機動妖精
接触編・PART7
S-38 その頃の第三新東京市立第一中学校
キャハハハ
パシャッ
ザブン
「ミアーガンバレー!!」
「アユミー負けるなー!!」
そのころ、シンジたちのクラスは、男女合同の水泳の授業だった。
シンジたち男子は、25mのタイムを取り終わって、女子の様子を眺めていた。
「シンジ、泳げるようになったか?」
「んーん、だめなんだ」
そう、シンジは、『カナヅチ』なのだ。
「レイちゃんは、それこそ『人魚』みたいに泳ぐのにな」
それと反対に、レイは、『人魚』のように泳ぐ。
『一中の人魚』と言えばレイの代名詞だ。
「あいつは、特別なんだよ」
「まぁ、あんなに上手に泳ぐやつも珍しいけどね」
「そうだろ?」
シンジの話を聞きながらケンスケは、スタート台の方をチラリと見る。
「ああ、丁度レイちゃんと惣流が泳ぐぜ」
「あ、そうだね」
「宿命の対決と言ったところかな」
「そうだね」
『万能の女神』のアスカと『人魚』と呼ばれるレイ。
どちらも、水泳部からスカウトが来るほどの逸材である。
ふたりの女の意地も絡んで、興味深い勝負だ。
「ところで、どっちに賭ける?」
「賭けるなんて、そんなの決められないよ」
「ま、シンジの気持ちとしてはそうかも知れないけど…。俺は、レイちゃんに賭けてあるぜ」
「まったく、賭け事とか好きだよな、ケンスケは」
今回の勝負には、『一中のブックメーカー』と呼ばれるケンスケ主催で、賭けが行われていた。
「はは、ま、そーゆーことだから、レイちゃんを応援させてもらうぜ」
「それじゃあ、不公平だから、アスカを応援するよ」
「それがいいさ。レイちゃん!!がんばれよー!!」
「アスカも負けるなー!!全力を出していけー!!」
「位置に着いて」
レイは、スタート台に上り、深呼吸を一つする。
「用意」
アスカは、呼吸を整え、構える。
パンッ
一斉に飛び込む。
その時。
遠くから、金属音を響かせヘリコプターが、かっ飛んで来た。
「なんだ?」
「うひょー、懐かしいな『エアーウルフ』じゃないか」
ケンスケは、持っていた、デジカメのレンズを、広角から望遠に取り替えヘリに焦点を合わせる。
「エアーウルフ?」
「昔の米国TVドラマに出てきたヘリの名前さ」
「ふーん」
ケンスケは、『エアーウルフ』の側面に塗装されたロゴを見つけた。
「でも、あれNervロゴが付いてるぞ」
「あ、ホントだ」
そんな事を話していると、ヘリはプールの上空でホバリングを始める
そしてヘリの側面(TVの『エアーウルフ』なら機関砲を収納していた場所)から拡声器が出てきた。
「アメンボアカイナアイウエオー」
拡声器から聞き覚えのある声が響き出す。
「「「マヤさん」」」
「シンジ君、レイちゃん、アスカちゃん、そこにいるわね?」
「はーい」
「はい…」
「…」
アスカは、
(悪い予感…こりゃ返事しないで、ばっくれちゃうのが一番かな)
と考えて、返事をしなかったのだが、
「あら、アスカちゃんいないの?」
というマヤの声に、
「あ、マヤさんアスカならそこに」
ためらいもせず指を差し、答えるシンジ。
「こーのバカシンジ!だまってれば見つからなかったのに」
気が回らないシンジに、ぶちきれるアスカ。
「あ、ごめん…」
反射的に謝るシンジ。
「まぁまぁふたりとも」
なだめるレイ。
普通じゃない風景(ヘリが学校のプールでホバリング)から、よくある風景(アスカとシンジの『夫婦ゲンカ』をなだめるレイ)に変わりつつあったのだが、それを阻むものがいた。
「とゆーことで3人ともNerv本部に来てください」
「いやっ!!」
即座に拒絶するアスカ。
「まぁまぁ、そう言わないで」
「絶対にいやっ!!」
「どうしてもいやですか?」
「いやったら、いや!!」
「ふぅっ、しょーがないですね……ならこーするまでですね」
パシュッ
軽い破裂音が聞こえるとほぼ同時に、アスカ、シンジ、レイの3人は、身動きが取れなくなっていた。
「なにこれー!!」
「網だ…!」
「きゃははは、おもしろーい」
3人の言うことを聞いてないかのように『エアーウルフ』ごと、3人を上空へ網で引き上げる。
「ほほほ、大漁大漁(^^)」
明るい声の、マヤ。
「あたしは、魚介類じゃなーーいぃぃぃ………」
そしてアスカの叫び声が、プールの上空で虚しく響いていた。
S-39 Nervエヴァ格納庫附操縦士更衣室
3人は、エアーウルフに『釣られ』Nervまで運ばれた後、有無を言わせずにここに放り込まれた。
「3人とも水着のままじゃ寒いでしょ?それに着替えてね」
マヤは、3人にウエットスーツの様な服を渡す。
「濡れたままで、上空1000mを高速で飛ばれればだれだって寒いわよ!!」
「そ゜う゜て゜す゜よ゜マ゜ヤ゜さ゜ん゜。ビェクショイ」
鼻水じゅるじゅるなシンジである。
「おにいちゃん、大丈夫?」
「早く着替えた方がいいわよ…」
心配そうにシンジに声を掛けるマヤ。
「だれが、そうしたのよ!!」
マヤに食って掛かるアスカ。
「着替えをするのが先よ!!」
アスカにぴしゃりと言い切るマヤ。
「着替え、ひとりで出来る?」
それに引き換え、シンジに対しての声はやさしいマヤ。
「た゛い゛し゛ょ゛う゛ふ゛て゛す゛よ゛マ゛ヤ゛さ゛ん゛」
「そうよ、あんたなんかに手伝ってもらう必要ないわ!!」
そう言ってアスカは、シンジの体をバスタオルで拭いてやる。
てきぱきと動くアスカを見たマヤは、
「じゃ、大丈夫ね。あっそれから、その服下着、着けない方がいいわよ」
と言う。
「なんでよ!!」
マヤは、ちょっち恥ずかしそうに顔を赤らめながらこう言った。
「下着の線…、出ちゃうの」
「他に服ないの!?」
「ないわ。だから、早く着替えてね」
と、言いながらマヤは更衣室を出ていった。
「鬼!悪魔!」
叫ぶアスカ。
が、マヤが出ていった更衣室のドアが無情に閉まっていった。
「さ、風邪引くよりいいから早く着替えましょ」
レイが落ち着いて言う。
「シンジ、覗くんじゃないわよ」
「そんなことしないよ、命が惜しいからね」
シンジは、言ってしまってから「あ!?」と言う顔をした。
「ほぅ、そんなこと言っていいのかしら…」
ホントは、タレ目のアスカの目がみるみる、つりあがっていく。
「あ、あ、あ、アスカ、落ち着いて」
「こーの、バカシンジ!」
パンッ
シンジに派手なモミジを残してアスカは、更衣室の仕切りカーテンを引いて、向こう側に行った。
「う、いたひ」
「自業自得よ!」
「ごめん…」
数秒の沈黙の後。
「シンジ早く着替えなさいよ…風邪ひいちゃうわよ」
ぶっきらぼうなのは、いつも通りだが、先ほどまでと違って、優しい声のアスカ。
「うん…」
そんな気遣いもシンジにはとても嬉しいのだった。
S-40エヴァ格納庫
3人は着替えた後、更衣室にいたのだが、放送で呼び出され、エヴァ格納庫に来ていた。
「マヤ!」
「なんですか?アスカちゃん」
「なんで、これブカブカなのよ」
「あ、それ、フリーサイズなんです。右手首のボタンを押してみて」
「ボタン…?これかしら」
プシューーッ
「あ、あ、あ、なにこれー」
いきなり、服が縮み慌てるアスカ。
「これでピッタリになったでしょ?それ、対Gスーツだから、常に体に一定の圧力を与え続ける様になってるの。シンジ君もレイちゃんも同じようにしてね」
「「はい」」
プシューーッ
プシューーッ
「3人ともピッタリかしら?」
マヤは、チェックシートにチェックをしながら、3人に聞いた。
「ピッタリよ」
アスカは、自らの完璧なボディラインを誇示するかのようにポーズを決めていう。
「ピッタリピッタリ」
レイもまた、完璧なボディラインの持ち主だが、アスカとは違い、特撮物のヒーローの様な服にはしゃいでいる。
「でも、恥ずかしいです」
シンジは、女性陣とは違い赤くなりながらそう言う。
「3人ともよく似合っているわ」
「で、あたしらに何させる気?まぁ、わかるけどね」
「その通り!!エヴァに乗ってもらいます」
と言ってニッコリと微笑むマヤ。
「いやよ!」
「いやでも乗ってもらいます」
「絶対に、ぃやっ」
「そう…、なら、その服を脱いで帰りなさい」
いきなり厳しい顔のマヤ。
「そんな無茶な」
「無茶は、承知の上です。死にたくなければ、エヴァに乗りなさい」
「なんで、エヴァに乗らなきゃならないのよ!………死にたくなければ?」
「そう、死にたくなければ乗りなさい」
「どういうことよ」
「宇宙人が攻めてきました。そして、宇宙人の兵器と戦えるのはエヴァだけです」
「「「ええっ」」」
驚くアスカ、引きつるシンジ、はしゃぐレイ。
「じえーたいは、どーしたのよ!!」
気を取り直してマヤに聞くアスカ。
「ほぼ壊滅しました」
「そんなヤバイ兵器、倒せるわけないでしょ!!」
「いいえ、現行のいかなる兵器とも違うエヴァなら、互角に戦えるはずです」
「なら、あたしたちが乗らなくてもいいじゃない」
「だめです」
アスカを見据えてきっぱりと言いきるマヤ。
「なんでよ」
「操縦できるのが、あなたたちだけだからです」
「理由は?」
「企業秘密です。ですが、あなたたちしか操縦できないのも事実です」
「でも、そんなアブナイ事…」
「エヴァの中が一番安全なのよ。コクピット部は、山岸博士の設計で戦略核3発連続で浴びても壊れない強度を持たせてありますから」
マヤは、真摯な瞳でアスカを見つめつづける。
アスカは、そんなマヤの様子にあきらめた。
「わかったわ。乗るわよ。でもホントに操縦できるの?」
「必ず操縦できます。あなたたちならば」
「ふーん…。シンジ、レイ。あたしは、乗るけどどうする?」
「しょうがないね。アスカが乗るんじゃ、ぼくが乗らないわけには、いかないね」
そしてシンジは、アスカに微笑みかける。
「あたしも乗るわよ」
レイも微笑みかける。
「シンジ…、レイ…」
マヤは、そんな様子を見ながら、
(青春っていいわね)
と微笑んでいた。
S-41エヴァコクピット
3人は、マヤの案内でエヴァのコクピットに来ていた。
「あれ…?」
1番最初に覗いたシンジが呟いた。
「あ?」
2番目はレイ。
「なにこれ、『V.O.3』?」
3番目のアスカは、よく遊ぶアーケードゲームの名を口にした。
「だから、操縦できるって言ったでしょ?」
3人に向かってにっこりと微笑むマヤ。
「ええっ、ゲーム機の操作系で動くの?」
「そうです。さ、操縦席に座ってください」
マヤは、そう言って、3人の背を押す。
「アスカちゃんは、そこ。シンジ君は、右前。レイちゃんは、左前ね」
3人を座らせた後マヤは、コクピットのドアを閉める。
「ちょっと待ってよ」
アスカは、慌てて叫ぶ。
「わたしは、コントロールルームに行きますので、少し待っててね」
そういうマヤの声が、前方の「BOSE」と書かれたスピーカから流れた。
「あーあ、結局こーなっちゃうのかぁ」
ぶーたれるアスカ。
「しょうがないよ、あの父さんだからね…」
諦め顔のシンジ。
「そーそー」
ふたりに合わせるように言ってるがロボットに乗れるのが嬉しいのでニコニコ微笑むレイ。
その時、
ブン
と、コクピット前方の大型ディスプレイが唸り電源が入り、
「済まんな」
と言うゲンドウの姿が現れる。
「おじさまっ」
「父さんっ」
「お父さんっ」
3人は異口同音に叫ぶ。
「作戦の説明をする」
「おじさまっ、今回のは、バイトの範囲を逸脱してます!!」
「ちゃんと、危険手当も付けるから我慢してくれアスカちゃん」
「おいくら、頂けるんですか?」
「自衛隊員の危険手当並みだな。1回の出撃で5000円だ」
マジで自衛隊の危険手当などこんなもんである。
「5000円で、命を売れと?」
「命を売れとまでは言わん。大体、その中が一番安全なんだ。説明は、聞いたろ?」
「…ま、それは、いいとして、作戦って?」
「では、今回の作戦を説明する。アスカ、シンジ、レイの3人は、エヴァC装備で出撃。目標は、強羅絶対防衛線の宇宙人の人型兵器」
「なによ、宇宙人もロボットなの?」
「えぇっ?ロボット?見たい見たい!!」
見たがりのレイが騒ぐ。
「待ってろ、今表示するから」
ゲンドウがそう言うと、大型ディスプレイの一部にウィンドウが開き宇宙人の人型兵器の姿が現れる。
「うげ、『気持ち悪い』」
いかにも気持ち悪いというような顔をするアスカ。
「そお?かわいいと思うけど?」
「…」
レイの発言に絶句のアスカ。
「ということで、これが敵だ。で、次にC装備の説明だ」
また、大型ディスプレイの別の場所にウィンドウが開く。
そこには、剣と盾が映っていた。
「あたしたちにチャンバラでもさせる気なの!おじさま!?」
「だから、C装備と言うんだ」
「チャンバラのC…」
呆れ顔のアスカ。
「しょうがないんだ!武器がまだ完成してないのだ。それに、アスカちゃんは、接近格闘戦得意だろ?」
「それは、ゲームの話よ!!」
「あとは、標準装備の60mmバルカン砲がある」
「これで、戦えるのかしら…?」
「今のところ敵は、飛び道具を持っていないことを確認している」
「そう…ならなんとかなるかな?」
「あと、コクピット内での役割だが、メインパイロット、アスカちゃん。コ・パイロット、シンジ。ガンナー、レイ」
「お父さん、ガンナーって何?」
聞きなれない言葉にレイは疑問を口にした。
「火器管制全般だ。簡単に言えば、銃やバルカン砲の操作だ。今回は、バルカンだけだな」
「はーい」
ニッコリ微笑み元気に返事するレイ。
「父さんぼくは?」
「アスカちゃんのバックアップだ。わかるな?」
「うん」
「ということで、アスカちゃんの戦闘センス次第と言うわけだ」
「無茶言うわねぇ」
「自信がないのか、アスカちゃん?」
ゲンドウは、口の端で微笑む。
「んなわけないじゃない!あんなのラクショーよっ!!」
プライドをくすぐられ、うまくのせられるアスカ。
「そうか、では、頼んだぞ。…発進準備!」
S-42 発進準備 BGM A STEP FORWARD INTO TERROR
「燃料ぶちこめ!!」
「『YUI』によるオールチェック終了。コンディショングリーン」
「滑走路空けろ!!」
「スターゲイザー着陸要請が出ています」
「成田に降りるように行っとけ!だめなら横田だ。エヴァ発進を優先させろ!!」
「了解」
「燃料補給終了」
「サブジェット始動!!」
「格納庫開け!!」
「エヴァ、オートタキシング開始」
「スクラムジェット、動力接続」
「サブジェット出力80%へ」
エヴァの姿が滑走路に現れる。
ボディーは真っ白に塗られており、グラマラスなボディラインを見せ付けるかのように離陸姿勢を取る。
その姿は、純白の女神という形容以外許さないだろう。
「エヴァ、滑走路に出ました」
「スクラムジェット、始動回転数達します」
「スクラムジェット1番2番3番始動!エヴァ発進」
ドゥン!
ドゥン!
ドゥン!
重い、腹に響く3連続の重低音のあと、
ボボボボボオボボオボボボボボボボボオ
としか形容できない、重低音が、響き出す。
そして音は、エンジン回転の上昇と共に、高音に大音量に変化していく。
もはや、音と言うより、空気の衝撃のみが伝わってくるだけだ。
その大音量の中、エヴァは、滑走路を滑り出し加速する。
「V1突破、VR、V2突破、離陸します」
エヴァは、白銀の翼を広げ、大空に舞いあがった。
ver.-1.00 1997-09/15公開
ご意見・感想・誤字情報などは masaya@mars.interq.or.jpまでお送り下さい!
峯マサヤさんの『機動妖精』接触編・PART7、公開です。
ダーンダーンダーン タッタレタララ ダーンダーンダーン
プワーン
プッパパプッパパプッパパパパッパレパレパ ダーンダーンダーン
そう。巨大メカの発進シーンは萌えるんです!
燃えるも可(^^;
文字で表現した【STEP FORWARD INTO TERROR】・・・
”変”と言うツッコミ・・・待ってます・・・ (;;)
ヘリで運ばれるアスカちゃんとレイちゃん。
網の中の水着・・・これも萌える(爆)
さあ、訪問者の皆さん。
萌え萌え峯さんに感想メールを送りましょう!
さっそくツッコミが来ました・・・私が口ずさんでいたのは
・・・【DECISIVE BATTLE】・・・
【STEP FORWARD INTO TERROR】は
ぱーぱっぱぱーぱらぱぱーぱぱぱぱー
ぱーぱっぱぱーぱらぱぱーぱぱぱぱー ダン!
て奴ですよね・・・
うう恥ずかしい(^^;;;;