「何かしら?」
「やっぱり…彼とは馬が合わないらしくて…」
「あなた達は競争馬を所有しているの?」
彼女は「ずんっ」と「だから笑介」ばりのズッコケ方を見せたわ。中々テクニシャンね。
「あ、違うのレイタさん、そうじゃなくって、うん…オブライエンとは、気が合わないのよ。やっぱりこれから2人でやって行くのは難しいと思うの。」
私はヒカリ・イシカワさんの顔を見たわ。ちなみに彼女はこの船では数少ない日本人よ(あまりこの辺の設定を深く突っ込んではいけないわ)。でも、斑点があるのね。スバリル人のよう。
私は答えたわ。
「そう。」
イシカワさんは両手で私の机を叩いたわ。恐らく強調の意味ね。
「レイタさん。あなたは友達だし、今回の仲人でもあるから頼みたいんだけど、今日の彼との挙式は無かった事にしてくれないかしら。」
イシカワさんの表情は既に陶酔の域に達していると推測されるわ。
「あなた達は、好き合って結婚に合意したのではないの?」
「それはそうよ。でも今日になって気付いたのよ! やっぱり駄目なの! 2人は合わないのよ!」
「そう。(気付いて)良かったわね。」
「え、ええ。だからあの、オブライエンにその旨伝えてくれないかしら?」
「ええ、構わないわ。」
「ありがとう!」
イシカワさんは私の手を取り乱暴に振ったわ。
私はすぐにコンピュータでトウジ・オブライエン転送主任の所在地を調査したわ。…バー・テンフォワード。こんな午前中から飲酒とは良い度胸ね。最新の流行語で言う、「ウンコ召し上がれ」だわ(とてもトレンディ(しかも日経)でしょう?)。
私はバーに来て、粗雑に菓子パンを頬張るオブライエン主任に伝言を伝えたわ。
「オブライエン主任。イシカワさんからの伝言。今日の挙式は取り消すとの事よ。」
トウジ・オブライエン主任と、一緒に飲酒中(こいつも何とかしないとね)のマコト・ラ=フォージ大尉は口を標準以上に開け広げ、食べていた菓子パンを表出させているわ。何故? (解析中)…そう、驚いているのね。
「な、今何言わはりました?」彼は依然口を標準以上に開けているので、彼が常時着用している(これも当然規律違反ね)黒ジャージに新たな吐瀉物の染みが加わっているわ。とてもきれい。前衛美術ね。
「オブライエン主任。イシカワさんからの伝言。今日の挙式は取り消すとの事よ。と言ったわ。」
「は、な、何でです!」
「馬が合わなく、又気も合わないからだそうよ。今日になって気付いたと言っていたわ。」
「な、い、イインチョ…」
彼はイシカワさんのミドルネームを呟いたわ。日本人なのにミドルネームがあるのね。どうして?
とにかく仕事は果たしたわ。
「主任。」
「何です?…」彼の返答の口調から、彼が著しく集中力を欠いている事が推測されるわ。恐らくそれだけ感動しているのね。
「良かったわね。」
私は笑顔で付け加えたわ。
その瞬間、オブライエン主任は人食いイエティへと変身したわ。
―宇宙。そこは最後のボランティア(意味? 知らないわ)。これは、宇宙戦艦エバンゲリオン号が、新世代のクルーの下に、24世紀において概ね任務を続行し、未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求めるふりをしつつ、人類未踏の宇宙に、アバウトに航海したりしなかったりする小話よ―
Rata's Ray
第十五話「ヒューマン・アンノロイド・レイタ」
私も自分のポジトロニック・ミソの活動には興味があるわ。そこで今回は典型的な私の一日の行動、心理について報告します。…亜空間レイちゃん?
何? ぽえぽえレイたん? 知らないわ。
私が認定するのは「弁エヴァ」だけ。(秋元治先生の作品が読めるのはジャンプだけ。)
一人称でずっと話を進めているのは「隠○エヴァ」ね。主人公が全く登場しないシーンでも、「…という彼女の思いを僕が知る事は、永遠に無かったのであった。」等と書いているのには感動を覚えるわ。あの小説の主人公はエスパーね、間違いなく。
…前述の通り、私が仲人を務める予定だったヒカリ・イインチョ・イシカワさんとトウジ・オブライエン主任の結婚は取りやめになったわ。その為今日の重要な任務は、ヴァルカスカからの大使、トゥメス大使の接待だけ。しかし、これも主に艦長の仕事なので、私は後は特にする事は無いわ。
フユツキ・コウゾウ・ピカード艦長は、数日前クルー達の一致団結した造反工作により、強制的にドクター・リツコ・クラッシャーの実験室…言い直すわ、手術室、に収容されたわ。
手術以前は泣き叫んだり糞尿を漏らしたりストリーキングをしたり突然笑いだしたり、錯乱状態にあった艦長だけど、手術後はとても静かで、時々日本語ではない何処かの言語で一人呟きながら壁の一点を見つめ続けているわ。良かったわね。
非常に物静かになった、数センチ程身長も縮んだ艦長と、やはり瞳孔の開き続けている副長と、いたって正常な私の3人は転送室に向かい、そこでヴァルカスカ大使を迎えたわ。
きらきらきらきら菊人形…
「転送でバラバラになるかと思ったわ! う、うわぁあああーん」
転送されて来たヴァルカスカ人女性は、高い声と洪水のような涙で存在感を提示したわ。…提示?
彼女は今回、連邦とロミュラスカの間に設けられている中立地帯でロミュラスカ船に搭乗。そこでロミュラスカ帝国との非公式の和平交渉を行なう予定よ。
「は、はじめましてトゥメス大使。私がエバンゲリオン艦長のピカード。こちらが副長のライカー。こちらがレイタ少佐です。」
「グス…はじめましてピカード艦長。ライカー副長。レイタさん。」トゥメス大使は笑顔を作って、鼻水のついた手を差し出したわ。もちろん3人とも無視。
「ああ、皆私を相手にしてくれないのぬぇえ! うわぁああああーーんん」
勢いで押すタイプね。
私は彼女を艦長に任せて、自室に退去する事にしたわ。
副長は「こりゃまた厄介な御婦人が来たな…今度はSっ気を誘うキャラか。」と言いながら唾液を垂らしているわ。この船のクルーは衛生観念に欠けるきらいがあるわ。…副長、交代。
私の友人の一人、ゲォーフ大尉が、懇談室でむっつりとした表情でパネルを見ているわ。
彼は海苔や自転車や図書券等の表示されたパネルから、何か選択しようとしているようね。
「…何だ、レイタ少佐。」
「何をやっているの。」
「オブライエン君の結婚式のプレゼントだ。…地球人は分からん。何故大の大人の結婚式でプレゼント交換会をする必要がある。」
「なら止めれば。」
ゲォーフ大尉は眼鏡を上げたわ。
「…しかし、付き合いという物がある。」
「ならやれば。」
「…ああ。」
私は忠告したわ。
「大尉。でも駄目。もう遅いわ。イシカワさんはオブライエン主任との結婚を取りやめると言っていたわ。」
ゲォーフ大尉は、私に同意の意を見せずに、首を振ったわ。
「どうせ地球人の言う事だ、錯乱しているに過ぎん。」
私はゲォーフ大尉の突飛な推理を確認したわ。
「それでは、結婚式は行なわれるの。」
「ああ。シナリオに2%も狂いは無い。」
「そう。」
それでは私もプレゼントを選択しなくてはいけないわ。
「やはり若い2人にはこれだな。」ゲォーフ大尉は真剣な表情で頷くと、パネルの商品の一つを選択したわ。
レプリケーターで合成されたのは、ピンク色のゴム製の物質で、肉の腸詰めにも形状が類似しているわ。…(検索中)そう、バイブレーターね。
「うむ。」無意味に色眼鏡を光らせて、バイブレーターを持った大尉は微笑んだわ(作者注:=ニヤリと笑った)。
彼はそれを持ったまま部屋を出て行こうとして、振り返って私に言ったわ。
「ああ、レイタ少佐。」
「何。」
「君は結婚式の仲人を務めるのだろう。」
「そうよ。」
「ダンスの練習をしておいたほうが良い。地球人の慣習では、仲人は花嫁とダンスをするそうだ。」
「そう。忠告有難う。」
「問題無い。」
彼は再び微笑むと、ブツを持ったまま廊下に出て行ったわ。女性職員の歓声が聞こえるわね。やはり嬉しい物なのかしら。
それでは、私もそれを選ぼうかしら…「マッハダブルローター剛力君ZX」…一応私も試用してみるべきかしら。…でも、私にはクラッシャー君が(ぽっ)…でも、そうしないとプレゼントの選択が…でも(ぽっ)…でも…でも……………………………(「アプリケーションの反応がありません。再起動しますか?」)
私は医療室に向かったわ。今の自分の心理状態を一言で表わすなら、「カローラワゴン、略してカロゴン」と言う感じ。
医療室では、ドクター・リツコ・クラッシャーがやはり微笑みを顔に浮かべながら、両手足の拘束されたクランケに何か電極を接続しているわ。
「ドクター、こんにちは。」
「あ、あら、レイタ、どうしたの。」彼女は急に発汗しているのが観察されるわ。気温に問題はないはずなのに、何故?
「ダンスを習いたいの。」
「ダンス?」
「ええ。」私は頷いたわ。
「…ドクターはダンスが上手いと聞いたから…」
ドクターは何らかの緊張が解けたらしく、手を振っているわ。
「何年も前の話よ。艦長から聞いたのかしら。」
「いえ。以前個人ファイルを調査中に、あなたのダンスが世界レベルの物だというデータを得たわ。」
「まあ、確かに世界大会にも出たけど…分かったわ、あなたはハッキングとかで色々助けてもらってるし、一肌脱ぎましょう。」
「…痛くないの?」
「…比喩表現よ。それにレイタ、そのネタここと被ってるわ。」
「知らないわ。」
「ええと、じゃあこのじ、(咳き込む)手術が終わったら、第2マギデッキに行くわ。今から20分後で、良いわね。」
「構わないわ。」
私はそれから艦長に呼ばれて、艦長室に来たわ。
いつもながらぬいぐるみだらけ。とても気味の悪い感じ。ぬいぐるみなのに「儚な気な微笑み」を皆浮かべているのね。どうして?
艦長室には艦長とトゥメス大使がいたわ。
「レイタ、聞きたい事がある。ここ数日、ロミュラスカの防衛体制に変化は有ったか。」
「(検索中)…いえ、変化は認められないわ。依然中立地帯はウォーバーグが集中していて、余談を許さない状況ね。」
トゥメス大使は震えているわ。ヴァルカスカ人の適応気温は地球人とほぼ同一のはずなのに。どうして?
「う、ぞ、ぞんな゛あ゛ぁぁぁぁ!!! 嫌だわ私、そんな所に行ったらロミュラスカ人のハンバーグにされてしまうわぁああ!!!
うぅぅぅぅわあああんん」
ヴァルカスカ人は論理を重んじ、感情を表に出さない事で知られる種族よ。丁度このように…あら?
矛盾が見られるわ。
頭部が急速に赤くなっている(でも手術のお陰で吹き出す事は無くなったわ)艦長は私に言ったわ。
「分かったレイタ。下がってくれ。」
私は部屋を出てい
「うわぁあああ!! レイちゃんを踏むなぁああ!!」
艦長が何か叫んでいるような幻聴が聞こえるわ。どうやらポジトロニック・ミミが不調のようね。後でマコトに修理を頼みましょう。
部屋を出ると、ブリッジではリョウジ・ライカー副長がエヴァチップスを食べながら、油の付いた手でパネルを操作しているわ。
エヴァチップス…作者が冗談で書いたら、現実になってしまった物。しかもきっちりカード付き…
でも、以前もここの作者は「いかにも有りそうなエヴァグッズ」で「エヴァジッポー」を考えていたら本当に有ったので涙を飲んだという下らない経験があるわ…これは愚痴?
…いえ、自慢なのね。
間食ばかりしているから、最近の副長は体脂肪率が増加し、体が丸みを帯びてきているのが確認されるわ。既にエヴァ本編のキャラの欠片も残存していないわね。
私は自室に戻り、飼い猫のプチットに餌を与えたわ。
「コンピュータ、猫の餌をちょうだい。」
「みゃー。」標準的な猫よりやや細長く、目が縦長の白猫は、ドクターから譲ってもらった物よ。ちなみに彼女の居住する部屋は広大な敷地を誇り、「動物王国」エリアは主に猫類が38402種、439320432匹いると聞いたわ。
ポロロン。
部屋のチャイムが鳴っているわ。
「どうぞ。」
部屋から現われたのは、オブライエン主任ね。イエティから地球人に戻ったの? 良かったわね。
「あの…レイタはん、さっきはすんまへん…」主任は手で後頭部をかいているわ。しらみかしら?
「構わないわ。(分析中)…そう、感動で、錯乱してしまったのね。」
「あ? は、はいぃ…」主任は頬を紅潮させて、周囲を見回しているわ。まさか…告白? でも駄目。何故なら私にはクラッシャー君が…最近とても出番が少なくて、シロウ・バークレイ大尉よりユミ・シノハラ・ゴメスさんより存在感が無いと言われているクラッシャー君が…でも主任も非衛生的な服さえ何とか変えさせれば中々…いや、でも…
「あ、あの、聞いてます?」
「何?」
「せ、せやから、頼んます、イインチョにもう1回、考え直すよう言うてくれはりまへんか。」
…何弁?
「あなたは、イシカワさんの判断に間違いがあったと思うの。」
「え、ええ。」
「分かったわ。」
「あの、それから…」
「何?」
「何、食べてはるんですか?」
「右からシシケバブ、トムヤムクン、チーズフォンデュよ。」
「は、はあ…」
最近は私は食事に凝っているわ。私は高速増殖炉「もんじゃ」を体内に装備しているので基本的に食事を摂取する必然性はないのだけれど、こうやって食事をするとそれぞれの「味」が違うのが非常に興味深いわ。人間の文化は偉大ね。
「…あの、失礼します。」
「(もぐ)さよなら。」主任は部屋を出て行ったわ。
私は17秒で全ての食事を終え、さっそくコンピュータでイシカワさんの所在地を検索したわ。…熱帯植物園に居るようね。
熱帯植物園は、その植物の78%までが食虫植物で構成されている素敵な植物園よ。植物学者のヒカリ・イインチョ・イシカワさんが自身の食料調達の意味も含めて設立したわ。
イシカワさんは完全武装で農薬を散布中のようね。周りは白い煙が立ち込めているわ。とても幻想的。
「イシカワさん。」
私は彼女の前に立ったわ。
イシカワさんは私に気付くと、スプレー状に散布する機械を置いて、手話で話しだしたわ。
「何か用?」
私も手話で答えたわ。
「オブライエン主任が考え直して欲しいと言っていたわ。」
「オブライエンの話はしないで!」
「何故?」
「だから、無理なのよ! 彼とはやっていけそうにないの!」
「安心して。その判断が間違っていると、主任は言っていたわ。」
私は女神のように微笑んだわ。
「あ、ねえ、レイタさん、一人にしてくれないかしら? これを1本上げるから。」
彼女は農薬を死ぬ程(比喩表現ではなく、通常の地球人の致死量は越えていると推測されるわ。)散布しながら、丸い、毛の生えたシンバルのような形状の捕虫器がいくつか付いている植物を私に差し出したわ。…虫を食べる植物の栽培に農薬を使うのは矛盾している? 分からない。
「…きれいね。」
イシカワさんが鼻の穴を脹らませたのが、ヘルメット状の防護具越しに確認されたわ。
「でしょ? 駄目よ、この良さが分からないようじゃ。この植物はね、和名がハエトリソウ。ええっと英語だと…確かディオネアと言う物よ。」
ディオネア? 初めて聞いたのに、初めてじゃない気がする…どうして?
ところでこれは偶然の一致? それとも皆が知っている事で、今まで私が知らなかっただけなの? …私? 私は誰?
私はそのディオネアを持って、最近影の薄い(そういうクルーが多いのね。)カウンセラー・ミサト・トロイの部屋へ行ったわ。
カウンセラーは、いつものように何かの儀式をしているようね。ブードゥの亜流だという話を以前聞いたわ。
「ミンナ・ナカモリアキオ・ニ・ダマサレルナ…ジョシコウセイ・ゴリコ…ゼッタイ・オモロイ・ハズ・ガ・ナイ…デモ・シマオ・ミホ・ハ・ケッコウ・コノミ…」
意味不明の呪言を唱えながら、彼女は空中浮揚をしているわ。
「カウンセラー。」
「ぬわーっ」彼女は私が声をかけるとほぼ同時に飛び上がったわ。このリズム感…やれるわ(舞台を)。
「こここコンピュータ、黒魔術プログラム解除!」
ロウソクと杯とスモークと豹の絨毯と具の溶けかかったコンビニおでんと部屋とYシャツと私(やると思ったでしょう)は消去されたわ。
「レ、レイタ。どうしたの?」
「相談があるわ。」
「あなたが相談? 珍しいわね。じゃ、そっちのソファーへどーぞ。」
私達は移動して、腰掛けたわ。
「どうしたの、レイタ。あなたの心理は、私にもちょっち分かんないかもよ。」
カウンセラーは一見人当たりの良い笑顔で話しかけているわ。でもこれは演技。彼女は日本人(彼女自身は日本人ではないけれど、と一応注釈を入れるわ)のイヤな部分を具現化した態度を持つ人物のように推測されるわ。
「私の話ではないわ。トウジ・オブライエン転送室主任と、ヒカリ・イインチョ・イシカワさんの意見の不一致についてよ。」
「ああ。2人は、確か今日が挙式よね? どうかしたの?」
「ええ。今朝、イシカワさんに、オブライエン主任との話は無かった事にしてくれと言われたわ。その後主任はイェティと化し、クラッシャー君は影が薄く、カローラワゴンは略すとカロゴンと言う事が分かったわ。」
「要約の仕方間違えてるわよ、レイタ…」
さっきから羅列の勢いで押している? 分からないわ。
「2人の間がぎくしゃくしてるわけね、要は。」
私の的確な要約で、カウンセラーはすぐに状況を把握したわ。
「ええ。」
「それはね、レイタ。」彼女はまた偽善的な笑みを浮かべて私に近付いたわ。何、この感じ…(解析中)そう、人間が「虫酢が走る」という時の感覚ね。ゲォーフやドクターのような邪心(よこしましん)の無い微笑みとは大違いだわ。
「2人は、挙式の前でちょっちナーバスになってるだけなのよ。2人の問題なんだから、そっとしておいてあげましょ。」
「…分かったわ。」
私は彼女の意見を53%しか理解できなかったけれど、人間心理の点においては彼女が専門家なので彼女の意見に従う事にしたわ。
「あれ? レイタ、何持ってるの?」
「ディオネアという食中植物よ。先程イシカワさんから貰ったわ。欲しければ…」
「欲しい! 欲しい!」
「…どうぞ。」
彼女は私の手からそれを奪うように取ると、おいしそうにむしゃむしゃ貪ったわ。ディオネアを。
「んー!! やっぱり食中植物は生に限るわよねぇ。ぺっ」中のハエを飛ばしているわ。スイカの種の要領ね。…要領?
「…さよなら。」
「じゃねん。」
私が廊下に出て、ドアが閉まる直前、ドサリ、と人が倒れるような音が聞こえたわ。また幻聴?
やはりポジトロニック・ミミに問題があるようね。
廊下を歩いていると、私はコンピュータに呼ばれたわ。
「レイタ少佐。トゥメス大使がお呼びです。B-17デッキへ来て下さい。」
「了解。」
トゥメス大使の客室に入ると、泣き晴らして鼻と目が赤くなっているトゥメス大使がまだ鼻をすすっていたわ。
「…」
「レイタさん、入って。」
「何?」
「うっ…こちら、惑星連邦の…ひくっ…現在の防衛状況について…っ…報告してくれないかしら?」
「何故?」
「何故? 怖いからに決まってるじゃない! うわああああああんんんん、皆私の事なんかどうなっても良いと思ってるんだわぁああ!!!」
「思っていないわ。」
「うっ、ありがとう、ぐすっ。じゃあ、教えてくれるわね。」
「私の権限ではそういった秘密事項は伝えられないわ。至急知りたいのなら、艦長に今から連絡するわ。」
「あ、それは良いの。別に。(だってあの艦長、ずーっとぶつぶつ言ってて怖いし…)じゃあ、下がってもらって良いわ、レイタさん。」
「…分かったわ。」
私は彼女の部屋を出たわ。トゥメス大使の言動は、私には4.52%しか理解出来ないわ。不思議な人物ね。
…ここの作者は、そういった人物をオリジナルでは作れないという事? そう、そうかもしれない。
私は約束の時間から2分21秒程遅れて、第2マギデッキに行ったわ。マギデッキでは、邸宅のテラスのような空間が再現されているわね。既にドクター・リツコ・クラッシャーはいつもの白衣を着替え、全身レオタードのようなダンス用と推測される服装でストレッチをしていたわ。
ドクターは私を確認すると、うっとりと笑って私に近付いたわ。
「レイタ、さっそくダンスを始めましょう。」
「ええ。」
「でもその前に、ちょっとこれを付けて貰えるかしら?」
「これは何。」彼女が差し出したのは、ピカード艦長が時々ファッションとして付けているヘッドセットにも似た、ケティアン人の耳のような形状の装飾品だったわ。
「ええと…そう、私がやるダンスの時は、必ずこれを付けるものなのよ。」
「分かったわ。頭に付けるのね?」
「そう。ほら、私みたいに。」ドクターは自分の頭部を揺らしたわ。
「…」私がその装飾品を頭部に装着すると、ドクターは呆然とした表情で私を見ているわ。何か間違った事をしているのかしら?
「レイタ…良いわあぁああ!! 良い! すっごく良い!!」ドクターは突然私の手を取ると、43センチメートル前後の間隔で手を激しく上下に振ったわ。
「あ、ありがとう…」
良く分からないけれど、ドクターの嗜好に合致したようね。
「ああ、ちょっと興奮してしまったわ、私とした事が。それでは、さっそくダンスを始めましょう。」ドクターは腕組みをして、右足をすっと出したわ。
「レイタ、私のやる事と同じ事をやってみて。特に足の動きに注意するのよ。」
「分かったわ。」私はドクターの横で同じように腕組みをして右足を出したわ。
さっ。
ドクターは右足を引き、左足を入れ違いに前に出しているわ。
さっ。
ささっ。
ささっ。
さっ、さっ。
ドクターは少し腰を下げ、右足をやや後ろに折り曲げた状態から前へ出したわ。
さっ、さっ。
私も同じ動作。
ささっ、さっ、ささっ、さっ。ささっ、さっ、ささっ、さ。
ドクターは徐々に足の特殊な前後の動きを早め、同時に腰を更に深く落としていってる。その間も腕は「腕組み」に近い体勢を保ったままね。
ささっ、さっ、ささっ、さっ。ささっ、さっ、ささっ、さ。ささっ、さっ、ささっ、さっ。ささっ、さっ、ささっ、さ。
ドクターは全く同じ事をしている私を確認すると、どんどん足の動きのスピードを速めているわ。
さささっ、さささっ、さささっ、さささっ、さささっ、さささっ、さささっ、さささっ、さささっ、ささささささささささささささささささささささささささささささささささささささささささささささささ
ドクターは足の動きを止め、腰を床に付けたわ。
「はぁ、はぁ、はぁ…レイタ、あなた、はぁ、中々やるわね。」
「そう?」
「ええ…はぁ…「全ミネソタ・コサック大会」金メダリストの私と全く互角とはね…はぁ。」
「そう。ではダンスは、これで良いのね。」
私はイシカワさんと結婚式で行なうダンスの習得が終了した事で希望的な感覚を抱いたわ。この感覚は何?…そう、人間の「嬉しい」という感情にきっと似ている。
「結婚式の準備は終了したわ。」
ドクターは、頭の耳状の物を揺らしながら私に聞いたわ。「結婚式?」
「ええ。私はオブライエン主任とイシカワさんの仲人なので、イシカワさんとダンスをしなければならない、とゲォーフ大尉から聞いたわ。」
「あ、ダンスって、そういうダンスの事だったの?」ドクターは驚いているようね。
「御免なさい、勘違いしていたわ。今のダンスは忘れて頂戴。」
ファイルを消去しています…
「…忘れたわ。」
「そ、そう。…ヒカリさんは日本人よね、確か。結婚式は日本式に行なわれるのかしら。」
「そう。そうかもしれない。」
「そう。じゃあ、日本のダンスをすべきね…確か日本のダンスの最もポピュラーな物は、ボンと言うダンスだったと思うわ。」
「そう。」
「コンピュータ、プログラム変更。地球の日本地方のボン・ダンス会場を再現して。」
私達の場所はホールのような場所から、やぐらの立った駐車場に変わったわ。夜間の設定ね。
「私もよく知らないのだけど…確か、音楽のリズムに合わせながら適当に周回状に行進し、一歩一歩で立ち止まりながら手を叩いたり、回転したりする踊りだったと思うわ。コンピュータ、音楽を再生して。」
ずっとこどっこどん、ずっとこどっこどん…
ケティアン人風の衣装を着たままのドクターは、両手を擦り合わせたり前後に動かしたりする動作をしながら、半歩ずつ進んでいるわ。
「前後の人との間隔を保ったまま、中央のやぐらのラジカセから流される音楽のリズムに忠実に合わせて踊るのよ。笑顔を絶やさないのもコツね。」
私はドクターや周囲のホログラムと同じ動きをしながら、感想を述べたわ。
「このダンスは、先程の物より複雑な要素が組みあわさっているように感じるわ。」
「そう?(忘れたんじゃなかったのかしら?)」
「ええ。動きが一定しないのね。」
通信の声が響いたわ。
「ドクター・リツコ・クラッシャー、急患です。至急医療室へいらしてください。」
「分かったわ。」
ドクターは通信に答え、軽く汗を拭ったわ。
「じゃあ、レイタ、先に失礼するわね。」
「ええ。私はもう少しこのダンスの習得に務めるわ。」
「頑張ってね。」ドクターは全身レオタードのままマギデッキを出て行ったわ。
私はしばらくボン・ダンスの習得に務めて、その後自室でこのダンスに関する資料を検索していたわ。
…いけない。そろそろ船がロミュラスカとの中立地帯に入る時間ね。ブリッジに行かなければ。
私は軽く七面鳥を頬張り、ブリッジへと向かったわ。
「それでは、ロミュラスカとの交渉、成功をお祈りしています。」
「うわぁああああんん、やっぱり怖いわぁああああ!!」
「そうですか。そこまで自信に溢れていると、こちらも安心できます。それではさっそく転送室へ。」
「うわああああんんん! 誰か助けてよーっ!」
ブリッジでにこやかに艦長と話していたトゥメス大使は、そのまま引きずられるようにしてブリッジを後にしたわ。
前面のメインモニタから、ロミュラスカ・ウォー・バーグが遮蔽装置を切って姿を表わしたわ。
「通信が入っている。」
「分かったゲォーフ。宇宙チャンネル、オン。」
艦長はいつものように立ち上がったわ。
「こちらはUSSエバンゲリオンの艦長、フユツキ・コウゾウ・ピカードだ。」
画面はロミュラスカ船内の画像に切り替わったわ。
「あら、御久しぶり。作者も完全に名前を忘れていたラングレフよ。ったく、エヴァ小説一の人気を持つこのあたしに対して、扱い悪すぎるのよねー、ここの作者。ま、今更どうこう言うのも飽きたけどぉ。」
ロミュラスカ船の艦長は否定的な言葉とは対照的に、とても機嫌が良さそうに見えるわ。…(分析中)そう、それでも出れれば嬉しいのね。
ラングレフ艦長は、ふと私の姿を確認すると、クックッと笑ったわ。どうして?
「ちょっと。そこの女…ええっと、レイタって言ったっけ? 何でそんな格好してんのよ。」
「…ああ、そういえばそうだな。レイタ、それは何なんだ? 余り見掛けないファッションだな?」リョウジ・ライカー副長も私に尋ねたわ。
私は無知な彼等に説明したわ。
「これはシロショウゾクと言って、地球の日本地方でよく見られる服装よ。特にボン・ダンスという独特の民族舞踊が行なわれる時期に着る物ね。」
「へぇー? 何かよく分かんないけどぉ、変なカッコ。」ラングレフ艦長は異文化への崇敬の念に欠けるようね。やはりロミュラスカ人は独善的と判断せざるをえないわ。
「ね、ねえ、レイタ。」
私は隣の席のクラッシャー君に、最大限に笑いかけて(作者注:僅かに微笑んで)言ったわ。
「何、クラッシャー君。」
「多分、何か凄く間違えてると思うよ…」
がーん。
ちなみに…今回の話は…「オクトパすトーリー(…オクトパすトーリー? 今一つ疑問の残るネーミングセンスね)・お題イラスト」の…フラン研バージョン…らしいわ……
バタ。(爆弾アイコン)
予備電源が入り、私は再起動したわ。
「だ、大丈夫、レイタ?」
「大丈夫よクラッシャー君。今回の話は私が起きていないと一行も先に進まないの。」
「そ、そうなんだ。大変だね…」
ピカード艦長はラングレフ艦長に伝えたわ。
「今からこちらの大使をそちらに派遣する。…転送してくれ。」
ところが数秒もせずに、ロミュラスカ艦の映像がブレ出したわ。
「ど、どうしたのっ!」
「謎の高周波が転送室付近から発生しています!」ラングレフ艦長にロミュラスカ船のクルーが報告しているわ。
「くっ、ピカード! これはどういう事っ!」ラングレフ艦長は必死の形相で耳を押さえながら、聞いたわ。
「は…はあ?」
その時、エヴァンゲリオンのブリッジにも、彼等が苦しんでいる高周波が響きだしたわ。
「いやぁぁぁぁああああああああああ」
ピカード艦長は耳を塞ぎながら言ったわ。
「それは大使の声だ。」
「はっ、あんたバカぁ? ヴァルカスカ人がこんな声……出してるわね…」向こうの船の操縦室にトゥメス大使が現われたわ。
「いやぁああ! やっぱり怖いわぁああああ!!!」
「あんたうるさいのよっ!」ごすっ。
ラングレフ艦長がトゥメス大使を、余り洗練されているとは言えない方法で気絶させ、ようやくウォー・バーグとエバンゲリオンのクルー達は耳を塞ぐ手を離したわ。
…こうやって見ると、ロミュラスカ人やヴァルカスカ人達は本当に見分けがつかないのね。
「はぁ、はぁ、はぁ。」肩を上下に揺らせながらラングレフ艦長が言ったわ。
「ぴ、ピカード。本当にこいつ、ヴァルカスカの大使なの? 生物兵器の一種じゃないでしょうね。」
「とんでもない。彼女は立派な経歴の持ち主だ。」
「なら、それを証明なさい! 証明できないようなら、それはすなわちあんた達惑星連邦の帝国への挑発行為とみなすわ。」
通信は一方的に切れたわ。
「…困った事になりましたね。」
「…君は誰だ?」
「は、どうされました? 私は副長のライカーですが?」
「ああ、そうか、そうだったな。」
別に艦長の痴呆が始まった訳ではないわ。副長が間食のとり過ぎで中野英雄のような中途半端な太り方をしているので、誰だか分からなかったのね。
ピカード艦長は私に向いて、言ったわ。
「レイタ、至急トゥメス大使の個人情報を検索してくれ。」
「了解。」
しばらく後、私は艦長に報告したわ。
「特に個人情報に異常な点は見られないわ。彼女はヴァルカスカで生まれ、地球の艦隊アカデミーで長年研究をしていたようね。」
「そうか。」
「しかしラングレフの言う通り、彼女はヴァルカスカ人にしては感情の上下が激しいですね…」
小太りの副長が艦長に言ったわ。
「そうかもしれんな…一般に、ヴァルカスカ人は感情を示さないからな…」
「示さないだけで、ヴァルカスカ人にも感情は存在はするわ。」
私は言ったわ。
「そうだな。しかし…それにしても、大使の感情の豊かさはかなり平均を越えている。」
「一体どういう事でしょうか…」副長がお決まりの台詞を吐いたわ。それは場面転換の合図…合図?
「艦長、再びウォー・バーグから通信が入っている。」
「分かった。宇宙チャンネル、オン。」
「むー、むー、むー。」
見ると、ロミュラスカ船内のトゥメス大使は猿ぐつわを噛まされて簀巻にされているわ。そう…プログレッシブ・バンテージ…最近やっていないわ…(黄昏)
「ちょっとぉ! こいつ何とかしてよぉ! もうコンピュータとか通信機器がこいつの高周波で滅茶苦茶になってんのよぉ!」
ぱかっ。
「あ。」
「いやぁぁぁぁああああああああああ」
「ちょっとあんた、速く口を押さえて!」ラングレフ艦長が部下に命令を出しているわ。
「それにしてもつくづく…あんた本当にヴァルカスカ人な訳ぇ?」
私ははたと閃いたわ。…閃いた?
「分かったわ。」
「どうしたレイタ。」
「艦長。トゥメス大使は、本当はヴァルカスカ人に扮装したロミュラスカのスパイよ。」
「そうなのか!」
「はぁ? あんたバカぁ、そんな訳無いじゃん。」
「違うわぁあああ!!」
「いえ、間違いないわ。」私は自分の名推理に感動して、ひさびさにパイプをふかせたわ。
「彼女の感情の豊かさはヴァルカスカ人では有りえないわ。」
「ま、まさか…確かにヴァルカスカの奴等は私達と違って、愛想も無くつーんとした優等生達だけど…いや、でもスパイの話なんて本当に聞いてないわよ、あたし。」ウォー・バーグ艦長は戸惑った振りをしているわ。でも駄目。演技が下手ね。
「違うわぁあああ!! うえぇぇぇんん、それは私が地球で育ったから…」トゥメスさんはまだ言い訳をしているようね。
「…しかし、それだけでは彼女がスパイだとは言いきれないんじゃないのか?」
「まだあるわ、副長。彼女は先程、私だけを呼び出して、連邦の現在の防衛体制を私から聞き出そうとしたわ。」
「なっ!」ピカード艦長は驚いたようね。
「何よあんた達、あたし達がスパイ行為みたいな卑劣な事をやってると思ってる訳ぇ?」
ラングレフ艦長の問い掛けに、私も含めエバンゲリオンのクルー達は皆無言で頷いたわ。
「くっ…(事実なだけにムカつくわぁ…でも、こいつがスパイだなんて話本当に聞いてないんだけど…いや待てよ、という事は…ちゃーんす。)ふっ。レイタさんにかかっては、私達の戦術も肩無しねえ。」
ラングレフ艦長は両手を上げたわ。
「(ふっ。ついに本音を表わしたわね。)そう。」
「それでは、やはり彼女はスパイだったのか。」
「悪いけど、ピカードさん、そういう事よ。」「違ぁああああああううううう!!!!」
「…黙らせなさい。」
ラングレフ艦長が部下に小声で何か指示を出すと、トゥメスさんは注射をされて眠りだしたわ。とても安らかな顔。
「彼女からの情報は、今後の帝国の防衛に充分生かさせて貰うわ。御生憎様。」
ラングレフ艦長は腕組みをして、さっと立ち上がったわ。得意満面ね。何て悪人なのかしら。
彼女の顔がアップになったわ。ところでこういう映像って、誰が撮影しているのでしょうね。
「ピカード艦長。帝国との戦争を起こしたいのでなければ、今すぐこの中立地帯から退却される事を希望するわ。」
「…卑劣な奴等め…」リョウジ副長はエヴァチップスの袋を握りつぶしたわ。
艦長は、重々しい声で私に告げたわ。
「…レイタ、退却だ。」
「了解。」
「ちがぁあああああううううううのよぉぉ!! 私は本当に」ぶちっ。また起きたトゥメスさんが何か叫びだしたようだけど、スパイの言う事ですもの、惑わされては駄目。私はチャンネルを切ったわ。
USSエバンゲリオンは、私の活躍で、その危機を脱したわ。
「ど、どうしたの? レイタさん。そ、その格好凄く怖いんだけど…」
驚くイシカワさんの服装も、通常彼女が身に付けている物とは異なっているわ。
イシカワさんは白いひらひらのふりふりの、ついでにろりろりでまぐまぐの衣装ね。
「そう? 良く分からない。」
「そ、そう…」
「御免なさい。」
「な、何が?」
「…(でも、オブライエン主任の事は、口に出すなと言われたわ…)何でもないわ。」
「そ、そう…まあ良いわ、レイタさん、その格好から速く着替えて貰えるかしら。もう挙式の時間に間に合わないわ!」
「…では、やはり式はするのね。」
「もちろんよ! オブライエンが食虫植物が嫌いだなんて、嘘に決まってるわ!
あんなヘルシーな食べ物は他に無いもの!」
イシカワさんは笑顔で語ったわ。
人間の、愛の力は、機械の私には理解に非常な困難が伴なうわ。でもそれはとても魅力的な結束に映る。
「そう、良かったわね。」
「ふふ、ありがとう。だから、今から式場へ行って、そこで着替えてね。」
「分かったわ。」
その後。
トウジ・オブライエン主任とヒカリ・イインチョ・イシカワさんの結婚式はつつがなく執り行なわれたわ。引き出物はもちろん採れたてのディオネア。そして最後は、仲人役の私とイシカワさんのダンスね。
私が着た、言い直すわ、着せられた衣装は黒いタキシードだったわ。
「うんっ! これよ、これ! 私、今日までこの連載には出ていなかったけど、これで全部帳消しにしても良いわ!
作者さん、これからもこういう耽美なのをお願いするわねっ!」
新婦は両手を組んで唾液を垂らし、激しく頷いているわ。…耽美? 知らないわ。
私は新婦の手を取ったわ。
「ダンスを始めましょう。」
「ええ。」ヒカリ・イシカワ・オブライエンさんが頷くと、音楽が流れ出したわ。
♪あんなったぁと、ぅわたぁしがぁ、ゆんめぇのぉくにぃ、モーリー・ロバートソンは今、どこーで何ーをしてるやら…
私は流れて来た曲が練習の時の物とは異なる種類の物である事を確認したわ。
「…これは、ボン・ダンスの曲ではないわね。」
ヒカリ・オブライエンさんは私を諭すように優しく言ったわ。
「レイタさん。ボン・ダンスは結婚式でする物ではないわ。日本人が結婚式で踊るのは、サンバよ。」
「サンバ?…(検索中)現在流れている曲は、サンバという音楽とはリズムが異なるように感じるわ。」
「う、嘘! 生まれてからずっと、これがサンバだと思って来たのに…」新婦は衝撃を受けているようね。向こうの席では、新郎やクルー達が怪訝そうな目で私達を見ているわ。
「…イシカワさんが言うなら、そうかもしれない。」
「…うん、そう、そうよ。」
座り込んでいた、純白のウエディングドレスのイシカワさんは立ち上がったわ。
「さあレイタ、踊りましょう!」
♪あーか、あーお、きーろのぉ、デュッエッリス、トォー…
イシカワさんは曲に合わせて、両手を上げて激しく腰を振り始めたわ。
「イェーイ! サンバ・デ・リィオ!」
私も彼女の動きを忠実に再現するわ。
「…」
…構わないわ。私には何も無いもの…
何故かシンジ・クラッシャー君とゲォーフ大尉が鼻から流血して倒れているのが見えるわ。どうしたのかしら?
ヨシエ・マドックス博士、私の平凡な一日は、このようにして過ぎて行くわ。
最後に、自分の報告に次の言葉を付け足すわ。「日々これ勉強」。そして「乱一世を大臣に」。
今日はこんなところ。
つづく
次回予告
加持は裸で発見されたシンジとアスカを優しく諭す、しかしミサトが学校に来たのが2人を探す為だった事を彼は知らない。そのまま休んで帰宅した2人は、そこでミサトが入院し危険な状態である事を知る。翌日学校でレイが昨日今日と欠席している事も知ったアスカは、不安を確信に変えた。しかしシンジは現実に目を向けようとしない。アスカの怒りの声も彼は頑に拒み、膝を抱え続ける。次回「真夏の子供達」第16話、「澱」。御期待下さい。
本当の次回予告:ゲオちゃんサーガ最終作です。(「レイタちゃんサーガ」より何か語呂良いし。それから最近、上のミニ話までダークになってるし。)
「ATフィールド、全開。」
「みぎゃーっ」1行で作者死亡。(死因TENGUさん引退。)
「(もう一つの連載では突然私をいじめられっ子にし、こっちでは電波なへぼ女に書くのね。私を?
一般の人気は、エヴァの中で圧倒的優勢を誇るこの私を!?)…作者、交代ね。」
トゥルルル、トゥルルル…
「…(いそいそ)あら、ヨシエさんからだわ。(ガチャ)はい。」
「ちょっと(かなり?)悪ふざけの気があるとはいえ、よくもフラン研お兄ちゃんをいじめたわね。」
「…あなた誰。」
「私は、フラン研お兄ちゃんのお友達の「らぶりぃりっちゃん」(何だかんだ言って初登場)よ。」
「(自分でラブリー言うか、このアマ…)そう、良かったわね。」ガチャ。
トゥルルル…
「何。」
「何度切っても無駄よ、魔法ですぐにリダイヤル出来るようになっているんだから。」
「…世俗的な魔法なのね。」
「そ、そうよ。とにかく。フラン研さんは確かに失礼な言動が多いし、最近は大御所気取りでやたらと更新ペースが落ちてて、自分が量と勢いだけで持っている作家だと言う事を身の程知らずにも忘れているきらいはあるけれど、それでも私の大切なお友達なんだから!」
「あなた本当に友人なの?」
「う、も、もちろんよ! そうそう、フラン研さんから伝言を預かっているの。それを読むわ。
大切なお知らせがあります。
今回をもって、皆さんに御愛顧頂きました「新エヴァントレック」は、作者の一身上の都合により連載を終了させて頂きます。これは、冗談ではありません。短い間でしたが、御愛読有難うございました。
…ああ、これはフラン研お兄ちゃんが毎回執筆前に譫言のように呟く独り言だったわ。」
「一瞬喜んだ自分が悔しいわ…こういうのを、「悪質な悪ふざけ」と言うのよ、作者。」
「えっと、こっちが本当の伝言ね。「皆さんに、(今度こそ)大切なお知らせがあります。フラン研の部屋2万ヒット達成、有難うございます!
これもひとえに作者のどりょ…はともかく、読者の皆様のお陰です。そこでお知らせです。1万ヒットの時は、準備不足でこれといった物も用意出来ませんでしたが、今回はちゃんと夏休み中に2万ヒット記念の小説を用意しました。と言ってもたいした物ではないですが。…それは良いのですが、書いてから重要な問題に気付きました。よくよく見ると、その記念小説は直接はエヴァと無関係になってしまうのです!!
「めぞんEVA」の投稿の最低限のルールは、それが何であれエヴァに関するものであるという事…今まで相当ムチャな物を送って大家さんを困らせ続けて来た私ですが、さすがにこのルールを破る勇気はありません…でもそれじゃあ、今まで一度もボツ原稿を出した事の無い省エネ作家の名がすたります!
という訳で、それを公開する為だけに、自分のホームページを作ってしまいました!
これは本当です、冗談じゃないですよ。
ぜひこちらのページにいらしてください。既に2万ヒット記念小説を公開中です!」との事よ。」
「…(勝手な事を…それに幼児に伝言を頼む長さの文ではないわね。)そう。」
「ええ。あ、私は今から自分の小説に出演しないといけないから、それじゃあね。」
つー、つー、つー。
「…ふう。(…でも、良い事かもしれない。そう。自分のホームページに力を注がせて、ここから奴の連載を引き上げさせれば、めぞんの治安は保たれるわ。その後は自分のホームページで好きにやらせれば、そう、TENGUの(以下略))」
とぅるるる…
「(今度はヨシエさんかしら…本当、弐号機パイロット派も多いし、つくづく綾波光氏のみが救いね…)はい。」
「それから、もう一つ伝言があって、あの綾波光さんからメールが来たって凄く喜んでいたわ。えっと光さんは確か、エヴァトレの隠れファンらしいわね。あれ?
じゃあここで言っては良くなかったかしら? じゃあ皆、この話は内緒よ!」
ぐぁーん。
「ひ、光さん、あなたも…裏切るの?…」バタ。
「何だっけ、えっと、光さんはあるテレビ雑誌に載った、とれっくを題材にした4コマ漫画をわざわざスキャンしてフラン研さんに送ってくれたらしいわ。漫画の内容はねえ…
1コマ目:ピカードが中央に立ち、両脇にクルー達
ピカード「私はジャン リュック ピカード」「宇宙船エンタープライズの艦長だ」
2コマ目:にこやかに話すピカードとドクター
ピカード「ドクター 前から疑問に思ってたんだが…」
ドクター「なあに? 艦長〜」
3コマ目:汗をかき両手を上げるピカード、無表情(呆れ顔?)のデータ、背中を向けるドクター
ピカード「こんなに科学の進歩した未来のお話なのに」「どーして育毛剤は進歩しなかったんだろうねー」
アンドロイドのデータ少佐だってカミが
ドクター「いそがしっからまたねー」
4コマ目:エンタープライズ
ピカード「航星日誌補足」「今日も宇宙の謎は深まるばかりだ…」
…何て言うか、たくさんあるテレビ番組の中から敢えて、(関東では)月に一回位の確率で午前3時頃に放送されるかされないかの幻の番組を取り上げたこの漫画家さんは、とても勇気のある人だと思うの。」
「…………………つまらないわ、ぜんっぜん…」(絶命)
後味の悪いまま(^^;以下次回
フラン研さんの『新エヴァントレック』第15話、公開です。
ディオネアさんのHNの由来はそういう所にあったんですね(^^)
初めてメールを頂いたときは「dionaea」とあって、
読み方がわからなかったのを思い出しました・・・(^^;
2通目のメールで「ディオネア」でしたっけ・・・
まさか食虫植物とは(^^;
それとも他の意味もあるんでしょうか?
今度聞いてみようっと。
タカビーアスカ様とめそめそアスカちゃん。
アスカのダブルキャストにアスカ人は大満足!?
レイタ一人称で
アヤナミストは狂喜乱舞!!?
アスカがいい目にあわない『キーホルダー』では
アスカ人からのメールが多かったそうですし、
『海辺の生活』でレイが虐められている今
綾波光さんからの応援メール・・
EVA小説ファンはその気があるのでしょうか?(^^;
わたしもその手の1人かも・・
さあ、訪問者の皆さん。
ソースで貴重な情報を提供して下さるフラン研さんに感想メールを送りましょう!