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機動妖精
接触編・PART4

S-12 Nervへの道行き

「しっかし、暑いわねぇ。シンジ、アイス買ってきてよ」

「えーー、なんでだよ」

「あんたは、あたしの下僕なんだから、買ってくるのよ」

「ちぇっ」

不機嫌なアスカには、寄らず触らず。
シンジは、長年の経験でこれを学習していた。

「おにーちゃん、あたしにもー!!」

くいしんぼのレイもおねだりする。

「はいはい」

妹にも逆らえないシンジであった。



「ほ…ら、買ってきたよ…」
息を切らしているシンジ。

急いで買ってきたのだ。
不機嫌なアスカの機嫌を損なわないためである。

「あれ、二つしかないじゃない…」

袋の中身を見て不信に思った、アスカは、そう聞く。

「ああ、ぼくは、いいよ。食べたくないから」

と言うシンジ。

「あ、おにーちゃん…」

ピンときたレイは、心配そうな声をかける。

「レイ、いいよ」

「そう…」

「なによ、なんなのよ!」

アスカは、自分だけ仲間はずれになった様な気分になり、シンジに問いただすが、

「いや、いいんだから」

と、苦笑いで逃げようとする。

「レイは、知ってるのね」

「…」

「教えて!レイ」

「言うなよ、レイ」

「シンジ、何、隠してんのよ!」

「おにーちゃん、お小遣い無くなったんでしょ?」

「そんなことないよ!!」

ムキになって否定するシンジ。

「うそ!!アイス好きなおにーちゃんが自分の分買わないわけないじゃない」

レイの指摘は、もっともである。
その指摘は、アスカに昨日の出来事を思い出させた。

「あっ!そっか、昨日のゲーセン代とアイス代か!なに、意地張ってんのよ!」

「だって…」

「こうすりゃいいのよ!!」

そう言って、アスカは、アイスを食べ始める。そして、半分食べたところで、

「ふん!」

と手をシンジに突き出す。

「え?」

シンジはわけがわからず、呆然としていた。
そんなシンジにアスカは、

「ほら、間抜けな顔さらしてないで、あげるって言ってるのよ」

と、ぶっきらぼうに言う。

「でも…」

「でもも、へったくれもないわよ!食べるの!!」

「うん…」

シンジは、嬉しかった。
夕焼け色の髪を持つ幼なじみの心遣いが。
アスカがこういう娘だって知ってるから、シンジは、アスカのこともレイと同じように大事に想っているのだ。

「なーに、シンジ。泣いてるの?」

「違うよ!!」

そう、言ったシンジの声は、かすかに震えていた。

S-13 Nerv本部喫茶コーナー『長ぐつをはいた猫』

「しっかし、呼んでおいて、待たせるなんて、何考えてるのかしら!!」

やっぱり、アスカはキレる直前である。

「ホントに父さんは…」

シンジも血管が浮いている。

「いつものことよ。慌てない慌てない」

レイは、いつものことと諦めて、麦茶を飲んでいる。

「ごめんね、所長、急な会議入っちゃったの」

若い女性の所員が謝っている。

「マヤさんのせいじゃないですよ」

「そうよ、あのくそ親父ったら」

アスカの言葉が、学校での『おじさま』から、『くそ親父』に変わっている。
キレそうなのだ。

「だれがくそ親父だって?アスカちゃん」

「あああら、おじさま」

一変して、『おじさま』に戻るアスカ。

「やっと、会議が終わったよ。じゃ行こうか」

「はい、おじさま」

凄まじい変貌である。

S-14 Nerv地下200m

ブーー……ーンンン
チーン

エレベータが止まり、目的の階に到着した。
マヤさんは、途中の階で降りて行った。
子供たち3人とゲンドウは、通路を歩いていた。

「父さん、この先になにがあるの?」

「行けばわかる!だまってついてこい!」

ゲンドウは威厳を持って言い放つ。

「お父さん、なにがあるの?」

レイが聞くと、

「ああ、ちょっと待ってなさい行けばわかるよ」

と同じ事を言うのでも優しい返事である。

「差別だ…」

悲しげにつぶやくシンジ。
そんな言葉を聞いていたアスカは、シンジの側に立ってシンジの頭に手を置いて、『いいこいいこ』する。

「さぁ、この扉の向こうだ」

そう言って、扉の横に付いている、キーパッドにパスコードを打ち込む。

「さぁ、入ってくれ」

そう言って、ゲンドウは、真っ暗な部屋に招く。

S-15 EVA格納庫

「なに?真っ暗じゃない!!」

暗いのがいやなアスカは、不満を言う。

「ああ、待っていたまえ。伊吹君!」

「はい、所長」

さっきのマヤの声が聞こえている。
どこか、この場所が見える場所にいるのだろう。
そして、真っ暗な部屋に明かりが点った。

「あ!顔?」

突然、目の前に、巨大な顔が現れたのだ。
アスカは、その顔に見覚えがあるように感じていた。
その顔は、自分の幼なじみであり親友の顔に似ていた。だから、

「レイ?」

と、つぶやいてもおかしくなかったであろう。

「レイじゃない…」

そうシンジは、静かにつぶやく。

「ああ、そうだ、シンジ」

ゲンドウは、シンジに肯定の返事をする。

「じゃ、やっぱり…」

「なに?シンジ。知ってるの?」

と、アスカは、シンジに急いて聞く。

「母さんさ…」

「お母さん?ユイおばさま?」

「そうだ、アスカちゃん」

「でも、これって…」

言葉を続けようとするアスカを遮るように、

「ああ、今、開発中のエヴァと呼んでいるロボットだ」

と答えるゲンドウ。

「エヴァ?」

聞きなれない単語にシンジがオウム返しをする。

「聖書に書かれている、アダムとイブのイブのことだ」

ゲンドウは、そう静かに答える。

「ふーん」

シンジも納得したようだ。

「で、これを見せて、どうするんです?」

アスカは、自分達を呼んだ理由を聞いた。

「ああ、君たちに、テストパイロットになってもらおうと思っている」

「「「ええ?」」」

3人は、見事なユニゾンで驚く。
ゲンドウは、3人のユニゾンに満足そうだ。
その驚きから、即座に復活したアスカが、ゲンドウに抗議の声をあげる。

「なんで、あたしたちが、ロボットのテストパイロットなんかしなくちゃなんないのよ!!」

そりゃそうだ、ロボットのパイロットなんて危ない目に会うに決まってる。

「うん、そうだよ、父さん」

シンジも同意見らしい。

「あら、おもしろそうじゃん」

が、レイは、やっぱり、好奇心の固まりだった。

「レイだけか?乗ってみたいのは」

「ええ、あたしは、遠慮させてもらうわ」

と、アスカは、乗るのを拒否した。

「ぼくも、乗りたくないよ」

「そうか…でもなぁ、この機体は、3人で乗るように設計されてるのだ。ひとりでは操縦できん」

「って欠陥商品じゃないの?」

アスカの意見はもっともだ。

「しょうがないのだよ。まだ、開発中の機体だからな。シミュレータだけでもいいから、乗ってもらえんか?頼む」

と、手を合わせお願いするゲンドウ。

「うーん。バイト代高いわよ」

「こんなもんでどうだ?」

ゲンドウは、白衣から計算機を出し、自給を見せる。

「うーん、こんなもんなの?もう少し!!」

「自給1500円で不服か?」

「聞いたことあるわよ、シミュレータだって、結構、危ないんでしょ」

空自のシミュレータで、ゲ○するやつもいるらしい。

「まぁ、そうだが…」

「自給2000円よ!これ以下は、びた一文負からない!!」

「…よし、わかった。経理に掛け合ってみよう」

「やりい」

さすがにこういうことには場慣れしているアスカは強い。

「で、シンジは、どうするんだ?」

「父さん…、策士だね…。こうすれば断れないの知ってて」

そうである、妹が乗って、幼なじみが乗ると言ってるのだ。
シンジとしては、レイもアスカも心配なのである。

「ふふふ、一応、親だからな。我が子の性格くらい知ってるよ」

こうして、3人は、エヴァ(のシミュレータ)に乗ることになってしまった。

S-16 Nervの帰り道

Nervからの帰り道は、レイとシンジ、そしてゲンドウの3人になった。
アスカは、用事があるからと先に帰ったのだ。
その帰り道、シンジは父に聞いてみたくなった。

「父さん…」

「なんだ、シンジ?」

相変わらず威厳のある声のゲンドウ

「なんで…、母さんの顔なの?」

「…わたしの趣味だ」

少しためらうように答えるゲンドウ

「へ?」

「顔のデザインは、なんでもありだったのでな」

「うん」

「なら、惚れた女の顔にしようかと…」

ゲンドウの顔はちょっと赤い。

「父さん…」

シンジは、父親のことがちょっとだけ好きになった。

次回に続く

ver.-1.00 1997-08/27公開

ご意見・感想・誤字情報などは masaya@mars.interq.or.jpまでお送り下さい!


どうも、峯マサヤです。
第四話、いかがでしたでしょうか?
いよいよ、姿を表した、エヴァ。 その姿は!? CGイラスト化して、発表いたします。 それでは。

 峯マサヤさんの『機動妖精』接触編・PART4、公開です。
 

 オヤヂのゲンドウ。
 レイに優しく、
 シンジに厳しい。

 シンジくん、これは差別じゃ無いぞ。
 男親のサガってもんです(^^;

 子供のいない私でさえ、
 従兄弟より、従姉妹に甘えさせちゃう・・・

 お菓子買って、
 遊園地に行って、
 外食させて・・・

 夏休みはよく遊びに来るから、
 今月は金欠 (;;)

 時給2000円が羨ましいです(^^;
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 CGも描く峯さんにお便りを出しましょう!


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