高級住宅街の一角。見晴らしの良い丘の上に、その切妻屋根の邸宅がある。
少女は元気良くその家のインターホンを押す。
「おはようございます。おばさま。」
「ああ、おはよう、アスカちゃん。今開けるわ。」
インターホンに付いている小画面から主婦らしき女性が微笑みかける。インターホンにさりげなく画面が付いているところに、この家の経済的地位が伺える。
間もなくドアが開き、先程インターホンにも出た、20代といってもおかしくない若々しい女性が現われた。碇ユイである。
「もう、お隣様とはいえ、アスカちゃんも毎朝御苦労さまね。」
「いいんです。シンジは私じゃないと、何時までたっても起きませんから。」
元気良く返答を返すのは惣流・アスカ・ラングレー、栗色のロングヘアーを赤い髪飾りで止めた美少女である。その白く滑らかな肌は白磁のように美しく、同時に全体の印象は生き生きとして快活だ。彼女はドイツと日本のクオーターであり、しばらくの間ドイツに滞在もしていた。日本語とドイツ語と英語を自由に操り、既に大学卒業並の学力があるとすら噂される才媛でもある。
ユイはいたずらっぽく微笑んだ。
「そうね。うちのシンジなんかでよかったら、何時でも引き取って頂戴。アスカちゃんなら、シンジも喜んでついていくでしょうから。」
アスカの白い肌は、一転してゆでだこのようになった。
「な、な、何て事おっしゃるんですかおばさま!」
「あら、私達の本心を言ったまでよ。…それとも、シンジじゃやっぱり駄目だったかしら?」
不安気の演技をするユイ。内心は笑いを押さえるのに苦労している。
「そ、そんな、私は、まだ…」口篭もるアスカ。
「あ、あ、あの、起こしに、行って来ます。」声を裏返しつつ、振りきるように階段をあがった。
「やれやれ。」キッチンに戻るユイは、クスクス笑いながら呟いた。
「シンジも、アスカちゃんも、もう少し素直だったらねえ。」
その頃この家のひとりっ子、碇シンジは夢の中に居た。
「むう。そんなところ触るなよ、あすかぁ…」
この時点でアスカがまだ部屋に来ていなかったのは、一応ラッキーであったと言えるだろう。
しかしすぐに、このシンジの自室に、どたどたとやかましい足音が鳴り響いて来た。
「シンジ、もう朝よ、起きなさい。」まだ顔の火照りが冷めないアスカが、いつもよりはかなり優しめに声をかける。
「むう…こら、やめろよ…くすぐったい…」
シンジはアスカの襲来など全く気付かず、夢の中で誰かと戯れている。思わず見惚れるアスカ。
さっき、おばさまが引き取ってって言ったのは、やっぱりそういう意味なのかしら…そういう意味、にしかとれないわよね…でも、誰がこんな奴と…そ、そりゃあ、毎日起こしに来てやってるけど、別にこれはあくまで幼馴染だからであって…
がば
「アスカ、実は僕は、君の事を愛しているんだ!」
「そ、そんな、シンジがそう思っていただなんて…」
「僕じゃ駄目なのかい?」
「そ、そういう訳じゃないけど、心の準備が…」
「準備? そんな物は無くたっていいさ! 僕の愛を受け止めてくれ!」
ぶっちゅぅー。
「むぐ、ど、どうしたのシンジ?」
「今までずっと隠していたけど、僕は明けても暮れても君の事しか考える事が出来ないんだ!
さあ、一緒に駆け落ちしよう!」
「「逃○」ね、シンジ!」
「そうさ! それから「キーホルダー」も、これからはハッピー展開だ! もうアスカを悲しませたりなんかしないよ!」
「そうだったの!?」
シンジのベッド際で妄想にふけり、一人いやよいやよをしているアスカ。その時レム睡眠のシンジがまた呟いた。
「むにゃ…全く、アスカは乱暴なんだから…」
アスカの顔から笑みが消えた。
「な、な、な。…何言ってんのよこのバカシンジ!」エルボドロップをかますアスカ。シンジの寝言を実証する。
「ぅぐえぇえ! うう、うう」
「ようやくお目覚めね、バカシンジ。」
「はぁ、何だアスカかぁ…」
また夢の世界に戻ろうとするシンジ。毎日鍛えられているだけあり、これ位では動じない。
「何だとは何よ! それが毎朝こうやって起こしに来てやってる幼馴染に捧げる感謝の言葉?」
この時点でまだキックをかましていないのはアスカのせめてもの優しさであろう。
「ああ、うん、ありがと。だからもう少し、寝かせて…」
「何甘ったれた事言ってんのよ!」
シーツを無理矢理はぎ取るアスカ。その下には、男子中学生の自己主張する身体があった。
瞬時凍り付き、すぐに沸騰するアスカ。
「アアアァア!! エッチバカ痴漢変態! 信じらんない!」
パチン
シンジの顔に季節外れの紅葉が付いた。
「しょうがないだろ! 朝なんだから!」
広い家中に響き渡る2人の声。
ユイは台所で洗い物をしながら、独りごちた。
「全く、シンジもしょうがない子ねえ。起こしに来てくれるアスカちゃんにも、感謝しなくちゃね。」
「ああ。」
新聞を広げたまま、無感動に答えるのはこの家の当主、碇ゲンドウ。総合商社、ネルフコーポレーションを1代で築き上げた創業者であり、現在も辣腕を振るう社長である。その荒っぽいビジネス故、敵も多いと言われているが、家庭ではただの無口な親父であった。
「あなたも! 新聞ばっかり読んでないで、早く支度を済ませて下さい。」
「ああ。」
「もう。いい年して、シンジと同じ、子供なんですから。」
「君の準備は良いのか。」
「ええいつでも。会議に遅れて冬月先生からお小言言われるのは私なんですよ。」
碇ユイはもちろんゲンドウの妻であり、シンジの母であった。彼女は若くして、日本最高峰の学府、第三東京大学の形而上生物学の助教授を務めていた。冬月は彼女の恩師であり同僚だ。
「君はもてるからな。」相変わらず新聞を読み耽り、皮肉な調子で答えるゲンドウ。
「もう、馬鹿な事言ってないで、早く着替えて下さい。」
「ああ、分かっているよ、ユイ。」
一方シンジの部屋からはまたかしましい声が聞こえる。
「ほら、さっさとしなさい。」
「分かってるよ。ホントうるさいんだから、アスカは。」
「何ですって!」
パチン
玄関に立つ2人。
「それじゃ、おばさま、いってきます。」
「いってきます…」
本日2枚目の紅葉を散らしたシンジが、アスカに押し出されるように家を出た。
「いってらっしゃい。…ほらあなたも、何時まで読んでるんですか!」
ここまで妻に睨まれている姿をライバル社の経営者達が見たら仰天するであろう。しかしゲンドウは不器用ながらにこの家庭を愛していたし、それはユイも同じであった。実は、彼女も本気で怒る事はなかなか出来ないのだ。
「ああ、分かっているよ、ユイ。」
結局、彼が本当に着替えを始めるのはこれから更に5分後の事であった。
汗ばむほどの陽気の通学路。新首都計画に基づきゆったりと作られたその並木道の歩道を、元気に駆けて行く2人の中学生の影があった。
「今日も、ここに転校生が来るんだってね。」
走りながら器用に話すシンジ。彼等は毎日のように走っているのでこれ位では息切れもしないようである。
「まあね。この街も新しい首都として、来年遷都される事が決まってるんですもの。どんどん人は増えるわよ。」
答えるアスカ。
走っている通り道にも、建設中のビルやマンションが見え隠れしている。正に未来への希望に溢れた街、それが第3新東京市である。そもそも東京都の過剰な人工密集、それに伴なう各種の経済的非効率を考慮して、遷都案が検討されだしたのが2000年。長野県松本市に「第2新東京市」が建設される事となった。しかしその後、日本経済の順調な発展、日本の国際的地位の向上による国際機関本部の日本への集中などに伴ない、そこもやがて手狭となり、それまで学園研究都市として開発の進んでいた神奈川県箱根市に再遷都、「第3新東京市」として新たな日本の首都となる事が決定していた。ちなみに建築業界ではこの2度目の遷都による特需を「セカンド・インパクト」と呼んでいるらしい。
もちろんシンジやアスカがそこまで思いをはせる事は無かった。それどころか全く別の事を考えているようだ。
「…そうだね。どんな娘だろう? 可愛い娘だったら良いな。」
自分で言った言葉で何だか楽しそうになるシンジ。一方その言葉を聞いてアスカは不愉快だった。
何よ。可愛い娘が来たらどうだっていうのよ。あんたみたいなうじうじした性格の奴なんて、誰から見ても願い下げに決まってるじゃん。
それなら何故彼女自身は不機嫌になっているのか、謎なのだが、本人はそんな矛盾には全く気付いていない。
一方違う道では、この付近では見慣れない制服を来た女子がトーストをくわえながら必死に走っていた。
ショートカットで色白、全体的にアスカ並に快活な印象だ。
「はあ、初日から遅刻なんて、かなりヤバいって感じだよねぇ。」
物をくわえながらにしてはかなり器用に独り言を喋る。
シンジとアスカは結構なスピードで走っていた。今日はやや遅れ気味らしい。体内時計で分かるのか、腕時計を見たのか、ペースを上げる2人。
シンジは無我夢中で走る。今日の先生は遅れると何を言われるか分からないのだ。
その時。
ごっちーん。
「うあ!」「うわあっ」
道の角で、違う道から走って来たその少女とシンジは見事に衝突してしまったのであった。
飛んで行くトースト。待ち構えたかのように啄む雀達。
「あいたたたた。」「あ、いったー。」
一瞬視界が暗くなり、やがて意識の戻ったシンジ、良く見ると目の前に白い物体が…
がばっ
その少女はあわてて自分のパンツをスカートで隠した。
「はは、ごめんね、マジで急いでたんだ、ホント、ごめんね!」手を振りながら矢のように走り去って行った。
惚けたようにそれを見るシンジ。アスカはその頃爆発寸前だった。
ば、バカシンジが、何他の女なんか見入ってるのよ! 変態じゃないの! 普段からそばにいるこんな優雅なレディーはたいして見もしないくせに!
シンジにどうして欲しいのかはやっぱり自覚していないアスカであった。
ふうふう言いながらようやくクラスに付く2人。
「おう、今日も碇夫妻は重役出勤やな。」到着早々の2人をからかうのはシンジの悪友、鈴原トウジ。常に黒いジャージを着用する変わり者である。
「「何言ってんだ(の)よ!」」きれいにユニゾンで反応するシンジとアスカ。
「そうだよ。言ってる事がおかしいぞ、トウジ。」トウジに耳打ちするのはこれまたシンジと腐れ縁の相田ケンスケ。若干のそばかすと眼鏡が特徴だ。
「あら、相田にしてはまともな事言うじゃない。」
意外そうなアスカの横でケンスケがもっともらしくトウジに言う。
「シンジと惣流は重役じゃない、社長夫妻だろ…がふっ」
アスカに腹を膝蹴りされたケンスケ。
既に朝のホームルームの時間になっているはずなのだが、シンジ達のクラス、2-Aの担任教師はまだ来る気配が無い。それまでは生徒達は自由に言葉を交わしている。
トウジはシンジに話し掛ける。
「それにしても、シンジ、なんや頭腫れとるで。」
彼は幼い頃に大阪から第三東京にやって来た。その為関西弁とも標準語ともつかない喋り方をする。
「ああ。これは、さっき人とぶつかっちゃって。」自分のおでこを触って確かめるシンジ。
「そうか。気いつけや。まあ惣流に何時でも引っ掻き回されとるシンジやったら、そうそうな事で怪我したりはせえへんやろけどな。」
アスカに聞こえていないかどうか思わず確認するシンジ。
「う、うん。」
「そやけど、キツいおっさんなんかにぶつかってみい。シャレならん事なるで。」
「うん、気を付けるよ。でも、今日はぶつかったのは、中学生の女の子だったから。」
突然身を乗り出すトウジ。
「ほんまか! 女に触れたんか!」
「ふ、触れたって…まあ、ぶつかって、それで僕もその人も尻餅を付いて…」
「ほんまか! 待てよ…ぶつかった、っちゅう事は、向こうもしばらく無防備やったはずやな。」
「え? まあ、そうかもしれないけど?」
「それで見たんか? その女のパンツ?」
要は聞きたかった事はこれである。
「別に見たって訳じゃ…ちらっとだけ。」
トウジは天地がひっくり返ったかのように大袈裟に驚いてみせた。
「かぁーっ! 朝っぱらから羨ましいやっちゃのう。あいたたたた」おさげ髪の女性がトウジの耳を捻り上げる。
「な、何すんねん委員長!」
「鈴原、馬鹿な事言ってないで、花瓶の水取り替えて。週番でしょ!」
洞木ヒカリ、2-Aの学級委員長。ちなみに去年も学級委員長。恐らく来年も。本当は優しい女子なのだが、その真面目さ故に煙たがられる事も多い。ちなみに彼女は何故かトウジにだけは態度を厳しくしがちである。
「もう、うるさいやっちゃなあ。」
「何ですって!」
「尻にしかれるタイプだな、トウジって。」他人の事は鋭く分析できるシンジ。
誰に言うでもないその一言を聞いたアスカは思わず呆れて洩らす。
「あんたもでしょ。」
すかさず反論するシンジ。
「何で僕が尻に敷かれるタイプなんだよ!」
「本当の事を言ったまででしょ。」
「どうして!」
「見たまんまじゃない!」
「碇君の事を悪く言うのは止めて。」
それまで窓の外を眺めていた少女がアスカの方を向いて言った。
綾波レイ。ここ壱中の男子の支持をアスカと2分する美少女。彼女はアルピノ、つまり色素欠落症の為、アスカ以上に肌が白く、髪は青白い。おとなしく穏やかな性格で多くの事を口にしないが、内面には強い芯を持つ女子だった。彼女の両親は現在ニューヨークに在住しているが、彼等が日本随一の学園都市での教育を望んだため、彼女はここ第三東京の祖父の家に住んでいるのであった。ちなみにその祖父とは、碇ユイの同僚、冬月教授だ。
アスカはレイが喋ると輪をかけて不機嫌になった。
「悪くなんか言ってないわ。本当の事を言ってるだけよ。」
「いいえ。碇君、困っているわ。」
「困ってなんかないわよ。そうでしょ、シンジ。」
「そう? 私には、困っているように見える。」
視線で火花を散らす2人。答えを求めるかのようにシンジの方を向いた。
原因は(シンジには)皆目分からないのだが、レイとアスカはシンジの事になると途端に意固地になるのだ。彼は今、確かに困りつつあった。こういう一触即発の状況下でどう返答するか。そのうち本当に胃に穴があくかも、と思うシンジ14才。
「あ、ええと…僕は、2人が喧嘩するのが一番困るかな。」
「何言ってんのよ、偉そうに! あんたの事で喧嘩なんかしてないわよ!」
ふんっ、と首を向け、腕組みをして自分の席に戻るアスカ。
一方レイはうなだれてシンジに歩み寄る。
「碇君…私、碇君を困らせてしまったの?」
「あ、いや、そう言う訳でもないんだけど…」
その様子を見て鼻息がまたもや荒くなって行くアスカ。
何よあの女! シンジの遠縁の親戚だかなんだか知らないけど、慣れ慣れし過ぎるのよ! 裏で何考えてるか分かりゃしないのに。ちょっと私が引くとすぐしゃしゃり出てさ。シンジもシンジよ! 鼻の下伸ばしちゃって、いやらしいわ!
アスカが再噴火、する前に、教室に戻っていたトウジが叫んだ。
「ミサト先生や!」
エンジン音のダミーノイズとタイヤのスリップ音が今日も鳴り響く。
2-Aのクラス担任、国語教師の葛城ミサト先生の遅めの出勤である。
自慢の愛車、アルピーヌルノーA310spイギリス仕様から、笑顔を振りまきつつ校舎に入るミサト先生。彼女はその若々しい容貌と、教師というよりは友人のような打ち解けた態度で、生徒達の人気を得ていた。
ミサトに見入る男子生徒達。もちろんシンジ・トウジ・ケンスケの、アスカ名付ける所の3バカトリオもその中に含まれている。
「はぁ、やっぱミサト先生、ええなあ。」
「「3バカトリオが、馬鹿みたい。」」声を揃えるアスカとヒカリ。
一方レイはシンジとの会話に満足したのか、いつもの無関心な表情で本を読んでいる。
2・3分後、ホームルーム終了ギリギリの時間になってミサトはようやく教室にやって来た。
がらりと戸を開け、いつもにも増して楽しそうに話し始めた。
「喜べ男子! 今日は噂の転校生を紹介する。」
「へえ、このクラスだったんだ。」呟くシンジ。
「どないなおなごが来るんやろ…」期待に胸を膨らませるトウジ。
無言で眼鏡を光らせるケンスケ。
転校生が現われた。
男子はざわめき立った。
にっこり営業スマイルで微笑む美少女である。その可愛らしさはアスカ・レイに匹敵する。
「霧島マナです。よろしく。」
「あっ!」不用心にも大声を出してしまったシンジ。
マナももちろんシンジの事は覚えていた。
「あーっ! あなた今日のパンツ覗き魔!」
「幼馴染」の弁護に無意識に立ち上がるアスカ。
「ちょっと、言い掛かりは止めてよ! あんたが勝手にシンジにパンツ見せたんじゃない!」
「あなたこそ何、この子とどういう関係な訳? 付き合ってんの、2人。」
アスカ、引き。
「ち、違うわよ、ただの幼馴染よ! …っさいわねー。」
ヒカリが静めようと立ち上がった。
「もう、皆、授業中よ! 静かにしてください!」
「あらー、いいじゃない。私も興味あるわ。続けて頂戴。」心底楽しそうに言うミサト。目が笑っている。
委員長の一喝で一瞬静まりかけたクラスは元の騒々しさに逆戻りしてしまった。このクラスの学級委員長は報われない立場である。
マナは意地悪そうな目付きで、湯気の出ているアスカと何故かもじもじしているシンジを見比べる。
「そっかあ。ただの幼馴染か。じゃあそこの、パンツ覗き魔、じゃなかった、シンジ君?は、私が貰っても良いって事よね。」
まだ名前もはっきり覚えていない段階で、爆弾発言をかますマナ。騒然となるクラス。
既にクラスのほぼ全ての男子は壱中の美女を総取りする「悪魔」に憎悪の目を向けている。一方かなりの女子達は強力かつ大胆な新ライバル出現に嫉妬や焦りの視線をあびせている。
「な、何言ってんの、アンタ。」アスカは相手のペースに押されている。
「そのままの意味よ。」固まっているシンジにウインクをするマナ。
「霧島さん。」刺すような冷たい声がその時窓際から届いた。
「碇君は誰の物でもないわ。碇君に失礼な事を言わないで。」レイである。
「へーえ、シンジ君ってもてるんだねえ。あなたは? あなたはいかり…シンジ君とどういう関係なのかな?」
「私は碇君の親戚。でも、それだけではないわ。私はいつも碇君の事を思っているし、碇君の言う事なら何でも従うわ。」
平然と宣うレイ。
この時点でクラスの収拾を付けるのは事実上不可能となった。
蜂の巣を突いたような状態のクラスと、その中心の3人の女子の険悪な雰囲気に、そろそろ怖いものを感じて来たミサト。
「あ、あはは…洞木さん、彼女の席、適当に決めといてくれる? じゃ、授業までに静かにしててねー。」
そそくさと帰ってしまった。先生が逃げた事に気付きもしない大部分のクラスメイト、一人呆然とする委員長。
「な、何よ、それ!」およそ何処から反駁すれば良いのか検討も付かない、という気持ちが出た聞き方をするアスカ。
レイの発言にマナもさすがにやや凍っているようだ。
「何故なら、私がそうしたいから。」答えにならない答えを言うレイ。
「あ、綾波? そういうのは、あんまり良くないと思うよ…」なんとか凍結状態から立ち直ったシンジがレイに忠告する。
「碇君は、それでは良くないと思うの?」
「う、うん。」
「…なら、碇君の言う通りにする。」
レイ以外のクラス全員が内心で突っ込む。
それじゃ解決になってないだろ!
こちらもようやく凍結状態から解凍されたマナが、やや引きながら笑った。
「そうかあ。じゃああなたは、私のライバルって訳ね。」
「待ちなさいよ!」再び立ち上がったアスカ嬢。
どうもここの作者ってアヤナミストっぽいのよねえ。他の連載見てるとさあ。でもあたしは、この場面で負ける訳にはいかないのよ!
「あれ、どうしたのかな? 「幼馴染」の彼女。」その一語を強調して聞くマナ。
「私はアスカって名前がちゃんとあるの。幼馴染…だけど、それとこれとは話が別よ!
…そう! 私は幼馴染として、シンジに悪い虫が付かないように見守る義務があるのよ!」
勝手な事を言いだすアスカ。既に(いや、かなり前から)シンジの自由意志は認められていない。
「ふうん。シンジ君は、「幼馴染」のアスカさんがそうやってシンジ君を縛り付けるのは、良いと思ってるのかな?」
「よ、良くないよ。それにアスカ、霧島さんを虫扱いするなんて失礼だよ。」
レイも虫でしょっ! ううう、やっぱりここの作者はあたしに冷たいんだわっ!!
「もう、知らないわよ、バカっ!」
いたたまれなくなったアスカは教室を飛び出して行ってしまった。
もはやクラスの男子達のシンジへの目は憎悪から呆れに変わっているように見える。
「アスカ!」叫ぶヒカリ、その時1時間目の先生が来てしまった。
さすがにマナも申し訳無さそうにしている。ヒカリはマナに言いたい事は山のようにあったのだが、何とか押さえてシンジやアスカからはやや離れた席に座らせた。
わざわざ遠回りしてシンジに近付くマナ。
「ごめんね、シンジ君。アスカさんを怒らせちゃって。」
「あ、ううん、今のは悪かったのはアスカだから。マナさんが謝る事じゃないよ。」
シンジの返答にかなりの疑問を持つクラスメイト達。
もはや第3新東京市立第壱中学校に、シンジを目とする台風が吹き荒れるであろう事は誰の目にも明らかであった。
学園EVA基本通りの入り。
幼なじみのアスカがシンジを起こして膨張に赤くなる・・・
イエーイLASだぜい♪
・
・
・
これを書いているのがフラン研さんと言う辺りに不気味なものを感じています(^^;
何処かでキッツイ落としがあるのかと、ドキドキしながら読んでいました(笑)
後ろから車に当てられ連れ去られて、
着ていたジャージは公衆トイレ・・・なんて展開になるんじゃないかとか・・・
危ないネタだ(^^;
後書きを読んでちょっと安心・・・かな?
さあ、訪問者の皆さん。
様々な方法で私を惑わすフラン研さんに感想のメールを!(笑)
間違ってこの部屋に入った人へのフェイルセーフ・・・?