコニコしながら腕組みしてこっちを見ていた。思わずメガネのずれるプワーク。


―宇宙。そこは最後のボランティア(意味不明)。これは、宇宙戦艦エバンゲリオン号が、新世代のクルーの下に、24世紀において概ね任務を続行し、未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求めるふりをしつつ、人類未踏の宇宙に、アバウトに航海したりしなかったりする小話である―

Evan Trek -The Legend of Galactic Fools
Evan Trek The Next Generation
新エヴァントレック
 
Gauntlet
第二十五話「謎の栄治さん部隊」 

 
「いやですネェ司令官。私はただのファンシーララ好きの一バーマスターですから。そんなそれぞれのお客様の情報なんて分かる訳がないじゃないですか。」
ナデシコ内の司令官室に連れてこられたプワークはかぶりを振った。

「ただの一バーマスターねえ…それにしては随分普段から人に詮索を入れているわよねえ。」
エリナはプワークの周りをかつかつ歩く。

「それは少佐、バーマスターたるもの、常にクライアント様の気持ちをしっかりと把握し、それぞれのご気分にあわせてラーメンを作ったり、サラダを作ったり作られたりするものでございますから、はい。」

「じゃあ自分の店内で人が消えるような事になったらすぐに分かるわ゛よねえ。」あくまで微笑みながら、片手でプワークの首を持ち上げるキラ少佐。

「あぐ…ご、あがぐ。(訳:ちょ、ちょっと! ギブ、ギブ!)」

「それ位で良いだろう、少佐。このステーション内で自殺は困る。」
机の上で何やらジオラマ制作中のシスコはキラを制した。

どさ。
「けほ、けほ、けほ…(訳:自殺じゃないじゃん…)」
 

「…でも司令官、私はよく知らないけど、その方は連邦にとって大事な方なんでしょ?」
司令官の机を椅子代わりにしてむすーっと座っている、エバンゲリオンのクルー達(ゲォーフ、ライカー、カウンセラー)を物珍しそうに見回すキラ。

「ああもちろん重要な方だ。彼はいくつもの星の紛争を解決してきた最重要人物と言っていい。実際彼の活躍は連邦中で語り継がれている。いわば生きる伝説だな。」
キキとララのフィギュア(?)を両手に持ったゴートは立て板に水の勢いで答える。何故か非常に罰が悪そうになる3名。

「プワーク。君にとってはただのお客かもしれないが、事は連邦を揺るがす一大事だ。君の協力が得られないようでは、この先連邦はフェレンスケとの付き合いかたを考え直さなくてはならなくなるかもしれない。」

「そうしたらグランド・ネーガスやアドア・モリカワーはあなたの事をどう思われるんでしょうね。」
司令官の言葉に付け足すルドー。

「そ、そんな司令官! 第一私が見たのは制服なんか着てないただの旅行者で…あ」
 

「見たのか!」
プワークは自分に迫ってきた(司令官並に)凶悪な顔のゼレンゴン人に顔を引きつらせる。
「あ、いや、ですからその、これは言葉の綾というものでして」

「み゛だの゛がーーーーっ!!! 艦長しゃんうぉーおおおおおおおっ!」
お目めウルウルお鼻グジュグジュでプワークの首を揺らすゲォーフ。

「あがあぐがああぐあぐあごごご(訳:い、いたっ、舌噛んだ舌、あごごご)」

「ゲォーフ。」
ゲォーフの肩に手を置くカウンセラー。
「ぶ、ぶ、ぶわーーーーんん。」

「よしよし、よしよし…」
カウンセラーは膝にすがり付いてきたゲォーフの頭を撫でる。

「「「「…」」」」

「すーん、すーん…」
全員が呆気に取られる中、ゲォーフはカウンセラーの膝の上ですやすやと。
 

「…君が情報をくれるなら、こちらもお礼をしないでもない。」
風車は、懐からちら、とラチナム円を見せる。途端にヒゲがぴん、と張るプワーク。

「そういう事でしたらお話は。ええ、お幾らくらいで…」

「500ラチナム円。」

プワークは失笑する。
「ご、御冗談でしょう。せめて5万ラチナム円は頂かないと…」

「400ラチナム円。」

「いやあの…」

「200ラチナム円!」

「「下がってる、下がってる。」」声を揃えるキラとカウンセラー。
 

「いいえ、そんなお金なんてプワークさんは不要です。」
ルドーの声に司令官室の面々は驚いて顔を上げた。
「プワークさんは正義のラーメンマンですから。もし何か店内であったら報酬無しに私達に教えてくれるはずです。そうですよね、プワークさん。」

「そ、それは…」
呟くプワークの眼前10センチメートルに、生け花の台に使えそうな針の大群(に変形したルドーの手)が迫っている。
「あ、いや、そのですネェ…」

「うう、うう、ううっ…」
今度はカウンセラーが泣き出した。

「女性を泣かせるもんじゃないわ゛よ、プワーク。」腕組みをして微笑むキラ。

「うう、うう…(今は亡き本物を思い出すわ…)」
 

「はあ…」プワークは溜息をつき、頭を振った。
「はげ頭の地球人の方ですか。確か3日前にここに来られましたネェ。何でもお忍びで、これから自然のある場所で数日ゆっくりするとかおっしゃってました。何だか、随分その事を恥かしそうにおっしゃってましたネェ。「こんな普通の趣味は知り合いには言えんよ」とか何とか…」

「無駄話は良いから、結局彼はどうなったの。」プワークの耳をひっぱるエリナ。

「いだだ。…ええ、それで、かなり酔われたようで、確かロミュラスカのお客様と口論に…」

リョウジとゴートは目を合わせる。
「ロミュラスカ人が来てたのか?」聞くシスコ。

「ええ。お1人、民間人の方でしたネェ。黒髪の上玉の美人でしたねえフッフッフッフッフ…」

「プワーク。」エリナの声に我に帰るプワーク。

「あ、ええ。それで…」

「それで? 口論の後どうなった。」

「ええ、その…」

「その?」

プワークは目を泳がせた。
「……あーっ、その、ロミュラスカの方が地球人の方に何か機械を突きつけて、それで、地球人の方はその場でシュワーっと消えてしまったような気がするようなしないような…」

クルー達は表情を変えた。


(ルドー権限で)臨時閉鎖されたプワークのラーメン屋で、船から降りてきたレイタとリョーコ・ダックス、ドクター・ナガレが床や壁や椅子をスキャンしていた。
 
「プワークの話によると、この一角にいたらしいんだけどな…」
呟きながらトリコーダーをかざすダックス。

「けど本当なのかい、彼の話は。」ナガレの様子に、リョーコは「ちっちっ」と指を振る。

「奴はあきんどだ。1回契約した相手には嘘はつかねえよ。」

「契約って。またどうせルドー君辺りが無理矢理脅かしたんでしょう?」

「うるせえなあドクターは…」

「呼びました?」入り口から顔を出すルドー。
 
「ああいや、何でもねえんだ。 あは、あははは。
「ああ別に、何でもないよ。
声を揃える2人。
 

「3日の間にあらゆる痕跡が薄れていると思われるので、検査は慎重を要するわ。」
 
「あ、ああ、 少佐。
「了解、

「少佐とルドー君ってどこか雰囲気が似てないかい?」
ドクターはダックスにひそひそ言う。

「あ、ああ、確かに肌の色とか、」

「人の話を聞かない所とか、」

「私は流動体生物ではないわ。」トリコーダーをかざすレイタがどうでも良さ気に割って入る。

「ああ、いや、べ、別に悪気があって言ってる訳じゃねんだよ。」
声の上ずるリョーコ。

「呼びました?」

「呼んでねえよ!」

ルドーはダックスの声に不思議そうに首をかしげると、のばした頭を入り口から引っ込めた。
 

ダックスは検査を続けるレイタに、にか、と微笑んだ。
「あ、なあ少佐、ちょっと質問しても良いか。」

「構わないわ。」

「少佐はアンドロイドなんだよな。」

「ええ。」

「その、アンドロイドっていうのは、どこまで人間と同じ機能があるんだ? つまり…歌を歌う機能はあんのかい?」

「歌?」

「ああ、歌だよ。」

「まーた始まった。」

「ドクターは黙ってろよ。」

「…」レイタはやや顔を上げ、リョーコを見た。
「私は人間ではないので楽しみで歌を歌う習慣は無いのだけど、必要であれば歌う事は可能よ。捜査に必要なの?」

リョーコは笑う。
「あ、いや、そうじゃねえよ。ただ、人間にとって一番大事な物は歌だ。そう思わないか?」

「いいえ、人間にとって一番重要な物は排便よ。」
何故か決然とした様子で言い切るレイタ。

「「え゛。」」砂化する2名。

「ハッシュド反応がここに見られるわ。」レイタが一角のテーブルにトリコーダーをかざして言う。急いで同じ所をスキャンしだすダックス。

「ああ、間違いねえ。ロミュラスカのフェイザーに特有の反応だ。3日前の量で計算すると…致死量のフェイザー出力だ!」

「ちょっとここ、良いかな?」
ナガレは2人の間に割って入り、壁面をスキャンしだした。

「…」「おいおい、何だよ。」少しムッとした表情の2人。

「いや何、大した事じゃないんだけど、ここの壁、ピカード大佐の血の反応があるからさあ。」
 

「…」「な、何だって!」
声を上げるリョーコと、無言ながら目を見開くレイタ。

3人の前の壁には、人型で赤い血がべっとりと壁面一杯についていた。

「…」「こ、こんな所にそんな反応があっただなんて…」深刻な表情の2人。


副長日誌、宇宙暦47135.2。宇宙ステーション、ディープ・スペース・ナデシコのルドー保安チーフの協力で、プワークは艦長を殺したのが盗賊団の一味で、どうやらハラダシ星系に向かったらしい事を自白。ナデシコを離れ、エバンゲリオンでハラダシ星系へ航行中。間もなく星系へ到着する。

「何か反応はあるか。」

レイタは副長の声に軽く頷いた。
「地上に何らかの人工的なエネルギー反応があるわ。ただし基地と呼ぶほどの規模ではないのだけど。あるいは遮蔽フィールドを張っているのかもしれないわ。」

「分かった。今から上陸しよう。と言っても今は、俺が艦長代理だからな…俺はやっぱり船に残ってないとなあ。」
ニヤニヤしながらライカーは艦長席にふんぞり返った。

「「「…」」」
何か言いたげに副長を見るクルー達。

レイタは懐から日記帳を取り出した。
「…副長。艦隊規則に従い、艦長が亡くなった現在私が副長の日記を受け取っているわ。」

がーん。
「(規則だったのかよ!!)」
 

力無く立ち上がるバラ園。
「分かった。行きますよ。行かせてもらえて嬉しいですよ。ふへへ…」


ぴぎゅいいいいいんん。
星の地表の岩場に転送されてきたバラ園、ゲォーフ、レイタを始めとする5、6人の上陸班は、フェイザーをかまえ周囲を見回した。

トリコーダーをもう片手でかざすレイタ。
「エネルギー反応はこちらの方向に見られるわ。」

その時ゲォーフが物音に気付き声を上げた。
「危ない、伏せろ!」

ぴぎゅん、ぴぎゅん、ぴぎゅん。
ゲォーフが叫んだ瞬間、岩場の陰からフェイザー光線が次々に発射された。即座に伏せ、自分達も別の岩の陰に逃げるクルー達。

ぴぎゅん、ぴぎゅん。
フェイザーを打ち返すクルー達。しかし向こうからの攻撃が止む様子はない。
 

「このままじゃ埒があかない。やはりここは俺が、ガンマンとしての腕を見せないとな…」
岩陰で、珍しく渋く決めるバッシュ・ザ・薔薇夫人ライカーはふ、と余裕の笑みを見せた。

ばっ
「降伏しろ! そこまでだ。」岩場の陰からおどりでるライカー。フェイザーを持ったまま、隙の無い表情で周囲を見渡す。静まり返る岩場。

叫ぶゲォーフ。
「副長(志村)、後ろ!」

「へっ」
ぴぎゅーん。
「うわっ」
副長は背後からロミュラスカ人の発射したフェイザーに撃たれ、しゅわーっと姿を消した。とほぼ同時に敵達はどこかへ転送されて行った。

「「…」」
ゲォーフやレイタ達は立ち上がり、周囲を見回した。敵は全員逃げてしまったようだ。
「ふ、副長しゃんまで…」放心状態で再び座り込むゲオ。

レイタは胸のバッジを叩く。
「レイタ少佐よりブリッジ。」

「はい。」緊迫したローの声が聞こえてきた。

「付近に船が無いかスキャン。」

「いや、っていうか今目の前に船がいるんです。今報告しようと…」

「分かったわ。レイタより転送室、上陸班をブリッジへ直接転送。」
 

ぴぎゅいいいいん。
ブリッジに来たレイタはマヤに命令を下す。
「船を追跡、戦闘態勢。」

「いや、あの…」

「何。」

「今、見失っちゃって…多分、遮蔽装置を使っているんだと…」
マヤの言葉にレイタはむっつりと黙り込んだ。
 

「…そう。それでは仕方ないわ。」

「す、すいません。」

「今週の艦長は私なのね…」レイタはニヤリと笑い、小声で呟いた。


リョウジが目を覚ますと、目の前に宇宙船の天井があった。
「…」
腰の痛みに顔をしかめるライカー。頭の穴ポコのバラを手に取った彼は、それを見て嬉しそうに一息ついた。
「良かった、まだ枯れてない。」
 

「気がついたね。」
目の前に、金髪でハスッパ風のエイリアンがバタフライナイフをチャラチャラさせながらライカーの目の前をうろついていた。

「あ、ああ。」
よく見ると、ここは小型船のブリッジで、他にもクルー達がいる。どうやら全員種族はバラバラだが、女性のようだ。そして目の前の彼女がこの船の艦長であるらしい。

「彼は殺すの。」クルーの1人が艦長に聞く。メガネでおとなしい印象のクルーだ。

「ルツ、何でそう簡単に人を殺すような事を言うの。ナオミは悲しいよっ!」
茶髪で活発な雰囲気のクルーが声を上げた。

「別に私はただ聞いただけよ。」
ナオミに冷静に言い返すルツ。

「そうだね…見られた以上、ただで返す訳にはいかないな。」ナイフの柄を手に叩きながら、艦長はライカーの顔を覗き込む。
 

「もう、リベカ(って一体何語?)まで!」立ち上がるナオミ。

リベカ艦長は、ナオミを睨むと何やら手元のスイッチを入れた。
「ううっ」
途端に両耳を押さえて苦しみだすナオミ。

「良いかい、私はあんた達全員の生死を握っているんだ。まだ分かっていないみたいだね。少しでもあんた達が私に歯向かおうとすれば、主があんたに罰を与えるよ。」
かちっ

「…はあ、はあ、はあ。」
リベカがスイッチを切り、ナオミはようやく耳から手を押さえた。

リベカはライカーに振り返った。
「あんたにも言っておくよ。首に装置がついてるだろ。」
彼女の言葉にライカーは自分の首を手で探る。確かに小さな何かの装置が首の後ろに装着されている。簡単にはとれなさそうだ。
「少しでも変な気を起こしたら、死ぬから。そのつもりでね。」

「でも、ベコールさんの言う事にも一里アルミニウムあるとは思いませんか?」
黒いロングヘアーで、落ち着いた印象のロミュラスカ人がリベカに近づく。

「ハンナ!」嬉しそうに声を上げるナオミ・ベコール。

「私達は人殺しがしたい訳ではありません。もし彼が私達の役に立つようなら、ここで殺すのは勿体無い話だと思いませんか。」

「…それもそうかもしれないね。」
ハンナの落ち着いた態度に苛立ちながら、リベカが応じる。
「あんた、ここで私達と働く気はある?」

ライカーは微笑むと、頭のバラを一本抜いてリベカに差し出した。
「そろそろこの制服にも飽きた頃だ。内容によっては、違う仕事につくのも良いかもしれない。」
 

「いいえ、やっぱり彼は殺すべきよっ!」
リョウジはその声にビクッと眉を寄せ、後ろのコンソールのクルーを恐る恐る見た。

「私は彼をしっているわぁ。彼は、エバンゲリオンの副長で、艦隊中で評判の悪いどうしようもない奴よっ! ぷんぷんぷん!」
後ろのコンソール前の椅子に、ブルマ&体育着のハゲがいた。


がーん。
「(オヤジの女言葉だあっ!!)」顎が外れるライカー。

リベカはピカードそっくりのハゲを疑わしそうに見た。
「随分と連邦の事に詳しいね、マリネー。」

「私は昔ぃ、連邦の奴等とも貿易をした事があるわぁ。そいつらが皆言ってたわぁ、エバンゲリオンのリョウジ・ライカーは男の癖にショタで、周りの言う事を聞かずに悪さばかりする、当然仕事もしない最低の外道だってぇ。きゃーっ、怖いわぁ!」

「(全部あんたの事だろ…)」
ライカーは頬がひきつりだす。

「…」
リベカは少し考え込み、「マリネー」とライカーを交互に見た。
 

ずが、ずがーん。
その時船を衝撃が襲った。照明の落ちる船内。

「どうしたのっ!」

「エンジンの故障よ! 蟻動力ディフレクターの接続がおかしいんだわ!」
パネルを操作しながらナオミが叫ぶ。船はガタガタ揺れ始めた。

「また?」

「このままでは後5分で生命維持装置に支障が出ますね。」
リベカを責めるかのように冷静に言うハンナ。

「直しなさい、早く!」

ナオミはリベカに首を振る。
「駄目よ、後5分で直せるような故障じゃないわっ! こんなオンボロ船を酷使していたら、もつ物ももたないわよっ!」
バチバチ
「うっ」
コンソールから(何故か)飛ぶ火花を手でよけるナオミ。

「俺が直そうか?」
リベカはリョウジの言葉に顔を向けた。
「出来るの?」

「出来る訳が無いわ、奴は艦隊一のちくちくさんよっ!」声を上げるマリネー。

ずが、ずがーん。
リベカはリョウジに頷いた。
「…やりな。変な気は起こすんじゃないよ。」

「この状況じゃ俺も危ないだろ?」呟きながらリョウジは立ち上がり、ナオミのいるコンソールの前に来る。

ナオミの隣りのルツが静かに尋ねる。
「連邦のエリート士官にこんな老朽船の事が分かるの?」

「まあ見てくれ。」
パネルを操作しだすリョウジ。
「イナゴの量を通常の倍に設定…蟻動力エンジンにアルフィール照射。」

がたがたがたがたがた、がた、がた。
彼が操作をして数秒経つと揺れは止み、明かりが再びついた。

クルー達は驚いた目でライカーを見た。
 

「…エンジンが通常出力の80%まで回復しています。」
ハンナが報告する。

「…そう。」

「これはあくまで応急処置だ。蟻動力ディフレクター自体が完全にやられていると思っていい。今すぐ修理をしないと、また数時間以内に同じ事が起きるぞ。」

「ベコール。」

「うん。」ナオミは頷くと、修理用のツールボックスを持ってブリッジから走って行った。

「ナリク。」

「何、艦長。」

「お客様を客室にお連れしな。」

「…了解。」やや不満気な様子でルツ・ナリクは立ち上がり、ライカーを手で招いた。ナリクの後に付いていくライカー。
 

ライカーはマリネーの前で立ち上がった。
「ちくちくさんじゃなくて、悪かったな。」

「ふんっ、どうせまぐれなんだわあっ。」

「マリネー、黙りな。」

ぷう。
「…ふん。」リベカの言葉にそっぽをむき、ついでに屁をこくマリネー。


左足が脱皮の時期らしいマコトはやや傾いた状態で、クルーの前で説明をしていた。
「遮蔽して逃げられる直前に得たデータでは、彼等盗賊団の船からも、やはりハッシュド反応が微弱ながらありました。長距離スキャンの結果、この付近の数箇所のMクラスの惑星から同じ反応が検出されています。」

「つまりそれらの星を彼等は襲っている訳ね。」

「そうですカウンセラー。そしてこれらの星には全て古代遺跡があります。それも全てロミュラスカ系の古代文明です。」

「彼等の狙いはロミュラスカの遺跡か。うっうっうっううううう…」ハンカチで涙を拭うゲオ。

「そういう事でしょうね。」

「でも、どうしてたかが遺跡で人殺しまでしないといけないんでしょう?」聞くロー。

「さあ、よっぽど価値があるんでしょうか…」

レイタは首を傾げた。
「これらの遺跡はどれも考古学者にとっては非常に有名な物よ。その為逆に、重要な物はもう既に盗掘されたか、博物館に収蔵されてしまっていると思われるわ。」

「そ、僕にそう言われても…」少し半泣きになるマコト。
「と、とにかく、それで今までのルートから見て、次に彼等が狙いそうなロミュラスカ系の遺跡のある星はここになります。」
びょむ。
マコトは半熟の指で星図を指す。

「ドクリス2号星です。そしてここの遺跡は、連邦の科学基地の管理下にあります。」

「ゲォーフ。」

「うっ、ううっ、うう…ふえ?」

「ドクリス2号星の科学基地に連絡、私達が来るまで盗賊団を何とか引き止めるように言って。少尉、ドクリス2号星へワープ9。」

「了解。」

「解散。」


ライカーは周囲に人がいない事を確認すると、「実験室」と書かれたドアのボタンを押した。

中では、ソフビ人形の山に囲まれたマリネーが何やらソフビをこすっている。

「…艦長?」
リョウジはやや不安気にマリネーに声をかけた。

マリネーは肩を上げた。
「私はアカリ、アカリ・マリネーだ。少なくともここではそういう事になってる。民間貿易商の地球人女性と言った所だな。」

ほっとした様子でライカーは頭を振った。
「はあ…にしても、どこが女性なんですか。またその恥かしい格好で…」

「いやあ、この方が周囲になじめるかと思ったのだが…関ジャニ並にめちゃイケではないかね?」
ピカードは冗談ぽく笑った。

「…。しかし、死んだものとばかり思ってました…」ピカードの向かいに座るライカー。
 

ピカードは頷き、話し出した。
「ナデシコのラーメン屋で、彼女達が遺跡の話をしているのを耳にしてな。何でも古代ロミュラスカのソフビ人形…見ての通り既にこれだけあるが、これを発掘しているという話だった。私はそれまで、今度の休暇でせいぜいボーイハントでもしようかと思っていたのだが、」

「何言ってるんですか。本当はただ自然を楽しみにしてたくせに。」

フユツキはリョウジの言葉に驚き、顔を上げた。
「な、何故そんな事を!」

「ラーメン屋の店主から聞き出したんですよ。」

「…コロス…」

「え?」

頬の紅いフユツキは首を振った。
「あ、いや、何でもないこっちの話だ。とにかくその話に私は大いに興味をそそられた。知っての通り私は一時期はフィギュア研究家を志した事もあった人間だ。彼女達に話を聞かない訳にはいくまい? だが、ちょっとやりすぎてしまったらしい。喧嘩になってしまったのだよ。」

「それで、フェイザーで撃たれたものとばかり…」

「ああ、彼女達はビーム式の転送機を持っている。つまり私はその時にドッキング中の彼女達の船に転送されたのだよ。恐らく君もそうやってここに来たのじゃないかね?」

「なるほど…」ライカーは頷いた。

「私はこれはむしろチャンスだと思った。彼女達が結局何を狙っているのか、今の所分からんが…とにかく私は名前を偽り、今こうやって、アカリとして船に居る訳だ。」

「ところでこの、首の装置はとれないんですか?」

「ああ、それにはキーがいるのだよ。ここの艦長のリベカ・バランが持っている。彼女がこのスイッチを入れると、相手の頭に大音量のアオバシアンロックが「聞こえる」仕組みだ。」

「それで彼女は他のメンバーをコントロールしているんですね。でも確か、「主」とか言ってましたが…」

「それもよく分からん事の一つだよ。その辺りの秘密はバランと副長のタレラ…あのロミュラスカ人だ、この2人だけが知っているようだ。そこでだ副長。この船では、「アカリ」とライカーは仲が悪いという事にしないかね。私は実は、バランとどうもソリが合わなくてな。タレラと仲良くするのはもっと難しいだろう。しかし私と君が仲が悪いという事にすれば、バランは君の事は気に入るはずだ。」

「敵の敵は味方、裏の裏は表、友達の友達はやや友達、親父の死因は脳卒中ですか。」

頷くブルマオヤジ。
「そういう事だ。それで、彼女から彼女達の計画を聞き出して欲しいのだよ。」

「分かりました。ビューティーごぶうっ」
「ぱあああああんち!」
ブルマは急に右手を出し、ライカーの顔めがけて発射した。ロケットパンチに倒れ込むライカー。
 

ドアをちょうど開けた所だったリベカ・バランは顔をしかめた。
「もぁぉっ! 私をチチョマンチと呼ぶなんて、あなたには500億万兆光年早いわあっ! ぷんぷんぷんぷんぷーん!」
裏声でライカーに迫る「アカリ」。

「好い加減にしな。…マリネー!」手の装置をかまえるリベカ。

「…ふん。」マリネーは渋々ライカーから離れると、再びソフビをこすり始めた。

「あんたもこんな所勝手にうろついてんじゃないよ。」リベカはリョウジを助け起こすと、部屋から出て行かせた。


すうじかんご

バラン達の船はドクリス2号星の軌道に到着していた。ライカー、マリネーもそれぞれの持ち場についている。
「艦長、基地から通信が入りました。」
ハンナ・タレラがリベカ・バランに伝える。

「…基地の武器をこっちが破るのは簡単だな、無視して攻撃するよ。」

「い、いや、ちょっと待て。俺が何とかしてやろう。」
ライカーが立ち上がった。

「罠よ、奴は助けを求めるつもりだわあっ! きゃー、いやーん。ばかーん。三波春夫でございます。」

「…やりな。」マリネーを無視してライカーに頷くバラン。
 

ライカーはモニタの前に立った。
「チャンネル、オン。」
画面の前に基地の職員が現れる。

「そちらはどなたでしょうか? 今日船が来るという予定は聞いていないのですが…」

「こちらは連邦艦隊のリョウジ・ライカー中佐だ。今日は極秘任務でこの基地に来た。少尉、君が知らないのも無理はないだろう。上陸の許可を頼む。」

「は、はあ…それでは本部に問い合わせますので、」

「いや、それは出来ない。これは非常に特殊な極秘任務なんだ。残念だが、君に内容を話す事は一切出来ない。」

「それでは、上陸の許可は私には出来ません。あくまで艦隊の規則で承認コードが必要となりますので…」

ライカーは基地職員に微笑んだ。
「少尉。私は君の上官だ。」

「し、しかし、他の方ならともかく、あの幼児退行で有名なライカー中佐の言葉となると、」

「え゛?」

「あいえ、何でもありません。」

頭を振るライカー。
「少尉、君の立場も良く分かるが、君の協力が得られないと艦隊の極秘任務に支障を来たしてしまう。君も元相原勇、現…何だったっけ?のようにはなりたくないだろう?」

モニタの向こうの基地職員は渋々頷いた。
「…分かりました。上陸を許可します。通信終了。」
 

「ざっとこんなもんさ。」

「ナリク、遺跡の出土品をスキャン、ここへ転送。」

リベカの言葉に従うルツは、何度かパネルを操作するが頭を振った。
「ダメ、転送が出来ない。」

「先程防御フィールドが基地全体に張られたようですね。艦長、これは罠ですよ。」
ハンナはリベカに微笑みながら言った。


「下らない。ナリク、基地へ暴れカンガルー砲発射!」

アカリは慌ててルツの手を押さえた。
「待ってぇん。そんな事をしたら武器のむ・だ・づ・か・い・だ・わ。良い事…フェイザーでシールド発生装置を破壊すれば充分でしょ…多分この辺がそうね…」
パネルを操作するアカリ。
「発射!」

ぴ、ぴぎーーー。
船からフェイザーが地表の基地の一部に発射される。爆発する建物。
「シールドが消えました。」

「ナリク!」

「了解。」転送のスイッチに触れるナリク。しかししばらくすると頭を振った。
「目標物の65%までは転送したんだけど。」

「予備のシールドが現れたようですね。」

「ああもううざったるい! ここに長居はしてられないんだよ! ナリク、やっぱり基地を破壊!」
万策尽きたという表情で顔を合わせるピカードとライカー。

「待って、リベカ!」ナオミが声を上げた。

「今度は何!」

「前、見て。」

前方のモニタには、増築プレハブとアストラル電波塔が印象的なエバンゲリオンの雄姿が映し出されていた。


「奴が秘密に、エバンゲリオンを呼んだのよ! やっぱり奴は裏切り者なんだわ、きゃーひゅーひょー、か、が、やデース」

「どういう事だい? マリネーの言う通り、あんたが教えない限り奴等がここを分かる訳は無いよ。」
眉を寄せてバランがライカーに迫る。

「とんでもない。俺はもう連邦の人間じゃないさ。」
ライカーは両手を上げた。
「船への通信を開いてくれ。俺が説得しよう。」

「奴はやっぱりちくちくさんよおっ! 言う事を聞いては彼の思う壺よおっ! もしくはテレビのツボよお! ぜんじろう」

「あんたは少し黙ってなっ!」ぷちっ

「うわああああっ」リベカのスイッチに頭を抱え倒れ込む「アカリ」。

「チャンネル・オン。」リベカの言葉に従いハンナがパネルを操作する。
 

モニタの向こうには、彼女としてはかなり驚いた表情のレイタが映し出された。
「…副長。無事だったの。」

「ああ、見ての通り、五体満足無事だ。」

「残念ね…」本気で呟くレイタ。
「一体何があったの。」

「それはまだ説明できないが、副長として君にやってもらいたい事がある。」

「ええ。」

「レイタ、今すぐこの軌道から離れるんだ。現在俺達は秘密任務に就いている所で、エバンゲリオンが近くにいると非常にまずい。」

レイタは即座に頭を振った。
「それは出来ないわ。先程基地を襲撃していたようだけど、この行動は明らかに艦隊への敵対行為だわ、これを見逃す事は不可能よ。」

「全く、これだから冷血ロボコン女は…」

「通信終了。」ぶちっ。
通信は唐突に切れた。
 

「…」
リベカはナイフを手に考え込んだ。

「残念だけど、見付かった以上は交戦するしか無いんじゃない。」

ルツの言葉にナオミが反論する。
「相手は連邦の戦艦よ、真面目に戦って勝てる訳が無いわ!」
 
「でもベコールさん、今から逃げるのはもっと難しいですよ。」ハンナが微笑みながら言った。

「タレラの言う通りだよ。暴れカンガルー砲をロック。」
 

「いや待て。俺のパスワードがまだ生きていれば、ハッキングで向こうの船のシールドを落せるかもしれん。それでワープコアを落せば充分だろ。」

ライカーの頭のバラを疑わしそうに見るバラン。

「ライカーさんが罠にかけようとしているのでない限り、確かにその方が勝ち目はありますね。ただし罠の可能性の方が高いですが。」
バランに近づいて言うタレラ。
バランは息をつき、やがてライカーに頷いた。
「やって!」

ぱぽ、ぺぽ、ぱぽ、ぱぽ…
「これで多分良いはずだ。」

数秒後、ハンナは目を見開いて微笑んだ。
「敵船の防御シールド消滅!」
 

リベカは不敵な笑みを見せた。
「いくら連邦の戦艦でも、シールド無しじゃ手も足も出ないね。ナリク、敵船のワープコアにフェイザー発射!」

「発射!」
ぴぎゅん、ぴぎゅん、ぴぎゅん。
 
 

リベカ達の小型船からエバンゲリオンに向けてフェイザービームが一直線に発射される。フェイザーはシールドの落ちたエバのワープコアを直撃した。

 
ハンナは手元のモニタを見る。
「敵船のエネルギー出力はゼロになった模様です。」

「ふ、勝負あったね。とっとと逃げるよ。タレラ、「ばいばいきーん」とだけ通信を入れておいてよ。一応礼儀だからね。」
リベカ達の船は動かなくなったエバンゲリオンから逃亡した。
 


「少佐、本当に追わなくて良いのか?」

レイタはゲォーフに頷いた。
「ええ、今はあくまで私達はシールドをクラッキングで落され、ワープコアに彼等のフェイザーを撃たれて動けないという状態を期待されているわ。」

「しかし、実際には向こうのフェイザーの出力は実質ゼロだったし、今ならセンサーも働いているから充分追えるではないか! さっきも敢えてシールドを落すし、何故わざわざ攻撃を受けたふりをする!」

「遮蔽されたら何の意味も無いわ。大尉、副長は明らかに私達がシールドを降ろして、彼等に「攻撃」されるという事を望んだわ。私達がそれに答えると副長はこちらを攻撃するふりをしたわ。副長には何か考えがあるという事よ。」

「しかし、ここでじっとしていろと言うのか!」

「ええそうよ。しばらくはここにいるわ。」
平然と答えるレイタ。ゲォーフはメガネを上げ、ついでに湯気も上げた。


「何だって? またダメだっていうのかい。」
リベカは心底うんざりした様子で聞き返した。

「うん…だからやっぱり、もうちょっと船をいたわって使わないとダメなんだって。」
ナオミがリベカを諭すように言う。

「こっちは船をいたわるような余裕は無いんだよ。どの位でワープが使えるようになる。」

「7時間位はかかると思うけど…」

「1時間か。」

「ううん、7時間よ。」

「1時間、だね。」リベカはスイッチに手をかけた。
「HOTEIって何かYEBISUの対抗馬みたいだよな…」良く分からない事を付け足すリベカ。

「わ、分かったわよ!」ナオミはツールボックスを持つと、怒った様子でブリッジを降りて行った。
 

「ふん…」腕を組むリベカ。
「それにしてもライカー、助かった。あんたのお陰だよ。」

「これで信用してくれたかい?」

「ああ、もちろん。」

「これでとおとおあなた、連邦の裏切り者になったって訳ね。」
マリネーが嫌味ったらしく口を挟んできた。
「さあっすが頭の半分が花瓶なだけの事はあるわぁ。良心とかをつかさどる部分がやられたんでしょぉ。きゃっ、アカリったら甘辛問答!」
/(>v<)\

ごごごご…
マリネーが目を開くと、眼前に炎を背負ったライカーが立っていた。

がす、がす、ぼきゅ、がす、ぼぐ、じょぼ、じょぼ…
無言でアカリに鬼神の如く打撃を続けるリョウジ。

「それ位でやめな!」バランに肩を押さえられ、ライカーはようやく(バラバラにばった)マリネーを壊す殴るのを止めた。
「全く、2人とも、好い加減にしなよ…マリネー、調査室で仕事を続けな。」



 
「まだここを動かないのか。」
ゲォーフは苛立った様子でレイタに聞く。

「情報の無い状況でどこへ行ける訳でもないわ。」

「だから、変な芝居をせずに奴等を追えば良かったではないか!」

「…」
 

「なーにやってんの。」
ラ=フォージはカウンセラーに振り向いた。

「あ、今ちょっと忙しいんで…」

「何よう、少しは手伝ってあげようかと思っていたのにい。」
ぶー。
頬をふくらませる全裸のカウンセラー。

「はあ…今、副長の「ハッキング信号」に何らかのシグナルが隠されていないか解読をしているところなんですよ。」

「暗号がないか探してるって事?」

「ええ、その通りです。」

「暗号ねえ…ソースは見たの?」

マコトはミサトの言葉に失笑した。
「まさか、そんな単純な所には暗号は置かないでしょう。多分この数値データの中に特定の関数にしたがって…」

「ソースを見せてよ。」強要するミサト。

「え? まあ、良いですけど…」
 
がーん。
「(めちゃめちゃ簡単じゃん!!)」
 
「あー、いかにも副長の考えそうな暗号だわ。元スパイだけになかなか高度ね。」

「(え゛ーっ!)」

「レイタぁ、暗号が解読出来たわよん。座標726、マーク5だって。」
 

レイタ「今週の艦長」は、カウンセラーの声に顔を上げた。
「ゲォーフ大尉。座標726、マーク5へワープ9。」

「ようやくか…」頭を振りながらパネルに触れるゲォーフ。

「…大尉、少し話があるわ。作戦室に来て。」
レイタは立ち上がると、作戦室へ歩いていった。



 
何とか元に復元されたアカリことフユツキは、再び実験室に戻りソフビの山の中から一体一体をスキャンにかける仕事をしていた。
調査室のドアが前触れ無しにすーっと開く。
「お邪魔でしょうか…」
現れたのは、いつも微笑みを絶やさないハンナだった。

「うん、ごめんね、今ちょっと忙しいのぉ。」ソフビから目を離さず答えるフユツキ。

「すいません、それでは手短に済ませますね。マリネーさんは…アホですか?」

「…」頭を上げるフユツキ。

「…」微笑みを絶やさないハンナ。

「ど、どおいう意味かしらぁ。」

タレラはマリネーの後ろでゆっくりと歩く。
「この船では艦長の権力は絶対です。でもあなたは事あるごとに艦長に反抗しているじゃないですか。」

「あんな跳ねっ返りのヤンキー女、装置がなければ誰も従わないわよ!(知らないなら無理して英語使うなっていうのよ。競馬のCMやってろっていうのよ。)」

「それはまた、随分過激な意見ですね。」

「でも事実だもぉん。きゃっ、アカリったら報道2001!(イチイチお昼のニュースで内容繰り返し!)」

「彼女が私達の命を握っている事も事実です。このままじゃあなた、殺されますよ。」

「大丈夫よお。あなた達はこの遺跡の価値が分かる人間が必要なんでしょ? 今私がいなくなったら調べれる人がいなくなっちゃうーじゃない。あなた達の探している物が見付かるまでは、あれも私を殺しはしないわあ。」
マリネーはおどけた顔で次のソフビをスキャナーにかざした。

ぴー、ぴー、ぴー。
「…あら、見つかったわ。」

「タレラより艦長、目的の遺跡が見付かりました!」バッジを叩き報告するタレラ。


「分かった。今すぐ私の部屋に持ってきて。」

どきどき、どきどき…
「す、すごい格好っすね…」

リベカの自室に何故かいるライカーは、リベカの格好に目を白黒させている。

「そうかな。私はこれが普通だからよく分からないんだけど…」

「い、いやあ、すごいっすよ。今まで見た事ないっす。」
リベカは一点物と思われるデザイナーズブランドの黒のスーツをパリッと着こなし、ブラックライトの中ブランデーの入ったグラスを持ちソファーに深く座っていた。
ボケているポイントが一つも無い。

「そうかな。」

部屋にタレラが入ってきた。ライカーがいる事にやや驚いたようだが、何も言わずに一体のソフビをバランに手渡す。
「ありがと。下がって良いよ。」
ハンナは無言で微笑んだまま、リョウジとリベカに意味深に会釈をすると部屋から出て行った。
 

リベカはソフビを手に口元を歪める。
「…ライカー。この価値が分かるかい?」

「ロミュラスカによくある遺跡にしか見えないが…」

「とんでもない。この遺跡は金になるよ。大金にね。」

「ほう…」

片手にブランデー、片手にソフビ(、心に花束、右肩に悪性コレステロール、背中にボルト、脳肝に腫瘍)のリベカはリョウジに微笑む。
「あんたは、これからどうするんだい。」

「そうだな…もう艦隊には戻れそうにないからな。どこか新しい職場を考えないといけないな。」

「私が良い職場を一つ知ってるよ。」

「ほう?」

リベカは足を組み直した。
「でも、その為には一つ条件がある。…今晩、私と過ごす事だよ。この船は何でか、女のクルーばっかりだったからね。」

「そりゃ願っても無い事だ。」ライカーの頭のバラが、心なしか生き生きとして来る。
 

「それじゃさっそく…」少し潤んだような瞳で、リベカ・バランは立ち上がり、バタフライ・ナイフを手にした。

「え?」

「さあ早く。」ナイフを持ってリョウジに近づくリベカ。

「い、いや、あの…」

「な、何だよ。早く腹を出しなよ。…女になんて事言わせんだよ。」

「は、はあ?」腰の引いたライカーは眉を上げた。
「その…君達の種族では…」

「どの種族だって、こういう時はまず腹を切りあう物だろう。切腹プレイだよ! 確か地球の言葉でも、「腹を割って話す」とかいう表現があったはずだ。」

「い、いや、それは何かの間違いだ。俺達地球人はこういった事をしない。その…命に関わる。」

「そんな! ここまで女にやらせておいてあんたは逃げるのかい!」

「いや、逃げるとかそういう問題じゃなくて、ホントに地球人はこれはムリだって! 今度アカリにでも聞いてみたらどうだ!」
ナイフを突き付けるバランと後ずさるライカー。

「こういう事は人に聞く事じゃないだろ!」

「だから! とにかくそれは地球人にはムリなの! ほんとゴメン、それ以外の事なら何でもするから許してくれ!」
 

「…そうか…」
リベカは悲しそうに頭を振り、リョウジから離れた。
「こう見えても学生時代は結構人気があったんだけどね…そんなに私とプスプスジューするのは嫌か…分かった。私も無理強いはしないよ。…ライカー。それじゃあ代りに、こういう条件はどうだい。」

顔を向けて「何か」と聞くリョウジ。
「あのブリブリ女を始末するんだ。」

「(女だと思ってたのか…)」

リベカはソフビを手にして微笑んだ。
「あいつは自分が可愛いのをいい事にいつもブリブリして、おまけにいつも私の命令に文句を付けるんだ。でも今までは、それにも我慢してきた。これを見付けないといけなかったからね。でも見つかった今は…あいつはもう、巨泉のこんな物いらないなんだよ。どうだい?」

ライカーはバランに、これ以上無いニヤニヤした表情で答えた。


「大尉。あなたの態度は目に余る物があるわ。」
艦長室の椅子の上にビニールカバーをしいて座る(直接触れたくないらしい)レイタはゲォーフに言った。

「しかし、艦長も副長も奪われた状況で、ただ待つというのはもごっ」

粘着性のしっぷを彼の口に投げつけるレイタ。ついでに全身も包帯で簀巻きにされる。
「もご、もご」

「大尉、私に何か意見があるならブリッジでなく作戦室で言ってほしいわ。現在あなたは当船の事実上の副長よ。艦長と副長の言う事が食い違うようでは、他のクルー達に混乱をもたらすわ。」

「もご。もご。」

「良く聞こえないわ。」

「もご!」

「とにかくそういう事よ。しばらくそこで反省するように。」
レイタは艦長室を後にした。
残されたゲォーフに、何故か周囲の色々な方向から猫の鳴き声が聞こえてきた。

「もご…(訳:も、もしかして、この声は…)」自分の尿海に溺れだすゲォーフ。



 
マリネーはハミケツを直しつつ、船の機関室で機械を整備中のナリクに近づいた。
「何か用。」
全く顔を動かさずに仕事を続けるルツ。

「ねえ、ちょっと話があるんだけどお。」

「ええ。」

「話っていうのわあ、リベカの事なのよねえ。あいつう、最近ちょっとムカつくっていうかあ、勘違いしてんじゃねえぞって感じい?」

ルツは手を止め、アカリをちら、と見る。
「随分物騒な物言いね。」

「だからあ、あいつみんなでフクロにしちゃわなあい?」アカリは「だっちゅーの」のポーズでウインクをしてみせた。

「…」眉を上げるルツ。
「それで、誰が新しいリーダーになるの。あなたじゃ、誰も付いていかないわよ。…ボンド臭いし。」

「むうー。それって何かチョベリバあー。(腸捻転に夫がかかり入院、しかもそれをきっかけに夫の会社が夫を事実上解雇。今が次男にとって一番大事な時期だというのに毎日の食費もまかなえない、渋る所を何とか頼み込み、パートに次ぐパートをするも焼け石に水、妻は夫に漏らした、ベリーバッド。の略) じゃあ、誰がリーダーなら皆ついていくのよお。」

「…タレラなら、皆納得すると思う。」

「TPDのリーダーって誰だったっけ? 今も芸能界にいるのかしらあ。大体TPD出身で残ってる人って? 篠原…は残ってるのかなあ。」

「あなたのそういう、人の話を聞かない所が問題ね。」
冷静に指摘するルツ。


アカリが機関室から実験室に戻ると、ハンナが腕組みをして微笑んでいた。
「まだ、何か言い足りない事があるのお?」
人差し指を口にあて、「わっからなーい」という顔を作るアカリ。

「…あなた、アカリ・マリネーという名前じゃないですね。」

「どおいう事お?」

タレラは微笑んだまま、懐からフェイザーを出して構えた。
「ちょ、ちょっと」

「本当の事を言って下さい。さっき面白い事が分かったんです。ライカーさんがエバンゲリオンにハッキングする時、あなたはその信号の中に一見まるで意味不明のメタタグを織り込みましたね?」

「な、何の話かしらあ。うっ」
タレラはフェイザーを突きつける。

「最初は何の事だかさっぱり分かりませんでした。あんな高度な暗号は今まで見た事がありませんでしたから。…あなたは何故、エバンゲリオンに私達がこれからアベックバレー星に向かうという事を教えたんです? あなたは一体何者なんですか?」
 

フユツキは諦めたという表情で、ハンナのフェイザーをゆっくりと離させる。
「…私はフユツキ・コウゾウ・ピカード。USSエバンゲリオンの艦長だ。」

「…なるほど。それじゃあ、ライカー副長との対立もお芝居だったんですね。」

「そういう事だ。それからもう一つ。私は男だ。」

がーん。
「う、うそ…」
思わずフェイザーを落しかけるタレラ。

「本当だ。女で通した方がここには溶け込めるかと思ったのだよ。…ロミュラスカ人の君はあまり地球人と会った事が無いから分からなかったかもしれんが、」

「いいえ、それは嘘です。」

「嘘? 何がだ。」

ハンナはフェイザーを降ろすと、不敵な微笑みを浮かべた。
「私はロミュラスカ人ではありません。ヴァルカスカ人なのです。」

「…」
 

ハンナは驚いた様子のフユツキを前に、ソフビの山を見ながら話す。
「私の本当の名前はトゥパルといいます。そろそろ私達のやっている事についてお話ししましょう。私達が今探しているあの遺跡は、お気づきかもしれませんがヴァルカスカ系の物なのです。と言ってもまだ私達がロミュラスカ並に感情的で、荒々しかったような時代の物なのですが。」

「…」首をきゅっきゅっとはめ直すピカード。
「…ああ、それは私も分かっていた。最初はロミュラスカ系の出土品なのかと思っていたが、山菜をかたどる文字で分かったよ。」

「あのフィギュアは正確には、ガールピョンのビニールというヴァルカスカの古代遺跡のピースの一つなのです。」

「ガールピョンのビニール…聞いた事があるぞ。それは確か、ヴァルカスカ戦国時代に登場した最終兵器の名前ではないかね。」

「その通りです。あの兵器のお陰で私達ヴァルカスカは崩壊の危機にまで追いやられました。もし偉大なる思想家ミヤムックが現れなかったら、私達は今この世にはいなかった事でしょう。」

「しかしガールピョンのビニールはヴァルカスカの博物館に最後の一つが残っただけだと聞いていたが…」

「最近それ以外にもう一セットあるらしい事が知られたんです。それぞれのピースがばらばらになって。…ところでピカード艦長は、ヴァルカスカの最近の政情は御存知ですか。」

「…さあ、それほど詳しくはないが…」

ハンナは肩を上げた。
「現在ヴァルカスカでは、ヴァルカスカ人の民族主義を掲げるテロリストのグループが台頭してきています。ヴァルカスカから異星人を追い出そうとしているような過激派です。」

「それは論理的な主張ではないな。」

「全くです。そして、我々ヴァルカスカ秘密警察は彼等テロリスト達がガールピョンのビニールを手に入れようとしているという情報を得たのです。もし彼等がこれのピースを全て手に入れたとしたら…」
 

「…恐ろしい事だな。」

「同感です。そこで私達はテロリスト達の雇った盗賊団に工作員…つまり私を送り込む事を決めたのです。」

「そうか。」ピカードはスチームをしゅーっ、と吐いた。(人間です。)
「…ところでトゥパル。私達はまだしばらく、マリネー、タレラとしてやっている方が良さそうだと思わないかね?」

「それは大変論理的な判断ですね。」ハンナは頷いた。


マヤが梅をかじりながらレイタに報告した。
「がへっくはへーせいへいにほーほくひまひた。(訳:アベックバレー星系に到着しました。)」

「副長の乗っている船は?」

「こひらでスヒャンでひるかぎりはいませむ。ハッシュロ反応もはいです。」

「そう…」

「…まっへくがさい、星ご陰に船影をひゃっけん。ヘレンホンの小型ゆひょうひぇんのようです。」
マヤは急に喉をおさえた。
「うっ! あー、種のみこんじゃったよおい。」

「ゼレンゴンの輸送船?」レイタは眉を上げた。
「船に通信。所在と航行目的を聞いて。」

ぱ、ぺ、ぱ。
「…駄目です、返答有りません。」

「あの船が盗賊団と繋がりがある可能性は非常に高いわ。何か拘束する方法は無いかしら。」

ローはレイタの言葉に口を尖らせた。
「難しいですねえ。ゼレンゴンは同盟国ですから、連邦の領域で航行していても問題はありませんし…無理に引き止める権限はこちらには無いですから…」
 

ごぼごぼごぼ。
「じゃあさ、船にまずい霊がついてるとか脅かして、除霊してやるとか?」
水中から浮上してきたカウンセラーが茶々を入れる。

「カウンセラー…」眉を上げるロー。

「冗談よお、マヤちゃんって結構堅いんだよねえ。頭も、向こうの方もさあ…ぐへへへへ」
救いようの無いセクハラ発言をかますミサト。

かーっ
「ちょ、ちょっと、数回やった位でそんな言い方しなくても良いじゃないですかあっ!」

「だーって事実だもーん。マヤちゃん、私誉めてんのよ?」
 

「そうよ。」レイタが急に顔を上げた。

「「え。」」

「ちょ、ちょっと、少佐まで! そりゃ私だって昔痙攣して大変な事になった経験もありますけど、最近は結構腕とかだって」

「少尉、ゼレンゴン船に連絡。この付近で伝染霊が流行しているので、船の憑依霊の立ち入り検査を行うと通達。」

「な、へ?」

「「少尉、ゼレンゴン船に連絡。この付近で伝染霊が流行しているので、船の憑依霊の立ち入り検査を行うと通達。」と言ったわ。」
レイタは繰り返した。
「同盟国の船である以上、これは拒否は出来ないはずよ。」

「な、あ、はい、分かりました。」

「…腕とか?」小声で呟くカウンセラー。



 
ドックベイに収容されたシャトルにドクターとゲォーフ(生還)がトリコーダーをかざしながら近づいた。

「シャトルのドアが開くぞ。」アンモニア臭のゲォーフが告げる。

中から、焼き蛤を手に持ったゼレンゴン人女性が現れた。
女性は戸惑った表情ながら、ゆっくりとお辞儀をして挨拶する。
 

「急いでいたらごめんなさい。国際条約に従い憑依霊の立ち入り検査を行います。」
医療用トリコーダーをゼレンゴン人にかざした。
「…どうやらあなたには登録された守護霊以外何もついていないようね。良かったわ。それでは失礼して、船の方のスキャンをさせてもらうわよ。」

「あ、いや、あの…」
「ふんっ」
ドクターが女性を一にらみすると、女性は固まったまま動かなくなった。

「ご協力感謝します。」会釈するドクター。
「ゲォーフ。」

「へ?…ああ。」
顔をひきつらせていたゲォーフは固まったゼレンゴン人を持ち上げると、ドックベイから出て行く。

リツコはトリコーダーをかざしながらシャトルに乗り込んだ。


「コラルさんが連邦の宇宙船につかまったそうです。」
ハンナはリベカに報告した。
「エバンゲリオンでしょうね。」

「何だって。」声を上げるバラン。
「奴がもう一つのパーツを持っているんだよ。何としてでも奴を取り返さないと…」

「どうやって?」

「…」リベカは立ち上がった。
「エバンゲリオンを襲撃するしかないだろ。ライカー、あんたはこの前まであの船にいたからセキュリティはよく分かっているはずだね。」

「(…あの船にセキュリティってあったか?)ああ、もちろんだ。」

「ちょっとWaitっ! こいつが裏切らない保証はあるのお?」立ち上がるアカリ。
「どうせこいつの事よ、エバンゲリオンに転送されたらころころころっと態度を変えて、私達を全員大久保の通りに立たせて」

「マリネー、心配なら、あんたが一緒についていけば良いんだよ。」
アカリの言葉を遮るリベカ。

「…え? ええ、もちろんよ。」

ルツはパネルを見て言った。
「アベックバレーの軌道に到着。向こうはこちらには気付いていないようです。」

ライカーがモニタに映るエバを見ながら言う。
「後ろに回り込んで近づくんだ。電柱にミラーをぶつけて無くして以来エバンゲリオンは後方の視界が悪い。」

バランはナリクに頷いた。
「…了解。」パネルを操作するナリク。
 

「今コラルさんのシャトルはどこにあるんですか。」ライカーに尋ねるタレラ。

リョウジはパネルを打つ。
「シャトルを格納するスペースはこの座標だ。」

「じゃあここに転送をすれば良いね。それじゃ各自、武器を用意して。相手は連邦の船だから油断しないように。」
ライフル型フェイザー等を用意しだすクルー達。

ライカーに近づいたバランは彼に小声で囁いた。
「向こうで、奴を殺るんだ。」
ライカーは微笑んだ。


作戦室のレイタとトロイは、象さん魔法の解けたコラルに話し掛けていた。
「えっと、あなたの名前は何て言うのかしらあ?」

「…ルデア・コラルです。」
上品な黒髪のゼレンゴン人が微笑んで答える。

「へえー、ルデアっていうのお。とっても良い名前ねえ。えーっとお、それって何語?」

「ゼレンゴン語です。」

「あ、そ、そうよねえ。何聞いてんのかしら私。あは、あははは。」

「ルデアさん。あなたは普段、どういった物を運んでいるの。」

「…」
微笑んだまま口を開かないルデア。

「もしかして盗掘した遺跡なんて運んだりして。あは、あはははは。」

「…」(^^;
「(カウンセラー…)」

「ね、ねえ、んーじゃあさあ、ルデアちゃんは、初体験はいつ」
「ルデアさん、ゼレンゴン産の美味しいケイケツワインがあるわ。レプリケーターのではなく本物よ。」
ミサトを遮って言うレイタ。棚に置いてある瓶と、グラス3つを持って来る。

「連邦と帝国の友好を願って…」
微笑みながらワインのコルクを開けるレイタ。瓶をグラスに傾ける。

…………ぽた、ぽた。
瓶からは数滴が落ちて静かになった。

「…」(^^)
「…カウンセラー。」

「あ、いや、だってこの為に持ってきたんだってしらなかったし…」


ドックベイに戻ってきたゲォーフはリツコに聞いた。
「何かあったか。」

「…いいえ。何も無いわよ。七輪と焼き蛤以外はね。特にこれといった反応も無いわ。」
トリコーダーをたたみ、シャトルから降りて来るドクター。

「そうか…」

「残念だったわね。それじゃ私はスケジュールも立て込んでるし、そろそろ…」
ぴぎゅいいいいいいん。
 

2人の周囲にライカー、マリネー兼ピカード、タレラ兼トゥパル、ナリク、ベコールがフェイザーを構えて現れた。
「武器を捨てろ!」
ライカーが一歩進み、2人に命令する。

「「…」」
ショックを受けた様子のゲォーフと、やや眉を上げて考え込んでいる様子のドクター。

ゲォーフはゆっくりと手にするフェイザーを捨てた。
「そうだ、それで良い。」

タレラがシャトルに乗り込み、中をスキャンする。
「ここにはありませんね。コラルさんが自分で持っているんでしょう。」

「「…」」

「ねえええん、このシャトルのゼレンゴン人は、今一体どこにいるのかなあ?」

ゲォーフは驚いて声を上げた。
「か、かん」
「ふんっ」

ぴきっ。
「…タンニハオシエラレナイナ。」
急に1オクターブ上がった声で喋りだすゲォーフ。どこか動きが腹話術の人形のようになっている。
 

「この状況でそんな事が言えるのかしらあ?」
固まったゲォーフに近づくマリネー。

「…ワカッタ。イマカレハカイギシツニイル。」

タレラはライカーに目で尋ねる。頷いて見せるライカー。
「それじゃ俺等は、今ちょっと急いでいるんでね。そろそろ失礼するよ。」

そう言うと、ライカーは2人をフェイザーで撃った。
 

「ウウ」「ううっ。」
倒れるゲォーフとドクター。

「…会議室は第一デッキだ。そこへ転送するよう設定してくれ。」
タレラはライカーに頷き、シャトルの転送機のパネルを操作する。数秒後、彼等は転送されて行った。
 

「…」
リツコは彼等全員が行った事を細目で確認すると、溜息をつきながら起き上がった。
「…副長もやってくれるわね。まあ良いかばさん魔法のエクササイズにはなったけど…」
あくびをするドクターはタバコに火を付けた。


ぴぎゅいいいいん。
「動くな!」
レイタ、トロイ、コラルのいる作戦室に、ライカー達がフェイザーを構えて現れた。

「…副長。」
立ち上がるレイタ。

「久しぶりだなあ艦長。さあそのゼレンゴン人を渡してもらおうか。」

「…分かったわ。」
コラルを行かせるレイタ。

「(…な、何考えてんのあんた! それに艦長がいるじゃないよ!)」
ミサトはライカーにテレパシーで呼びかける。
「…あ、分かった。ラリってんのね。」
カウンセラーは1人で納得した。

「副長。いくら薬で陶酔状態にあったとしても、これは非常に重大な艦隊規則違反よ。」

「そうか。ならもう一つ位違反をしても差は無いな。」
ライカーはそう言うと、フェイザーをピカードに向けた。

「ちょ、ちょっと!」立ち上がろうとするミサトをレイタは押さえた。
 

「ついにお前をこの手で殺す時が来た。俺はこの時を心から待ち望んでいた…」
フェイザーを向けながら語りだすリョウジ。
「そうさ。俺はあんたが憎い。憎いって言うよりムカツク。偉そうだし、迷惑だし、俺はあんたが大嫌いだ。だからいつか殺してやろうと思っていたんだ…」
ぶるぶる、ぶる。
「俺はあんたを殺す。今ここで。殺す!」
ぶるぶるぶるぶるぶる。
「こ、こ、殺すんだっ!」
ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる…
 

手の震えが止まらない(禁断症状ではなく)リョウジは、構えていたフェイザーを落してしまった。
「…う、うう、うう、うう……で、で、出来ない…うう、うう…俺には、あんたを殺す事なんて、出来ない…お、俺は、あんたがうぐっ」
ぴぎゅん。

ピカードにあっさり撃たれるライカー。
「私は出来るわあ(はぁと)。」

「副長!」「ラ、ライカー!」レイタとミサトはリョウジに駆け寄る。

「ねえそこの大女ぁ、奴は死んだあ?」
 

ミサトはリョウジの首筋に触れ、アカリに答えた。
「…あんた誰。」

「ぷんぷん! 死んだかって聞いてるのよっ!」

「…死んだわ。」

「それは可哀相にね。ハンナ。」
アカリの呼びかけでハンナは自分の手元のスイッチを押す。彼等は転送されて作戦室から消えて行った。
 
 

「…で、本当は死んだの?」ミサトは改めてレイタに聞いた。
「私地球人の生死のサインって分かんないからさあ。」

眉を上げるレイタが答えようとした時に当人が目を覚まし、悲しそうに頭を振った。
「うう、やっぱり俺は艦長を殺す事は出来ない…」

「…生き返ったの? それとも死後の世界に行っちゃったの?」

「カウンセラー、質問の意味が不明よ。」



 
船に戻ってきたアカリはリベカに近寄り、彼女を睨み付けた。
「一体これはどおいう事ぉっ! あのライカーは私を殺そうとしてきたわ。このミス・両国予備校に27年連続で選ばれた私をよっ! …あなたの仕業ね。」

「…言いがかりはよして欲しいね。奴が勝手にやったんだろう?」
そっぽを向くバラン。

「ムキー! ムカツクわぁ、あームカツク、この怒りを川柳にしてぶちまけてやりたいわねっ!」

「ちょ、ちょっと待って、それは止めてくれ。な、マジで、それは勘弁してくれ。」慌てて立ち上がるリベカ。

ぼふっ
「ぷん。」屁で答えるアカリ。

「はあ…全く。好い加減にしてくれないかアカリ。人を人殺し呼ばわりして。この装置が首にある事を忘れたのかい?」
リベカはスイッチを持った手を上げた。
 

腕を組むマリネーは決然として言う。
「そんな物は関係無いわ。もう私はあなたみたいな古典的ヤンキー小娘の下で働きたくないだけよ! 皆! もうそろそろ新しいリーダーを考える時期なんじゃないかしら。これの下で働いていたら、次はあなたが狙われる番かもしれないのよ。」

クルー達はざわめきだした。
「私達はただ仕事を働いて分け前を貰いに来ただけ。彼女に仕える為にこの船に乗っている訳じゃないわ。皆はどう思う。」

ナオミはきょろきょろと2人の間を見回していたが、マリネーの方に歩み寄った。
「そ、そうよ。もうあなたの時代は終わったわ。もうあなたに残されたのは、ドンウォリー!のマッチ並の末路しかないのよ!」

「ベコール、あんたも死にたいの。」苦みばしった顔で言うバラン。

ハンナが微笑みつつも一瞬鋭い視線をアカリに光らせ、立ち上がった。
「…タ、タレラ!」

「残念ですが、今の艦長ではクルー達の結束に不安が残ります。私も確実に分け前は欲しいですから。」

「…」
最後にルツとルデアも立ち上がり、ゆっくりとアカリ達の後ろに立った。

「な、何だ、皆して馬鹿にして! 見てな、今に後悔するよ!」
スイッチに手をかけるリベカ。

「でも、全員殺したら船の操縦は出来ないんじゃなくってえん?」スキップを踏みながら聞くマリネー。

「誰が全員殺すって言った? あんたを殺せば充分さ。」
 

かちっ。
リベカは立ち上がり、手のスイッチをひねった。
「ふんふふんふんふんふんふーん♪ いぇーい。」
顔をへの時に曲げながらふにゃふにゃ踊っているマリネー。

「え、ええ?」バランは驚いてスイッチを何度もひねり直す。

「ちっちっち。無駄よ。言ってなかったかしらあ? 私は以前三日三晩アオバシアの歌をライブで聞いて生き延びているの。これ位どうって事ないのやぉ♪」

「でも、前はちゃんと効いて…演技か!」

「そんな事も見ぬけないようでは艦長失格ね。」
ぴしゅん。ぴしゅん。ぴしゅん。

アカリの目の前をフェイザーがかすめる。
「わ、わわ」思わず素で声を上げるアカリ。
「うわああああああああ!」フェイザーは叫ぶリベカに命中した。
 

バランを撃って蒸発させたタレラがにっこりと微笑んだ。
「リーダー。指令を。」

「う、そ、そ、そうね。この装置は使わない事にするわ。皆分け前さえ貰えれば文句は無いはずでしょ?」

頷く各クルー達は各自の持ち場に付き出した。
「ナオミちゃぁん。次のコースへ発進、お・ね・が・い・ね。」

「了解、マリネー艦長。」


薔薇夫人(副長)は自室のモニタに話し掛けていた。
「テンマ・サトク長官、大事なお話があります。」

「ああ。一体何だ。」
目をつむったままの、バンダナで色黒のヴァルカスカ人が答える。

「これからそちらへ、1隻の貨物船が向かうかと思います。それは盗賊団の船なんですが、」

「そうか、それでは警戒態勢を」

「いいえ待って下さい、その船には、そちらヴァルカスカ保安部のトゥパル士官が乗船しているんです。もう御存知だったかもしれませんが、念の為ご報告をと思いまして。」

長官は顔の表情を全く動かさず、しばらく沈黙した。
「…長官?」聞くライカー。

「…そのような話は聞いていないな。」

「…ああ、いやあ、そちらに守秘義務があるのは分かりますが、私ももう既にこの目で見てますので…」
苦笑するリョウジ。

「そうではなく、本当にそのような話は知らない。それにヴァルカスカ保安部に、トゥパルという名前の士官はいない。」

「え?」

「「絶体絶命のピンチ」と言った所か?」
長官は目をつむったまま言った。


「ヴァルカスカ軌道に到着しました。」
ナオミが報告する。

艦長席のアカリは立ち上がった。
「分かったわぁん。それではこれから、下の洞窟に降りるわね。」

「私達はここで分け前が貰えるんですよね。」

「私もそう聞いてるわ。」ルデアに答えるアカリ。
「そうよね、ハンナ。」

ハンナは今までに集めた遺跡の2ピースを持ってにやけている。
「え? あ、ええ、そうですね。」
 

アカリは目を細め、席を立った。
「今回の仕事の意味、目的を知っていたのはリベカとハンナだけよ、信用出来ないわ。ハンナ、あなたはその遺跡はここに置いて、洞窟に降りて行きなさい。私は艦長としてここに残るわ。」
 

ハンナはアカリに言葉に眉を上げ、冷たい笑みを見せた。
「ついに本性を現しましたね…皆さん、アカリさんの言う事を信用してはいけません。彼女は本当は連邦の士官、フユツキ・コウゾウ・ピカード。あのエバンゲリオンの艦長なんですよ。しかも男です。」

「「「え゛ーっ!」」」
何故か驚くナオミ、ルツ、ルデア。2人とも今まで地球人とあまり会った事が無かったのだろう。

「全くよく言うわ。私達が発掘したそれは、どうやらヴァルカスカの強力な武器らしいじゃない。皆、彼女の言う事を聞いても報酬なんか貰えないわ。その武器でやられるのがオチよ。」

「面白い事を言われるんですね。じゃああなたの言う事を聞いたらどうなるんです? エバンゲリオンの素晴らしいクルー達が私達を助けに来てくれるとでも言われるんですか?」
 

ルツは顔を上げた。
「私達は分け前さえ貰えれば文句は無いわ。2人とも私達と一緒に降りるのよ。」

「…構わないわぁ。」

「そうですね、それは良いアイディアかも…って好い加減女言葉止められたらどうですか。」
 

ぴぎゅいいいいいいいんんん。

洞窟に5人が転送される。

「報酬は向こうにあります。」
洞窟の奥を指すハンナ。ルツ、ナオミ、ルデアは走っていく。

ナオミは箱につめられた金貨を見て声を上げた。
「何よこれ、契約の消費税分もいかないじゃなーい!」

「「所得税分もいかない」の間違いじゃないですか?」
呟くルデア。

「盗品に所得税はかからないわ。」ルデアに言うルツ。

「何税だって良いでしょう。とにかくそこにある分しかありません。」
 

「冗談じゃないわよ、何よ、ハンナ、あなたいい人いい人って言われてるけどね、要は一番(ルー)な奴だっていう事を遠回しに言っているだけだって気付かないの!?」
フェイザーを持って近づくナオミ。

洞窟に来てからずっと何かを探していたタレラは顔を上げて微笑んだ。
「動かない方が良いですよ。」
彼女はソフビの人形を手に持ち、構える。
「3つめのパーツが今、手に入りました。これでこの遺跡は完成です。」
 

鼻で笑うナオミ。
「そんな人形がどうしたっていうのよ。全く、好い加減彼女も用済みね。2人ともそう思わない。ねえ?」

ナオミがルツ、ルデアを見ると、彼女達は驚愕した表情でガールピョンのビニールの方を見ている。何事かと向き直るナオミ。

ソフビ人形から、何やらピンク色の波動光線が自分達に迫ってきた。
「「「うわあああああああ」」」
フェイザーを構える間もなく、光線に包まれ3人は蒸発した。
 

ハンナは背後から近づいたフユツキにさっと振り向き、ガールピョンのビニールを向けた。
「せっかくですから、最後に一ついい事をお教えしましょう。この武器は相手の心をエネルギーとして利用しています。」
タレラは自分の持っているソフビ人形をピカードに近づける。

その遺跡、ガールピョンのビニールは、黒髪の全裸の少年の人形と、銀髪の全裸の少年の人形と、2人を「接続」する機具(そこに文字が書かれていたのだが)の3パーツからなりたっていた。
いや、よく見ると人形の体は女性の物だ。2体とも少年のような少女の人形なのだ。

「このソフビを見て少しでも「萌え萌え」な気持ちになると、あなたは死にます。残念ですが…」

「そこまで教えるとは、随分余裕じゃないか?」

「私は、いい人ですから。」ハンナは微笑んだ。
「名残惜しいです、マリネーさん。」
 

ぴぎゅいいいいいん。
洞窟の中、彼等の周りをエバンゲリオンのクルー達が取り囲んだ。

即座にハンナはクルー達とフユツキに向かってガールピョンのビニールを向けた。ビニールからまた、ピンク色の光線が彼等に迫る。

叫ぶピカード。
「皆、目をつむれ、早く!」
 

がーん。
「え゛ーーーーーっ!!! そんなのありぃいいい?」
ピンク色の光線は何も起こさずに、目を閉じたクルー達を通過していく。

ハンナは気を取り直して片手でフェイザーを構えた。
「馬鹿馬鹿しい、目をつむっていたら、私をつかまえる事が…あら。」
ハンナはフユツキとレイタに両腕を取り押さえられていた。


ピカード、ライカー、レイタはエバの廊下を歩いていた。廊下にはクルー達の書いた習字や、保健便り等が張り出されている。
「ヴァルカスカ政府は今度こそ、ガールピョンのビニールを完全に破壊する事を約束した。タレラはこれからゆっくり過激派の事を聞かれる事になるだろう。」

「それにしても…あんな武器のどこが恐ろしいんです。意味なんか無かったじゃないですか。」

「だからこそヴァルカスカはあの武器を恥じ、あんな間抜けな物まで生み出した戦いの歴史、そして感情という「下らない」物を否定するようになったのだよ。あそこまで間抜けな武器がなければ、ヴァルカスカは今のような理知的な種族にはなっていなかっただろう。」

「は、はあ…」

「それに決してあの武器は意味が無い訳ではないわ。とにかく相手が目を開けている限りはほぼ間違いなく死に至らしめる事が可能よ。もちろん私は心が無いので平気なのだけど。」

バラは立ち止まった。
「…ちょっと待って下さい、さっき、艦長も目を開けていましたよね。」

「…確かにそうね。さすがに艦長は心の修練が優れているわ。」

ピカードは苦笑して手を振った。
「いやあそんな大層な事じゃない。単に私にはビビビと来なかっただけさ。」

「…そう。良かったわね。」

怪訝な表情になるライカー。
「そんな。そんな事がある訳ないでしょう。」

「どうしてだね?」

「だって、あの人形の一体はシンジ君そっくりだったじゃないですか。全裸でシンジ君そっくりで少女的浪漫ですよ? 何にも感じなかったんですか?」
 

ピカードは眉を上げた。
「…シンジ?…誰それ。」

「「え。」」

ひそひそ。
「なあ、あのじいさんついにボケたのか?」

「イルシノディック症候群の兆候は特別認められないわ。至って健康よ。」小声で返すレイタ。

「ひ、ひでえ…」
 

レイタは思い出したように艦長を向いた。
「ところで艦長。ドクター・クラッシャーとゲォーフ大尉が自分達を撃った件で艦長を告訴しているのだけど。」

「そういえば俺も艦長に「殺され」てる。」冗談めいた表情で付け足すリョウジ。

「それはそうだが…それを言い出したらそもそも先に「殺そう」としたのは副長だからなあ。それに私は艦隊の記録ではもう既に死んだ事になっているはずだ。自分の部屋で休ませてもらう事にするよ。」

「じゃあ俺は、危険人物だから拘禁室に入れておけとでも言うんですか?」

「それは良いアイディアだな。」
笑いながら頷くフユツキ。
 

「いいえ、それよりも良いアイディアがあるわ。」艦長と副長は驚いた顔でレイタを見た。

「最近事あるごとに副長は「艦長をいつか殺してやる、あいつも俺を殺そうとしてるはずだ」と言っていたわ。」

「れ、レイタ?」声を上ずらせるライカー。
ピカードはライカーの隣りで呟いた。
「そんな事を言っていたのかね。」

「え、いええ」
「確かに殺すつもりだったが…」
「ええええ?」

「今回も副長は、今一歩の所で決断力が足りなかったように思われるわ。艦長と副長の仲が悪いままでは艦全体の士気にも悪影響を及ぼすわ。だからこれからマギデッキで正式に決闘するのはどうかしら? もちろんどちらかが死ぬまでよ。」
全くの親切心かららしい笑顔で言うレイタ。

「いや、あの、レイタ。」
「うーん、それも面白いかもしれんなあ…」

「(えーっ、乗り気いい!?)」

「話は決まったわね。それでは行きましょう。」

「いや、違うんだ、頼む! レイタ、あれはつまり、一種の方便なんだって! こら、引っ張るな! 暴力反対! 助けてー!!」
レイタは微笑みながらピカードとライカーをずるずる引っ張って行った。

つづく
 


次回に続くよどこまでも
 
ver.-1.00 1998+6/20公開
 
感想・質問・誤字情報・モーニング娘。バクシーシ娘。バカヤロー解散娘。実家の弁当屋お手伝いコブ付き娘。等はこちらまで! 

次回予告

県体のシーズンが近づいていた。1人で練習を続けるシンジ。しかしレイはそんな彼を構い続けていた。
本番も近づいたある日、シンジは予選で高記録をマーク、大会出場を物にする。レイは彼が祝い事を好かない事を知っていたが、それでも最近開店したレストランに誘わずにはいられなかった。夜の街でそれなりに良い雰囲気になる2人。しかし不良グループが彼等に絡んでくる。シンジは何とかレイは守るものの、大会の事を考えると抵抗する事が出来ず彼等にボロボロにされるのだった。
結局怪我のせいでシンジは大会に出場できなかった。世話をし、慰めるレイ。シンジはいつもの無愛想で彼女に答えていた。ある日レイは又シンジに自分が好きなのかどうか問いただした。曖昧に答えるシンジ。レイは彼に何故自分に対して怒らず、かといって自分を求める事もないのか聞く。好きなのか鬱陶しく思っているのか、これでは矛盾している、と。すると何故かシンジは急にレイに優しくなり、彼女を求めるのだった。あの夏以来の愛を貪る2人。そしてレイは彼の目を見て気付くのだった。彼があの彼女の代りを求めていただけだったという事に。レイはシンジの元を去った。
次回「真夏の子供達」第26話、「アイリッド(3)」。御期待下さい。

本当の次回予告:ミサトとお母さんが出ます。
 



 
後書きコーナー

「もう疲れてるし後書き良いや。」
「アアアァ、そんな事おっしゃらないで作者さん。せっかくこれから楽しいお話をしようという所なんですから。」
「は、はあ…今回はついにナデシコの方ですか。」
「そうですネェ、もうそろそろ皆さんもエバのクルーの方々との対談も飽きられた頃でしょう? ですから今回は、民間人代表の私が、」
「監視役に私も来ました。」
「うぇ゛。」
「ところで、エヴァンゲリオンの方は皆さんここに出られたんですか。」
「えー、どうだったっけえ。誰か足りなかったような気が…(資料を見る)…えっとね、トウジとフェレンスケはまだ出てないですね。あ後ペンペンとかナオコさんとかも出てないですけど。」
「はあ。」
「でも、トウジは替え歌の方で出てるんですね。だから実質出てないのはフェレンスケだけですね。」
「あーちょっと待って下さい、皆さん私がフェレンスケ人な事をお忘れになってらっしゃいませんか?」
ああ。
「じゃ、フェレンスケはもう出た、と。」
「そういう問題だったんでしょうか…」
「あれ、違ったっけ?」
「しかし作者さん、聞きましたよ。また何やら一騒動あったそうですネェ。」
「あっごめんなさい! プワークさん、その件は勘弁して下さい。」
「何を今更! よろしいですか、「被写体獲得の法則」第34条。「喧嘩は、ナンパに有効で」」
「プワークさん。」
びくっ
「…い、良いじゃないですかルドーさん、こうちょっと危険な香りのトークを振ってみたかっただけなんですから、ネェ。」
「そいえばトーク、1個ネタあったですよ。」
「どうされたんですか。」
「うんとね、ある方から写真ネタを頂いたんだけど…あー、めぞんに送りづらいんでこっちに置いとくか、こんなのがあったんですよ。」
「ホゥ…これは…売れますかネェ。」
「いや、今まで見た事無いけど…」
「…」
「gooで「フランス饅頭」調べたら2件ヒットしたけどね。1件私。」
「それでおしまいですか…」
「そ。」
「ある方というのは誰なんですか。」
「…あーとね、名前はもしかしたら、明かさない方が良いかもしれない。最近ちょっとごたごたあったらしくてさ。」
「はあ。」
ぴーん
「ちょっと待って下さい、そのごたごたというのはやっぱり、作者さんが何かの原因を?」
「やっぱりって何よやっぱりって。」
「あーっ、作者さんついてらっしゃる。今日は特別にこの思考制御マッシーンを御紹介致しましょう、これさえあればあなたも全く問題の無いほのぼの作家! 今なら特別に自前HPもついてこのお値段!」
「おー。」
「その機械は作者さんの過去の言動は消えるんですか。」
「あ゛、何でそういう事を」
「えー、消えないのお!」
「あーいやいや、でも正直作者様の場合、今の毒を消されますと何も残る物が…あ」
バキッ(←何かを折る音)
「ほう…」
「あ、いや、それは言葉の綾というものでしてハイ。アアーッあそこにあおぎりさんが」
「えーっどこどこどこ」
ぴゅるーっ。
「バカばっか。」8秒後作者死亡。(死因オナラ中毒。)

以下次回





 フラン研さんの『新エヴァントレック』第二十五話、公開です。



 これの元ネタは・・・知っていた♪


 なんだだかんだと言いながら、
 ”元ネタ知っとる度”はかなりのもんだなぁ、自分。

 火曜深夜25時過ぎなんて時間にやっているんだけど、
 ほとんど欠かさずに見ているみたい、わし。


 いま大阪では「ディープスペース9」をやっているんだけど−
 前の奴の方が好みだったなぁ

 やっぱり
  宇宙船で飛び回って
  ミサイルどっかん
  ビームびびび
 これでしょ。  邪道?(^^;




 でも、しかし、
 ナデシコの方は、

 全く知らないでし・・

 雑誌に載っていた物はチラチラ読んだんだけど・・
 あの雑誌はEVAだけがターゲットだったから(^^;



 知っている物と知らない物が絡んで変に面白かった(^^) 邪道??


 ”知らない”が多いから、
 細かい笑いを沢山見逃しているんだろうなぁ

 そう考えると、実に損している気分。

 勿体ない・・・

 




 さあ、訪問者の皆さん。
 質量共にずっしりのフラン研さんに感想メールを送りましょう!



TOP 】 / 【 めぞん 】 / [フラン研]の新発明:エコ冷蔵庫:冷蔵庫に物を入れっぱなしにしていたら賞味期限が切れていた、なんて経験ありませんか? そこでこの冷蔵庫は中の気温を室温と同じとし、食品の腐敗進行度を当社比500%増に。気が抜けないので中の物を忘れる事がありません。電気代も節約!