TOP 】 / 【 めぞん 】 / [フラ×フラお正月スペシャル]の部屋/ KIX・S
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(何故かまだ生きていた)フユツキは、1人豆カラで熱唱していた。
「たんのーうしく、たんのううしく、やさしーくねええ。たぅんのーうすぃく、たんなぉーうしく、ぃやっさしーいくねえええ。」

「だ、誰か何か言わないんですか…」
頭痛に頭を押さえながら、周囲を見回すシンジ。レイタ、無表情。マヤ、自室で写真集に「ネコ」夢中(んまいねこりゃ)。ミサト、耳栓ずみ。リョウジ、トイレ中。ドクター、医療室で実験中。ゲォーフ…

シンジは固まった。

げ、ゲォーフが泣いてる!(意外とよく泣くけど。)

「ど、どしたのゲォーフ。」

「美しい…何と清らかな歌声だろうか…」感動の余りふるふると震えるゲオ。
「やはり私はこの船に残って良かったのだな。艦長ー!!」前方の艦長めがけてダイブ。

ごきゅっ。

「い。今脊髄に変な音が…」
 

ぽろろん。

「通信が入っているわ。」

鮮血を吹きながら、床から這い上がる艦長。
「あ゛、あ゛がっら゛レ゛イ゛ダ、フギーニ゛はあ゛ぎえ゛ぐえ゛え゛。(分かったレイタ、スクリーンに回してくれ。)」

スクリーンに現れたのは、最近順調に準レギュの位置を確保しつつあるノゾミ提督であった(っていうかもうキャラ増やしたくないの)。今日食べているのはジャンバラヤのようだ。
「おっと、今日はお邪魔だったかな、ビューティー。」

「はぐ…」
「艦長しっかりして下さい。しっかりしてくれれば、ホールコースのチケッ…」
「うおおおおおおおおぉぉ」レイタの声に反応して急速な回復力を見せる艦長。数秒の間にいつも通りのムチムチコスモビューティーに戻った。

「それで、何でしょうか提督。」

「医者いらずだな。」

「いえいえとんでもない。まあ、健康の秘訣をあえて挙げるとするなら、毎日の養命酒とヒンズースクアット2000本、それからゴジラアイラ…」

「その話は後でゆっくり聞こう艦長。すまんが2人で話がしたい。艦長室は構わないか。」

「分かりました。」
 
 

ぬいぐるみの山をかき分け艦長は机のモニタをつけた。
「それで御用件とは。」

「うむ。数週間前から、連邦のある大使が姿を消した。当然我々の諜報部が血眼になって探したのだが、2日前になるまで全く消息がつかめなかったのだ。」

「つまり、見つかったと。」

「ああ。…ロミュラスカ星にいたよ。」

ピカードは眉を潜めた。
「ロミュラスカ星、ですか…どうも最近、あそこは不穏な動きが絶えないですな…」

「そうだな。どういう事情か、今度は知らない内にリンクまで…まあ、それはともかくだ。もし、彼がロミュラスカの手先になったのだとしたら、これは連邦にとっては計り知れないほどの脅威なのだ。」

「…確かに連邦の大使に亡命されたとなると情報が漏れるのは必須でしょうが…」

頭を振るションティ。ケチャップが飛んでいる。
「彼は、ただの「連邦の大使」などではない。我々が生まれる以前から連邦を支え、連邦の歴史を作って来た男と言っても過言ではないんだビューティー。…この顔に、見覚えがあるだろう。」
 
 

亜空間通信の映像は一人の連邦大使の映像に切り替わった。何とも形容し難い不可思議な髪型の、ヴァルカスカ人だ。
「ミスター・スネック…」

ビューティーは懸垂しながら呟いた。
 


―宇宙。そこは最後のボランティア(意味不明)。これは、宇宙戦艦エバンゲリオン号が、新世代のクルーの下に、24世紀において概ね任務を続行し、未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求めるふりをしつつ、人類未踏の宇宙に、アバウトに航海したりしなかったりする小話である―

また画像が変更。
Evan Trek The Next Generation: 3rd Season
また復活! (実家から)帰って来た新エヴァントレック!!

 
Mummification
第十八話「潜入!ロミュラスカ帝国」 

 
航星日誌、宇宙暦45233.1。我々エバンゲリオンの今回の任務は、惑星連邦におけるあの伝説的な人物、ミスター・スネックの今回の行動の真意を探り、また彼を連れ戻す事にある。まずはミスター・スネックの最近の動向を知る為、彼の故郷の星、ヴァルカスカへと向かった。
 

「艦長は…よっ…以前…はっ…アレック大使とマインドメルドされましたね…うっ」
アクションヨーヨーを練習中の副長がビューティーに聞く。

「ああ。アレック大使はあの時感情の抑えが効かなくなっていたから、私が彼の感情を全て一旦取り込んだのだ。あの時の事は今でも忘れられん。」

「ええ。」ライカーは踊りながら促した。

「大使は息子さんの事を大層心配していた。」

「心配? ヴァルカスカ人に、心配という感情は…」

「あるんだレイタ。彼等は感情を抑えているだけであって、感情はあるのだよ。しかし、彼等親子は結局、今に至るまで対立したまま和解していないらしい…残念な事だ…」

「はー、うっ…しかしあの時我々が何より驚いたのは、大使を始め皆さん3等身キャラではないという事でした。…とう!」

沈痛な面持ちのマリ姉は、彼の言葉に嬉しそうに笑った。
「それは当然だよ副長。何故なら犬作戦の時代も、あくまで流行していたのは「ドラ大」であって…」
 

熱っぽくエヴァ小説論を語ろうかと息を吸いだしたビューティーを、ミイラ男の声が遮った。
「すいません。」

「ごほっごほっ、…どうした。」

「例の破壊されたフェレンスケ船の残骸の中に、どうやらヴァルカスカの物と思われる部品があるんです。」

「分かった。副長、機関室へ行ってくれ。」

アクロバティックな技をやりすぎたらしいリョウジは、尻を押さえてもだえだしている。
「うぐ、漏れる…」

「漏れても良いから行ってくれ。シンジ君、ヴァルカスカ星には後どれ位かかる。」

シンジはパネルに指を触れた。
「後10分程で周回軌道に乗ります。」

「分かった。」

「…漏れちゃった。」

「え。…あああああああ。とっととブリッジから失せろ!」

がすっ

「何と鮮やかな飛び蹴りだ…艦長…」再び涙するゲォーフ。


お気に入りの体育着とブルマに身を包んだ艦長は、家の門の前に転送されて来た。ヴァルカスカ星の民家のようだ。

きらきらきらきら嫌い、好き、嫌い、好き?(占い中)

ピカードはしばらく処女(をとめ)のためらいを見せていたが、やがて決心したらしく「ぶひー」とブザーを押した。

ドアを開けたのは、腰までの金髪を光らせた地球人の女性だった。
「お話は聞いていますわ、ピカードさん。」

「お久しぶりです。」
彼はアレック大使の妻で、即ちミスター・スネックの母である【ペリル】に挨拶を
「ちょっと待て! 一体何だ、この…う…何と言うのだ、「濃い目かぎカッコ」は!」

「不思議な方ね。何の事を言っているのかしら。」
澄ましてかわす【ペリル】。

「う、うぬぬ…」ビューティーはしばらくプルプルしていたが、任務を思い出し頭を振った。
「ところで…御主人の方は今、どちらに…」

「いますわ。寝室に。」彼女はちら、と目を向こうに向けた。

「どうか、されたのですかな。」

【ペリル】はそのシャンデリアのような目を細め、ピカードに口にした。
「ショックを受けないで下さいね。…病気は、悪化しています。」

「そうですか…」

「どうぞ。」
【ペリル】はピカードを招き入れた。
 
 
 
「息子は、さらわれたのではない事は確かです。」
何かニチャニチャ言っているスープをピカードの前に出しながら言う【ペリル】。
「ビエンチャン風味です、お召し上がりになってね。」

「え、ええ。」

ぎろ
「ね。」

渋々スプーンを使い出す艦長。
「あ、う、はい。…何故、息子さんがさらわれたのでないと。」

「明らかに家を出る準備がしてありました。彼お好みのアンソロ本やフィギュアもごっそりと消えていましたから…」

「失礼ですが強盗にあったのでは?」

「そうは思えません。この星で地球の昔のアニメにはまる者などうちの息子位でしょう。」

艦長は連邦に残る数ある「伝説」を思い出し微笑んだ。
「確かに。」
糸を引く粘着質のスープを結構おいしそうに飲み干す。
「御主人に会わせて頂けますか。」

「…いつも主人とスネックは、喧嘩ばかりしていました。もう少し仲良く出来ない物かと思うのですが。最近でも、アオバシアとの和平条約について議論しあっていましたし…正直な所、主人が息子の居場所を知っているとは、」

「ペリルさん、」艦長は遮った(さすがに濃い目かぎカッコは発音出来なかった)。
「今はとにかく一つでも情報が欲しい。御主人に会いたいのです。」

んふ。
「そういうと思ってましたわ。」

手で扉を指し示す【ペリル】。
「ありがとう。」
 

ビューティーは扉を開けた。
「ぐふーーー。ああ、これはぴかーどかんちょおですか、すごいですぅ。」
金髪碧眼、胸毛モジャモジャのオヤジがウサ耳と珍妙なファッションで踊っている。

「これは…へぼ」
「違います! …イルシノディック症候群です。」

「そうでした。」頷くフユツキ。

「んふうー。ぴかーどかんちょおむずかしいかおは、おからだによくありませんねえ。」
例の妙に腰の引けた、生まれたての鹿のような動きで無邪気に笑いかける。

「アレック大使、実は息子さんの、ミスター・スネックの事で…」

ビリビリビリビリ(電気ビリビリ)

「何だと!」
急に正気に戻ったアレックはビューティーの胸ぐらをつかんだ。

「君は息子とそういう関係だったのか!」

「ちあいますたいひ、もうそうのなはではとにはく、げんじふには…」

「ああ、すまん。取り乱したようだ。息子の事で、話があると言っていたな。ロミュラスカにいたとか…」

「その通りです。(さっき思わず変な事を言ってしまったような気が…)」紅潮した頬で頷く艦長。

パツキンオヤジは体臭をふりまきながら首を振った。
「何にも知らん。ぐふう、知らないですぅー。」

「症状がぶり返しているわ。」

「著作権的に危険な病気ですな。…アッレク大使、ヒントでもかまいません、何か、手がかりになるような事は!」

「ぐふ、うっ、そうだな、敢えて言えば、ロミュラスカの中でもハト派として知られる政治家ですねえ!うふーの、リュージョック氏…んふふふ、が…んーすごいですぅうう」

「リュージョック氏…」

「リュージョックしい!ぐふ、たいへんですねえ!それはらぶらぶですねえ。」

「艦長、これ以上は…」
 

「分かりました。」艦長は【ペリル】に頷いた。
「それでは大使、これで失礼を」

微かな意識の中、それでも大使は伝統的なヴァルカスカ式挨拶をしようと手を上げた。
「ああ、ぐふっ、艦長、んふー。うっ、いぼ痔には気をつ…」
ガク。

「大使!」「あなた!」


ビューティーは深く沈んでいた。
「♪しっぶやっどぇわあーぁ。んーふふーふふうう。さーっいきっぬわああーぁ。ふーっふっふふふうー」

「ロミュラスカに潜入する為には遮蔽装置を装備した船が必要ね。」
周囲を見回すレイタ。
「…皆気を失ったか、正気を失ったかのどちらかのようね。困ったものだわ。」
ボソボソと独り言を呟く。

「ゲォーフ。」

うるうる
「何だ。」

「ゼレンゴンに向かって、そこで船を借りましょう。」

「分かった。」
 
 

エバンゲリオンはゼレンゴンの主星ゼロノスの周回軌道上に到着した。
「駄目です。」

「こちらも駄目。応答がないわ。」

「駄目? どういう事だ。」
ようやくオンステージを終えたらしい艦長が尋ねる。

レイタはゼレンゴンのネットにアクセスして、ぱちぱち指を動かしている。
「どうやら、今ゼレンゴンの上層部は私達と会うのを避けているようね。」

「何故だ!」怒りの副長。

「「「「…」」」」

「な、何だ、何なんだ、何で皆して俺をそんな目で見る!! うわあーあー

「確かにおかしいですね…あ、1人繋がりました。」

「分かったシンジ君、ビューワーに出してくれ給え。」

メンソールタバコの煙でもうもうとしている部屋と、眼鏡をかけた短髪のゼレンゴン人女性が映し出された。
「どなたかしら?」
物憂げな声である。

「こちらはUSSエバンゲリオン艦長、アカリ・」

「ああ、ビューティーね。おおかた他のどことも通信が繋がらないから、ここにかけて来たんでしょう。」

「その通りだ。一体何があったと言うのかね。」

「ジブロンを始め、帝国の人間達は今あなた方を避けているわ。…恐いのよ。もしあなた方がガイナラスとの政争の際彼等に手を貸していた事がばれるとね。ゼレンゴンの世論は彼等、ジブロン達には、不利になるでしょうからね。」

やれやれ、と肩を上げるライカー。
「ゼレンゴンの外国人嫌いも少し度が過ぎるようだな。」

画面の向こうの女性は軽く眉を上げ、眼鏡を指で上げた。
「連邦が駄目なのではないわ、「あなた方」がまずいと言っているのよ。…これだけ悪さをすれば、それは友人もなくすわよ。」

「「ぬあーっ!!」」立ち上がる艦長と副長、何だかんだ言って仲良しさんである。

「それで…ヒロコ・クヴァダ外交官、あなたは何故通信に応じたの。」
パネルの名前を確認しながら話しかけるレイタ。

「私? 私は、そうね、危ない事は、嫌いな方じゃないから…」
妖艶な微笑みを見せながら人差し指をモニタに近づけるヒロコ。
「何、随分かわいい子も乗せてるじゃない。」
 

「…やっぱり、僕、ですか?」
まるで痙攣したかのように顔を引きつらせるシンジ・クラッシャー少年。

「クラッシャー君。」

シンジは助けを求めるかのように(というか求めて)隣を向いた。
「れ、レイタ。」

レイタは無感情に言った。
「クラッシャー君が役に立つのは、こういう時しかないわ。」

がーん。

硬直するシンジの隣で冷静に続けるレイタ。
「彼のクローンでよければ、何体でも…」

「その話乗った!」

「それでは1隻、船を用意して頂けますか。」

「任せてビューティー。バリバリでムキムキの奴を用意するわね!」
通信は切れた。
 

フユツキは胸のバッジを叩いた。
「…ドクターへ、こちらブリッジ。」

通信の向こうからは、例によって唸るチェーンソーの音が聞こえる。
「こちらドクター。何かしら艦長。」

「ロミュラスカに潜入する為、これから…私、レイタ、シンジ君がそちらへ向かう。ロミュラスカ風のメイクをお願いするよ。」

「…」

「ドクター?」

「ぐー! それ、最高! さっそくやりますわ! うーん、久々に任務らしい任務ですわね、腕がなるわ! ひゃっひゃっひゃ…」

ブリッジは死を前にした静けさに包まれた。
「って、な、何で、艦長、僕までメイクを…」

「さっきの交渉を見たろう? 君はマスコットとしてこの上もなく役に立つのだよ、シンジ君。」

艦長の言葉に無表情に頷くレイタ。
「そうよ。」

「うっ…」

「それではさっそく医療室へ向かおう。副長、後を頼む。」

又お腹を押さえ出すライカー。
「今、第2波が…」

「何でも良いから頼んだぞ。」

「愛しているぞ、艦長…」(ToT)
どうやら何か回路が壊れたらしいゲォーフ。


ミイラ男は左手で点滴を持ちながら、右手で部品を指していた。
「部品が何なのか分かりましたよ。ナビゲーションディフレクターですね。この部分を見て下さい。」

リョウジはマコトの指差す部分を眺めた。何やら黒焦げの有機物が付着している。
「おいしそうでしょう? 鳩の死体ですよ。」

「伝書鳩か…」納得して頷く副長。

「この鳩のメモリーチップによると、このディフレクターを使っていた船はトゥパウ、4年前にグロアー2号星で消息を絶ったヴァルカスカの貨物船ですね。」

「聞いたか、ゲォーフ。」

「ああ。」

「グロアー2号星へ進路を取れ、ワープ6だ。」

「問題無い。」
エバンゲリオンはヴァルカスカ周回軌道から離脱した。
 
 

「問題があったようね。」レイタは呟いた。

「なーんーでー!」
ゼレンゴン船のコクピットで、ヒロコ・クヴァダは怒り狂っていた。
「なーんーでー、私のシンちゃんがこんな妙ちきりんな格好になってんのよ! あー妙、とっても妙。コンサドーレ札幌の命名法くらい妙だわっ!」

「ようやく引用できましたね、お隣さんのネタ…」おずおずと突っ込みを入れるシンちゃん。

「前回に引き続き、な。」

「何そこ、ひそひそやってんの! ったく、本当にくれるんでしょうね、生きてる奴!」

「それは保証するわ。」貨物室のシンジ(ロミュラスカ風)とフユツキ(以下同文)を尻目に、クヴァダとコクピットに座るレイタ(いかだハウス)は頷いた。

「僕、伊勢エビか何かじゃないんですから…」

「似たようなものよクラッシャー君。出発。」

「レイタぁ。」(ToT)

クヴァダ自身を含め4人を乗せた彼女のゼレンゴン船はロミュラスカ星に進路を取り出発した。



 
エバンゲリオンはグロアー2号星付近の貨物船置き場に到着していた。その後のマコトの調査でここにトゥパウが停泊していた事が突き止められている。このエリアは難破船のゴミ置き場のようで、多数の残骸が周りを漂っていた。

「この付近の管理官とかは、いないのか?」

「しりませんよお。そんな事。むすーーっ」
部屋で「やんごとなき状況」の最中にブリッジに呼び出されたマヤは投げやりに答える。

リョウちゃんは溜め息をついた。
「…ゲォーフ。」

「どうやら、ユミ・クサナギ・ドカーチンというザクルーズ人がここの管理者のようだが…」

「ちっす。」急に映像通信が入って来た。快活の印象の、中々に美人の女性だ。
「何やってんの、君達。」

「おお…今日のアミダで吉に当たっただけのことはあったな…」呟く副長。

「君がユミ君か。」

ゲォーフに頷くドカーチン。
「ええそうよ。クサナギの漢字が難しいから、「草薙」で代用してるけど何かすっごいモヤモヤするのよーっ!!」
唐突にあらぬ方向に向かって叫んでいる。

「カタカナの名前だと思っていたが…」呟く副長。

「良いの良いの、こっちの話。で、何か用?」

「あ、ああ。今、トゥパウという船を捜しているんだが…」

「トゥパウ? 聞いた事、あるよなないよな…他にもっと良い船がたくさんあるわよ。」

「トゥパウという船を捜している。」

「えー、めんどいわねー…ちっわざわざ辺鄙な場所に出張して出てやってんのに悪い扱いしやがって。

「何か今呟いてなかったか?」

ユミはリョウジに笑顔を取り繕ってみせた。
「あ、ううん、何でもないわ。でもー、ごめんね、ちゃんと記録とってる訳じゃないし、難しいかなー。」

「ねーえ、ユミちゃん。」今回は出番がないかと思われていたカウンセラーが急に湯けむりの向こうから顔を出した。
「もしかして…ユミちゃんって、そっちに系に興味が無くない?」

にやけるトロイに眉を上げるドカーチン。
「そっち系?」

「わ・か・る・で・しょ。「そっち」よ。」

ミサトの妙に艶っぽい声に、「ピーコの辛口ファッション批評VS成城のヤングマダム」のビデオを熱中して見ていたマヤは顔を上げた。
「ね。マヤちゅん。」

ミサトの声に少し怪訝そうにビューワーを確認する。
「…ああ。」
マヤは納得したように頷いた。

「「も、もしかして…」」何故か少し嬉しそうに声を揃える副長とゲォーフ。

「ええ。」いつものようにバスタオル姿のカウンセラーは両手を腰に当てて頷いた。
「ユミちゃん、あなたは間違いなく…」

「みかん好きですねえっ!」声を上げるロー少尉。

「「「何じゃそりゃーっ!」」」カウンセラーも叫んでいる所を見ると、どうやら彼女の見解は違ったらしい。
 

ユミは頭を押さえた。
「な、何で、何で、何で分かったの?」

「「「当たってるんかいーっ!」」」

「あなたも、毎日5回はみかん体操を見ないと呼吸困難に陥るクチねっ?」
自信満々に尋ねるマヤ。

「え、ええ…」

「大丈夫、あなたはノーマルよ。心配する事はないわ。」

「「「(そうかなあ…)」」」

「…」

「みかんならいくらでもあげる。…協力してくれるわね。」

ユミはしばらく考えていたが、やがて真面目な顔で頷いた。
「…分かったわ。」

マヤはユミに優しく微笑んだ。
「ありがとう。」
 

マヤはやや恥ずかしそうにクルーを見回した。
「あ、あの、副長…」

「何だ?」

「こ、この事は、他の皆には内緒に…」

「みかん好き、って事が…か?」

「そ、そんなダイレクトに言わないで下さい! …ええ。」(..*)

「あ、ああ、約束しよう。な、な。」
カウンセラーとゲォーフに同意を求める副長。

「ああ…」「ええ…」
 

ビューワーの向こうの女性は、コンピューターを操作していた。
「…トゥパウねえ…どうやら今はその船はここには無いわね。」

おはスタは顔を上げた。
「そんなはずはない。確かにここにあると聞いたぞ。」

むっ
「そんな事言うけどおじさん、無い物は無いんだからしょうがないでしょ。」

「お、おじさん…」

「ま、ザクルーズの情報バンクに何かあるかも分からないわ。調べてみる。あなた達もここの船を、自由に調べて構わないわ。ただし、半分スクラップとはいえ、一応これでもれっきとした商品だから、傷つけたりはしないでよね。」

「分かりましたあ。」石化する副長の隣でマヤが快活に答える。

「じゃね。」通信は切れた。


クヴァダの船はロミュラスカ領域に入り、遮蔽装置で遮蔽された。ロミュラスカ星間帝国の領域に無許可で入る他国籍船はいつ捕らえられ、他国の侵略の証拠とされてもおかしくない。4人の間に緊張が走る。

「ああ…ゴーヤだな。」

シンジはフユツキに抗議するかのような目つきになった。
「や、ヤですか? や、や、や…やかん!…あ」

「ンゴロンゴロクレーター。」

「「え?」」

「タかアよ。」怪訝そうに言うレイタ。

「う、うむ…たのきん…」

「ンね、艦長の負け。はい、腕出して。」

「えええええ!」

「うーるーさーーいいーーー!」

ぜえ、ぜえ

「ったく、あんたらには緊張感ってものは無い訳? これから敵地に潜入しようとしてるのよ?」
1人コクピットで真面目に操縦しているヒロコが湯気を出す。

「今、何が出来る訳でもないわ。」

「だからってしりとりしなくても良いでしょ!」

3人は互いの顔を見合わせた。

「「「…」」」
 

「…分かったわ。」

「分かれば良いのよ分かれば。」

「それでは山手線ゲームをするわ。」

「分かってへんわーっ!!」

「…王様ゲームは嫌。」

「そういう問題じゃなーいっ!!」
 

ぽろろん

「あら、通信ね…」
どうやら文によるものらしい。モニタを見るヒロコ。
「へえー。」

ヒロコの声の調子にピカードは顔を上げた。
「何だって?」

「その、あなた達の探してるミスター・スネックのお父さんが、お亡くなりになったんだって。えー、イルシノディック症候群? ああ、あの、彼等に良く見られる神経症よね。」
 

沈痛な面持ちになるシンジとビューティー。
「そんな! 大使は、さっきまで艦長と会っていたのに…」

「…大使は、今年で確か204歳になられるはずだ。その意味では天寿を全うした、と言えるのかもしれんな。」

「…」

「しかし…これで、大使と息子さんが和解する道は、永遠に閉ざされてしまった訳だな…」

シンジは艦長の言葉に、おもむろに口を開いた。
「艦長…」

「何だ、シンジ君。」

「そろそろ体育着は着替えた方が良んじゃないかと…」

「そうだな。」
 
 

計器を見たレイタはヒロコと頷きあった。
「そこのボンクラ2人。ロミュラスカに着いたわ。」
彼女にしては快活に言うレイタ。

「ぼ、ボンクラだと?」

「ええそうよ。…言い方が悪かったかしら。雰囲気が暗くなっているので、少しくだけた言い方にしてみようと思ったのだけど。」

「もうちょっと、違う言い方の方が良いと思うよ、レイタ。」

「そう。考えるわ、クラッシャー君。…クヴァダさん、転送。」

「了解。達者でね。」

レイタ、ピカード、クラッシャーの3人はロミュラスカ星の地上へと転送されて行った。


ラングレフは最近不機嫌だった。理由はここでは色んな事情があるので詳しくは言えないが、取り敢えず機嫌が悪いのである。今こそロミュラスカの団結を示さなければならない時機(とき)なのに、こういう塩沢(とき)に限って帝国は内憂外患とも呼ぶべき状態なのだ。アズーカ宰相の怒り狂う顔が目に浮かぶ。

これだから中間管理職ってやつぁーね…

やや哀愁すら漂わせながら頭を振るラングレフは、一人のロミュラスカ人女性に近づいた。女性上位社会のロミュラスカでは社会の主要な部分を構成するのは殆どが女性である。
「リュージョック、調子はどう。」

ラングレフと殆ど見分けのつかないロミュラスカ人が顔を上げた。心なしか彼女の方が胸が小さいようだ。
「…別に普通よ。あんたはどうなのよ。」

「色々と問題が多くてね…今、こういう奴が帝国をうろついているらしいんだけど、心当たり無い?」
ラングレフはリュージョックの目の前のパネルを操作し、一人の男の映像を彼女に見せた。トサカ男だ。

リュージョックは首を振った。
「…知らないわ。雰囲気は…ヴァルカスカ人っぽいわね。」

「御明察。奴は、スネックと言って、惑星連邦の重鎮とも言える奴よ。こいつが今、この星に潜伏しているらしいわ。この映像を保安部の方に回して。良いわね。」

「分かったわ。」
ラングレフはリュージョックの答えに手を上げて答え、去って行った。
 
 

「諜報部の情報によればこの付近にリュージョックはよく現れるそうよ。」
フユツキ、レイタ、シンジの3人はロミュラスカの食堂で食事をしていた。3人ともドクター・リツコの手によって例のV字型の眉、尖った耳を始めとするロミュラスカの変装をしてはいるのだが、この3人ではどうも珍妙な取り合わせだ。

「しかし、本当に皆同じ顔ですね…」周りを見回すシンジ。

「我々には同じに見えるがな、それはまあ、慣れというか、理解度の問題なのだよ、シンジ君。」

「そうなんでしょうか…」

「まああれだな。ある時機を逃すと、生まれ育った街の「引力」と言うものがどんどん強くなってだな…」

「艦長。」

お得意の話しの小箱を開け損なったフユツキはややムッとしてレイタに答えた。
「何だね。」

レイタは顎で指した。
「リュージョックよ。」

ガラスの向こうの通りで、リュージョックがダブルチーズバーガーをパクつきながら歩いている。

「さあ、行きましょう。」

「待ち給え。」

彼等3人の周囲のロミュラスカ人達が立ち上がった。フェイザーを構えている。
「先に我々に付いてきてもらえるかな。」

3人は、ロミュラスカの秘密警察に連行された。


3人が連れて来られたのは、暗い洞窟か何かのトンネルであった。

「あ、あの、艦長…」

「何だ、シンジ君。」

「と、トイレ、行きたくなっちゃったんです、けど…」

「「…」」
溜め息をつく艦長とレイタ。

「…大かね、小かね。」

「しょ、小です、小です。」

「「…」」

「仕方あるまい。私が飲も」

ばこーん。

「ごめんなさい、クラッシャー君、少し我慢してもらえる。」

「う、うん、でも、レイタ、そのスリッパ一体どこから…」

「こんな時の為に用意しておいたわ。」

「そ、そう…」
 

「皆、楽しそうにやってるじゃないの。」
3人の後ろから声がかかった。

「き、君は、リュージョック君!」説明しやう! 艦長は婦女子の前では、リサイクルとオゾン層を(何となく)活用して、瞬時に元のムチムチビューティープッチンプリンに戻る事が出来るのだ!

リュージョックは快活に微笑んだ。
「ごめんなさいね、驚かすような事して。…USSエバンゲリオン艦長のピカードさんね。私の「秘密警察」は、乱暴な事はしなかったわよね?」

「あ、ああ。つまり、ここは…」

「まあ。本物の秘密警察に見つかったら困る場所…とだけ言っておこうかしら。」

リュージョックはさっそくシンジに目をつけた。
「…あら、あなたもしかしてシンちゃん? いやー、本物に会えるなんて感激だわーっ!」

「ね?」という艦長、レイタの視線に苦笑するシンジ。
「あ、ど、どうも…」

「リュージョックさん。」

「何かしら?」艦長に微笑むリュージョック。

「シンジ君の事は後でゆっくり話すなり煮るなり焼くなり何なりするとして、私達は今、至急やらなければならない事があります。私達は、ある人物を探しているのです。その人の名前は、ミスター・スネックと言うのですが、」
 
 

「まさか私が「残された最後の切り札よ」と言う訳じゃないでしょうな。はっは、ふわーっはっはっはっかっかっか。」


Evan Trek TNG Episode 18: Mummification


 
「うーん…」
リョウジは副長席の上のおまるの上に座り、モニタを見ながら考え込んでいた。

ぽろろん。
「ドカチンから通信だ。」

「分かったゲォーフ、スクリーンへ。」

ユミは画面に怒鳴り込んだ。
「ドカチンじゃないのよゲォーフ、ドカーチン!(--; ああ、副長、捜索の方はどう、うまく行ってる?」

「いやあ、ずっと考えていたのだが…「フライヤーTV」って、ウゴルーだよな?」

「だから何だっつーの。」(--;

「いや、ちょっと思っただけだが…」

「君達連邦の士官が出ているテレビといえば、「A女E女」でしょーが。」

副長は怪訝そうに言い返した。
「それはそうだが…確か、仏教系の宗教番組だったな…あれは、連邦内部の機密放送ではなかったのか?」

「え? そ、そうだったっけ? 何か聞き覚えあんのよ、はは、はははは。え、じゃあ、「学校の怪談」ももしかして機密放送?」

ほじほじ
「何それ。」

「…(--; まいいわ。じゃあ、そっちは進展無しね。」

「君の方はどうなんだい。」

「こっちも駄目。協力したいのは山々なんだけど、ザクルーズのデータベースによれば、トゥパウが遭難した、もしくは盗まれたという情報は記録されていないわね。」

「打つ手無し、か…」
 

ユミは少し上目遣いにモニタの向こうの副長を見た。
「ねえ、レイモンド。」

「ライカーだ。」

「ああ、ごめんなさい。ライカー。本当に、みかんを貰えるのね?」

「ああ約束しよう。幾らでも構わないぞ。」

「「おしりをプリプリみかん、みかん!」ね。」

「(…何それ?)…ああ。」

ユミは嬉しそうに頷いた。
「…一つ、方法があるかもしれないわ。グロアー星の地上にバーがあるわ。場所は…画面に出すわね、ここよ。ここで…何か情報が得られるかもしれない。」

おまるに乗った副長はマルボロに火をつけた。
「…誰に聞けば良い。」

「それ位は自分で探してよね。じゃ、切るわよ。」

「うむ…」
ぶりぶりぶり…


「あなた達は、一体ここで何をやっているのですか。」
洞穴の影から現れた人物は、決して自分の正面を他人に見せない人物だった。

「あ、あなたは…」

「あなたは私が誰か御存知でしょう。知らないなんて、論理的に言って有り得ない。シナリオから大きく外れた出来事だ。」

「ミスター・スネック…」

スネックは軽く肩を上げた。
「日本語で言うと「スネックさん」ですな。」

伝説的な人物を目の前に、感動を隠せない艦長だったが、レイタにスリッパで軽く突っつかれ任務を思い出す。
「あ、ああ、ミスター・スネック、私達はあなたを探しに来たのです。あなたこそ、ここで何をやっているのですか。」

「それは正に、」「「神のみぞ知ると」」
自分とハモッったビューティーの肩に、スネックは嬉しそうに手を置いた。
「…よく私の口癖を分かっておられるようだ。」

「それはもう、ミスター・スネックの言葉は本で何度も読みましたから…」

スネックは肩を上げた。
「そりゃどうも。」
 

再びスリッパで尻を突かれたビューティーは、「あうん」と声を上げながら話しを進めた。
「ミスター・スネック、一つ私達は、残念ですがあなたに知らせなければならない事があります。」

「何ですか。」

「…お父様のアレック大使が今日、お亡くなりになりました。」

スネックはほんの微かに眉を上げたようだった。
「アレックが? …そうですか。イルシノディック症候群ですな。別名キューティー不思議少女症候群。」

「…ええ。」

「彼はここ数年はすっかり不思議づいていましたからね。いつ死んでもおかしくはなかった。」

「…」

「別名東京モード学園症候群とも言いますな。ゴキブ、ゴキブル、ゴキブローチ。」

「お父様は…あなたを、愛していました。父親として、パツキンとして。」

スネックはビューティーに振り返った。
「愛する? ヴァルカスカに、「愛」などと言う矮小な感情は存在しません。」

「しかし、私は以前彼と」

「マインドメルドした、というのでしょう? 確か父がイルシノディック症候群にかかり始めた頃、彼は惑星間の和平交渉の本番直前であったにもかかわらず感情のコントロールが出来なくなったので、あなたとマインドメルドして一時的に彼の感情をあなたに移した、そうでしたね?」

「ええ、その通りです。」

スネックは軽く息をついた。
「その上で、彼が私に愛などと言う感情を持っていたのだとすれば…それはつまり、彼が既に不思議少女病に冒され、錯乱していた事の証明でしょう。それ以上の理由は無い。」

「…」
 

スネックは腕を組むピカードに話を続けた。
「私がここにいる理由をお話しましょう。現在一部のロミュラスカ人達の間で、ミヤムックの教え−つまりヴァルカスカ主義、が注目されつつあります。感情を否定し、論理に生きる道をここの若者もまた学ぼうとしつつあるのです。私はここでその教育をし、ロミュラスカとヴァルカスカの再統一を考えている。」

「ミスター・スネック…お話は分かりました。しかし、何故あなた1人だけでこんな危険な場所にいるのです?」

「いけませんか?」

「無謀すぎます。」

「私はその無謀なやり方をずっとやって来た…あなたの生まれるよりも前からね。時計の針は逆に戻す事は出来ない。」

「(こ、これだ! 強引かつ微妙に意味の違う引用ー!)」思わずスネックの生の言葉に目頭が熱くなるフユツキ。

「以前、連邦とゼレンゴンの和平条約締結の際、私はある事から同僚を危険にさらしました。その二の舞は避けたいのです。」

「だから1人でいる…と。」

「その通りです。」

フユツキは溜め息をついた。
「しかしですなミスター・スネック。連邦としては、そのような危険な外交を認める訳にはいかないのです。」

スネックは心なしか頬を緩めたように見えた。
「あなたも頑固な人だ。私の知っている、エバンゲリオンの他の艦長に似てね。」

「それは光栄です。」
 

スネックはフユツキの言葉にしばらく考えているようだった。
「信長」「違います。」
「そうですか。」
 


ヒロコは後ろの貨物室で人が1名転送されたのを確認すると、最高の外交スマイルを下げて振り返った。
「し・ん・…なんだレイタちゃんか。」
表情を一変させ、顔を戻す。

「…ゼレンゴンのネットにアクセスして良いかしら。 そこからロミュラスカのネットに侵入するわ。」

「ああ、どうぞ。でも本当に貰えるんでしょうね、生で。」

レイタは真摯に頷いた。
「ピチピチ採れたて(カニ料理)の物を保証するわ。」

顔を上げずに返事をするヒロコ・クヴァダ。
「なら協力するわ。…ね、あなたシンちゃんの事良く知ってるんでしょう? 昔はどういう子だったの?」

レイタは感情が無い。無いので、あくまでhtmlにしてネットで公開はとても出来ないようなこの「ばーさん」に対する罵詈雑言はポジトロニックミソの中を駆け巡るだけで口からは出なかった。
「…出生は公式には不明。事実上ドクター・リツコ・クラッシャーが趣味でペットとして作ったものと推測される。宇宙刑事になるも一旦殉職、その後再生し、二十七代目魚武濱田海苔夫の弟子となるも師匠のナルシズムの強さに絶望、飲んだ勢いで飛び降り、自殺。現在は3人目ね。」
連邦の公式記録を淡々と告げるレイタ。

「け、結構波瀾万丈なのね…」

「いつみてもね。」

「は?」

「何でも無いわ。」


ピカードとスネックの会話をずーっと腕組みしながら聞いていたリュージョックは、よっかかっていた石の壁から身を起こした。決して作者から忘れ去られていた訳ではない。

「そろそろ、向こうにいかない?」親指で奥をさす。

「奥には、軽いカフェがあります。立ち続けるのもなんですから、そちらでゆっくりと話し合いましょう。まあ、人はエバのみで生きるにあらずと言いますからな。」
スネックは何か「格言」を使う時のみ、その一見険しく見える顔をニコ、と微笑ませるのだった。
「この場合のエバとは、もちろんあなたの船の事ですぞ、艦長。」

「恐れ入ります。行こうか、シンジ君。」
 

奥に入るにつれそれなりの人数−十数人か、もっとだろうか−がここで生活している事が確認された。ロミュラスカ人の地下抵抗組織という訳だ。
船に戻ったレイタを除く4人は、洞窟の中にしつらえられた地下オープンカフェのテーブルについていた。彼等の目の前に野菜ジュースとサラダ、サラダ、サラダ、それからもちろんサラダが並べられる。ちゅう。

「レイタは、ヴァルカスカの食事、喜ぶでしょうね…」呟くシンジ。
「ねえ…ね、ねえ?」艦長を探す。

シンジの手前でうまそうに「ゼンマイワサワサ」を食べていたスネックが、シンジの視線に気づき、彼に横の方向を指差して見せた。
 

「じゃあ、おじいちゃんは宇宙船の偉い人なの?」

「お、おじいちゃん? おじょうちゃん、できればわたしのことはおねえちゃんってよんでくれるかな?」

にこ
「死んでもいや。」

「はは、こりゃおねえちゃんいっぽんとられたよ。」

冷や汗をかくシンジ。
「(…何故艦長の台詞の方が平仮名に…)」

リュージョックがビューティーと会話していたロミュラスカ人の女の子の後ろに来て、彼女の両肩に手を置いた。
「紹介するわ。ここでミヤムックの教えを学び、実践する若きロミュラスカ…サエックちゃんよ。」

「どうもこんにちは。ぴかーどのへんたいじじい、それから…」

「シンジ、シンジ・クラッシャーです。」

「しんじお兄ちゃん! はじめまして。(うふん)」さっそく色目を使い出すサエック嬢。

「ど、どうも。(どきっ)(縄文)(ダジャレ?)」思わず固い返事を返すシンちゃん。

「…まだ5歳児よ。」(--) 腕を組むリュージョック。

「そうだぞシンジ君。いくらエバンゲリオンのクルーが何でもありだからと言って、5歳児はいかん、5歳児は。」諭す艦長。
「サエックちゃん、だからおねえさんと」

ごすっ。
 

「わーい。艦長さんの頭から、とろとろした物が流れ出てるー。」(^v^)

「…ミスター・スネック、実は話があるの。」
金属バットで艦長の後頭部を縦に突いたリュージョックは、何事も無かったかのようにスネックに話しかけた。

「何です。」「野ワサビフガフガ」を食べる手を休めて聞くスネック。

「現在、ロミュラスカではかなりの勢いでミヤムックの教えが広がっている。今やそれは地下の物ではないわ。」
サエックを抱きかかえるようにして、頭を撫でながら話しを続けるリュージョック。
「今1人、地方の若手行政官でミヤムキズムに興味を示している人がいるの。その人にこれから会って欲しいのだけど…」

「分かりました。…「絆」だから。」後半妙に囁くような声を出して、スネックは頷いた。


携帯用おまる(という物が24世紀にはあるのだ)にまたがった状態で、リョウジはひょこひょことグロアー2号星のバーの中を歩いていた。

「コーヒー豆乳、ツーフィンガーで。」
男臭い笑みを浮かべながらマスターに注文する。

一人のパツゴールドの地球人女性(お約束)がリョウジに近づく。
「あらぁん。随分男らしい物、注文するじゃなぁい。」

「ふっ。それはこれも見た上で、言ってくれているのかな。」腰のあひるちゃんを振るライカー。

「ああうーん。」あひーるちゃんをなまめかしくなでる女性。

「無粋な話をしてすまないが…君はこの付近の裏取引を仕切っているそうだな。」
 
女性は露骨に警戒の態度を取り出した。
「何、あなた? もしかして、あの船の人?」

顔を上げて「上空」を示す。

「まあ、そういうところさ。トゥパウという船の行方を追っているんだが…」

「トゥパウ? どこの船よ。」

「ヴァルカスカだ。」

「ふん。」するりとリョウジの横を抜け、マカデーミアンナッツを頬張る。

「友人が乗っているかもしれないんだ…頼むよ。」

「それで、その情報の報酬わあん?」あひるちゃんを再びなでるパツゴールド。

「…最近恋人がつれないんだ。他に相手が出来たらしくってな。」

「あら。じゃあ今晩辺りどうかしら?」

「そうだな。御婦人に利用されるとは光栄だな…(今日のヤマザキは面白かったな…)」

「んふふんふーんふーふーふー…」
女性は軽く頷いた。
「今晩10時、ここで待ってるわ。」

立ち去ろうとする女性の腕をリョウジはつかんだ。
「…今は、教えられないわ。」
 

突如太鼓を取り出し(どこから?)、ドンドンと打ち鳴らす副長。
「あ…や、やめて、あ、ああん、あん、あん…(以下自主規制:アニメは周りを明るくしてご覧になって下さい)」

「ふっ…松岡師匠に弟子入りしただけの事はあったな…」

「ああ…や、やめないで…」

「情報を教えてくれさえすれば…」

「分かった、分かったわ、数日内にアイダックと言うフェレンスケが…あん、来るから、彼に聞けば…」

「…転送。」

「ああんんんんん…」
 



 
リュージョックはスネックとビューティーを別室に通していた。
「ここにその行政官が来るわ。…とても有能な人よ。それじゃ私は、外すわね。」

リュージョックと入れ替わりに入ってきたのは、やや年配の、しかし政治家としては充分若手であろうと思われるロミュラスカ人だった。
「はじめまして。」
スネックとビューティーに微笑む。
「私は武庫川地区の行政官をしているキョーカックという物です。」

スネックはとさかを振り上げ立ち上がった。
「スネックです。」

握手を交わすスネックとキョーカック。
「そちらの方は…エバンゲリオンの艦長さんですね。」

「よく御存知で。」

「さっそくですが、私が今日皆さんに会いに来たのは、皆さんにどうしても伝えたい事があったからなのです。」

「何でしょう。」
 

キョーカックは微笑みながら頷いた。
「私達ロミュラスカ人は、元は一つの民族であったにもかかわらず、ヴァルカスカと長い間いがみ合ってきました。しかし、民衆達は終わりの無い対立に嫌気がさしています。」

「ええ。」

「そこで私は今度、私の所で公式にヴァルカスカとの関係回復を宣言したいと思うのです。」
キョーカックの言葉に、スネックは僅かに眉を上げて、ピカードの方を見た。
 

ピカードは壁沿いにぐるんぐるんと横転をしていた。
 

スネックは顔を戻した。
「…」

「どうでしょう。協力して下さいますか。」

「ええ、それはもちろん、喜んで。」

「ヴァルカスカの政府は、どういった反応を示すでしょうね。」

「それはやはり、疑いの目はあるでしょう。我々は1000年もの長きに渡って対立してきた訳ですから。」

「…そうですわね。」

「それよりも、そちらの政府はどうなのですか? 和平反対派が実権を握っている状況に変わりはない訳でしょう。」

キョーカックは冷静に頷いた。
「それはそうですが、こちらには世論と言う強い味方がついています。…皆「あのシンちゃんの国」への憧れもありますし。誰かがドン・キホーテにならなければ、改革はなしえませんから。」

「そうですか…(閉鎖ですか…)」
 

「あいだだだだ…」

「よろしくお願いしますわ。」

「分かりました。それでは。」スネックは足をつったらしくもだえ苦しんでいるピカードをひきずりながら部屋を出た。
 
 

「どうだった。」

「聞いていたんでしょう。」

「まあね。でも見た様子までは分からないわ。」

「そうね。まだ納得をしている様子じゃ、なかったわね。」

「それはそうよ。でも、彼は来るわ。」

腕組みをしながら聞いていたキョーカックは相手の意図を伺うように顔を向けた。
「自信があるじゃないの、セーラ。」

三角巾をかぶったセーラ・アサギリは馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「結局、あいつらは他人を信じているのよ。野菜しか食べない馬鹿だからね。」

セーラは三角巾をしめなおすと、ほうきとちりとりで掃除をし出した。
「さて、と。綺麗にしなくちゃね…」


「うっ、うっ、ぐす…」
左のすねを押さえるピカードにスネックは聞いた。

「彼女の言葉、どう思われました。」

「きれいな日本語だったな。」

「ええ、何の問題も…ってそうじゃないでしょう。内容ですよ。」
クールにノリツッコミをするスネック。

「内容? ないようは、」

「いらない事を言うとすねをけりますよ。」

しばらく睨み合うピカードとスネック。やがて降参したらしく、ピカードは口を開いた。

「…本当の事を言っているとは思えなかったな。」

スネックはマリ姉に頷いた。
「ええ。私も同感です。」

「地下の動きを公にしてしまうつもりなのだろうか。」

「再統一に反対なのか…あなたと同じね。」

「…しかし、そうだとしてあなたはどうするのですか。」

スネックは肩を上げた。
「別に。それならそれで、彼等のその企みを暴くまでです。私は出ますよ。」
「「絆だから。」」

スネックとハモったビューティーは溜め息をついた。
「しかし…」
 

「その為のスネックです。」

「…(楽しそうだな…)」


数分後

2人は一旦ヒロコの船に戻った。ピカードはロミュラスカ風の変装を取るため別室に消えた。

スネックは船のコンピュータのある一角に座っているレイタに声をかけた。
「何をしているのかな。」

「ロミュラスカの暗号の解析作業をしているわ。」パネルに指を忙しく滑らせながら、涼しげな声で答えるレイタ。

「手伝おう。」

「あ…有り難う。」(''*)

「何、たいした事はない。」レイタの隣に腰掛けるスネック。
 

2人は解析作業を再開した。
「君は感情を全く持たないそうだな。」

「ええ。感情を発生させるチップは姉にのみ装着されたから。」

「ヴァルカスカ人から見れば、君は究極の理想だな。感情という物に惑わされる事のない存在だ。」

レイタはスネックをちら、と見た。
「…そう。私は赤い土から作られた存在。私は感情が欲しい。(クラッシャー君をいじめるのも、ドクターとの○○○も、感情があったらどれだけ楽しいか…)」
ぶつぶつ、ぶつぶつぶつ…

「馬鹿馬鹿しい。感情程忌々しい物はないね。」

「そう断定する選択は、感情的な物のように推測されるわ。」

「…なるほど。君の台詞は、どこかジャイアンを思い出させるな。」

「ジャイアン? …ああ、ドクター・マッコイね。零号機及び初号機の船医を務めた。」

「どうやら君は感情に溢れた地球人のような存在になりたいようだな。」

「…ええ。」レイタはスネックの方に顔を上げた。
「ヴァルカスカ人も、とても人間らしい存在のように思われるわ。」

「そりゃどうも。」
 

レイタは手を止めた。
「解読が完了したわ。」
 
「コード601は見ないですんだという訳だな。」

「601?」

「気にしないでくれ。こっちの戯言さ。はっは、くわーはっはっはっは…」

「(充分感情を発露させているように見えるわ…)」
レイタは無表情に首を傾げた。


「アイダックが現れたそうだ。」

またマヤが消えた湯けむりの方角をちらちら見ながらゲォーフが報告する。

「分かった。さっそく基地に降りるぞ。ゲォーフ。」

2人は転送室に向かった。
 

きらきらきらきらひかるドラマ化原作の面影どこにも無し…

2人が転送されてきた通りの数メートル先に、小柄のフェレンスケ人がカメラを構えて動き回っていた。

「奴だ。」ゲォーフの声に頷くと、ライカーはその男の前に立ち塞がった。
 
「君がアイダックだな。」ヨーヨーを操りながら聞くライカー。

「な、何だお前は。僕は何もしてないぞ! 広瀬香美についても、岡本真夜についても、SPEEDが逆さまでdeepsだって事(だったら全員北海道出身にすれば?)についても何も言ってないぞ!」
ライカーのヨーヨーさばきに後ずさりしながら言うアイダック。

「私はUSSエバンゲリオンの副長リョウジ・ライカーだ。君はこの付近に顔が広いんだろう? 一つ我々に、協力をしては貰えないだろうか…」

「協力ぅ?」胡散臭げに眉を潜めるアイダック。

ゲォーフが続ける。
「トゥパウというヴァルカスカ船を探している。心当たりはないか。」

「トゥパウ、ねえ…聞いたような聞いていないような…トゥーミックスの勘違いぶりなら、よく知っているけどなあ…」
顎に手をやってわざとく考え込むアイダック。

リョウジはゲォーフと目を合わせ、ニヤリと笑った。
「いや、誰もただで教えてくれとは言わない。何が良いかな? こんな(http://www.geocities.com/Tokyo/Flats/1232/eva.jpg)のか? それともこんな(http://www.geocities.com/Tokyo/Flats/1232/eva-2-07.gif)の…」
さすがに直接のリンクが恐いと見える作者。

アイダックは目を輝かせた。
「「海辺」風味だな!」

リョウジは頷いた。
「もし君が情報を提供してくれるようであれば、これ位なら幾らでも用意しようじゃないか。(あおぎりさん、プリーズこれ位まで描いちゃって!)」

「分かった、分かった、教えるよ副長殿。うーん、トゥパウ、だろ? 確かドリアン人の貨物船と交換したな。ああ、取引は、全く正当なものだぞ! ライカに誓って本当さ。」

「どこで交換した。」すごむゲォーフ。

「あ、ああ…ゲロンドン・コアさ。」

「ゲロンドン・コア…中立地帯近くの基地だな。ゲォーフ、行くぞ。」
ライカーに頷くゲォーフ。

アイダックは慌てて遮った。
「ちょ、ちょっと待て。「せくしぃ」な絵は、これだけか?」

「さあな。自分で探したらどうだい。駄目なら「アスカ、その愛」でも読んで妄想をたくましくするんだな。…転送。」

「くっ、地球人め、騙しやがったな! まあ、確かに、アレはアレでアレだけど…」憤慨しつつも早くも妄想で顔がふにゃけつつあるアイダック(体言止め)。
 
 

リョウジはヒロコの船に通信を入れていた。
「艦長は、そこにいるか?」

「ああ、ここだよ。一体どうした副長。」

副長とゲォーフは3秒程固まった。
「(何故船内でSHAZNAのIZAMの格好をしているんだ、艦長は…)」
「(あれは私のレパートリーだったのに…)」
 
「どうした?」怪訝そうに繰り返すIZAM。

「…ああ、何でもありません。トゥパウですが、どうやらゲロンドン・コアでドリアン人に売られたようです。」

「分かった、そちらへ向かい、引き続き調査をしてくれ。」
副長は艦長に頷いた。



 
スネックはサエックが読む本を覗き込んでいた。
「君が読んでいるのは…「ジカダマーの心」第87節の部分だな。」

大きく頷くサエック。
「うん。」
文面を読み上げる。
「何か失礼な事を聞かれた時も、穏やかにあしらいましょう。良い回答例;「うちも神戸の女どすえ。捨てた恋の一つや二つありますさかいに…」」

「良く勉強しているな。」心なしか満足げに頷くスネック。スネックの隣では、リュージョックが2人の様子を見て微笑んでいる。

「「まあ、うちもねんねと違いますよって、小麦相場の処置をどうしてもお願いしたいというなら考えんでもないですわ…ミルウォーキーに5キロ単位を5000売り!」」
 

サエックがヴァルカスカ主義の教科書を読む後ろから、IZAMとレイタ、シンジがやって来た。
「ああ、艦長。」
落ち着いた様子で声をかけるスネックと、汚物を見るような目で艦長を見る2人のロミュラスカ人。

艦長は視線には全く気づかず話し出した。
「ミスター・スネック、それからリュージョックさん、お話があるのですが…」

「何でしょう。」
スネックの返事に軽く頷くリュージョック。
 
「ロミュラスカの暗号を解読していたのだけど、ゲロンドン・コアに向けて「1400」という暗号があったわ。どういった意味かしら。」

レイタの言葉にスネックは眉を上げた。
「「出来すぎてるわね」といった所ですな。」

「何ですか。」

「キョーカック知事との公式会見は、明日14時丁度に行われます。彼女は、何かをたくらんでいる…」

「でも、何でそれをゲロンドン・コアに向けて通信しなきゃいけない訳? ゲロンドン・コアにあるのはヴァルカスカの船でしょ?」
スネックがリュージョックに答えようとする前に、物陰から三角巾のロミュラスカ人が現れた。
 

「その答えはすぐに分かるわ、ミスター・スネック。」
セーラ・アサギリはかっぽう着姿で腕を組んでいた。両隣にはガードがいる。

「誰? 彼女に情報を漏らしたのはっ!」

スネックは軽く笑った。
「いや、全く大した物ですよリュージョックさん。好意に値するといってもいいでしょうな。」

「え?」

「論理的に言って、あなた以外に情報を伝えられる人はいないでしょう。」

リュージョックは、硬い表情のまま言葉を失った。
 

「くぉら、そこ、ゴミをちらすなっ!」
ほうきをビシッと艦長(赤い髪を振り回して何か踊っていた)に向けるセーラ。
「全く…ミスター・スネック、私もロミュラスカとヴァルカスカの再統一を心から願う者の1人ですわ、それは分かって下さいね。」

「ほう…」


「通信が入ってますぅ。」

リョウジはマヤの声に「えびっぷり」を食べる手を止めた。

「ロミュラスカ星からの暗号通信です、こちらはビューティー、エバンゲリオンは現状維持で待機、交渉は順調に進んでいるとのことです。」

「…そ。」リョウジは軽く頷いた。


「ミスター・スネック、通信機があるから、その前でこの文を読んで欲しいの。」

スネックはセーラから渡された原稿に目を通し始めた。
「現在あなたの星に3隻のヴァルカスカ船が向かってるわ。もっとも、今乗っているクルーは全員ロミュラスカ人ですけどね。」

「盗んだのね。」

「人聞きの悪い事を言うわね、レイタさん。私達にとっては同胞の船よ。そして、ミスター・スネック、あなたには、これらの船が平和使節団であるから歓迎するようにとの通告を読んで頂きたいの。」

スネックは軽く頭を振った。
「馬鹿馬鹿しい。私が協力するとでも思っているのですか。」

「そうね、簡単には読んでくれないかもしれないわね。これを読んでもらうと、つまりヴァルカスカは無防備な状態でロミュラスカの攻撃を受ける事になるのですものね。でも、そうすれば、ロミュラスカとヴァルカスカの再統一はとても速く進むのに…」

「それは私達の望む統一ではない。」スネックは原稿を机に投げ捨てた。
 

アサギリは上目遣いに言う。
「嫌と言うなら、血のしたたるレアハンバーグを2キロ程食べて頂く事になるけど、それでも良いかしら?」

「何だと!」いきり立つスネック。
「人の足元を見るとは、ちょっちモラル厳しいわね。」吐き捨てるように言う。

「どうする? これを読むか、ハンバーグを食べさせられるか…」

ふん。
「そんな物は決まっている。」

ミスター・スネックは原稿を拾い直し、声の調子を整え

ばこーん

「…ちょっとしたモンゴリアンジョークさ。」
レイタの鉄スリッパツッコミにどくどく血を流しながらスネックは起き上がった。
 

セーラは頭を振った。
「そう。まあ、読まないだろうとは思ってたわ。仕方が無いわ、彼に御馳走してさしあげて。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ、話し合おうじゃないか。君達、人にはそれぞれ嗜好というものがあるんだ。ラーメンにカレーを入れる者もいれば、屋台でフカヒレを注文する者もいる。おい君達聞いてるのか? 私は野菜は駄目なんだ! 野菜、嫌いだから! こら、止めてくれ! 頼む、何でも読むから! もう川島なお美の悪口も言わない! TVブロスが電グルを持ち上げすぎだとか、ラブレターってつまんない漫画で出て来る元気印の女の子の名前が川本から取って真琴なのはキーホルダーの方が先だったとかも絶対に言わないから! 頼むー、ハンバーグだけは止めてくれーれー(めんそーれ)」
スネックは黒服の男達に連れ去られていった。

「まあ良いわ、次善の策として、ミスター・スネックのホログラムを使いましょう。それでは皆さん失礼。」
アサギリはほうきとマジックハンドをいたずらに振り回しながら出て行った。後をついて行くリュージョック。
 

「まだ彼女達は私達がロミュラスカのコンピュータにアクセス出来る事は知らないようね。」
レイタは呟いた。


「あれが船か。」
ライカーは顔を上げた。

エバンゲリオンは中立地帯に既に入り、3隻のヴァルカスカ船の前で停止した。

「通信が入っている。「こちらは平和使節団トゥパウ号である」との事だ。」

えびっぷりを夢中で頬張っていた副長は、ゲォーフの報告にふと手を止めた。
「唐突だな。それでは和平交渉は本当に成功したというのか。通信に映像は、無いのか?」

「いや、音声のみの通信だな。」

「…気になるな…ラ=フォージ、今目の前にいる船が例のトゥパウであるという証拠は?」

「今調べます。」
後方にいたミイラ男がパネルを操作してタロットカードを占い始める。

エバンゲリオンはヴァルカスカ船にゆっくりと接近していく。


アサギリとガード達が、意識を失っているスネックをひきずりながらピカード達のいる部屋に入ると、そこはもぬけのからだった。
「ど、どういう事? きちんと整頓されているじゃない!」

セーラ達が辺りを見回すと、ふいに目の前にリョウジ・ライカーとゲーォフがフェイザーを構えて現れた。

「あんた達!」両脇に叫ぶアサギリ。

ぴよよよ、ぴよよよ…

「フェイザーが、効かない? そんな馬鹿な…」

呟くセーラの隣の黒服のロミュラスカ人が、上ずった声をあげた。
「せ、セーラ司令官、あ、あれは…」
 
 

彼等の目の前には、往年の鶴瓶師匠に優るとも劣らないアフロを揺らすレイタが、ヒラヒラのついた白いラメ入りスーツで踊っていた。
レイタの顔は彼女とは信じられないほど日焼けして、何故か不気味に微笑んでいる。

「Ma soul sista、踊ってかない。げろっぱ」
両手をスイングさせながらセーラに迫るアフロレイタ。
 

「…な、な、な、」

セーラが振り向くとそこには(当然)アフロのシンジがいた。
「Heyyyyyyyy!! YOUの瞳は輝いているぜ! 輝いていますか! 輝くならば! 輝け! Oh, no, もっと腰を使わなければ本当のオリムピックスイマーにはなれないぜ!!」
ウォンチュウ!の指使いで白く輝く歯を見せるアフシン(アフガン信用金庫)。

「な、シ、シンちゃん、何て格好に…」

「YOUのtooo hotなSoulが俺様を呼んでいたからさ! うぅ、熱い、熱いぜ! ブラックビスケッツ並にSoulだぜ!!」

がーん。
「(何だか中途半端ーっ!!)」

「何、ブラックビスケッツ並だと! 失礼な事を言うなーっ!」

がーん。
「あ、あんたが自分で言った事でしょっ!」

「何がだ!」

「あ、あ、あ、」

「Ooooohhhh! やっぱりYOUの黒目は70ボルトさ! まるでDA BUMP並の熱さだ!!」

「それも中途半端よーっ!!」

「げろっぱ。」
 
 

腰が抜けて、スネックの上で座り込むセーラに、黒服が声をかけた。

「司令官、もしかしてこれはホログラムなのでは」
「その通りよ。」

セーラ達が振り向くと、彼等の背後の「壁」からシンジ、ピカード、レイタが現れた。

「ぐっ」
「とうっ」
「げろっぱ」
3人がセーラ達のフェイザーを奪うと、ホログラム映像は消えた。
 

「無駄よ! こんな事をしたって船は、もう止められないわ。」
何故かやや顔を赤らめたセーラは息をついた。


「ロミュラスカから暗号通信が入っている。」

ローの写真集を借りて見ていたライカーは、顔を上げた。
「再生してくれ。」

「…ご、ごぢら゛はズネ゛ッグ大使であ゛る゛、あ゛、ぞぢら゛の゛船はロ゛ミ゛ュラ゛ズガの゛軍が乗船じでい゛る゛、だだぢに゛…も゛う゛や゛め゛でぐれ゛、ハンバーグはや゛め゛」
ぶつっ。

スネック大使の通信は唐突に切れた。
「全艦攻撃態勢! 防御シールド、オン!」写真集をぶん投げて声を上げるライカー。
 

エバンゲリオンと3隻のヴァルカスカ船の間にロミュラスカ戦艦が、遮蔽を外して現れた。
「向こうの船から通信が入っている。」
ライカーはゲォーフに頷いて促した。
 

画面に現れたのは肩を怒らせるラングレフだった。
「うまい事やってくれたじゃない、ミスター・スネックは。」

「これが君達の狙いか。」
 

「狙いは潰えたわね。またの機会にするわ。」
ラングレフはモニタに顔を近づけて怒鳴った。
「でも覚えてなさい、この世界はロミュラスカの物なのよ! 今時他の奴等なんて誰も支持しないんだからね!! 何故だか分かる? それは、正しいのがあたし達だからよ!! 確かに世界革命には失敗したけど、あたし達はまだまだやってやるのよ! あれは、少し内部の意見統一が完成していなかっただけよ! 待ってなさい、ずぇったい、あんた達窃盗犯はぶっつぶしてやるんだから!!」

映像の通信が切れると、ゲォーフがニヤリと笑った。(どうやら彼のニヤリは一種の危機センサーらしい。)
「敵艦、出力上昇中。」
身構えるエバンゲリオンのクルー達。
 
 

突如ウォー・バーグから発射された光線は、ヴァルカスカ船に向かっていた。爆破される3隻の船。
 

「待っていやがれ! ばいばいきーん」
ウォー・バーグは再び遮蔽の向こうに消えた。


「まだ数箇所、こういったリュージョック達の知らない洞窟があります。」
スネックは艦長に言った。
 

「ねえ、シンジお兄ちゃん。」
裾を引っ張るサエックにシンジは顔を綻ばせた。

「何だい、サエックちゃん。」

「あたしね、これからももっともっとヴァルカスカ主義を勉強するの。そして、偉ぶったりしない、ただ、論理の指し示す道を歩くような「ロミュラスカ人」になるの。そして、大人になったら、お兄ちゃん、その…」

「また、会おうね。」

サエックは微笑むシンジに大きく頷いた。
「うんっ!」
 

「私達は船に戻るわ。あなたはどうするの。」

スネックはレイタに軽く微笑んだように見えた。
「私はもちろんここに残りますよ。他に道は無いわ。」

「そう。良かったわね。」

「しかし…」

「艦長、何と言われても私の気持ちは変わりませんよ。小さいですが、ここでは確実に、変革が起きている。それはやがてはヴァルカスカとロミュラスカの再統一を促すものだ。これを目の前にして、ここから帰れなどとは言わないで下さいよ。」
 

IZAMは頑固なスネックに溜め息をついた。
「…分かりました。しかしあなたのお父様は、こんな行動は許さないでしょうな…」

「…恐らく、艦長は私よりも父の事をよく御存知なのかもしれませんね。私と父は、いつも議論しかしませんでした。もちろんマインドメルドのような事は、親子の間でした事はありませんでしたし。」

「もし、ミスター・スネック、あなたが望むのであれば…私の中にある、お父様の心を、ここで伝えましょうか。」

スネックは、しばらく目を細めていた。
「…そうですね。父の心を知る事で、役に立つ事もあるかもしれない。極めて論理的だ。」
 

レイタとシンジ、サエック達が見守る中、スネックとピカードはゆっくりと近づき、ディープキスを始め出した。
 
 
 

「…こ、れがマインドメルド?」

「そうよクラッシャー君。げろっぱ」

−今回執筆時のBGM-CD 「ウサギちゃんSAY GOOD BYE」 by 吉川ひなの

つづく


次回に続くよどこまでも
 
ver.-1.00 1998+01/18公開
 
感想・質問・誤字情報・キャッツアイ2000・北京原人・ラヴ&ポップ(日本映画は復興した!)等は こちらまで! 

次回予告

チャイムを押すがレイはいなかった。肩を落とし帰ろうとしたシンジは、道の向こうに自分を見て立ち尽くすレイを見る。急に泣き叫び、暴れ出す彼女を見て、シンジはようやく事態を把握する。「私とも一つになって」というレイの言葉を遮る気力も無く、シンジは部屋に連れられて行った。電話で呼ばれて来たミサトの病室で、うつむくアスカは1人恐怖と悔悟に震えていた。次回「真夏の子供達」第19話、「閉まるドア」。御期待下さい。

本当の次回予告:(続けば)珍しくシンちゃんの話。
 



 
後書きコーナー

びゅん、びゅん
「ちょちょちょちょちょっと待って、鎖ガマとか無し、無し!」
「誰が何と言おうと、こんなクソバカ(ピー)(ピー)いっ平(ピー)な話の作者を許す訳にはいかないのよ。ふっふっふっふえっくえっくええっくっくっく…」
「アスカ様、もののけ化してます…」
びゆん
「うっさいこのヘボ! 今日という今日は、あんたの首を取って帰らないと気がすまないのよ!!」
びゅん
「うわっ、だったら、うっ、読まなきゃ良いじゃないですか、これ! ぐ!」
「そりゃあたしは普段こんな流動ウ(ピー)は死んでも読まないけど、間違えて読んじゃう奴も中にはいるかもしれないでしょっ!」
「あたしゃねずみ取りかい。」
びゅんびゅん
「うっさいわよヘボ! 良い事、小説は書くなら、オリジナルの物を書きなさい。人の物を盗んだり、ましてや馬鹿にしたりなんて絶対不可よ! オマージュ? パロディ? はっ、笑わせるんじゃないわっ。」
「でもエヴァ小説ってアニメのパロ…」
「うっさいのよ! だからと言ってウェブ作家の著作権が無い訳じゃないでしょ! そんな事やる暇があったら、どんなんでも良いからあたしとシンジがラブラブな話を、オリジナルで書きなさい!」
「そんなの皆書いてるし…」
びゅん
「ぐはーっ!血が、血が!」
「フン。まあ、百歩、いや千歩、万歩譲ってあんたみたいな「引用」をウリにした書き方を許容するにしてもね。もうちょっと程度ってもんがあるでしょ!! 仮にあんたの手法を使うにしても、「りっちゃんと愉快な下僕たち」位の、マイルドな引用・話だったらまだあたしも我慢してあげるわよ!!」
ばた…
「…(怒られたばっかなんだし、そういう恐い言い方は止めようよ…)」
「こいつが死んだだけじゃ油断できないのよねえ、ここのヘボはクローンが大量にいるらしいから…それを元から根絶しないといけないわね…」
5秒後作者死亡。(死因フミアート。

以下次回

広告:めぞん603フラ工房(別名カフェフラン研2号店)3万ヒットを記念しまして、現在HPで記念小説を公開中です。暇な人は見てみろりん。


 フラン研さんの『新エヴァントレック』第十八話、公開です。
 

 

 有名なキャラ、スネック〜
 知っている人も多くて、人気も高いサエック〜
 

 大物二人が登場−

 八等身のスネ○は見たくないけど・・
 サエ○ちゃんは少し・・・(爆)
 

 二人とも微妙にキレタ感じがいいよね(^^)

 スタトレ風味♪
 

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 素晴らしい画像をプレゼントしてくれたフラン研さんに感想メールを送りましょう!

  ↑

 【素晴らしい】:多分素晴らしいんでしょう(^^;
 ここ何日かジオシティに繋がらないんです (;;)
 

 

 

 

 SPEED、映画に出るそうですね。
 後ろの二人にセリフがあるのか、なんか気になる(^^;


 


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