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Time Sinner
プロローグ

 響きわたる光線銃の音。
 逃げまどう人々。
 廃墟の中で泣いている少女。
 世界は東国と西国に分かれて争ってきた。
 西暦弐千壱拾五年。きっかけは些細なものだった。男と女の関係が最悪の破
局を生んだのだ。
 はじまりは、東国のある男性が西国の女性に恋をしたことからであった。
 決して結ばれることのない恋物語であった。
 ロミオとジュリエットのように、こっそりお互いの顔を見合っていた二人は
とうとう見つかってしまう。
 そして、二人は誰もいない地下室でその命を自ら絶ったのだ。

 それが引き金となった。

 東国は、西国のせいだと主張し、西国は東国のせいだと主張した。
 その後、一世紀にも及ぶ争いがはじまったのだ。

 西暦弐千壱百壱拾五年、百年戦争と名前が付いたその戦いは、ようやく終わ
りを告げようとしていた。

 勝者は、東国であった。
 しかし、この勝負に納得しない人間達がいた。
 東国にも西国にも属さない人々だ。

「なぜ、アタシ達まで巻き込まれないといけないのよ!!」
「そんな事言ったって、しょうがないやろ?」
「でももう終わったんだろ?戦争はさ」

 ほんの数拾人であったが近代科学の粋を結集してつくられた砦には、数人の
大人とその他大勢の子供達で構成されたグループで、戦争の犠牲になるのは子
供達だと主張する大人達が砦を築き、子供達を集めたのだ。
 しかし、その砦もほんの何年か前につくられたばかりで、やはり大勢の子供
達が犠牲になったのは言うまでもない。

 そこで、考え出されたのが、過去に戻り、戦争の原因を無くすと言うことで
あった。
 提案者は、子供達であった。
 最初は反対していた大人達も、子供達の情熱に負けたのか、タイムトラベル
にかけてみることにした。
 数日後、それは難なく出来上がった。
 しかし。

「おい!そっちに行ったぞ!」

 パパパパパ!!!

「キャー!」

 黄色い悲鳴が辺りにこだました。
 タイムトラベルが東国にばれたのだ。大人達は眠っている間に建物ごと爆破
された。
 残った子供達は次々と惨殺され、結局残ったのは、アスカ、トウジ、ヒカリ。
ケンスケの4人だけだった。

「鈴原!鈴原!しっかりして!」
「いいんちょ…ワイはもうだめや…いいんちょだけでも助かり…」
「だめよ鈴原…」
「お別れは言ったかい?お嬢ちゃん」

 あっと言うまであった。
 トウジとヒカリは仲良く寄り添うように自らの血で出来た水たまりに横たわ
った。

「ヒカリ!」
「アスカ、こっちだ!はやく!」

 いち早く、ケンスケがタイムマシン室の扉を閉めた。
 間一髪、扉に銃弾が当たる音が聞こえる。
 ケンスケは、ロックをかけると、コンピュータールームに駆け込んだ。
 素早くコンピューターを起動させると、俯いたままアスカに向かって話しは
じめた。

「アスカ、僕が君を過去に送る。その後、ここは爆破させる」

 あまりにも、唐突な話だった。
 アスカは少し混乱しつつ、

「でも、そうしたら…」

 と、聞き返した。
 いくら何でも無茶すぎる。それに、過去に戻ったからといって必ず成功する
とは思えない。

「大丈夫だ。アスカがちゃんと過去をかえられればこんな事になっていないは
ずだ」
「でも…」
「いいんだ…アスカ、時間がない。急いで…」

 アスカは、ヒカリとトウジの姿を思い出した。
 二人は愛し合っていた。しかし、あまりにも残酷な結末をむかえたのだ。
 この結末がかえることが出来る。
 そう思うと、

「分かったわ…必ず過去を変えてみせる」

 決心して、タイムポッドに乗り込んだ。

「いいかい、アスカ。今から君を弐千壱拾四年に送る。そこで碇シンジという
人物をさがすんだ」
「碇シンジね?」
「そうだ、それが元凶だ。そいつが西国の女性と駆け落ちしたんだ」
「そいつをとりあえず何とかすればいいのね?」
「そうだ、よろしく頼むぞ!」

 少し大きめの爆発音がポッドの中に響く。

「ちょっと、相田?大丈夫?」
「大丈夫だよ…じゃ、アスカ、頑張って…」

 妙な電波音がしてアスカは闇の中にポッドごと消えた。

 タイムトラベルがこんなに難しいものであるとは思わなかった。
 ポッドが、時間の波に耐えきれずに壊れはじめたのだ。

 気が付いたときにはもう遅かった。アスカは手元にあったデータがつまった
髪留めに手を伸ばし、装着すると髪留めのボタンを押した。
 一瞬にして磁気フィールドに包まれるアスカ。
 間一髪、ポッドが壊れてアスカは時間の渦に飲み込まれてしまう。
 磁気フィールドで包まれていてもその衝撃は強く、気を失ってしまった。

 アスカの運命は、時間の波にゆだねられた。


つづく 1997-08/23 公開 不明な点、苦情などのお問い合わせはこちらまで!


作者による後書き  えっと、最近投稿小説ばっかり書いているOHCHANです。どうも。  自分のページをほとんどほっぽりだしたまま、書き続けています。いやはや いつまで続くことやら…  また続き物です。よければ、感想なんてもらえたら嬉しいです。  それでは今回はこの辺で……
 OHCHANさんの『Time Sinner』プロローグ、公開です。  過去に飛び、  過去を変える。  悲劇に満ちた”今”を照らす為に。  うむ。  こういう英雄的で格好いい役はアスカ様のためにあるんだ!(^^;  アスカよ、世界を救う光となれ!!  (^^;;;;  さあ、訪問者の皆さん。  2つの目の連載を開始したOHCHANさんに激励のメールを!


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