TOP 】 / 【 めぞん 】 / [フラン研]が角番取組に染み込みます!(全然分かんないですね…)/NEXT(成田エキスプレス)
うちのバナーがが・ん・そ!


 
ブリッジでは、前回見事に出番の無かったレイタが、操作板をがすっごすっ動かしていた。彼女の顔はいつにもまして青白く、彼女の周囲の気温も心なしか下がっているように見える。

「な、何やってるの、レイタ。」

ぎろっ

「ゲームよ。」

「そ、そう…なんだ。い、今勤務時間中だよね?」

「ゲーム名? キャッツアイ2000よ。Sexy、Cool、ゑびす温泉がキャッチフレーズ。ストリート世代の僕等に必須アイテムな97年版の杏里の歌付き。いわゆるめちゃイケよ。」
さすが生きるデータバンク(カシオ製)のレイタ、立て板にみみずである。

「…人の話、聞いてる?」
冷や汗をかくシンジ・クラッシャーは、その時自分のパネルに映像を確認した。
 

「あ、艦長。」

「何だ。」
未だにガムテープで頭がグルグル巻のフユツキ・コウゾウ・ピカード艦長が聞く。

「前方にゼレンゴン戦艦を確認。メッセージが入っています。」

「分かった。宇宙チャンネル、オン。」

大画面に映し出されたのは、地球人の感覚で言えば非常に美人で、気品のあるゼレンゴン女性であった。
「あなたは!」

「おっほっほ。リナーちゃんより先に2度目の登場なんて、かなりヤバいって感じかしら!」右手を口の前にかざして笑う、相当リナーに対抗心があるようだ。

「ユイ!」ゲォーフが露骨に嫌そうな顔で呟く。

「これは、ユイ・ケーラー大使。どうされたのですか。」艦長は営業スマイルでモニタのユイ・ケーラー、ゼレンゴン帝国・連邦全権大使に呼びかけた。
ところで、ゼレンゴンの美的センスは全て地球人の正反対で、それは女性の容姿の評価にも当てはまるという。と言う事は、間違いなくケーラーはゼレンゴンのセンスで言うなら「やわらちゃん(実写)」であり、それと出来たゲォーフは…ええと、何て言うか、ユニークな趣味であろう。

バカ笑いしていたユイ(以下YAWARA!)はすぐに真顔になった。
「ええ、一刻を争う緊急事態なのです。そちらへ伺ってよろしいでしょうか。」

「もちろんです。ゲォーフ。彼女をお迎えしてくれ。」
 

ゲォーフは、髭とグラサンで良く分からないが、どうやら動揺しているようだ。
「か、艦長…ああ、私が行くのは、ど、どどっどうかと思うが…」
声だけでなく、顔も手も震えだしているように見える。

ガムテ艦長はゲォーフを怪訝そうに見やる。
「何か都合が悪いのか?」

「ああ、と…私は帝国を追放された身だ。ゼレンゴン人の彼女に不快感を与えるだろう。」

艦長はニヤリ、と口の片端を上げた。
「問題無い。君は立派な連邦の士官だ。艦長命令だ、彼女を丁重にお迎えしなさい。」

「うっ…わ、分かった。」げっそりとした表情でゲォーフはブリッジを離れた。
 
 

ゲォーフは、総菜パンの集積場の山の中から伸びている足の向こう脛を思いっきり踏ん付けた。
「ごー! ごぼごぼ。」

例によってパンまみれのトウジ・オブライエンが山から姿を表わした。

「…君は、一日中そうやっているのか。」
睨み付けるゲォーフ。

「い、いや、そやったかもしれませんな。パンの中におると、何や気持ちがリフレッシュする、言うんですか。…で、でも最近は食事はちゃんとした弁当を、彼女に作って貰って」
「転送しろ。」

「は、はいぃ」
転送室のパネルを操作するオブライエン。

きらきらきらきらきれい事ばっかり言ってたら、世の中(以下略)…
 
 

転送されて来たゼレンゴン人を見て、ゲォーフは驚いた。証拠に無言だが、口は半開き、色眼鏡は30度回転してずれている。

転送されて来たのは、ユイ・ケーラー(以下Happy!)と4歳前後のゼレンゴンの子供だった。
 
 

「だ、だ、誰か僕に優しくしてよー、(よー)よー」(←エコー)
即転送室から駆けて行くゲォーフ。
 


―宇宙。そこは最後のボランティア(意味不明)。これは、宇宙戦艦エバンゲリオン号が、新世代のクルーの下に、24世紀において概ね任務を続行し、未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求めるふりをしつつ、人類未踏の宇宙に、アバウトに航海したりしなかったりする小話である―

今回からタイトルgifがアップグレードされている事に気付く読者は一体何人いるんでせふか。
Evan Trek The Next Generation
新エヴァントレック

Reusable
第十四話「患者の名の下に」     



 
ユイ(以下美味しんぼ)はしばらく逃げ回っていたゲォーフをようやく捕まえた。

「ゲ・オ・ちゃん。」ユイ(以下ヤリスピ)の前には、ゼレンゴンの女の子が立って、こっちを睨んでいる。背格好から見てまだ4歳児程度のはずなのだが、その端正な中に強い意思を秘めた凛とした顔つきは正にゼレンゴン戦士のそれだ。
 
 
そして彼女はとてもシンジ・クラッシャーに似ていた。

 
「や゜、や゜あ゜、ユ゜イ゜。」声が震えるだけ震えているゲォーフ。

「目の前の子の事、聞きたくない?」にこっ。

「あ、う、あ、か、可愛い子だな。一体どうしたんだ。」精一杯笑顔を作るゲォーフ。気持ち悪い以外の何物でもない。ますます上機嫌になるユイ(以下ぼくちんこ ぼくんち)と、対照的に軽蔑的なまなざしの子供。

「それはもちろん、あなたと私の、愛の結晶に決まってるじゃなぁい。」ユイ(以下ゆんぼくん)は勝ち誇って(何に?)言う。
「おーほっほっほっほ」

「う、そ、だ、て、え?」日本語になっていないゲォーフ。
「い、いやしかし、私と君は、そういう事は確か6回位前の話でしか…確かに中出しだったが…あれは4年も前の話ではないぞ。」彼の震える様は、まるで雪原から顔を出すナキウサギのようだ。

しかしこれは意外と彼女の痛いところをついたようだった。
「そ、それはその…何言ってるのよ、知ってるでしょ、ゼレンゴンの子供は成長が速いって。」

「そうだったか?」

「そ、そうよ。」段々どもりだすケーラー。

「う、嘘だ嘘だ嘘だ! 僕の子供じゃないんだ!」

「そんな事無いわ! DNA鑑定してもらったって結構よ(細工したし)! これはあなたと私の子供!」
むっとして言い放つユイ(以下むいむい)。

「僕の子供じゃない、僕の子供なんかじゃない、うわわー」ゲォーフは半狂乱に泣き叫びながら、ケーラーのお腹を渾身の力を込めてパンチ

「うぐっ」

出来なかった。

ゲォーフの首筋を軽くチョップで落とし、見事な防御を決めたケーラーはからからと笑った。
「全く、今更私のお腹を狙ってどうするのよ。もうとっく…もとい、数ヵ月前に出産しちゃったからこそ、ここに子供がいるんでしょう。ばっかねぇー。男って、皆こうなのかしら。」

隣の子供は全く無関心に、あくびを噛み殺している。

「紹介するわ。あなたと私の子供、アレクツァンフェンよ。」

アレクツァンフェンは倒れ込むゲォーフを無言で見下ろした。
          



 
「ゼレンゴン帝国は、今内戦の危機に直面しています。」ケーラーは優雅かつ実務的な態度で説明する。

クルー達は会議室に集まり、彼女がやって来た理由をさっそく聞いていた。ゲォーフも、嫌々座っているが、何故かとても縮こまり、脅えているように見える。
「(逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目か? 逃げたいよ…)」
今夜は絶対赤ちょうちんに行こう、と心に決めるゲォーフ。

「どういう事かね。」聞くガムテ。

「今まで帝国を治めて来たキール・クンペック宰相が病に伏しました。残念ながら、もう長くはないでしょう。」

「後継者は?」聞くパンパース(副長)。

「居ます。有力な者が2名。」

「それでは問題は、後継者争いか?」髭を撫でるパンパース。

「その通りです。…実際ジブロン家とガイナラス家は昔から事有るごとに争って来たゼレンゴンの有力な家系同士です。今まではキール宰相が目を光らせていたので問題はそれほど表面化はしていませんでしたが、彼が危ないという情報をさっそく嗅ぎ付けた両者は一触即発の状況です。」厳しい表情で語るケーラー。

ガイナラス家、という言葉にピカードとゲォーフは表情を硬くした。

「ジブロン家とガイナラス家か…」またレーズンを頬張りながら呟く副長。比較的健康的な中毒ではある。

「問題はゼレンゴンの内戦は全帝国に広がる危険性が非常に高いという事です。」ゼレンゴンと地球のハーフのユイ(以下同文)は、地球人の感覚で言うなら美人、の顔をしかめた。
「つまり、ゼレンゴンは戦士の民族ですから、一度火が付くとわっと燃え盛るのです。」

「灯油をきっちり浸した死体みたいなもんだな。」しきりに頷いている副長。ギョッとするマコトとシンジ…はたまたまここにはいなかったので、驚く(まともな)奴が一人もいない。

「ええ。」真面目に同意するユイ(順不同)、「このままでは連邦をも巻き込む恐れがあります。」

「そうか…何とかして彼等の戦闘を回避しなければならないな。…それで、私達には何が出来るのだろう?」聞くガムテ。

「実は、その宰相が現在バード・オブ・プレイの方に搭乗しています。艦長に会いたいそうです。」

「そうか。それではすぐにお目に掛かろう。」艦長は立ち上がる、その時何故か頭のガムテが取れた。

ぷしゅっ、びゅーわーっ

「か、艦長、一体どうなさったんですか?」驚きながら、血しぶきを手で避けるユイ(敬称略)。さっさと退避するクルー達。


先程より厳重な粘着ビニールテープで、しっかりと頭をぐるぐる巻きにされたピカードはユイ(ハンドルネーム)と共にゼレンゴン船内の宰相の個室に入った。

ゼレンゴン帝国最高権力者、キール・クンペック宰相が目の前の椅子に座っていた。両隣にガードマンがいる。
宰相は、威厳のある髭もじゃな老人だった。ゴツゴツしたいかにもゼレンゴンな顔で、年の為かマコトがしているようなバイザーを付けている。

ピカードはうやうやしく頭を下げた。
「全く、この度は、御愁傷様で…」

「まだ死んでません。」肘で突くユイ(ネットおかま)。

「そ、そうだったな、ユイ君。」顔をほんのりと赤らめる恋多き乙女、フユツキ。ECD風に言うところの人類愛である。

「も、もう、艦長ったらおちゃめたんなんだから。」左手を自分の口に近付け、そしてピカードの額にそっと近付けるケーラー。
「こいつう!」彼の眉間のやや上辺りをちょこん、と人差し指で押した。

「あ、あはははは」「うふ、ふふふふふ」
ラブラブI Love You2時間スペシャルな2人。
 

「うぅ、う、う」宰相のうめく声に2人はようやく状況を思い出した。

「ああ、そうだ、宰相、この度は御愁傷様…じゃなくて、お悔み申し上げます。」

「それも違うって。」

「…ピカードだな。」キールはやや弱い、しかし威厳を保った声で言った。

「はい。」

「私はまだ死んでいない…だが、もう長くはない。毒を盛られたのだ。」

艦長は部外者にそんな事を話すキールを意外に感じた。
「それでは解毒剤を…」

「解毒剤は、無いのだ。治療法は存在しない。」

「私達の医療チームが今から治療法を探します。基本的に「意外と、仕事は出来る」が私達のモットーですから、必ずや治療法は」

「良いんだ。ここで死ぬ運命にあるのなら、それに抵抗するつもりはない。誇り高き戦士は死を恐れる事は無いのだ。」
艦長の言葉を遮り続ける宰相。

「しかし…」

「良いんだ。その代わり、艦長、君に頼みがある。」

「…何でしょうか?」

「私が死ぬと、新たな後継者を選定する必要が出る。ジブロンとガイナラスの2人が争う事になるのは、もう聞いているだろう。…彼等のどちらを次期後継者とするか、君に決めてもらいたい。君が選定の儀式を執り行なうのだ。」

艦長は驚いた。
「そんな! 私はゼレンゴン人ではない、異星人です。ゼレンゴンの内政には干渉出来ませんし、第一、次期宰相候補達が納得しないでしょう。それに何より、そんな仕事面倒過ぎます! どうせノーギャラなんでしょう?」

「まあそう言うな。宰相の命令は絶対だ、彼等も従わざるをえん。それに、もうその命令を伝えちゃったしぃ。だから数時間したら彼等ここに来るから。」
ごほごほ、と彼は嘘っぽくせき込む。
 

「(勝手な事しやがって…)」
「ジブロンかガイナラス、どちらかが私に毒を盛ったのだ。それがどちらだったのか、調べて欲しい。ギャラについては一考しよう。」

それだけ言うとキール・クンペック宰相はふら、と首を落とした。
「さ、宰相? 宰相? (ギャラの話は!?) 宰相!!」キールの肩をぐらんぐらん揺らし、胸をグーでがすごす殴る艦長。

(ピカードが止めをさして)宰相は息を引き取った。


その頃ゲォーフはアレクツァンフェンにボコボコにされていた。

アレクツァンフェンは、極端に強かった。強く、とても強く、あるいは強く、違う言い方をすると、強い。まあ、それ以外の言い方で敢えて形容するなら、強いといえた。そもそもゲォーフは決してゼレンゴン戦士の中で強い方ではないのだが、それにも増して彼女の戦闘能力が異常なのだ。4歳児(どころか、本当は1歳にまだ達していないはずだ)とは思えない真の「戦士」、どこまでもどこまでも強い末期ドラゴンボール状態である。

アレクツァンフェンは、虫の息のゲォーフを見下ろした。
「ふん、もう降参か。」

「すいません、もうしませんから…」何かトラウマに入っている様子のゲォーフ。

その時ゲォーフの部屋のドアが開いた。
 

「アレクツァンフェン! 全く、少しは手加減しなさい! あなたの「エクササイズ」は一般人の「デスマッチ」なのよ。」
溜め息をつきながら諭すユイ(SPA!世代)。

「媽媽!」

「前から思ってたけど、」ケーラーは腕を組んだ。「それ、「ママ」と発音違うの? それとも「マーマ」?」

「媽媽は、媽媽だ。」

「…ふう。」ケーラーはいつものように諦めて、彼女に優しく手を置いた。
「この船の保育室には、いい遊び相手のお友達(略して生贄)がたくさんいるはずよ。そっちに行ったら?」

アレクツァンフェンはその幼児だてらにハードバイルドな横顔をフ、と緩めた。
「それもそうだな…分かった。」

彼女は悠々と廊下に出て行った。
 

ケーラーはまだうずくまって震えているゲォーフに苦笑しながら声をかける。
「ゲォーフ、起きて。」

「は、はい!」ぴん、といきなり立ち上がるゲォーフ、ユイ(渡○淳)にも相当恐怖心を持っているらしい。

ユイ(カウンタック)はゲォーフに微笑んだ。
「あなたが父親なのよ。あなたがしっかりしないで、どうするの。」

ゲォーフは何とか意識を取り戻したようだった。
「し、しかし彼女は強過ぎだ。…ゼレンゴンとしては、悪い事ではないが…」

ケーラーも珍しくゲォーフに同意して、しみじみと言う。
「そうね…私としては、本当はもうちょっと女の子らしい事にも興味を持ってくれたら嬉しいんですけど。…呪いとかね。」

「そ…そうか。」また顔が青くなるゲォーフ。

「でも、可愛い私達の子よ。」

 
「…認める事は出来ん。」ゲォーフはユイ(カブタック)から顔を背けた。

「どうして!」声を上げたケーラーは、振り向いたゲォーフの真剣な目(彼女には色眼鏡を通して見えるらしい)に思わず黙った。
「婚約の儀式もしていないのに、子供が居るなどゼレンゴンとして恥以外の何物でもない。」

「そんな…」ケーラーは再びゲォーフの目を見た。
「そんな事言っても、私達の子供なのよ? 恥とか何とかの問題じゃないでしょ?」

「私達は婚約の儀式をしなかった。しなかった以上は、子供を認める事は出来ん。」

ユイは明らかに納得はしていなかったが、これ以上議論をしても無駄だと判断したらしく、軽く溜め息をついて独り言のように言った。
「…まあ良いわ。それならそれで、私が一人で育てます。元々覚悟の上で産みましたから。」

ユイはミネラルウォーターをコップに注いで飲む。

ケーラーは話題を変えた。
「ゲォーフ、一つだけ教えて。あなたは何故帝国を追放されたの? 本当にあなたの親が帝国を裏切ったの?」

「ああ。」ゲォーフは無表情に答えた。

「本当に?」

「ああ。」

2人は沈黙した。

「出て行ってくれるか。」

ユイ・ケーラーはしばらく無言でゲォーフを見ていたが、やがて部屋から出て行った。



 
「なるほど! これは確かにSexy、Cool、ゑびす温泉、佐伯伽耶だ!」
レイタの「キャッツアイ2000」ゲームを借りていたシンジ・クラッシャーは画面上のテロップを確認した。

「「臨時ニュース」? 何だよ良い時に。どうせたいした事じゃないのに…あ」

シンジは黒ビニール(艦長)に振り返った。
「ジブロン側、ガイナラス側、それぞれの船が到着しました。」

ぱふっぱふっぱふっ

「メインスクリーンへ。」擬音で好き勝手している副長が言うと、メインスクリーンに2隻のゼレンゴン船が現われた。目の前のクンペックの船に2隻が近付いている。

「両艦から通信が入っている。」

「分かったゲォーフ。宇宙チャンネル、オン。」

一方の画面に映ったのはやはり髭ボーボーな上に爆発コントのオチのような不思議な髪型のゼレンゴン人だった。
「ガイナラスだ。宰相から話は聞いた。しかし我々ゼレンゴン人が地球人に指し図を受ける等というのは納得出来ん。」

もう一方の画面にはやはり髭もじゃの、しかしガイナラスに比べればより大人っぽく知的な印象を与えるゼレンゴン人が映っている。
「ジブロンだ。惑星連邦のピカードだな。さっそく後継者選定の儀式を執り行なおうではないか。」

ビニテは立ち上がった。
「いかにも私がピカードだ。話を聞いたなら問題無かろう。私が後継者選定の儀式を執り行なう。」

ジブロンは眉を上げた。ガイナラスはいきりたつ。
「我々は独立した帝国の宰相候補だ。お前等に指し図される覚えはない!」

ぱふっぱふっ

「それなら君が候補から外れるまでだ。亡きクンペック宰相は私が選定をするよう任命した。君は私に逆らえんのじゃないかね?」

「くっ…」

あふ、あふ…

ジブロンは口を開いた。
「構わん。それでは宰相の船に今から行くぞ。」

「分かった。」右の方から聞こえて来る変な擬音を無視してピカード艦長は答えた。

しかしまだガイナラスの方は納得していないらしい。
「おい、ピカード。」

「何だ。」

「お前が選定をするのは認めてやる。宰相の言とあらばな。しかし、後ろにいる、その薄汚れたゼレンゴン崩れだけは我々の船に乗せるなよ!!(ところで石田純一は一体何になりたいんだ?)」
ゲォーフを指差すガイナラス。

顔を険しくさせたフユツキが反論をしようとする前に、一方的に通信は切れた。
 

「とうとう両者が来たか…副長、しばらく頼むぞ。」

「任せて下さい。」「かまーん。」
副長とカウンセラーに何のフォローもないまま、艦長はブリッジを出て行こうとする。
 

艦長はふと立ち止まって、ゲォーフに声をかけた。

「ゲォーフ、気にせんでくれ給え。」

「問題無い…艦長、しかし、ガイナラスには気を付けてくれ。奴は昔、私の父を…」

「それは私も分かっているさ。」

「今回の件も、奴が毒を盛ったのだ。」

おう、あおう、ぐーっど。

艦長は表情を硬くした。
「ゲォーフ。確かにガイナラスには問題が多い。それは私も知っているし、留意するつもりだ。しかし決め付けは良くない。まして例の事件で、こうなる事を望んだのは君だぞ。」

ゲォーフは色眼鏡を上げた。
「…そうだな。」

艦長はバッジを叩く。
「ユイ君か? それでは今から宰相の船に行こう。」

「分かりました。」

艦長はブリッジを離れた。


キール・クンペック宰相のまだいる部屋で、ピカード艦長、ガイナラス、ジブロンは彼の死亡を確認するゼレンゴンの儀式を執り行なっていた。

靴を脱がされ、裸足になっているキール。ガイナラス、ジブロン、それぞれの部下が2人の目の前に小さなたんす状の小箱を用意した。

「ビ・イチ・ボーイ・ズ!(始め!)」とって付けたようなゼレンゴン語の合図と共に、ガイナラスとジブロンはそれぞれ固定されたキールの足の小指にたんすをガンガンぶつけている。

「な、何て事を…」
ゼレンゴンの残酷な死の確認の儀式に、思わず目を背ける艦長。
 

数分後、両者がキールの死を「確認」、最初の儀式が終わった。

「それでは、さっそく後継者を決めようではないか。」ジブロンが言葉を発した、その時。

ちゅどーん。ぶほっ
 

突如爆発が起き、周囲は黄色の疾風に包まれた。


数時間後

ユイはしつこくゲォーフの部屋に来ていた。何だかんだ言ってだいたいそういう仲なのだ。

「爆発の原因は分かったのか。」
ユイの方を見ずに話すゲォーフ。

「今、エバンゲリオン技術部のクルーが調査中よ。嫌ねえ、ゲォーフ、2人きりの時にまでそんな仕事の話…」
つい、とゲォーフの絶対領域付近にまで接近するユイさん。

「な、何だ。」

「ゲ・オ・ちゃん。」デコの突起を愛しそうに撫でるケーラー。ビクっとするゲォーフ。
「ねえ…前私がこの船来た時、何で婚約の儀式を始めようとしたの…」

「そ、それは、つまり、それ以前から私達は婚約者だったからだな…」

「何で? いつそんな事が決まったの?」

「そ、それは、ゼレンゴンの慣習によれば、そもそも…だな、び、

「B?」

「B、までいった時点で、自動的に2人は婚約者になってしまうのであって、つまり、その、仮に若気の至りであっても、そういう事があったらだな、」

「そういう事って、どういう事?」いつの間にかゲォーフに馬乗りにまたがってるユイ姐。

「そ、うゆう事だ。」

「こういう事?」気付くとゲォーフの手がケーラーの服の中の胸に「のわぁあああ」
慌てて手を抜き取るゲォーフ、どうやら以前の彼女とのゴニョゴニョが何かのトラウマとなったらしい。
 

ゲォーフはケーラーを鋭い目で見た。
「ユイ。」

「はい。」

「婚約の儀式をしようとしたのは、決して慣習の為、だけではない。私が…したかったからだ(色々と)。」

「…」
目が通常の5倍程度の大きさになり(簡単に言うと仮面ライダーに近い)、キラキラ、シャンデリアのように光を反射させているユイ。

「しかし…今は、もう出来ん。」

普通の目の大きさに戻ったケーラーは驚いた。
「何故!」

「子供だ。」

「名前は付いたじゃない、イイ感じで! 私達の子供よ!」

「認められん。だから婚約の儀式も出来ん。」

ユイは悲しそうに呟いた。ただし馬乗り。
「一体、何が問題だと言うのよ…」

ゲォーフは、恐らく彼にしては優しい口調でユイに言った。
「分からんか。もし私が認知をすれば、彼女は即ち帝国を追放された私の一族の子供という事になるのだ。ゼレンゴンにとってそれがどういう事か、分からんとは言わせん。」

ユイは息を飲んだ。ゲォーフの顔を見る。
「…私には地球人の血もあるから、あなたの考える事が全部分かるとは言えない。」
ユイは穏やかに微笑む。
「でも、ゲォーフ、父親になれなくても、少なくともあの子、アレクツァンフェンの試合相手位には、なってくれるわよね?」

「あ、う、ああ…(それはもっとヤダ…)」再び逃げちゃ駄目だモードのゲォーフ。



 
ブリッジに戻ったケーラーはピカード艦長の質問を受けていた。

「つまり、本来の儀式の方法で行なえば、時間を稼ぐ事が出来るわけだな?」

「そうです。ゼレンゴンでも最近は各種の儀式がかなり簡略化されてきました。しかし本来の伝統に乗っ取れば、各候補のポエム披露やびっくりパーティー、その他多数の儀礼でしばらくはかかります。」

「何としてでも儀式を長引かせ、その間にキール宰相の毒殺、今回の爆発事故、それぞれ原因を探らねばならん。」

「通信が入りました。」

「分かったシンジ君。宇宙チャンネル、オン。」

それぞれの艦のリーダーが2画面に映し出されている。
「まだ後継者選定の儀式は再開されないのか。」

「これからすぐ執り行なう。20分後からで、良かろう。」

「分かった。」

「分からん! そもそもあのような爆発事件を前に、じっとしていろというのは我慢のならない事だ!」引いたジブロンに比べ、ガイナラスは若い為か艦長に噛みついた。
「あのような事をしでかしたジブロンには、もはや候補資格は無かろう。」

やはり根は戦士のジブロンは、この一言で火がついた。
「何だと! 己れ戦士を侮辱しおって! 耳エヴァの爽やかさでお前達の毒を抜いてやった恩を忘れたか!」

「我々の作ったベースがそれだけ優れていたという事だ。」

「ふん。」年輩者の余裕か、鼻であしらうジブロン。
「自分の苦悩・欲望を芸術にぶつける事を否定はせん。それは昇華という物だからな。客を否定するな? 別に良かろう、それもまた一興さ。しかしお前のメッセージは余りに凡庸に過ぎたな。その凡庸なメッセージの為本来見られた芸術性がだいなしになり、ただの安っぽい前衛風になってしまった。」

「何を! 黙っていれば良い気になりおって。お前達の方こそ、良い加減な物を作るな! 時代考証ちゃんとやれ! ナウシカはともかく、後は女々しい女子供向けの物ばかり作りおって! 俺がどんなに叩かれようとも、少なくとも紅のピッグほどヒドい物は作らなかったと確信を持って言えるね。」

「何だと、若造が!」
 

「彼等は何の事を話し合っているのだ?」戸惑うピカード。

小声で耳打ちするユイ。
「ゼレンゴンでは、有力者は自作の長編詩を作り、それを公共の場で歌い自分の考えを民衆に伝えるのが常です。今彼等は互いの詩を攻撃しています。…実は、ガイナラスはもともとジブロンの弟子だったのです。その事もあって、」

「感情的になってしまう、のか。」

「ええ。」
 

激昂したジブロンはピカードに言う。
「本艦は、直ちにガイナラス艦を攻撃する。止めるな!」

「何だと! 打って立とうではないか!」

「止めろ。」声を上げるピカード。

「この緊急時に地球人の言う事など聞いていられるか。光子砲準備!」

「そうだそうだ! 今こそ日テレちゃんたぬきオヤジの鼻をあかしてやる!」

「止めるんだ!」ビニテは立ち上がって

ぷしゅー

水芸を吹き上げつつ叫んだ。

「「な、何だお前、それは…」」驚く2人のゼレンゴン。

「もう一度言っておく。お前達がどう思っているかは知らないが、既に後継者選定の儀式は始まっている。選定者は私だ。私の命令が聞けないようなら、お前達2人は候補から外れてもらう。」

「「む、むぅ…」」

「ふん。」「勝手にしろ!」双方の回線は切れた。
 

「ふぅ。」ため息をつく艦長。

「これから正念場ですわ。」

「ああ、そうだなユイ君。(…最近また、レイちゃん(シンジ)がつれないんだよな…こっちも忙しいし…)」
やっぱり恋多き乙女(おまじないコミック)のフユツキは自分の多忙を呪った。


20分後

再びクンペックの船に集まったピカード、ジブロン、ガイナラスの3人は儀式を再開していた。

「それではこれより選定の儀式を再開する。まずはジブロン側のポエム朗読から。」

ピカードの声に驚く双方。

「何だと! 次は決定前のコサックダンスではないのか!」肩を怒らせるガイナラス。

「今回の儀式はゼレンゴンの伝統に乗っ取り行なっている。」ついにフルフェイス型のヘルメットをつけている艦長がもごもごと喋った。

「煩雑な旧式で進めるつもりか…こいつの入れ知恵だな?」ピカードの後ろに澄まし顔で立つケーラーを睨むジブロン。

「それでは、ジブロン側のポエム朗読だ。」繰り返すピカード。

「む、むう…」ジブロンは渋々中央に立つ。

ポエム:フラのらぶらぶBOXより…
 

  
・・チーズ・・  


靴下がいつの間に裂けて  
気付いたら  

リーゼントのように突っ張る足の爪  

新聞を敷いてかがみ  
ぱちんと爪を切るの  

夜に切ると親の死に目に会えないよ  

それは嘘、だって親は殺ったから  
ちゃんと死に目に会えたもの  

そして足の親指から沸き立つチーズの臭い・・・・。  



   
   

テーマ詩『がさ入れ』だ。  
  

 
自信たっぷりに中央から身を引くジブロン。口が半開きのヘルメット。
そして、ショックを受けているガイナラス。
「つ、強い…」

「強いのか?」更に口が開く艦長。


リョウジ・ライカー(擬音の舞いの後ひと眠りして夜明けのコーヒーをさっきまで飲んでいた)はレイタとマコト・ラ=フォージから説明を受けていた。

「爆発に使われた爆弾は、放屁凝縮型。高密度に凝縮されたオナラに点火し、一気に爆発させるタイプよ。」

「(クチャクチャクチャ)悪質だな。(クチャクチャクチャ)」眉を潜めるリョウジ。

「それはさほど珍しい事ではありません。問題は、オナラの成分が肉食性で、また異常に脂肪分が高いという事です。その為爆弾を超小型化…そうですね、数ミリの大きさにまで小さくさせる事が可能なんです。」

「ほう、肉食性か…つまり、その技術は」

「ロミュラスカの物よ。」レイタの言葉にマコト(出番これだけ)は頷いた。

「(クチャクチャ)そうか…(ところで某「水の鏡」で某ナベさんの言ってた「古内東子は元Wink」って…マジ?)」
シリアスモードで考え込むリョウジ。
 
 

旧式の後継者選定の儀式は「休息」の時間が何度も挟まれる。エバンゲリオンにまた戻ったピカード、ケーラーは、他のクルー達と話し合っていた。

「爆弾はロミュラスカの物か。」

「毒殺の件も、ロミュラスカの狡猾さを感じますね。」

「うむ…」副長に頷くピカード(ヘルメット)。
「もしロミュラスカと繋がった候補が宰相となれば、」

「帝国と連邦の関係は危機を迎えるでしょう。」厳しい表情で言葉を継ぐケーラー。

「艦長。断言はしませんが、どうもジブロンが怪しいように思います。自分の長編詩を外国語に翻訳させたり、以前から彼は外交に積極的でしたから…」

「いやそれは違う。」ゲォーフはケーラーの声を遮った。
「全てをやったのはガイナラスだ。間違い無かろう。」

「何故、そう言えるの?」

「い、いや…」

戸惑うユイ。
「ゲォーフ?」

「ま、まあ、ゲォーフとガイナラスは、過去にいざこざが有ったのだよ。」艦長がその場を収める。


再開された選定の儀式は、コサックダンスまで終了し、とうとう最後の部分に差しかかっていた。後は選定人が、どちらがより宰相にふさわしいかを決定する文を読み上げるだけだ。

艦長は2人の候補を見回した。
「しかし、その前に2人に聞きたい事がある。ゲォーフ。」

ゲォーフが部屋に現われると、2人の表情は一変した。
「ゼレンゴンの面汚しが…」
「こいつをここに入れるなと言ったはずだ、艦長!」

「彼は連邦の士官だ。先の爆発事件の調査に来た。」

「「うぅ…」」うなる2人にビクビクするゲォーフ。

「お尋ねします。双方、爆発前に何か不審な点、部下の不審な行動などは有りましたか?」珍しく丁寧語だ。

「何も無いさ。」「有るか、この地球人に毒されたニセゼレンゴンが!」

「…そ、そうですか。それでは、こちらの爆弾の調査結果を報告します。爆弾は肉脂肪性オナラ型、つまりロミュラスカの物と確認されました。」

「「何だと!」」驚く2人。
「それは本当なのか、艦長?」聞くジブロン。

「ああ本当だ。」頷くメット。

「分かった、至急調査の為、一時艦に戻る。」ジブロンと付き人達は部屋を出て行く。
「けっ。下らない策を弄しおって。それでは我々も一時艦に戻るぞ。」ガイナラスもキールの部屋を出て行った。


その頃ユイは自室でコンピュータを操作していた。どうやらゼレンゴン帝国の情報ネットにアクセスしているらしい。
「先のトダ・スリー大虐殺関連の情報をリストアップして。」

「アクセス出来ません。」

「何故! あれはゼレンゴンなら誰でも知ってる歴史的な大事件よ! 今から約20年前、ゼレンゴンのトダ・スリー前哨基地が襲撃された事によって、それまで比較的友好関係にあったゼレンゴンとロミュラスカは一気に冷戦状態に入ったわ。そして、当時トダ・スリーの有力者だった、今は亡きゲォーフの父親がロミュラスカと内通していたのが原因だとされて、ゲォーフはその責任を取って帝国から追放の身となった…ああ、何て説明臭いのかしら、私の台詞!」
延々と長台詞の独り言を呟くケーラー。

ユイは再び画面に向かう。
「何故アクセス出来なくなっているの?」

「その関連情報は封印されています。」

「封印? 誰によって?」

「ガイナラス大佐のコマンドです。」

ユイは画面を見直した。
「ガイナラス? それじゃ奴が…コンピュータ、彼の個人情報ファイルを検索。」

「…検索完了。」

現われた画面の文をケーラーは食い入るように見る。読み進めるうちにどんどん厳しい表情になっていくユイ。
「何よ、これ…っていうかまずこれを封印しろよ…」

そこにはガイナラスが襲撃直前までトダ3基地に居た事や、彼が秘密結社LASに所属していたと疑われている事などが書かれている。

「秘密結社LAS! あの、以前ロミュラスカが連邦と友好関係にあるというデマをゼレンゴン内に流したロミュラスカ人、ヤマモト・ゲポックが現在主催していると言われるゼレンゴンとロミュラスカの結び付いた秘密組織に、ガイナラスが加わっていた? つまり、私のゲオちゃんに裏切り者の汚名を着せたのも、今回の一連の犯行も、全て…」

「良くそこまで嗅ぎ付けたな。」
ケーラーが見ると、ドアからフェイザーを持ったガイナラスが入って来た。ユイ・ケーラーは、「よく見るとガイナラスとゲォーフって似てるかも。」と少し思った。

ふっ

「君には失望した。」ガイナラスはニヤリ、と笑った。


ドクター・リツコは両手を白衣のポケットに突っ込んだまま、アゴで死亡しているゼレンゴン戦士を指した。

「彼の頭に、放屁爆弾が仕込まれていたの。検識結果、間違いないわ。」

「で、これはどっちの側の兵士だったんだ?」

「ええ、」ドクターが話そうとした時、医療室に通信が入った。

「ゲォーフより医療室。ケーラーが射たれた。至急治療スタッフを頼む!」ドクターは顔をあげた。
「アリサ!」

「はい!」
 
 

ケーラーの部屋では、さっき保育室からやって来たばかりのゲォーフとアレクツァンフェンがどんどん声を弱くしていくケーラーの手を取って見つめていた。

「も…う、いや…ね。せっ…かく、ひさ…しぶりに、出たと思った…ら、こん…な…あつかい、なんですもの…ね。」
苦しそうに微笑む。

「ゆ、ユイぃ! 死んじゃやだよう、ユイい!」
「見苦しいぞ。」
肩を揺らすゲォーフを冷静な目のアレクツァンフェン(4歳児)が止めた。

「しっかりしろ、ユイぃ! 結局1回しか出来なかったじゃないか! 責任取るから!」

ケーラーは胸を射たれ、血の水溜まりがもう床にじわじわと出来つつあった。
「ふ…もう…遅い、わ…」

「うう、ぐず、ぐじゅ、ぐしゅ」(前回に引き続き)泣きじゃくるゲォーフ。とにかく汚ない。

「ガイナ…ラス、が…」

驚いて、苦しげなユイの顔を見るゲォーフ、それまで無表情だったアレクツァンフェンも目を見開く。

ユイは一層苦しそうにしながら、切れ切れの言葉を呟く。
「それ…から…いままで、ずっとかく…してきた…けど、実は、わたし…と、レイタちゃん…や、リナー…ちゃん…は…」ばた。
 

ユイ・ケーラーは目を閉じた。
 

「ゆ、ユイぃいいいい!!!!(最期に変な謎残すなぁああ!!)」

ゲォーフは、ゼレンゴン式の「悲しみの雄叫び」を上げた。

「らおぉぉぉぉうううう!!」
 
 
アレクツァンフェンは静かにゲォーフに尋ねた。
「お前は、人をこの手で殺した事があるか。」

「…いや…」

「ならよく見ておけ、ゼレンゴン戦士として。…これが死んだ者の顔だ。目を開いて、しっかりと瞼に焼き付けろ。これが、媽媽の…死に様だ。」

アレクツァンフェンは、ユイ・ケーラーの髪をといて、彼女の顔をゲォーフの方に向けさせた。

「(ゼレンゴン的には素晴らしい態度だけど…こんな奴残して死ぬなよ、ユイ…)」引くゲォーフ。
 

「ユイさんは?」ドクター・リツコ、ナース・ハルナ他医療スタッフがケーラーの部屋に駆け付けて来た。

「酷いわね…」呟きながらリツコは努めて冷静に生命反応を調べる。
 
 
ドクターはゲォーフを向き、首を振った。
 

様子を見ていたアレクツァンフェンは、ケーラーの部屋から無言で立ち去っていた。慌てて彼女の後を追うゲォーフ。


アレクツァンフェンはゲォーフの部屋に飾ってある大きなブーメランのような形の刀を取り、立ち去ろうとした。

「…通せ。」

アレクツァンフェンの前にゲォーフが立ちはだかっていた。

「通さん。その剣は、私が持つ。」アレクツァンフェンからゼレンゴンの刀を取り返し、連邦士官の証しであるナース井手印のバッジを捨てる。

「お前に、出来るか?」
見上げながら聞くアレクツァンフェン(保育園児)。

「で、出来る。も、もも問題無い。」

「腑甲斐無い。…付いて行ってやる。」

「あ、ありがと…」

「ふん。」シンジ似の幼女は、少し顔を赤くしたようだった。



 
メット、ムーニー、白衣の3人(それぞれ先生の付けたニックネームだと思って欲しい。)は、ユイ・ケーラーの遺体が運ばれて行くのを確認した。

「一体誰がこんな事を…ゲォーフ。…あれ? ゲオちゃんは何処だ?」
周囲を見回す3人。

ムーニー(副長)はコンピュータに聞く。
「ゲォーフの現在位置は?」

「ゲォーフ大佐は、現在この船には乗艦していません。」

顔を見合わせるメットとムーニー。

「最後はどの地点に居た?」

「転送室です。」

「転送室? 何処へ行ったんだ?」

「その質問にはプロテクトが」「副長権限でプロテクトを解除する。ゲォーフは何処に転送された?」

「ゼレンゴン船オネアミスです。」

ピカードはライカーを見て頷いた。

「ライカーよりブリッジ。レイタ、至急保安部の者を連れて転送室に来てくれ。」

「了解。」通信を介して答える声。
 

ライカー、レイタ他保安スタッフはフェイザーを手に持ちガイナラスの船、オネアミスに転送されて行った。


ガイナラスは自室にやって来たゲォーフを見て、首を傾げた。

「お前は、誰だ?」

「ゲォーフだ。」

「ああ、そう言えばそんな裏切り者も昔居たなあ…」ギロリ、とゲォーフを睨む。
「ここはお前が居られる場所では無い。一刻も早くこの船から退去しろ。」

「う、ううううるさい!」何となく声が震えているように聞こえるが、彼は刀を持ったままガイナラスに近付いた。当然ガードマン達に押さえられる。
「私は、私は、ユイの仇を取りにやって来た!」

軽蔑した顔を見せていたガイナラスはゲォーフの叫びにニヤリ、と笑った。
「ふっ。お前はとことん早死にしたいようだな。良かろう。お前がそこまで言うのなら、相手してやる。差しで勝負だ。…おい。」

当惑するガード達をアゴで追い払う。ドアが締まり、部屋は2人きりになった。
 

「世界を、革命する力を!」刀を高く掲げ、何だかさっぱり分からない文句を唱えるゲォーフ。

無言で刀を持ち、構えるガイナラス。しばしの沈黙。
 

「はっ!」均衡はゲォーフから破られた。(金鉱は南アフリカで掘り当てた。)

「はっ、ふっ、はっ」両手で持つゼレンゴン式の刀を交わす2人。
どこからか流れ出すジュリアス・シーザーの合唱曲。ACコブラ風の車が周りを回る。
 

「はっ、はあっ、はっ!」ガイナラスが振り降ろす刀をゲォーフが横に持った刀で受ける、力比べだ。

しかし、元々がもやしっ子のゲォーフはじりじりと追い詰められていた。

「はあっ、残念だなゲォーフ、お前はアズーカ様の素晴らしさが分からないまま、死ぬ運命にあるのだな。」

「はあっ、アズーカ様?」

「知らんのか? 現ロミュラスカ帝国の宰相だよ。」

「何だと!」目の前にまで刀が押しつけられたゲォーフ。

「すまんな、これも帝国の平和の」その時ゲォーフの服の中から素手が飛び出した。
「ぐぉおおおおお!!!」

猛烈な打撃を喰らうガイナラス。そう、ゲォーフの服の中に、アレクツァンフェンが(ゲォーフの体臭に我慢しながら)隠れていたのだ!

だだだだだだだだだだ。がすがすがすがすがすがす。

「ごぼぼぼぼぼぼぼ!!! って何かすっげえ卑怯! ぼぐうっ!」
 
 

「媽媽仕込みの裏拳だ。悪く思わないでくれ。」

ようやく到着した(役立たずの)ライカーとレイタ他は、既に泡を吹き、LCLに溶けるかのように肉塊と化したガイナラスに語りかけるアレクツァンフェンと、それを見て恐怖におののいているゲォーフを目撃したのだった。


航星日誌、(イントロでやってなかったけど)補足。ゼレンゴンの後継者選定の儀式は全て終了し、新宰相にはジブロンが選ばれた。3隻のゼレンゴン船は去り、ゼレンゴン帝国の「委員会」からも今回の決定を承認する意向が伝えられた。しかしながら、今回の件でゲォーフのとった行動は連邦士官としての規律を大幅に逸していると言わざるをえない物であった。

「ゲォーフ。この船、USSエバンゲリオンには様々な星から様々な種族の乗員が乗っている。ゴールデンタマリンも乗っている。マイマイモドキにオポッサム、ウミウシにスローロリスも乗っている。しかし皆、連邦艦隊の一員である事に変わりはない。今回の君のとった行動は、艦隊規約から大幅にずれている物だ。「何をやるのも勝手だけだけど、人に迷惑をかけるのはノンノン。ましてやズルっこはダメっちゅ。」という一文を忘れてもらっては困る。」

艦長はフルフェイスヘルメットで、何を言っているのか聞き取りが非常に困難だ。

「…問題無い(意訳:すいませんでした)。」

「まあ、今後こういう事の無いようにな。今度こういう事があったら、君には艦隊を辞めてもらう事になるかもしれん。…下がってよろしい。」

「ああ。」

フルフェイスはゲォーフが下がった事を確認すると、碇レイぬいぐるみのみがたくさん詰まったクレーンゲームの隣にある大画面モニタで、「ガラスの仮面:安達祐実傑作選」の再生を始めた。
 
 

ゲォーフは自室に戻った。部屋にはアレクツァンフェンがいて、骨付きの肉をうまそうに食べていた。

「おう、来たか。まあ座ってお前も食べろ。」

「…私の…部屋…」

「堅い事を言うな。ここのガーグも、悪くはないぞ。」

「あ、ああ…ああ、アレクツァンフェン、これからの事だが…」

「お前に指し図される覚えはない。」骨まで噛み砕いて食べてしまったらしいアレクツァンフェン(長ったらしいが、うまく略せない名前だ)は、すっと立ち上がった。

「へ。」

「媽媽から聞いたが、お前は地球人の養父母に育てられたそうだな。」

「あ、ああ…地球のロシアという地方の、ロクブンコ夫妻だ。」4歳児にどこまでもビクビクしているヒゲオヤジ。

「これからそこに世話になる。」

「そうか………え、ええええ!!」

「私にも地球人の血が4分の1、流れている。しかし私には地球人の気持ちが分からない。媽媽は…いつも地球人の感情とゼレンゴン人の感情の間で、苦しんでいた。彼女の気持ちが知りたくなった。」

アレクツァンフェンは何やら緑色のトルコ石のような物を握り締めていた。

頭を抱えるゲォーフ。
「(いかん、こんなのがあのヨボヨボ老夫妻のもとに行ったら…)」
ニヤリ。
「(いや、面白いではないか。シナリオ通りだ。)そうか。」

アレクツァンフェンは刺すような目でゲォーフを見上げた(彼女なりに微笑んでいるのだ)。
「一つ、聞いても良いか。」

「何だ。」

アレクツァンフェンは自分の右手をしばらく握ったり開いたりして、手の中の2つの緑の石を見つめた。
「お前は、私のBabaか?」

がーん。
「(一々gif作るな!)」

気を取り直して、「ああ、私がお前の父親だよ。」
ゲォーフは、彼女を暖かく抱きしめ

ほぐっ

られなかった。

「(な、なんで腹を思いっきりグーで殴られなければならないのだ…)」

「そうか。お前がBabaか。発音? Babaは、Babaだ。」一人悦に入る4歳児。
 

アレクツァンフェンはゲォーフの部屋から出て行こうとした。
「ああ、それから。」

「何だ。」

「女装癖は、ほどほどにしておけ。」アレクツァンフェンは立ち去った。

がーん。
「(思いっきりバレてた!)うわわあああーー(わー)わー

またもや駆けだして行くゲォーフ。
 
 

  
・・私、綺麗?・・  


恥ずかしがらないで  
こっちを向いて  

プリッとしたヒップ  
くびれたウエスト  
はちきれんばかりのバスト  

これが本当の私  

普段の地味な男は、仮の姿でしかないのん  

ずっとさなぎになっていた私は、ナウ蝶となって舞い上がる  

ボディコン師匠、頭にウサ耳  
あなたのハートは私のものよン  

うぷっぴどぅ。私、綺麗?  
   
   



   
   

テーマ詩「桃色吐息」。  
 

 
ゲォーフの部屋には、丸文字で詩の書かれたノートがころがっていた。

つづく
 


次回に続くよどこまでも
 
ver.-1.00 1997-09/29公開
 
感想・質問・誤字情報・オーリシャイン・スーパールアー・マセマティックス等は こちらまで! 

次回予告

目覚めたレイは悪夢のはずなのに自分の履いたままの靴下が泥で汚れている事に唖然とし、震えたまま部屋を出る事が出来ない。登校して来た生徒が救急車を呼び、ミサトは病院に運ばれる。彼女が高熱で意識がはっきりせず、危険な状態であると聞いた体育教師の加持は、恋人の病状を心配しながらも怪我の理由に疑問を抱く。彼は朝連の準備に体育館の中に入り、そして。次回「真夏の子供達」第15話、「Play dead, or Forbidden doors have now passed」。御期待下さい。

本当の次回予告:レイタちゃんサーガ第2作です。(^^)
 



 
後書きコーナー

「とうとう夏休みも終了、私もダメ人間なりに忙しくて、更新ペースめっちゃ落ちてます。申し訳ない。」m(__)m
「あら、結構腰が低いんですねえ。」
「(ここんとこ珍しい人ばっか…)べ、別にそんな事もないんですけど。」
ごすっ
「ふぐぅ! い、いきなりユイさん何を!!」
「あらぁ、だってこの私がたった登場2回目で死んでしまうなんて、許せる訳がありませんわあ。おほほほほほ。」
「さすがアレクツァンフェンの媽媽…(ガク)」1秒後作者死亡。(死因eggに載ってる女の顔。)
 
「あら、結構呆気無かったわねぇ。シンちゃんでも呼ぼうかしら…(ポッ)」
「呼んだかね。」
「あら、冬月教授。いえ、今は…副司令ですわね。」
「そうだな。でも、もう今は肩書き等無関係だな。何故なら私達は皆LCLに漂っているのだから! ユイ君とも一つに…」
「い、いやだ副司令(ポッ)、そんな事、あーれー(←帯がくるくるほどける)」
「そこまでだ冬月。」
「い、碇!」
「あなた!」
「人の女を勝手に「帯くるくる」しやがって! 冬月、お前には失望した。」
「すまん…」
「(オロオロ)」
「全くお前という奴は、お前という奴は、この私が居ながら!」
はしっ
「コウちゃん!」
「ゲンちゃん!」
がーん
「(逃げちゃ駄目よ、逃げちゃ駄目よ、逃げちゃ駄目? 逃げるわよ!)うわーあああん、シンちゃぁああああん」

以下次回


 フラン研さんの『新エヴァントレック 』第十四話、公開です!
 

 気が付いていた方も多いと思いますが、
 私ずっと『エヴァントレック』だと間違っていたんです・・

 す、すみませんでした m(__)m
 

 日韓戦に負けたのも、
 腹を下したのも、
 白髪が出ていたのも、
 額が広くなっていくのも、
 アクセスポイントの電話番号がいきなり変わって
 10/26までテレホがない状態になったのも、

 これの罰だったんだ〜〜     (^^;

 

 

 

 今回の作品内リンク・・・キッツイ作品があるところですよね (;;)

 題名に[アスカ]があって、
 第一話がラブっぽいので読み出したら・・・

 ノックアウトされましたよ(^^;

 顎への一発なんて生やさしい物ではなくて、
 1Rから喰らい続けたボディブローで最終回に悶死って感じ(^^;;;

 やっとダメージが抜けかけた今になって、
 意外なところで再開してしまったよ〜 (;;)

 これも罰?!


 
 

 きっと私のお嫁さんは「実写版YAWARA」なんでしょうね (;;)
 

 でも大丈夫!
 相手に眼鏡をかけさせるから(^^)

 私は眼鏡でポイント3倍増できる便利な男(爆)

 さあ、訪問者の皆さん。
 私を不幸のずんどこに落とす(笑)フラン研さんに感想メールを送りましょう!


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