TOP 】 / 【 めぞん 】 / [峯マサヤ]の部屋に戻る/ NEXT


機動妖精
接触編・PART8

S-43 強羅絶対防衛線

「こりゃ、ひどいな…」

『サキエル』から降りたカジは、まだ煙幕の晴れない戦場を、特殊スコープで眺めていた。
そしてカジは、懐から携帯端末を取り出し、母艦へと回線を繋ぐ。

「こちら、カジ。インディペンデンスデイ応答求む」

「はい、こちら、インディペンデンスデイです。どうしましたか?」

少女の様な女性士官が返事をし、ニッコリ微笑む。

「ああ、ユミ君。艦長とDr.アカギを頼む」

「了解、艦長とDr.アカギに回線を接続します」

そう、女性士官が言うと画面上に、


Please Wait(もちろん、銀河標準語)


と、表示される。

2,3秒後、画面に、ふたつのウィンドウが開き、

「はい、ミサトよ。どしたの?カジ」

「リツコよ。あら、リョーちゃん」

と、ミサトとリツコの姿が現れる。

「そっちでも見てると思うが、今、作戦区域に着いた」

「ええ、そっちは、どう?カジ」

「ああ、地球の景色ってのもいいもんだな、カツラギ。ってそんな話じゃないんだ………。なぁ、リッちゃん?」

「なぁに、リョーちゃん?」

リツコは、少し、甘えたような声で返事をする。

「あれ、酷すぎないか?あれじゃ、銀河評議会で問題になるぞ」

「そうかしら?効率重視で戦闘プログラム組んだのよ」

さも、心外だと、いった風なリツコ。

「あれじゃ、原住民の連中がかわいそうだ」

「あら、敵の心配?」

リツコは、意外だ。と言った風な表情で聞く。

「というか、我が身に降りかかったら、嫌だなと思っただけさ」

少し、おどけるような仕草で答えるカジ。

「そうね。じゃ、次の時には戦闘プログラムをマイルドにしとくわ」

「そう頼むよ。じゃ、俺は、諜報活動を開始する」

「がんばってね。カジ」

ミサトは、優しい微笑みをつくる。

「ああ、カツラギも俺がいなくても頑張れよ」

その微笑みに答える様にカジも微笑む。

「ええ。じゃあね、カジ」

「ああ」

「じゃあね、リョーちゃん」

「ああ、リッちゃん」

画面のウインドウがふたつ、ほぼ同時に消える。

「さて、職探しでもするか」

職探し。

カジの諜報活動は、ここから始まる。

理由は、原住民になじむことで、諜報活動をしやすくするためだ。

「近くに街があったな?」

S-44 エヴァコクピット

「シンジ、レーダー見て!」

アスカは、離陸した直後で手が離せないのでシンジに頼む。

「うん。あ、故障かな?レーダーに映らない場所があるよ」

シンジは、レーダーの表示を見て、首をかしげる。

『故障じゃないぞ!それは、敵兵器が出した煙幕でレーダーが撹乱されてるだけだ』

と言う声と共にいきなり、コクピットの大画面一杯にゲンドウが現れる。

「おっおじさまっ!そ、それは、わわわわかりましたから、ががが画面一杯に出てこないで下さい!!まま前が見えないぃっ!!」

最後の方は、悲鳴交じりのアスカ。

「お、すまん」

ゲンドウの表示は、小さなウィンドウ表示になってはじっこに表示される。

「ということで、レーダーに映ってないところが敵のいる場所だ。そっちへ向かえ」

「了解よ、おじさまっ」

S-45 国道1号線を徒歩中のカジ

「なんだありゃ?」

カジは、自分の頭の上を高速で通過する、グラマラスな美女の姿を見てそう呟いた。

「地球の人型機動兵器か?」

カジは、諜報員の勘と経験で、そこまで見抜いていた。

「一応、連絡入れとくか」

端末に1行の文字を打ち込み母艦に送る。

S-46 インディペンデンスデイファーストメインブリッジ(第一主艦橋)

「諜報員 カジより、文字通信です」

少女の女性管制官兼通信士官『ユミちゃん(^_~)』の声がブリッジに響く。

「読み上げて!」

「我、辺境の女神を発見。注意されたし」

ミサトの声に即座に反応し読み上げる女性士官。

「辺境の女神…なにかしら?リツコわかる?」

コーヒーを手に取り呟くミサト。

「地球の人型機動兵器かしら?」

同じく、ネコの柄のカップを持ちつつリツコ。

「女神ねぇ…」

ズズズッ

「ミサト、音立ててコーヒーすするんじゃないわよ。おばさん臭い」

「ウグッ」

これから、始まるであろう戦闘に対して、緊張感のないブリッジであった。

S-47 エヴァコクピット

「あれかしら?」

アスカは、前方大画面の真ん中に煙に霞む場所を発見した。

「そうだね。どうしようか?」

シンジは、相変わらず、映らないレーダーディスプレイから、目を離しアスカに顔を向ける。

「そうね…。レイとりあえず、煙の中にバルカン撃ってみて」

「はーい、レイ、バルカン撃っちまーす」

そして楽しそうに、ジョイスティックを握り、


ばらららっららららっららららっ


と乱射する。

「レイ、弾使いすぎ!!」

「えぇー、もっっとぉぉっ」

ゾクッとするような声で甘えるレイ。
アスカは、そんな声に鳥肌を立てながら、

「だめよ!!」

と言いきる。
そして、シンジのヘッドセットにだけ聞こえるように切り替え、

「レイってアブナイ性格だったのね」

と呟く。

「ははは…はぁ」

シンジは、苦笑いとため息で応えていた。

「煙幕の中で反応ないわね…どうする?」

独り言の様な、ふたりに聞く様な、どっちとも取れるような声で呟くアスカ。

「煙幕が取れるといいんだけどね…」

シンジが呟く。

「それよ!」

シンジの呟きに何か閃いたアスカは、エヴァを煙幕の上空に移動させる。
そして、エンジンをアイドルにしてしまう。
するとエヴァは、足を下にして自由落下を始めた。

「ちょちょちょっと、なにするのアスカ!」

「きゃははは、おもしろーい!!」

「まぁ、見てなさい。と、ここでフルスロットルよ!!」

アイドル状態で運転していたスクラムジェットを地面すれすれでいきなり全開にする。
すると、爆発するような勢いでエンジンは反応し、煙幕を吹き飛ばす。
煙幕が吹き飛んだ後、エヴァは、フワッと着地する。

「これだったんだ」

そしてシンジは、感心したようにアスカの方を見る。

「ま、こんなもんよ」

と、髪をかきあげポーズを取るアスカ。


ピーッ


電子音と共に、レーダーディスプレイに反応が現れた。

「エヴァ後方に敵機発見。ああっ、接近してくる!間に合わない!!」

シンジの叫び声。


ガヅンッ


重い物体同志がぶつかる重々しい金属音とともにエヴァは、弾き飛ばされる。

「きゃーーーー」

「うはぁっ」

「きゃははは」

エヴァは、数百mゴロゴロ転がり停止した。
一瞬後。

ピピピピピピピピ

と、連続する電子音と共に、画面を覆い尽くす、エマージェンシー表示。

スクラムジェット1番全壊−燃料ポンプ自動カット
2番エンジンストール
3番エンジンストール
両翼全壊
左肩部作動不良
腰部小破
頭部小破

「なにこれ、壊れちゃったじゃない。このぼろロボット!!」

『あ、あ、あ、わたしのエヴァが…』

まだ、画面のはじっこに表示されていたゲンドウが涙を流している。

『外部からの映像転送します』

マヤの声がスピーカから流れ、傷ついたエヴァが表示される。
その姿は、満身創痍という形容でしか表せない姿であった。
頭部の小破した部分からオイルが漏れ出している。
その様子は、血が流れているように見える。

「うわぁぁぁぁぁぁっ」

シンジは、その画面を見たとたんに叫び声をあげた。

「どうしたの、シンジ!?」

「よくも、母さんを!!」

シンジは、エヴァのコントロール系を切り替えアスカから操縦を奪う。

「ちょっとシンジ!?」

焦るアスカ。

「よくも、母さんを!!」

シンジは、エヴァの剣を抜き片手で構えさせた。

「よくも、母さんを。これでも喰らえ!!」

鬼の形相のシンジは、エヴァのエンジンを再起動させながら、宇宙人の人型兵器に向かって走り始める。
そしてエヴァのエンジンがかかると同時にフルスロットルに入れる。
エヴァは、弾き飛ばされるように加速し敵人型兵器に体当たりをかます。
その衝撃に敵人型兵器は、よろめき、二、三歩後退した。
そこを狙ってエヴァは、なぎ払うように剣を使い、敵人型兵器の顔を真一文字に斬りつける。

が、敵人型兵器は、動きを止めなかった。
敵人型兵器の顔の側面が裂けて、新しい顔が現われ始める。

『自己修復機能か!』

やっぱり、画面のはじっこのゲンドウが叫ぶ。

「なにあれ、『気持ち悪ぅ』」

アスカは、感想を述べる。

「くそっ」

シンジは、コントロールパネルを殴り付け悔しがる。

「ほら、シンジ、コントロールを返しなさい!」

アスカは、少々いらつくようにシンジに言う。

「いやだ!母さんの顔に傷つけたやつは許さない!!」

「あれは、エヴァの顔よ落ち着いて!!」

「だけど…」

「だけどもへったくれもない!!コントロール返しなさい!!」

「う…うん」

シンジは、アスカの剣幕に押され、素直にコントロールを返した。

「さて、コントロールも返してもらったことだし、あとは、敵を倒すだけね」

「でも、どうやって…?自己修復機能まで持ってるんだよ」

シンジの言うことは、もっともであり、

「それなのよね…どうしよっか」

アスカもそれを決めるまで、手が出せないでいた。
しかも、考えている時間的余裕もない。

「こういう時ってさ、ロボット物とか、怪獣物だと、敵に弱点があるのよね」

レイの何気ない一言。

「そんな訳、ある訳…」

アスカは、敵人型兵器の胸の紅玉に気づいた。

「あれかな?シンジ」

「あれってあれだよね…アスカ」

シンジも同じ物を見ていた。

「熱源、エネルギー反応、なんでもいいから、調べてみて!」

「うん!」

そして、シンジは、ディスプレイの表示を、切り替えていく。

「ドンピシャ!あの胸の赤いやつだよ」

明るい声と笑みでアスカに報せる。

「そうと決まれば、早いわ」

「でも、こっちは、左手が使えないんだよ」

「うん、わかってる。シンジ、レイ」

「「うん?」」

「ちょっと、無茶やるけど、命をあたしに預けてくれる?」

いつもと違って真剣な声のアスカ。

「もちろん!アスカならね」

「こっちもOKよ」

笑みでシンジとレイは応える。

「そ、ありがと」

軽い笑みを浮かべたあと、真剣な顔になり、アスカは、目を瞑る。
そして、ゆっくりと目を開き、

「アスカ行くわよ」

そう短く呟き、エヴァのコントロールをフルスロットルに入れる。

「いっけーー!!」

アスカは右手で握った剣を平刺突(ひらづき)にして敵人型兵器の紅玉一点に突っ込む。


キイィィィン


鋭い金属音と共にエヴァの剣は、そらされる。

「なに!?」

敵人型兵器が、両手から光の剣を出現させたのだ。

「なるほど、二刀流ね。こりゃ不利かしらねぇ」

誰に言うでもなく呟くアスカ。
でも、口元は、笑みを浮かべている。

「でもこれならどうかしら…?」

アスカは、二刀流の右手の柄を狙い刺突(つき)を入れる。
敵兵器の右手は剣ごとはじかれ、胸に隙ができる。

「そこ!」

そして、刺突を素早く引き、もう一度胸に刺突を繰り出す。
二段刺突(にだんづき)である。
剣先が刺さると同時に、フルスロットルに入れる。
剣が、エンジンパワーを乗せてめり込んでいき、背中まで突き抜けた。
そしてエヴァは、剣を引き抜き、バックステップで、後退する。
一瞬後。

敵兵器は、

「ウォォォォォォン」

という叫び声を残し沈黙した。


数秒後。


「勝ったの?」

アスカは、呟く。

「みたいだね…」

シンジも呟く。

「やったね!!」

レイは、嬉しそうに微笑み答えた。

S-48 Nervコントロールルーム

「やったぁ!」

「倒したぞっ!」

飛び上がって、抱き合って喜ぶ、Nerv職員。

「ユイ、ありがとう」

だれにも聞かれない様に小さな声で呟くゲンドウ。

S-49 インディペンデンスデイファーストメインブリッジ(第一主艦橋)

「サキエルがやられるなんて…」

「あたしのサキエルが…」

ふたりとも信じられないと言った顔である。

S-50 国道1号線徒歩中のカジ

「なかなか、やるな。原住民」

口の端で笑みを作るカジ。

S-51 エヴァコクピット

「熱源、反応弱くなっていくよ。ホントに倒したみたいだ」

「そ、終わったのね」

アスカは、コクピットのパイロットシートにもたれかかり、ため息を吐く。

「すっごいね!アスカ」

「ありがと、レイ」

「さすが、剣道二段!!」

「シンジもありがと。でもシンジ、あんたすぐキレる性格どうにかしなさいね!!」

「だって、母さんの顔が傷ついてるの見たら…」

恥ずかしそうに下を見ながら囁くような声でシンジ。

「やっぱ、シンジってマザコンなのね!ついでに言うならシスコンも、かもね?」

「アスカ、ひどいや」

「ふふふ」

「ははっ」

半べそのシンジに明るい笑みを浮かべる、アスカとレイ。
宇宙人との初めての交戦(ファーストコンタクト=初めての接触)は、こうして終わったのだった。



接触編 了



次回に続く

ver.-1.00 1997-09/20公開

ご意見・感想・誤字情報などは masaya@mars.interq.or.jpまでお送り下さい!


ども、峯マサヤです。
さて、今回の第八話をもって、接触編、完結です。
次は、どんなタイトルの話にしようかなぁ?
一応、ネタは、あるんだけどね(^^)
では。

 峯マサヤさんの『機動妖精』接触編・PART8 、公開です。
 

 【接触編】、終了!

 次は
 【発動編】になるのか、
 【激闘編】になるのか。。

 前者だと、イデの力が大変なことになっちゃうし−−(^^;
 後者だと、イスカンダルに行かないといけなくなっちゃうし−−−(^^;;;;
 

 あと他には・・・もういいか(^^;
 

 切れたマザコンシンちゃん、
 フォローバッチリ&決めた!アスカちゃん、
 お気楽レイちゃん、

 見事なチームワークでまずは1勝(^^)

 スパイ加持もどう絡むのか、
 新章を待ちましょう!

 
 
 さあ、訪問者の皆さん。
 次編に向かう峯さんに感想メールを送りましょう!


TOP 】 / 【 めぞん 】 / [峯マサヤ]の部屋に戻る