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Time Sinner

第五話 拘束

 アスカは、慣れた動作でドンドンと先を急いだ。それに付いていくように、
どう見ても素人のシンジが歩いている。
 そんなシンジの様子を見て、アスカはため息を吐くと、シンジを見つめた。

「なに?アスカ、どうしたの?」
「シンジは、これを使って」

 そう言うと、アスカはポケットから真四角の小さい機械を取り出してシンジ
の首筋に取り付けて、
 その瞬間、シンジの体が透明になった。

「うわ!アスカ、何したの?」

 透明になった自分の手を見て、慌てるシンジ。
 しかし、よく見ると後ろの景色が歪んで見えるだけなので安心したようだ。

「ステルス迷彩よ。これならよっぽど注意して見ない限り見つかることはない
わ」
「すごい…これも、友達が作ったの?」
「……そうよ」
「ふーん」
「じゃ、行くわよ。ちゃんと付いてきなさいよ」
「うん…」

 シンジは再び透明になった自分の手から向こうの景色を楽しそうに見た。
 先の景色や、アスカがずれて見えている。シンジは嬉しくなる衝動を抑える
のに精一杯、力を注いだ。そんなシンジを後目にアスカは再び慣れた動作で下
へと急いだ。忘れていたことを思い出したように、その後を一生懸命遅れまい
と付いていくシンジ。しかし、差は開くばっかりで、追いつけない。
 そのうちアスカは、建物の入り口に到着してしまう。後ろを振り向いて、シ
ンジを確認するが、一向に姿を見せない。
 1分ほど経ったであろうか、背景が微妙に変化するのを見て、アスカは悪態
を吐きながら、背を向けた。
 刹那、アスカは背後から殺気を感じて振り向いた。

「何?シンジじゃな……」

 辺りに鈍い音が響いた。
 アスカは、力無くその場に倒れた。最後に見たのは、同じようにぐったりと
しているシンジの姿だった。


 目の前のモニターを見ながら、ミサトはため息を吐いた。  モニターにはよく知った人間が二人写っている。 「どうして…」  ミサトは再びため息を吐くと、飲みかけのコーヒーを飲み干して、再びモニ ターを見つめた。 「やっぱり私が行かないといけないのかしらね…」  鬱陶しい顔をしながらミサトは立ち上がった。  部屋を出ようとしたとき、彼女の同僚のリツコが姿を現した。  金色と言うよりは、黄色に染めた髪の毛をガッチリとポマードか何かで固め た髪型でミサトを見据えている。 「あら、リツコ…」 「どうして、シンジ君がここに来るのかしら?それにあの子は誰?」 「えっと、ちょっち前から私の家に住んでるアスカって言う子なんだけど…」 「あの子…ステルス迷彩を持っていたそうよ」 「何ですって?それってまだ理論しかできていないって言うアレ?」 「そう。まだ原型もできていないって言うのに…」  リツコは、信じられない顔をモニターに向けると、煙草に火をつけた。  煙をモニターに向けて吹きかけるとリツコはポケットから真四角の機械を取 り出した。 「これが、その現物よ。見てて頂戴」  そう言うと、リツコはその機械を胸元につけて、透明になって見せた。  ミサトは声もなく、目を丸くしてその様子を見据えた。リツコが完全に水晶 体のようになって、後ろの壁が歪んではいるが見えている。 「これが、ステルス迷彩」  ミサトは素直に驚いたという表現でリツコに聞き返した。まだ目は丸くした ままだ。 「そうよ、こんなのこの時代の科学では無理よ。何者なの?あの子」 「うーん……」  透明になったリツコを目の前に、ミサトは言葉を失った。確かに、こんな道 具がこの時代にあるとは思えない。 「それじゃ、あの子は未来から来たって言うこと?」 「そうね、そう考えるのがセオリーだと思うわ」 「そうね…」  リツコは、近くにあった椅子をミサトの隣に持ってくると、それに座ってモ ニターを見つめた。  ミサトも同じようにモニターを見つめる。 「さて、これからどうするのかしら、ミサト?」 「そうね、取りあえず二人に会いたいんだけど……」 「二人に会ってどうするの?」 「聞いてみたいことがあるの…」 「そう言うと思って上の許可は取ってあるわ。行ってらっしゃい」 「ありがとうリツコ…それじゃ、行って来るわ」  ミサトは立ち上がると、早歩きで部屋を後にした。
 暗闇の中、先に目を覚ましたのは、シンジだった。周りが見えないせいか、 立ち上がろうとしたが、足と手を結ばれていたため立ち上がれない。  不安に思ったが、近くに寝ているのがアスカだと解って少し落ち着いたのか、 自分が置かれている状況を理解しようと、記憶を出来る限りたどってみた。  アスカを追って下っていく途中で、何かが目の前に現れて…えーっと  そこで、シンジの記憶が終わっている。いくら思い出そうとしても思い出せ ない。仕方ないと思ったシンジはアスカを見ようと頭を横に動かした。刹那、 後頭部に激痛が走る。 「いっ!……っっっっ…」  後頭部が別の生き物になったかのように脈打をうつ。さすりたいが、手が縛 られている為、それもできない。  頭を動かすたびに激痛が走るため、シンジはその都度情けない悲鳴を上げる ことになる。 「う、ん……」  その声で、アスカも目を覚ましたらしく、モゾモゾと何かやっている。しか し、縛られた手足はなかなか解ける事はない。しばらくの間、試行錯誤してい たが諦めたのかシンジの方を向くとため息を吐いた。 「アスカ、目が覚めたんだね、よかった」 「シンジ…ごめんね…私のせいで捕まっちゃったね…」 「そんな事無いよ。僕がアスカに付いていけなかったからいけなかったのさ」 「違う…私がミサトの後を追おうなんて言ったから…」  アスカは今にも泣きそうな顔をすると、プイッと後ろを向いた。  シンジは何とか体を動かしてアスカに近づくと、そっと体を寄せた。 「大丈夫、アスカのせいだけじゃない。僕だって見てみたかった。だから、ア スカだけ悪いんじゃない…」 「シンジ……………ごめんね…」  アスカは涙と鼻水でグチャグチャになった顔を見せないようにシンジの胸元 で泣いた。何も身につけていないのも気にせずに泣いたのだ。  二人は全裸だった。シンジも暗かったから見えなかったのだろうか、恥ずか しがる事もなくアスカのしたいがままにさせていた。
 ミサトは、独房の扉の前で中に入るか入らないかをウロウロしながら考えて いた。一分ほど扉の前で唸った後、開閉ボタンを押すことを決意した。  スイッチに指を持っていったところで、また唸る。  どんな顔して二人に会えばいいのかしら……  その事が、頭に現れては消え、現れては消える。  ミサトは気まずそうな顔を浮かべると、ボタンの目の前にあった指を引っ込 める。 「何をしているんだね?葛城君」 「あ、副指令」 「彼らには、会えたのかな?」 「いえ…その…」  副指令と呼ばれたその初老の男性は、ため息を一つ吐くと開閉ボタンを押し た。空気が抜けるような音がして、扉が開かれる。 「会いづらいのはわかるが、そうしていても何も解決にはならないと思うがね」 「はい……」 「それに、子供達もそろそろ協力してもらいたいことが出てきたのでね…」 「わかっています…どうもすみませんでした」 「それでは失礼するよ」  去っていく副指令に一礼すると、ミサトはキリッとした顔を浮かべて暗闇の 向こうに姿を消した。
NEXT 1998+09/28 公開 不明な点、苦情などのお問い合わせはこちらまで!


作者による後書き  ようやく、というか、皆様お忘れではないでしょうか…  一つ一つ解決していくと言うことはとても大変なことです。  さてさて、前回、といってもかなり前ですけど…秘密が何とかと言ってまし たけど、次回に持ち越されることになりました。スイマセン。  次回こそは必ず!  それでは、次回をお楽しみに……
 OHCHANさんの『Time Sinner』第五話、公開です。  潜入したけど、  いきなり捕まっちゃったぁ・・・・  未来の科学道具 ステルス迷彩装置をつかっていたのに。。  手強いよね。  何者なんだろう、、、  裸で縛られて、  ピンチピンチ。  ミサトはんらは何しよっと?  謎が謎をよぶっす。  さあ、訪問者の皆さん。  お帰りなさい OHCHAN さんに感想メールを送りましょう!


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