Time Sinner 第四話 追跡Cパート どこを見ても、闇、闇、闇。 真っ暗とはよく言ったものである。 まさに、真の闇の中を二人は降りていった。 「ねぇ、アスカ…明かりとかないのかな?」 「さぁ…でも、ここで明かりをつけるのは得策ではないわ」 「そうだね。見つかったら何もならないもんね」 わかってるじゃない。 アスカは心の中でつぶやいた。 しかし、シンジには見えないが、アスカはメガネを赤外線モードにして装着 していたのだ。その証拠に、メガネの端から赤外線が発射されている。 もちろん、人の目には見えない。 ここで、明かりを出されると、アスカは目がくらむであろう。 実は、シンジの髪留めにライトスコープぐらいついているのだが、それを教 えないのは、その理由の反面、このままでいたいという気分が半分あるからだ。 アスカとシンジは手を取り合ってゆっくりと底を目指して歩いていた。 アスカは、ずっと手をつないでいたかった。いや、出来ることならもっと密 着してもいいと思っていたのだ。 「アスカ…見えているんじゃないの?やけに足取りが軽いみたいだけど」 「見えてるわけないでしょ?見えていたら走って下っているわよ」 いきなり核心を突かれたような気がしてアスカは内心焦るが、出来るだけ平 静を装って、答える。 「そうだよね。ゴメン」 「いいのよ…」 そう言って、ついにアスカはシンジの腕をつかんで自分の腕を絡めた。アス カは、こうしたかったのだ。真っ暗闇の中でシンジと二人っきりでいられると いうスチュエーションはアスカにとって最高であった。 恐らく我慢が出来なかったのだろう。しかし、抱きつかなかっただけアスカ は我慢強かったとも言える。アスカはすぐさまシンジに抱きつきたかったのだ。 しかし、ぐっとこらえると、アスカは前を向いた。 「あ、あの…アスカ…」 「なに?シンジ」 「なんで、腕を組むの?」 「だって、その方が転んだりしないじゃない」 「……そうだね…」 シンジは、こうやって女の子と、と言っても今は大人の格好をしているから 女性と言った方がいいのだろうか。まぁとにかく女性と腕を組んで歩いた事な んてあったであろうか。小さい頃まで記憶をたどってみたが、そんな事なんて 無かった。 そうだ、アスカが来るまではこんな事はなかったんだ。 アスカってなんだか一緒にいて違和感がないと言うか、遠慮無く付き合える というか…でも、昨日は成り行きとはいえ一緒に眠った仲だし…今更単なる友 達だなんて言うのもおかしい気がするよなぁ… シンジは、転ばないように細心の注意を払いながら頭の中でこんな事を考え ていた。しかし結局のところ答えというのは出てこなかった。 どれほど歩いたであろうか、アスカは目の前に扉があることに気が付いた。 「あっ!シンジ、目の前に何かあるよ?」 「えっ?」 アスカは、少しわざとらしくシンジに言った。シンジは、手で前を探ると確 かに目の前に何かがあるのがわかる。 「本当だ…何だろう?壁みたいだけど…ひょっとして行き止まりなのかな?」 「そんな分けないでしょ?」 そう言って、アスカはしまったと思った。見えていることがシンジにばれる ではないか、しかし、 「そうだよね…」 シンジにはばれていないようだ。大人になってもその鈍さは失われていない なとアスカは思い、笑みを浮かべた。 「えーっと……」 なるべく探すふりをしてアスカはスイッチのようなものを探した。しかし、 何の前触れもなく扉は開き出す。アスカは慌てたようにスコープを髪留めに直 した。危なく隙間から漏れる光で目がつぶれそうになるところだった。 急に辺りが明るくなって目をつぶってしまう。 扉の先には巨大な空洞があったのだ。天井を見ると、外界から光を取り入れ るためのファイバーガラスが何本も顔を出している。 下に目を移すと、森林や湖があり、中央部に四角錐の建造物がある。道もそ の建物に延びている。 アスカとシンジは、意を決して足を前に進めたのだった。
作者による後書き どうも、最近執筆活動が低迷しだしているOHCHANです。 今回は、ちょっと短いですがようやく暗闇から解放されましたね。 次回はようやく秘密が公開されます… なんて言っておいて公開しなかったりして… それでは、次回をお楽しみに。
OHCHANさんの『Time Sinner』第四話Cパート、公開です。 暗闇の中で、 その暗闇を利用したアスカちゃん(^^) 暗視装置の存在を内緒にして、 腕を組んじゃって・・・かっわいいですよね。 ついに内部に迫りましたが、 アスカちゃんとしてはもう少しこうしていたかったのかな? それとも我慢できなくなる前に辿り着いてホッとしているとか(^^; さあ、訪問者の皆さん。 気を持たせるOHCHANさんに感想メールを送りましょう!