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妖精の憂鬱 第三話 それぞれの夜 レイ編

夕食も終わりそれぞれ(といっても姉妹二人しかいないんだけど)が、思い思

いの時間を過ごしていた。


「ふん・・ふふん・・ふん」


アタシは、鼻歌など歌いながらベッドに寝転がり、日記を書いている。

といっても内容はアタシの事ではない、その表紙には『アスカとマナの愛の軌

跡』と書いてある事でも解ってもらえるだろうか。



×月×日
今日は霧島マナっていう女の子が転校してきた。
とっても可愛い娘だったな。
まあ、アタシには適わないけどね。
それよりも大変なことがあったんだ、何とあのアスカがその娘に一目惚れ。
こりゃ一大事ってなもんで、アタシは陰ながら応援することにした。
でもってまずは、『一緒に登下校!!』
これは以外と簡単に事が運んだ。
何とアスカとマナは同じマンション!!!って、アタシも同じだけど。
恥ずかしいくらい、お約束な状況。
明日の朝から一緒に学校へ行こうって約束もしたし。
もう完璧!!
もう何でも



「レイ、レイってば」


せっかく日記をつけていたのに、姉ちゃんがドア越しに声をかけてきた。仕方

なしにアタシは返事をする。

無視などしようモノならろくな事にはならない。


「なーに、お姉ちゃん」


心の中では『姉ちゃん』口に出るのは『お姉ちゃん』。

どっちだって変わらないような気もするが、この『お』の差というのはなかな

か侮れないのだ。

以前、『お』をつけずに呼んでしまい、一月小遣い抜きにされた事もあった。


「アタシの言ってた子、来た?」


そういえば、今日知り合いの男の子が転校して来るからと言われていたのだ。

でもマナは女の子だもんね。


「ううん、来なかったよ」
「えーおっかしいわね」
「だって、来たの女の子だったよ」
「え、女の子?」
「うん、霧島マナていう娘だったよ」
「霧島・・・・・そ、そう」
「どうかしたの?」
「え、ううん、何でもないよ、あはははは」


変な姉ちゃん。

こういう時は大体なんか隠してるもんなんだけど・・・・・。

まいっか、続き続きっと!!



もう何でも来いってなもんね。
でも、そんな二人の前に立ち塞がっているのがヒカリ。
マナとヒカリは趣味が合ってるみたいだし。
料理のことになるとアタシもアスカも話に入っていけないから。
どうやら、この辺に改善の余地があるようね。
明日から始めよう。



「よし、こんなもんでしょ」


そう言ってアタシは、日記を閉じ机の上に乗せた。

暇だな、テレビは何にもやってないし。などと考えながらベッドの上をゴロゴ

ロしていると、ふと、さっきの姉ちゃんとの会話が思い浮かんできた。

なんか隠してるわね。

そう思ったアタシは、さっそく聞きに行くことにした。




姉ちゃんは、リビングでニュースを見ていた。


「ねえ、お姉ちゃん」
「なに、レイ」


ソファに寝っ転がり、視線はテレビに向けたままで答える。

アタシがこんな態度をとったら、いきなり蹴りが入る。

だからといって、アタシは蹴るわけにはいかない。そんなことをすれば、洒落

にならない事態がやってくるからだ。


「さっきの事だけどさ、お姉ちゃんの知り合いってのはどうしたの?」
「なによ、気になるわけ?」
「え、まあね」
「あれ、勘違いだったみたい」


相変わらず姉ちゃんはテレビを見たままだ。


『蹴ってやろうか』


思わず脳裏に浮かんでしまう。


「やってみる」


思わずドキッとしてしまった。

普段と変わらない声だが、なんか危険なモノを感じさせる。

昔からそうなのだ、何故かこういう気配に敏感なのだ。我が姉ながら何か得体

の知れないモノを感じてしまう。


「あ、あはははは・・・・・・ゴメンなさい」
「そうそう、まだ死にたくないでしょ」


こういうセリフを可愛く言わないでほしい、とっても怖いのだ。


「は・・・ははは・・・はは・・」


もはや笑うことしかできない。しかも思いっきりひきつりなから。


「それからね、レイ」
「な、なに」
「世の中知らない方がいい事もあるのよ」
「そ、それって、詮索するなって・・・事?」
「あら、閻魔様とご対面したいって言うんなら構わないけど」


だから可愛く言うな!!


「ア、アタシ、な、何にも・・・聞かなかったよ」
「そう」
「じ、じゃあ、お休みっ」


アタシは、そう言うとダッシュで部屋に駆け戻った。


『君子危うきに・・・』である。

「うーん」


またもやアタシはベッドに寝転がる。

それにしても、ああいう言い方をされると気になってしょうがない。

だからといって、これ以上姉ちゃんに聞くのは、本気で三途の川を渡る準備が

必要になってしまう。

だいたい姉ちゃんは怪しすぎる。

仕事も何をやっているのか分からないし。

たまに出勤しているようだが、殆どは家でゴロゴロしているし。

あとは、時々出張とか言っては、一週間位帰ってこないときもある。

そういえば、その事を訪ねたときも、今日と同じような反応だったような気が

するわね。

知りたい。

でも死にたくない。

これが世に言う『好奇心』と『死の恐怖』の板挟みである。

言うかそんな事、と思った人はまだ甘い。綾波家では、そういったことが日常

茶飯事なのだ。

自慢にはならないけど。

大体さっきの事でも実は、大した事はないかもしれないのだ。

いつもそうだ、くだらない事を一々勿体ぶって口にしない。

だからといって問い詰めてみても、こっちが痛い目に遭うのが関の山である。


「あー、やめやめ」


そう言ってアタシは、頭を切り替えることにした。

来るかどうかも、分かんない奴のことを考えても仕方ないからだ。

やっぱり先ずは目の前のことからね。

そう、アスカとマナ。

この二人の事が最優先よ。

何としてでもくっつけなければ。

でも、あんまり強引に持っていって感づかれても困るし。

取り敢えずは、現状維持ってやつね。

それから少し二人の会話を増やす。

まあ、こんな所でしょ。


「ふあー」


なんだか眠くなって来ちゃった。

そろそろ寝ようかな、明日も忙しそうだし。

電気を消して布団に潜る。

『アスカ、頑張るのよ』

などと思いながら、アタシは心地よい眠りについたのだった。







レイが、眠りについた頃、もう一人の住人も眠りにつこうとしていた。


「あーあ、そろそろ寝ましょうかね」


ソファーから起きあがると、テレビを消し、戸締まりを確認する。

少々、いやかなり変わり者ではあるが、一応綾波家の家事全般をこなしている

のだ。

レイが、頭が上がらないのも当然である。

まあ、それ以外の理由の方が大きいかもしれないが。


「まったく、あの娘は好奇心旺盛ね」


軽くぼやくと、部屋の電気を消し布団に潜る。


「まあ、しばらくは楽しませてくれそうね」


楽しそうに呟き、レイの後を追うように眠りについた。


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ver.-1.00 1997-05/19公開
ご意見・感想・誤字情報などは kazukun@mxv.meshnet.or.jpまで。

 [葵]さんの『妖精の憂鬱』第三話、公開です!

 なにやらレイちゃんのアブな計画が進行中ですね(^^;

 こういう女の子同士をくっつけようとする女の子は
 自分が”その気”である場合が多いような気もするのですが・・・・
 レイちゃんも、まさか・・・(^^;
 

 そしてなにやら「鍵」を握っていそうなレイの姉ちゃん。
 なかなか登場しない男の子にやきもきしてしまいます
 ・・・ああ、一体誰なんだ!・・・・シ○ジとは違うのかな??

 可愛い女の子を書く葵さんに応援のメールを送って下さいね!!


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