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フユツキ・コウゾウ・ピカード艦長は最近多忙だった。

マギデッキの(碇)レイが少しでも自分が離れていると寂しがるのだ。艦長とはいえ、どうしても2人でストロベリーパフェを食べたり茶室で抹茶を入れたりする時間が長くなる。しかし彼は、シンジリラの事を忘れてしまった訳ではなかった。艦長はフェミニストなので、一度付き合い始めた女性を無下に忘れる事など出来るはずもないのだ。だからレイが眠っている間は彼女と付き合う事になる。シンジリラは、まだるっこしいデートよりまずバディを求める情熱的な女性だったので、彼女のプログラムの後は艦長は大変な疲労を覚えた。更に碇シンジという純真な少年も、フユツキの来るのを待ち望むホログラムの一つであった。これらの抜き差しならない事情により、艦長はなかなか暇を作る事が出来なかったのだ。

今日は何とか「自分の時間」を持てたらしいピカードは、艦長室で久々にエヴァ小説を読む事にした。

「めぞんEVA」は、最近とみに毎日の更新量が異常な事で有名なサイトだった。今や「日刊」すら抜きその量、量、量とにかく量はすさまじい物があった。質は…………(作者はここではコメント出来ない。出来る立場でもない。)

「これだけの天文学的分量の小説を全部読んだ人間など果たしてこの世に居るのだろうか…少なくとも、私はごめんだがな。」
約1名そんな人もいたらしい。

艦長はここでも最近お気に入りのキャラクターがいた。某602号室の鈴原ユミである。(ところでエヴァ小説のオリキャラでユミという女性は一体何人いるのだろう。)おませさんで負けん気が強く、でも可愛い子供という、ある意味メルナー人なキャラだ。

「しかし、あの背伸びをした態度が何ともかぁいいーのだ! それでいてきっちり兄思い。出来た妹ではないか!」
にんまりしながらクリックする艦長。

ふと手が滑って、603号室をクリックしてしまった(お約束である)。思わず顔をしかめる艦長。

しかしここでピカードはある事を思いだした。
「そういえばここは、前に冬月副指令と碇シンジのラブストーリーが有ったではないか! あれは一体どうなったのだ。」

懲りない艦長は「リクエストに応え堂々公開! キーホルダー第七話・LASバージョン」という行をクリックした。
 
 

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第七話・LASバージョン(本編六話からの分岐です。)

彼女はテーブルに置きっぱなしのバッグからむきだしのキーホルダーを取り出して、苦笑した。

「全く、何でこんな物買ったんだか。」

覗き込む彼女の瞳は青かった。


あたしは自分がいかに軽薄な浮気者かつくづく思い知らされた。何で、こんな250円のキーホルダー一つで心が揺れるんだろう。何で後悔してるんだろう。何よ、あたしにとって、森さんとの日々は250円の価値すら無かったっていうの。
 
 
分かってたのよ。

シンジとデートなんてしたら、こんな気持ちになっちゃう事位、分かってたのよ。だからあれ程嫌だ、って言ったのに。

何でこんな辛い気持ちにあたしをさせるのよ、バカシンジ…

あたしはあんたを振ったのよ。それも自分勝手な理由で。その後だって学校をやめて、勝手に家から出てって、新しい男を作って… 
そんな薄情な、勝手な、素直じゃない女なのに、何でそれなのに、あんたはそんなに優しい笑顔をあたしにくれるのよ。
 
 
会わなきゃ。

何故だか良く分からないけど、あたしはシンジに会わなければいけない感じがした。そうよ、会って文句を言わなきゃ。 
こんな気持ちにさせた責任を取ってもらわないと。…このままじゃ、研究にも支障が出るわ。  

あたしは家を出た。終電の2つ前、新松本行き快速リニアに飛び乗る。
「待っててね、シンジ。」  


玄関のドアを開けたシンジは自分の目を疑った。
「ど、どうしたの? こんな夜遅くに…こっちに、来てたんだ。」

「まあ、たまにはシンジにも会いたいと思ってさ。」
「そうや。久々に日本に帰って来たんや、どうせならシンジにも会おうちゅう話になって、盛り上がってな。」

僕は何年かぶりにトウジとケンスケの顔を見た。2人とも、心なしか大人っぽくなっているかもしれない。…気のせいかもしれない。ただ、それ以前に2人ともかなり酔っ払っていた。

「迷惑…やったかのう?」トウジは奥の部屋の方を目で指す。
「ううん、全然。構わないよ。さあ上がって。」2人はえっちらおっちら支えあいながら廊下を進む。

「シンジの部屋はどっちだ?」ケンスケが聞く。
「そこの右のドアだけど。」
「上がらしてもらうで。」
「あ…そ、そうする?」
シンジはてっきり彼等がキッチンの方に来るものだと思っていたので、少しほっとする。  

「いや、シンジ、おまえの部屋の方が落ち着くんだよ。」
トウジを支えながら、ケンスケが答えた。  

「そう…ちょっと待ってて、つまみでも用意するから。」


あたしは自分の目を疑った。
「あ、あんた…生きてたの?」

多分あたしは幽霊を見るような目つきで彼女の事を見ていたと思う。
「ええ。でも私はあなたの知っている私ではないと思う。」

「な、何よ、それ。」

「分からない。でも私が目覚めた所はここから遠く離れた場所。私は多分、予備のスペアだったのだと思う。」
シンジの家に行こうとするあたしが夜の道で遭遇したのは、何処から見てもファーストそのものだった。

「スペア?」

「ええ。ここで話している時間は無いわ。碇君の家に行きましょ。」
「え、ええ…」


僕はトウジ・ケンスケに気付かれないようにそうっとマヤさんの部屋に入った。

「こんな時間来るなんて誰! 非常識ねーっ。」
全裸でシーツにくるまったマヤさんは真っ赤になって怒っている。

僕は「しーっ」と指を口の前に置いた。  
「今隣の部屋にいるんですよ。トウジとケンスケが。」

「え、鈴原君と相田君が…」
冷静な大人の表情に戻るマヤさん。

「大分酔っ払ってたみたいですけど…」

「じゃあ問題無いわ! ねぇー、シンジ君もう1回!」
「もう1回って、もう今日5回もしてるじゃないですか!」
「だって欲しい物は欲しいんだもん!」自分がくるまっていたシーツをがばっと降ろして、また僕のズボンのベルトを外す。  
「でも、隣に人が…」  
「ウフ。そういうシュチュエーションの方が燃えるでしょ。」そう言うと僕の分身を愛しそうに口に入れた。 


アスカは、さっそく使用している青いキーホルダーから、元我が家の鍵を選んで、ドアを開けた。  

「ただいま、シンジ。」

レイも無言で続く。

廊下とキッチンの電気が点いているが、反応が無い。

「あれ、シンジ?」
アスカはシンジの部屋のドアを開けた。そこでは
 
 
「ああん、トウジぃ、そこは駄目だぁ。」
「何言うとんねん、ここがお前の一番感じ易い所や。」
「ああん、も、漏れちゃう」
「あかん、行く時は一緒やで。」
全裸のむさい男子高校生2人がお互いを「マッサージ」していた。

「「「あ。」」」

「き、き、きゃああーーーー!!!」アスカはキッチンに逃げるように駆け込んで行った。

「し、し、し、シンジあれは一体何なの? あんなおぞましい物体初めて見たわ。」言いながらシンジを探すアスカ。
「シンジ? マヤ?」

「2号機パイロット。」
「何よファースト?」
キッチンでは、レイがマヤの部屋のドアを開けて見ていた。

そこには今だ新たな来客に気付かない男女が全裸でもぞもぞと「いやぁああああああああああああああああああーーーーーーーっっっっ!!!!!!」

アスカは泣きながら自分の部屋に駆け込んだ。
 
 
何ヵ月か使用していなかったベッドに倒れ込み、枕に泣き伏せるアスカ。
「し、シンジが…マヤと…そんな………ふ、ふあああああんん。」

アスカは涙が止まらなかった。
 
 
 
その時冷たい手が彼女のうなじを触れた。びくっとするアスカ。
「な、何よ…ハン、笑いたいならいくらでも笑いなさいよ。」

レイはアスカの涙をゆっくりとふき取った。そして、何か言いたげに、アスカの手を自分の胸に当てる。

「何? 気持ち悪いわね…あたし、そんな趣味無いわよ。」
「アスカ…」 
レイは自分の発した言葉が面白いかのように、噛みしめるように話す。
「アスカ、あなた、心が痛がっている。どうしようもなく寂しくて、誰かを求めてる。」
「分かった風な事言わないでよ!」
「私と…同じ…」
「え?…ちょ、ちょっと」

レイはアスカに抱き付き、2人はベッドに倒れた。アスカは自分の中に溢れ出て来る暖かいようなくすぐったいような感情に戸惑いを隠しきれなかった。

「やめてよ。あ、あたし、そんなのじゃないからね。」
「何が。」アスカの服を脱がせながら聞くレイ。
頬を赤らめたアスカは、横を向く。

「…痛く、しないでよ。」
「…」レイは、返答の代わりににっこりと微笑んだ。

2人は、大人のキスを始めていた。

つづく


注:LAS (1)ラブラブ・相田・鈴原 (2)ラブラブ・綾波・惣流
 

皆さん忘れているかもしれないが、ちなみにこの小説はエヴァントレックである。


―宇宙。そこは最後のボランティア(意味不明)。これは、宇宙戦艦エバンゲリオン号が、新世代のクルーの下に、24世紀において概ね任務を続行し、未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求めるふりをしつつ、人類未踏の宇宙に、アバウトに航海したりしなかったりする小話である―

EvanTrek The Next Generation
新エヴァントレック

Yesterday's Ebangelion
第十話「亡霊戦艦エバンゲリオン参号機」                          


「LASとは、あれほどマニアックな組み合わせだったのだろうか…特に前者…」艦長は疑問を抱きつつ、ブリッジに出て来た。

現在USSエバンゲリオンは特に航行上の問題無し。通常スピードで航行中だ。

その時目の前にワームホールらしき物が現われた。

「あれは一体何だ。」レイタに聞くリョウジ・ライカー副長。
副長、ただの地球人のはずだが、どうやって放りだされた宇宙から生還したのだろうか。少なくとも作者は知らない。

「分からないわ。」

「全力で分析してくれ。」

「はい。」

スクリーンにはその場所が望遠で映し出されている。空間の裂け目のような、いかにもワームホール的な物体に見える。

その時裂け目から、何かの飛行物体が現われた。

艦長は保安主任のゲォーフに聞いた。

「何かがホールから現われたな。」

「や、止めてくれ! 挽き肉責めはもう止めてくれーっ!」
薬が切れたらしくいきなり譫言を発するライカー、クルーも慣れたもので平然としている。

計器を調べるゲォーフ。
「良く分からない。…いや、これは宇宙船だ。」


「宇宙船? マナ、その宇宙船の識別番号が分かるか。」

保安主任のマナ・ヤーは、信じられないという顔を押さえる事が出来なかった。
「NCC-4126-Cです。」思わず声が震える。

フユツキ・コウゾウ・ピカードも信じられない様子だ。ゆっくりと、聞き直した。
「今、何と言った。」

マナは顔を上げた。
「NCC-4126-C。USSエバンゲリオン参号機です。」

「そんな馬鹿な…(牛肉100%だなんて…)」呟くライカー。

「参号機は、22年前に大破した。そしてこのエバンゲリオン四号機が就航した。…あの裂け目は時空を越えるトンネルなのか?…」
クルー達には言わずもがなの事を、読者の為に説明する親切な艦長。

マナは緊張した面持ちでフユツキに伝える。
「音声の救難信号が入っています。」

「分かった。再生してくれ給え。」

苦しそうな声が再生された。
「こちらUSSエバンゲリオン参号機艦長、ユミ・ウンリュウ・ギャレット。我が艦はゼレンゴン前哨基地を救援中にロミュラスカの攻撃を受けました。至急救援求む。繰り返します、こちら…」
しばらく同じ内容が繰り返される。

「確かに船は大破しているわ。」
スキャンで調べるレイタ。

「それでは生存者は…しかし何故だ? エバンゲリオン参号機がゼレンゴン基地を救援していた?」
艦長は皆の疑問を代弁する。ユミの言葉は彼等の歴史の記憶とは食い違っていたのだ。

「何故我々が敵のゼレンゴンを…まさか我々の記憶に間違いが有ったのか。」レイタの方を向くリョウジ。

「いえ、コンピュータの記録にも、参号機が基地を救援したという事実はないわ。」

深いため息をもらす艦長。
「いずれにしても、全力で生存者を捜索。もしいたら救助し、必要な者は医療室へ転送し給え。」

「はい。」
レイタとシンジ・クラッシャーは参号機のスキャンを始めた。

艦長は付け足した。
「しかし、今が何時であるか、ここが何処であるか、については、取り敢えずは彼等に話さないでおいたほうがよかろう。いいな。」



 
参号機の状況は惨胆たる物だった。デッキやエンジンルームは大破、スキャンの結果発見・救助された乗員は125名。およびハヌマンラングール8頭、ウミウシ17匹、ゴールデンライオンタマリン2頭、マイマイ7匹、マイマイモドキ3匹であった。

エバンゲリオン四号機のクルー達は生存者を救助し、治療。一方大破した船の修理にも取り掛かっていた。

「どうだ、リペアの進行状況は順調か?」
リョウジ・ライカー副長がブリッジに来ているマコト・ラ=フォージに尋ねる。

「ええ。艦のシステムが現在の物ほど複雑ではないので、特に問題無く進んでいます。問題は…」

「やはり生存者達か。」

「ええ。目の前に自分達の船より大きな連邦の船があれば、不思議に思うなと言う方が難しいですからね。」
はきはき喋るマコト。エヴァトレの綾波レイことマコトは、今日も理由は不明だが包帯でぐるぐる巻きだ。

副長はマコトをじろじろ見ながら言った。
「しかしその怪我…一体どうしたんだ?」

「いや…ミサトさんとハヌマンラングールが引っ掻きあいの喧嘩しちゃって…僕もとばっちりをくったんですよ。」
どこまでも嬉しそうに話すラ=フォージ。
 
 
 
艦長はその頃ブリッジ前方で(戦時中にもかかわらず)マナと盛り上がっていた。

「どれだけ解釈が増えようと、真実は一つだ。伊吹マヤが(浦和)レッズな事は明確になったのだよ。」

「いいえ。映画もワンオブメニーの未来の可能性に過ぎません。少なくともマヤがショタであるかどうか…この一点に限って言えば、誰が何と言おうとイエスですわ。いや、あるいは」とここで目を逸らすマナ。
「あるいは、彼女はその両方を体得した「仙人」か…」

「ス○リッツの変な書道を、楽しみにしている読者はいるのだろうか…」呟く艦長。

「すいませんが…」

「て事は、マヤ×レイや、マヤ×アスカもありありなのねっ!」目がらんらんと輝きだすマナ・ヤー。
 
 
 
「あの、艦長。」
マナと艦長のヨタ話(もしくはお笑いパート)を遮ったのは、バーから出向いて来たマユミ・ガイナンだった。

「マユミ君、ここは…」

「事態が緊急を要します。艦長室、よろしいですか。」

「分かった。」

「マユミさん、折角の私達のわいわいチャット\(^v^)/を…」不満を漏らすマナ。

「…」
しかしマユミは、マナを一瞥するとピカードと艦長室に向かった。
 
 
「何よ、エル・サターン人(木星じゃないわよ)だか何だかしらないけどさ。私の方が、推奨スペックは上なんだから。ちょっとショタマヤで専用室貰ったからって、良い気になってんじゃないわよ。」
マユミの自分への一瞥には、冷たさと憐憫が混じっているようにマナには見えた。それがマナには、たまらなく不愉快だった。
 
    



 
「結論から言います。艦長、現在私達のいる時系列は間違っています。そして、参号機はここにいるべきではないのです。」
マユミは眼鏡をすり上げて言った。

SD碇レイぬいぐるみを撫でながら、フユツキ艦長は笑った。
「何を言っているのかね。」

「冗談ではありません。私達の世界は間違っている、と言っているのです。」マユミは有無を言わせない面持ちで続ける。
「ワームホール…本当は時空トンネルだった訳ですが、あそこから時間を越えてエバンゲリオン参号機が現われた。それを私達が確認した瞬間、私達のいる世界が違う世界にスリップしてしまったのです。」

「パラレル・ワールドか。」

「その通りです。彼等が私達と出会う事によって、彼等にとっての未来、つまり私達の現在が変質したのです。」

「しかし…」艦長は相変わらずぬいぐるみに御執心だ。頬擦りすらしている。
「にわかには信じられんな。いくらマユミ君の言う事とはいえ…」

マユミはただでさえ怖めの顔を更にしかめた。
「ええ…そのうえ、私の言葉を裏付けるような物質的証拠は何一つありません。世界そのものが違う訳ですから。」

「…それでは、確認の仕様がないな。」
ぬいぐるみのAボタンを押す艦長。「ぱたぱたぱた」レイの足が動く。

「そうかもしれません。しかし、私は600年生きて来ました。その中で、私は艦長に嘘はついた事はありません。」

「うむ…」
Bボタンを押す。「お子様じゃないもん。お子様じゃないもん。お子様じゃないもん。」
可愛い声をリピートするぬいぐるみ。

「もう一度言います。この世界は間違っています。参号機はここにいてはいけません。」
マユミは艦長室を後にした。
 

深刻な顔で、一人考えに沈む艦長。

Cボタンを押してみよう。「セクスアリスのシンジ君とは別人なの。セクスアリスのシンジ君とは別人なの。セクスアリスのシンジ君とは別人なの。」
ぬいぐるみの声は何故か言い訳がましくなっていた。


遊び相手のいなくなったマナは真面目に参号機の修理作業に取り掛かっていた。

彼女は、このブリッジにいる人間としては唯一の参号機生存者に話し掛けた。
「ええっと、ムサシ君だったっけ?」

色黒で精悍な顔つきの少年がこちらを向く。
「そう。ムサシ・リー・カスティロ。日本育ちの中国系イタリア人。ドイツ国籍だけどね。」

「そ、そうなの…」やや愛想笑いのマナ。

「(つくづく、アニメのキャラってどうしてこう無理からに無国籍になるのかしら…でも、悪い男じゃないわね。)」

ニコニコしながら見ているマナに気付いたのか、彼はやや頬を紅潮させた。
「あの、次は何をすれば良い?」

「あ、うん。そうね、ブラスターの修復の方は、進んでるのかしら。」

「プログラムを、チェックしてみる。」
パネルを触れる際にお互いの手が触れる。

「あっ」

「ど、どうぞ。」操作を譲るジェスチャーをするマナ。しかしムサシから離れたりはしない。むしろさっきからぴったりとくっついたままだ。

「そ、それじゃ。」コンピュータから警告音が鳴った。「あれ?」

「違うわ。そこはこっちのプログラム。」身をひねりムサシの前のパネルを押すマナ。

「あ、ありがとう。」

「うん。」
はた目には抱き合っているように見える。
 

その頃シンジ・クラッシャーは後方のラブコメを見ながら物思いに沈んでいた。

「(僕って今回…出番無いの?)」
作者も毎回モーフ仮面で引っ張る訳には行かないのだ。



 
部屋を沈痛な空気が包む。

「では、殆どの乗員が亡くなってしまったわけですね。」
奇跡的に助かっていた参号機艦長、ユミ・ウンリュウ・ギャレットは案内された客室でうなだれた。

テーブルには腹持ちの良い未来のお菓子、岩井のレーズンが置かれている。

「お悔みの言葉もありません。…ただ、それでも艦長が生き残っておられたのは不幸中の幸いでした。」
向かいのソファに前かがみに腰掛けたピカード。

「幸いなのかしら…(助かったって、凍結されちゃったらね…)」
ユミは自嘲気味に微笑んだ。

参号機艦長はピカードの方に向き直った。
「聞いてよろしいかしら。」

ギャレットはピカードをにっこり微笑んで見つめた。ただ見つめた。見つめた。見つめた。

「な、なな何でしょう?」
冷たい汗を流すピカード。

「色々事情はあるのでしょうが、艦長だった私にも教えて下さらないのですか? ここが一体どこなのか。皆さんが惑星連邦で、しかも私達より明らかに進んだ技術を持ってらっしゃる…疑問に思うなと言う方が無理ですわ。」

ギャレットはピカードを思いやり、無理に口を割らせようとはしなかった。

彼女はピカードをにっこり微笑んで見つめた。ただ見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つめた。見つ
「わ、分かりました。お話しましょう。」

「分かって下さると思ってましたわ(はあと)。」
 
 
 
「ここは、USSエバンゲリオンの艦内です。」

「エバンゲリオン? そんな馬鹿な事が…まさか」

「そう、私はフユツキ・コウゾウ・ピカード、ここエバンゲリオン四号機の艦長です。」

「四号機…」

「あなた達の船が通ったのは時空トンネルだったのです。…現在は、宇宙暦43653。参号機が遭難してから22年後の世界です。」

ギャレットは言葉を失った。

「…そんな…でも、そうすると辻褄が合う…」

「ええ。ただ、私達も知らなかった事がありました。参号機がゼレンゴン基地を救援しようとしていたという事は、私達の記憶にも記録にも無かったのです。」
艦長は説明的な口調の語気を強めた。
 
 
「参号機はゼレンゴン前哨基地と戦闘し、参号機は消滅、基地も壊滅した。それが現在まで20年に渡る、我々とゼレンゴンとの戦争の発端であったはずなのです。私達の歴史では。」
 
 
 
ユミは顔を上げた。
「交戦中なのですか! 惑星連邦が? ゼレンゴンと?」

「ええ。そして残念ながら、現在私達はかなり苦戦しています。ゼレンゴンとロミュラスカが協力しており、連邦は孤立した状態なのです。」
艦長は静かに答えた。それがこの世界での現実だったのだ。

「(もう、いつからこの小説はドラ大になったのよ、ややこしい…)」
頭を抱えるユミ。

「もし、それが本当なら…つまり、ゼレンゴン基地を救援に向かっていた我が参号機が時空トンネルで未来に出てしまった。だからあなた方の過去、私達の現在?において参号機は消滅。一方ロミュラスカは基地をまんまと破壊し、連邦を基地破壊の犯人に仕立て上げた…」

ユミは拳をきつく握った。
「やっぱりロミュラスカねっ! あいつらはいつもいつも!(凍結だって多分奴ら一味の仕業なんだわ!)」
参号機艦長は、ロミュラスカにただならぬ敵意があるようだった。


艦のクルー達、及びユミ・ウンリュウ・ギャレット、ムサシ・リー・カスティロ、マユミ・ガイナンは会議室に集まっていた。

マユミは眼鏡を光らせながら言った。

「皆さんは自覚していないでしょうが、今まで説明した通りこの世界は間違っているのです。はっきり言いましょう。本来の私達の世界では、連邦とゼレンゴンは戦争などしていないのです。」

ざわめくクルー達。

ライカーは尋ねた。
「そして参号機はここにいてはいけない…それでは、どうしろと言うのだ。」

「はい。参号機に22年前に戻ってもらい、ゼレンゴン基地を救援に行ってもらいます。そこで基地を救助する事が出来れば、連邦とゼレンゴンの戦争は起きません。」

「しかし…危険過ぎるな。修理したとはいえ参号機は万全ではない。何よりクルーが少なすぎる。」

「他に道はありません。」
フユツキに答えるマユミ。

マナが心配そうに聞いた。
「でも、今の状態の参号機では、向こうでロミュラスカに破壊される可能性の方が高いのでしょう?」

答えたのはレイタだった。
「そうよ。でも仮に参号機が破壊されても、残骸があるなら、ゼレンゴンは救助に向かった連邦を勇敢な戦士だと評価するはず。つまり戦争は起こさずにすむわ。」

「それって!」声を上げるヤー。

「分かりました。」ギャレットが威厳を持って行った。
「戻りましょう。私達が守るべき物は正しい未来です。」

「分かって頂いて、有難うございます。」マユミは、会議室に来て初めて微笑んだ。
 
会議は散会した。

「「(少し台詞を均等に割り付けなさいよ/てよ…)」」納得行ってないミサト<ク>とシンジ。
 
 
 
クルー達は皆、各自の持ち場に戻って行った。マナ・ヤーは最後に出て行こうとするマユミ・ガイナンを呼び止めた。
「マユミさん、ちょっと。」

マユミは、自分が呼ばれる事が分かっていたかのように向き直り、会議室の椅子に座り直した。
「はい。」

「マユミさん、何か私の事知ってるの?」

返答をせず、上目使いで小首を傾げるマユミ。

「マユミさん、ずっと私の事、変な目で見てる。私だってそれ位分かるわ。あなた明らかに私の事、避けようとしてる。」

「知りたいんですか? 本当の事を?」

マナは無言で頷いた。

マユミ・ガイナンは深呼吸をした。
「データファイルも今度出たんです。所詮パソゲーはコンシューマーには勝てないって事です。」思わず内心の思いを声に出すマユミ。

「何? 今何て言ったの?」マナは爆発した。
「悪かったわね映画とギャップ有り過ぎて! ああそうよ、私のモデルは26話のレイちゃんよ! でも良いでしょ、可愛いんだから! 言っとくけど私はあなたみたいなマニア受けしかしないような眼鏡女とは一緒にされたくないのよ! こっちは本編スタッフが作ってるのよ! あなたの所とは格が違うんだからね!」
 
 
 
2人は沈黙した。
「それはどうでもいいのよ。」「そんな事はどうでもいいんです。」

マナは再び聞いた。
「本当の事って?」

マユミははっきりと言った。
「惑星連邦とゼレンゴンが戦争をしていない、本来の未来では、あなたは既にある星で殉職しているはずなのです。」

「…嘘…」


ピカードは参号機のクルー達―と言ってもユミとムサシだけだが―に別れを告げていた。
「それでは幸運をお祈りします。マナ、転送室へお連れしてくれ。」
 

彼達はたった2人で、修復された参号機に乗り込んだ。

ピカード艦長は時空トンネルに向かって発進して行く参号機をスクリーンから見ていた。

「これでうまく行けばいいのですが…」静脈に何か注射をしながら、リョウジ・ライカーが話し掛ける。

「そうだな。この世界が間違いである事を祈るよ。現在の我々の戦局は、かなり不利に立たされているからな。」
 
 
 
その時マナが叫んだ。
「前方に敵艦を2機確認!」

「何だと! 防御スクリーンを張れ、全艦攻撃体制!」

艦長が言い終わらない内に、遮蔽装置から姿を現わしたゼレンゴン艦から攻撃が加わる。

「防御スクリーンの25パーセントが破損。」報告するレイタ。

「シンジ君、光子魚雷を発射!」

「光子魚雷、発射。」

「良し!」呟くライカー。魚雷は1機に命中した。粉々に飛び散る緑のゼレンゴン艦。
 

しかしもう1艦は2つのエバンゲリオンに容赦無い攻撃を加える。参号機に魚雷が命中したらしく、爆発が起きているのが四号機のスクリーンからも見える。警報の鳴り続く四号機ブリッジ。
 
 
 
「…艦長。」
マナがピカードに声をかける。

「何だね。」

「私も参号機に乗せて下さい。」 
 
「…死に行くようなものだぞ。」

「ええ。でもマユミさんから本当の事を聞きました。本来の未来では、私は既に死んでいるはずなんだそうです。…私は、自分が惑星連邦の為に死ぬのなら本望です。私の力で数秒でも参号機をもたせられれば、トンネルまでもちこたえれば本来の未来に戻るんです。…艦長、行かせて下さい。」

「…そうか。」
艦長はそれ以上何も言わず、どこからか秘蔵の「マヤ×アスカ×レイ3P」フィギュアを取り出し、マナに手渡した。

「有難うございます。」

マナは参号機に転送された。
 
 
 
ムサシはブリッジに転送されて来たマナを見て驚いた。

「ま、マナ…」

先の爆発で、既にユミ艦長は死亡していた。

「また、一緒になれたわね。」マナは陰の無い笑みを見せた。
「状況は?」

「あ、ああ。エンジンがやられた。もう2分と持たない。」

「まずいわね…何とか時空トンネルの裂け目まで辿り着いてくれないと…」

そう言っている間にも残ったゼレンゴン艦1機の圧倒的な攻撃は続いていた。
 
 
 
ゼレンゴンの戦艦は、ロミュラスカの技術協力もあって、惑星連邦の戦艦のそれを大幅に上回る戦力を持っていた。エバンゲリオン四号機は参号機を守るどころか、もはや自艦を守る事すら怪しくなっていた。

四号機のブリッジを大きな衝撃が襲う。
「敵艦の光子魚雷命中! 防御スクリーン損壊、エンジン損傷、推定死者1700名その他略!」悲鳴に近い声を上げるシンジ。

更に衝撃。いくつかのコンピュータは火を噴き、ブリッジの電気が落ち、非常照明に切り替わる。

「があっ」爆発が直撃し、シンジは椅子から転げ落ちる。血を吐いて動かないシンジ。彼は死亡した。

「まだか!」レイタに聞く艦長。

「ええ、まだ100秒以上かかるわ、それより前に敵艦に撃破される可能性の」またもや衝撃がエバンゲリオンを襲う。吹き飛ばされ、活動を停止するレイタ。後ろで何の台詞も無いまま死亡するミサト<ク>。 もはやブリッジは崩壊寸前だ。

「艦長、ミサト魚雷です!」進言するライカー。

「そうか、その手が有ったか!」

ミサト魚雷とはグミ状生物のミサト・トロイをぼよーんとぶつける事によって対象の移動速度を速める装置である。

「ミサト魚雷、発射!」砲門から参号機に向かって発射されて行くゼラチン生命体。
「きゅぅううううーーーーーーーーーーーーーーーーーー、ぐぴっ。

参号機はミサトに弾かれ時空トンネルへのスピードを上げた。
 
 
しかしまたもや四号機に命中する敵艦の魚雷。ついに真っ暗になるブリッジ。副長席のパネルが爆発、リョウジ・ライカーも吹き飛ばされる。動かないライカー。彼は死亡した。
 

クルーで生き残っているのは、もはや艦長只一人。彼はあきらめたかのように立ち上がった。
 

その時参号機が時空トンネルを通過した。



 
 
 
 
USSエバンゲリオン四号機は、通常航行を行なっていた。

フユツキ艦長はゲォーフに尋ねた。
「何か問題はあるかね。」

「問題無い。全ては予定通りに進んでいる。」

「そうか。」

レイタは自分の席のパネルで「上海」をプレイ中。シンジはまた、ドクターの医療室で何か実験されているらしい。
 
 
マユミ・ガイナンから艦長に通信が入った。
「艦長。」

「マユミ君か? 珍しいな。」

「そちらで何か…変わった事はありましたか?」

「別に無いが…どうかしたのかね。」

「…いえ、無ければ構いません。失礼しました。」
通信は切れた。
 
 
「どうしたのだ? …まあ良い。それでは、私は「きょうのわんこ」傑作選でも見るとするか。」
自分の編集した目覚ま○テレビのベスト版を見に艦長室に戻るフユツキ。

「キ、キ、キールの大爆笑♪」コンピュータを操作しながら、鼻歌を歌っているゲォーフ。ゲォーフがこのゼレンゴンの英雄を讃える歌(まるしー807号室)を歌う時は機嫌の良い証拠である。
 
 
 
 
 
その頃、マユミはバーでくつろぐマコトに聞いていた。
「それで、マナ・ヤー大尉って、どういう方だったのですか?」

「鋼鉄の発売以前だから、口調が変だったかな…」
マコトは思い出話を始めていた。

つづく


次回に続くよどこまでも
 
ver.-1.00 1997-08/06公開
 
感想・質問・誤字情報・魔術召喚・愛の交換日記等は こちらまで! 

次回予告

2人きりの体育館。意を決したシンジはアスカを抱こうとするが、寸前でアスカに拒否される。喧嘩になる2人。追いかけるシンジに拒絶の言葉を投げるアスカ、怒るシンジは彼女にも手を上げる。アスカは帰ろうとするが外は台風。長い沈黙。やがて2人はぽつりぽつりと、自分達の秘めた過去を打ち明け始めるのだった。同時刻、ミサトは行方不明の2人を懸命に捜索していた。次回「真夏の子供達」 第11話、「真夏の夜の夢」。御期待下さい。

本当の次回予告:珍しい本編キャラが出ます。
 



 
後書きコーナー

「最近凄いわね、この小説のサイズ。」
「どうしてなんでしょうね…どんどん肥大化しちゃって。ちゃんと読んだら、本編見るより時間がかかりそう。」(^^;
「つまりあなたの要約力が無いと言う事よ。無様ね。」
「す、すいません…」
「どうせ、引き書き用のカンニング道具にでも頼っているんでしょう。」
「そういう訳じゃないですけど…あ、でも最近ようやくエピソードの細かい資料が手に入るようになって…ここだけの話、第3話なんてガイドブックの2・3行の粗筋から想像して、見た事の無いエピソードを書いてましたからね。今はちゃんとストーリーを把握してから…あ」
「やっぱり引き書きしていたのね。」
「あ、いや、あの、ええと、違うんです。その…参考にしつつ、上手い具合にミックスしていこう、と。ははは…」
「それだから、キーホルダーに人気が移る訳ね。少しでも人気が有ればの話ですけどね。」
「グサ。で、でも、今日(97/8/4)めぞん見たら何と、私の名前黄色くなってましたよ。」
「まさか! …つまり、とうとう連打したのね。マヤから聞いたわ。カウンターの為には最低の尊厳すら捨てるという事ね、あなたは。」
「違います! そんな事してません! あ、投票して下さった読者の方、本当に有難うございました。これからも頑張りますのでよろしくお願いします!」m(__)m
「馬鹿馬鹿しいわ、選挙戦じゃあるまいし。まあ、何かの異常としか考えられないわね。大方疲れている大家が色を付け間違えたのでしょう。明日になれば白くなっているわ。」
「…リアリティのある事言わないで下さい…」
「ところで、違う部屋の作家から聞いたけど、今度私の派閥を組むらしいわね。」
「そう! そうなんですリツコ様!! 自称ドイチュの乱暴女や、使徒まがいの化け物女に、何時までもめぞんを荒らされていてはいけないじゃないですか! 前々回(だったよね)で一言書いたら何と御本人のまっこうさんからメール頂きまして。私をリツコ様の下僕に推薦して下さるって言われるじゃありませんか! 感涙ですぅ。そんな訳でその内807号室に私、出るかも知れませんー。ぶいっ」
「下僕? 私の?」(--;
「はいっ!」(^^)
「それこそア(ピー)じゃあるまいし、あまり要らないわね。それよりむしろ被験者になってくれた方が…(ニヤリ)」
「ひ、被験者…ですか?」(^^;
「ええ、それ位は、下僕なら何でも無いわよね?」
付けている仮面を取るリツコ。
「ひぃ! ひい、ひいいいぃぃっ」
プチ、パチ、やっておしまい!」
「みぎゃーっ、ぐーっ、ぐーっ」52病後作者死亡。(死因バブル崩壊。)

以下次回


 フラン研さんの『エヴァントレック』第十話、公開です。
 

 LASだ!
 LAS?
 ・・・LAS・・・・ (;;)

 ありがとうフラン研さん・・・リクエストに応えてくれて・・・(^^;
 それも2つも(^^)

 この一つ目はまたのボディーブローです。
 こそっとある二つ目はジョーにクリーンヒットと言うところでしょうか。
 

 今回、コメントも二つなので短く切り上げます(^^;
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 何だかんだで人気投票を気にしているフラン研さんに声援を!




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