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タイトル



第3話 「友達の価値」
Story:03 Friends and I

Cパート



日常へと戻るとき


 「う…く…」

 シンジは、腹を押さえながら歩いていた。
 ムチが貫通したところは、小さな穴が開いていた。
 血が出てくることはないものの、動く度にかなりの痛みが走る。

 それでも、シンジは歩いていた。

 シンジ!
 そんなシンジを見つけたトウジとケンスケが走ってくる。

 「シンジ、どないしたんや!」
 「あの爆発にでも巻き込まれたのか?」
 「う…うん…」
 なんとか声を絞り出す。
 顔が見るからに苦痛に歪んでいて、苦しそうだ。

 「歩けるか?」
 「なんとか…」

 歯を食いしばって、2人に支えてもらいながらシンジは進んでいった。



 (ダメージを受けると僕にも来るって、早く言っておいてよね!)
 (ご…ごめんなさい…)
 (うー…いたい…)

 「あ、ほら。もうすぐだぞ」
 「しっかりしいや、シンジ。」
 ケンスケ&トウジがシンジをシェルター入り口に引っ張っていく。
 かなりの痛みを我慢しながら、シンジはそれについていった。

 努力の甲斐あって、2人が発見してから数分でシェルターにたどり着いたのだった。

 「さて、あとはこれを開ければ…」
 ケンスケが、ロックに近寄った時。

 ピッ!

 電子音が鳴り、扉が開いた。



 「あ…あれ?」
 困惑するケンスケをよそに、中から避難していた人々が出てくる。

 当然、その中にゲンドウ&ユイ、ミサト&ヒカリ他がいるわけで…

 あーっ! 鈴原・相田、碇君も!…またこんな所に!
 「イ…イインチョ…かんにんしてんか…」
 「もう、心配したんだからね!」
 「あーら、いけないわねぇ鈴原君。彼女心配させちゃあ」
 「ミ…ミサト先生まで何言うんです!」
 そ、そうよ!…とにかく、あんた達後でたっぷりお説教よ! ね、先生!

 「あら碇君、怪我したの?」
 ミサトは既にヒカリの言うことなど聞いていない。
 それどころか、ヒカリの存在さえ眼中にない。

 「は…い…」
 「まったく、お前はトロいからな。」
 「あなた!」
 「大丈夫、シンジ? …ごほごほ…」
 「碇君、大丈夫?」
 「う…いたい…」

…とにかく、シンジ・ケンスケ・トウジの三馬鹿トリオは、ミサトにたっぷり(シンジは怪我のためあまりたっぷりでもなかったらしい)説教されたらしい。

…え? 説教の方法?
 言わなきゃだめですか…?

 ミサトの車でミサト宅へ向かったあと、ミサトの「手製の」夕食をごちそうになったという。
 痛みが勝っているシンジはともかく、トウジ&ケンスケはその味のせいか何のせいか瞬時に気を失ったとか。

…ああ恐ろしい(?)…

 まさに、「見かけは天国・実際は地獄」
 教訓、「外見に騙されるな」



 「うう、いたい…」

 シンジはミサトの料理地獄から解放された後に、両親からもたっぷり説教された。
 ただ、あまりの痛さにほとんど聞いていたようないなかったような感じだった。

 とりあえず、痛みも治まらないのでシンジは着替えて寝ることにしたのだが、寝ようと思ってもいたくて眠れないことにやっと気づく。

 (やっぱりもっとカレー食べてくれば良かったかな…)
 この時だけ、ミサトの料理のまずさにすがりたい気分のシンジだった。



 (ねえ、なんとかしてよう。このままじゃ痛くて眠れないよぉ)

 苦しいときの初号機頼み(?)。
 シンジは、わらにもすがる思いで聞いた。

 (しょうがないわねぇ…。じゃ、まず目を閉じて気分を落ちつけて)
 (うん)
 シンジはその通りにする。

 (そしたら、怪我したところに意識を集中して)
 (うん…)
 (はい、そこでぐっと力を入れる!)
 (む…っ!…)

 歯を食いしばり、両手を握りしめ、シンジは全身の力を込めた。
 すると、自然と痛みが消えていく。まるで、今までのことが嘘のように。

 (…もういいわ)
 (え?)
 (もう大丈夫よ)
 (ああ、よかった…って、やっぱりなんとかなったんじゃないかあぁっ!)
 (う…)
 (ああ、これも早く言って欲しかった…)
 (ご…ごめんなさい…)



 シンジは、ふと起きあがって鏡を見に行った。

 途中、居間ではユイとゲンドウがTVを見て笑っていた。
 2人は全くシンジに気づいていないらしい。

 パチン…

 洗面台の電気をつける。
 今まで暗かった洗面所がぱっと明るくなる。
 鏡に映っていた暗い影がはっきりシンジと分かるようになった。

 シンジはパジャマをめくり、前の方から、そして回れ右して背中の方からも見た。
 腹に開いていた穴はもう完全に無くなり、全く何もなかったようになっている。

 (へぇ、すごい…)
 (でしょ?)
 シンジは、ただ感激するのみだ。

 (これで、転んだりしても平気だね)
 (まあ…そういうことね。ただ…)
 (なに?)
 (ただ、あんまり使いすぎると、エネルギーを消費するからお腹が空くわよ)
 (・・・)
 (・・・)

 もうちょっとまともな答え(?)を期待していたシンジだったが、それは見事なまでに裏切られた。
 ちょっと肩を落としながら、シンジは再び居間を通って寝室に戻っていった。

 居間では、相変わらずユイとゲンドウがTVを見て笑っている。シンジの方など見る気配すらない。



 それからしばらくの後。

 シンジは再びベッドに横たわっていた。
 その表情には、もう苦痛は浮かんでいない。

 「はぁ…」
 落ちついたシンジの耳に入ってくるのは、さっきから降り出した雨のしとしとという静かな音。
 そして、時折居間の方から小さく聞こえて来る両親の笑い声。

 (平和、か…)
 そんな二つの音を聞きながら、いつしかシンジはまどろみに落ちていく。

 こうして、夜は更けていくのだった。



第4話に続く

ver.-1.00 1997-06/23公開
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 次回予告

 またもや使徒はやって来る。
 忙しいと言う間もなく、シンジはまた出撃。
 だが、お約束通り一瞬にしてまたピンチに陥る。
 そして、レイとアスカは、やっとこ戦闘シーンの出番が回って来るのだった。

 次回、「ラミエル、襲来」 さぁて、この次もサービスサービス!


 あとがき

 はぁ。ちょっと日常ネタがつきてしまいました。
 いつもは各パート300行ぐらいにするのですが、どうにも…。

 さて、気を取り直してまとめ&次回について、いってみましょう!

 まとめ
 「シャムシェルが残ってると邪魔なので、また爆発するようにした。」
 この話であった主な設定変更はそれだけです。
 あとはだいたいTV3・4話そのまま、もしくはこれの2話らしき展開、ってとこで しょう。

 次回について
 ラミエルの登場です。
 シンジはやっぱりまたピンチです。役所がそうなってるかも知れません。
 そして!
 いよいよアスカ&レイの活躍が見られる…かな? (^^;



 Tossy-2さんの『新戦士エヴァンゲリオン』第三話Cパート、公開です。
 

 命を賭した戦い。
 シンジが守った平和。

 街に、
 人々の心に
 帰ってきた安らぎの時。

 その安らぎがシンジを包んでいますね。
 怪我の痛みをいやしたのは初号機の力と、
 周りの人たちの暖かさなのでしょうか・・・・
 

 さあ、訪問者の皆さん。
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