機動妖精
接触編・PART1
S-1 ゲーセンヴァリアント『いつも』の三人
ボムッ
「やられちゃった、ビーム十手かぁ…、ふぅ」
青い機体のパイロットは、画面に流れる、自分の敗北を意味する、メッセージを眺めながらため息をひとつ。
ここは、ゲーセン『ヴァリアント』
『いつも』の3人は、入ったばかりの対戦ロボット格闘ゲーム『V.O.3』をプレイしに来ていた。
「じゃ、ビリのシンジ、アイスおごりね」
夕焼けの色の髪を持つ少女が手を腰に当てて、そう言う。
「わかったよ、アスカ。じゃ、今日はどこにする?」
『シンジ』と呼ばれた少年は、ちょっち嫌そうに聞く。
「そーねーー、レイは、どこにしたい?」
『レイ』と呼ばれた空色の髪の少女は、夕焼け色の髪の少女に瞳を向けながら
「敗者に決めさせる気?」
と言う。
「ま、さっきは、いい試合だったから、あんたが決めてもいいわよ」
「そう?じゃあねぇ…」
レイは、考えながらシンジの方に目をやり、
「『よしや』がいい!!」
と答えた。
「『よしや』って駄菓子屋じゃん…。ま、いいかぁ。シンジよかったわね!レイが兄想いの妹で!」
ちょっと言葉が嫌みっぽいがそれはアスカが、シンジとレイの兄妹の仲の良さが少しうらやましいからなのだ。
「…へへへ」
シンジは、そんなアスカの気持ちを知ってるので、恥ずかしそうに、はにかむだけだ。
さてその時、ゲーセンを出る3人を見ている者がいた。
S-2 Nerv エヴァプロジェクト
「いい波が出てますね、息子さん達」
脳波グラフの表示されたモニターを眺めながら中年の男。
「そうかね?山岸君」
『息子さん達』と言われて内心嬉しいはずなのに、むっつりとした表情を崩さない中年の男がもう一人。
「ええ、3人とも、それぞれの点で、飛びぬけた才能をお持ちですね」
「そうか?」
「ええ、シンジ君は、長距離の砲撃戦と防御重視の戦闘の才能がありますね」
「ほう」
(シンジめ、なかなかやるな…。しかし、戦闘は性格が出るな…)
普段は言葉に出さないが、密かに息子を認めているのだ。
「それに対して、喰いつくような、格闘戦は、アスカさんが長じているようです」
「やはりな」
「そして、レイさんは、目立った長所はありませんが、バランスが取れてます。おそらく、どんな戦闘でも対応できるでしょう」
「レイは、器用だからな」
レイに対しては、少々親馬鹿らしい。
「そうですね。それじゃ、役割分担は…」
「そうだな。予定通りといこう」
「了解しました」
「冬月にも連絡してもらえるか?」
「ええ、いいですけど、冬月先生もびっくりするでしょうね」
「そうだな……、やっぱり、わたしが連絡するよ」
「それが、いいですね」
「ああ、ひさしぶりに、先生にお小言をもらうことにするよ」
懐かしそうな目で遠くを見詰める中年男。
彼の名は、碇ゲンドウと言った。
S-3 某宇宙戦艦ブリッジ
「最終進路修正、タッチダウンまで、あと5秒」
前方にオーロラのような光の帯が大画面に表示されている。
そして、じょじょに光の帯が短くなり、帯が放射線を描くようになる。マンガの専門用語でに言えばウニフラである。
そして、線自体が短くなっていき、最後に無数の点と青い球体が残った。
4光年から50億光年ほど離れた恒星の光、つまり星の瞬きの中に浮かぶ青い球体は、表面の7割を占める水によるもので、現地の住民は『地球』と呼んでいた。
その『地球』を観ている、2人の女性。
「ちょっち、待ってよ、、、なんで、好き好んで、こんな辺境の惑星に来なくちゃなんないのよ」
文句を言っている女性は『ミサト=カツラギ』惑星の征服を主な事業内容とする会社、侵略株式会社ゼーレの惑星侵略超A級戦艦インディペンデンスデイ艦長である。
「そんな事言わないの、ミサト。『地球』の占領作戦は本社の命令なのよ」
そして、なだめにかかる女性は『リツコ=アカギ』だ。インディペンデンスデイ参謀兼技術開発部長である。
「そんなの、わかってるわよ、リツコ。それにしたって、田舎も田舎、ど田舎じゃない」
「カツラギは、ど田舎は、嫌か」
(いつの間に後ろについたのかしら?)
ミサトはそう思いながら、声の相手に振り向かずに冷たく言い放った。
「カジ、あ、ん、た、は、呼んでないわよ!」
「まぁ、そういうなよ、俺とカツラギの仲だろ」
そんな声を聞いていないかのように男『カジ』は答える。
「ま、大胆ね、リョーちゃん」
リツコは、そう言って、さも、おもしろそうに目を細める。
「あんたとは、もう関係ないのよ!」
「ふっ、そうかい、、、じゃ、俺は退散するよ」
口の端で笑みを浮かべながら去るカジ。
「シッシッ」
本気で嫌そうに手を振るミサト。
「いいのミサト?カジ君追っ払っちゃって?」
「いいのよ、あいつ、何かと言うと、ブリッジに上がりたがるんだから」
「でも、カジ君いないと、目標惑星の情報収集できないわよ?」
「そうね…、じゃ、あとでTEL入れて置くわ」
「そうしなさいね。じゃ、あたしは、使徒の整備に行くわね」
「うん、そうする。じゃ、いってらっさーい」
ひらひら、手を振り見送るミサト。
S-4 Nerv C棟、航空宇宙工学研究部門
「さぁて、今日の夜勤も終わりだなぁ」
「夜勤と言ったって、ずっと、『ディアブってた』くせに」
「へへ、まぁ、そう言うなよ、マコト」
「まぁいいさ、記録は、機械がやってるし」
「そうだな、一応、終わる前にチェックしておくか」
「そうだな」
そう言って、モニターを切り替える、マコト。
モニターには、米露仏英中独等各国軍、各国諜報機関、のネットへのハッキングにより得られたデータが映し出されている。
「うん?」
各国の情報が流れるディスプレイを眺めていたマコトが、急にキーボードを叩き出す。
その様子にシゲルが気付き、
「どうした?」
と、聞く。
「米国のデータにおもしろいものがあるぞ!」
「米国ねぇ。ちょっち待ってなっと」
そう言いながらシゲルもモニターを切り替える。
「ペンタゴンのデータを見てみな?」
「ペンタゴン、ペンタゴンっと…な、何じゃこりゃあ!!!」
「な?おもしろいだろ?」
そう言う、マコトの額を、焦りの汗が流れていた。
S-5 マユミの部屋
「今日のNASAは、どうかな?」
いつもの通り、ネットサーフィンに励むマユミ。
「火星の植民計画なかなか、決定しないわね…」
「今日のコロンビア2の軌道はこれね…」
「ミール3は、この辺ね」
「ふーん、こんなもんか…」
「ついでにMITでも覗いてみようかな?」
MIT、マサチューセッツ工科大。
ここのHPは、公開版と非公開版の複数がある。複数とここで書いたのは確認できた数が二つ以上あったからだ。
そのMITの航空宇宙工学科のHPは、一般には、非公開であった。
理由は、米軍からの圧力である。
ただでさえ米国のハイテクを支えるMITである。
そのMITでも花形の航空宇宙工学科は、UFOのデータの蓄積も多いのだ。
マユミが覗くと言ったHPは、その航空宇宙工学科である。
「最終更新時間は、15分前ね…」
GMT(グリニッジ標準時)表示のLED腕時計を見ながら、マユミはつぶやく。
「何かな?」
ちょっと、わくわくしながら、マウスをクリックする。
「え?なに?なによ、これーーーーーーーっ!!!」
その夜、山岸家では、メガネの少女の叫び声が聞こえた。
ver.-1.00 1997-08/21公開
ご意見・感想・誤字情報などは masaya@mars.interq.or.jpまでお送り下さい!
峯さんの新連載『機動妖精』接触編・PART1、公開です。
元ネタはなんでしょう(^^)?
[接触編]・・・【イデオン】?
”ゲームで適性検査してスカウト”・・・【スターファイター】?
なんて言っているけど、
【イデオン】も【スターファイター】もほとんど知らないんだけどね(^^;
幼なじみで恋人未満のアスカと、
仲の良い妹レイ。
何処に要っても羨ましい環境を享受するシンジ・・・クソ!(笑)
さあ、訪問者の皆さん。
スーパー多作の2人に挟まれる峯さんに激励のメッセージを!